2025-10-31

Detour / Boz Scaggs

 

Boz Scaggs(ボズ・スキャッグス)の有名なアルバム「シルク・ディグリーズ」(1976年)や「ミドル・マン」(1980年)は今でもたまに聴きたくなります。ジェフ・ポーカロのドラムスを聴きたいってのもありますが。そんなボズももう81歳。最近はブルースシンガーとしての魅力も聴かせてくれていますが、この2025年新作はなんとジャズシンガーなアルバムです。

リンダ・ロンシュタット、ポール・マッカトニー、ロッド・スチュワート、往年のジャズシンガーのトニー・ベネットと共演したレディー・ガガ、そして八代亜紀さんも実に味わい深いジャズアルバムを発表しています。実力あるシンガーであればジャズソングは作品に残したいのでしょうか。名バラードをはじめ様々なスタイルを歌い重ねてきたボズの歌唱はとにかく渋い!

たとえば2.Angel Eyes 、1946年マット・デニス作曲のスタンダード名曲ですが、歳を重ねた者だからこそ出せる哀愁を感じます。「いろいろあったよなぁ」なんてね。もうひとつマイナー調ですと8.The Meaning Of The Blues もしっとりとオススメです。自身の2ndアルバム(1969年)からの再録、5.I'll Be Long Gone もまるでスタンダードのように響きます。灯りをおとして、ホットウイスキーでも用意してぜひ。

2025-10-24

オーディオショウ2025

 

今年も行ってまいりました「2025東京インターナショナルオーディオショウ」。2023年2024年と東京国際フォーラムにて開催。海外メーカーを中心に高級オーディオの音が聴ける楽しみなイベントです。

2025TIAS 事前登録で無料入場

僕が試聴した部屋でも背の高い大きなスピーカーで2000万、リビングに置けそうなサイズで300万とまぁそりゃ“高級”なモノで、やはりきちんとセッティング調整された音は惚れ惚れする良い音でした。すべての音がくっきりとして奥行きもあり、高域は澄み切って高く、低域は膨らまず沈み込んで、なにより余裕が違います。スピーカーだけでなくアンプやプレイヤー、周辺機器の総合力で圧倒的であります。

こうして聴けるのであれば、ぜひ音楽ファンのみなさんにも一度は聴いてほしい。買う買わない、共感するしないに関わらず、音楽を鳴らす装置としてこんな世界があるんだという体験は無駄ではないと思います。

我が家のスピーカーはJBL、ということでハーマンの会場でハイエンド機種「Summitシリーズ」も聴いてきました(ブックシェルフのAma)。濃密で高精細な音でした。丁寧に作られた製品であることが音に現れていました。

家に帰って試聴でかかった曲を探すのもまた楽しい。で、我が家のスピーカー(20万しない)で聴いてみると、贔屓たっぷりでしょうが、朗々と“いい音”で鳴ってくれるんです。そりゃ部屋も周辺機器も違いますからスピーカーだけの話ではないのですが、それにしてもです。オーディオってやっぱり自己満足な趣味だなぁとつくづく思います。

2025-10-17

My Life Matters / Johnathan Blake

 

Johnathan Blake(ジョナサン・ブレイク)はアメリカのジャズドラマー。前作(2023年)に続いてブルーノートからの2025年新作となります。参加メンバーは、デイナ・スティーヴンスAs、ジェイレン・ベイカーVib、ファビアン・アルマザンP、デズロン・ダグラスB。共同プロデュースにデリック・ホッジを迎えています。

1.Broken Drum Circle for the Forsaken のドラムスでも特徴的なのがスネアのパーカッシブな連打による表現。ロックのドラムスがスネアとバスドラとハイハットによるリズムキープを中心としているのに対して、ジャズのドラムスはシンバルでリズムキープして、スネアやバスドラはパーカッションのように装飾していくようなイメージがあります(全てではありません)。音階をもたない楽器でありながら、まるでメロディやコード進行を展開していくかのようなジョナサンのプレイに耳を奪われます。

緊張感のあるヴィブラフォンで始まる2.Last Breath や7.My Life Matters でも重心が下のほうにあってけして軽く流されないドラムスが聴けます。デリック・ホッジの過去のアルバムからも感じられた新時代のフュージョンなのではないかと。短いながら壮絶なドラムソロ8.Can You Hear Me? (The Talking Drums Have Not Stopped) も必聴です。



2025-10-10

ACアダプタをDC POWER BOXに


“音楽ストリーミング(サブスク)をできるだけ良い音で聴きたい”との思いで、QobuzにしたりMacを音楽特化したり光アイソレーションしたりしてきました。

そしていよいよ電源に及んでしまいました。今回は光アイソレーションのOPT ISO BOXの電源をオーディオグレードにしてみました。

左端のBOXに付属していたACアダプタ(中央)を右のDC POWER BOXに交換、デカっ!

なんでも小さなACアダプタによる「スイッチング電源」を、トランスを積んだ「リニア電源」にすることで機器本来のパフォーマンスを引き出せるとのことで、TOP WING社製「DC POWER BOX」(12V/5A、税込55,000円)を奮発してやりました。

音質はというと、一聴少しおとなしくなった(派手さがない?)と思わせましたが、実のところは、低域のボワッとした贅肉感は無くなり、より深く沈み込んでリアル感を増した感があります。高域もよりくっきりしてむやみに拡がらず出音に余裕を感じます。これが5A対応で2A分を使うという贅沢なのでしょうか。ストリーミング音源だから仕方がない、なんていうレベルの音質ではなくなりました。

オーディオ界隈では「実は電源の音を聴いている」なんて話もあるくらいでとにかく電源まわりは大事のようです。ほんとうはMacの電源アダプタをなんとかしたいのですがこれをなんとかするくらいならストリーミング専用機を買ったほうがいいかも、いやその前にルーターやハブまわりをなんとかしたほうがいいとか、あぁきりがない。

よりによって、このDC POWER BOXと機器をつなぐDCケーブルもより高品質なものが発売されるとのことで、こうなったらそこまでは付き合うか、という沼ずぶずぶ中であります。

2025-10-03

Without Further Ado, Vol 1 / Christian McBride

 

Christian McBride(クリスチャン・マクブライド)はアメリカのジャズベーシスト、作曲家。リーダー、サポート作ともに数多く、アメリカを代表するミュージシャンです。ニューポート・ジャズ・フェスティバルの芸術監督を創始者から引き継いだり、国立ジャズ博物館の共同館長に招聘されたりと文化の継承についても活躍されています。

2025年本作の目玉はゲストヴォーカリスト。なんと1.Murder by Numbers はスティングVo.&アンディ・サマーズGですよ。スチュワートはジョインしないですわね笑。ポリス時代の曲でこのアルバムの中でイチオシです(アンディのギターソロがすごくイイ)。続く2.Back In Love Again はジェフリー・オズボーンVo.でJB(ジェイムス・ブラウン)っぽいリズムのファンクがゴキゲン。なんでもクリスチャンはJBマニアでコレクター。日本にも山下達郎さんというJBコレクターがいらっしゃいますが。

そのあとも3.Old Folks サマラ・ジョイVo.、4.Moanin' ホセ・ジェイムスVo.、5.All Through The Night セシル・マクロリン・サルヴァントVo.、6.Will You Still Love Me Tomorrow ダイアン・リーヴスVo.とこれでもかと名ヴォーカリストが続きます。しかも僕が好きなミュージシャンばかり。いやはや盛り上がります。8曲で37分のアルバムであっという間に聴き終わってしまいます。また1曲目から聴きたくなりますよ。

2025-09-26

雑誌「Beat Sound」

 

高級オーディオを紹介するステレオサウンド誌の別冊として「Beat Sound」は2003年から2011年までほぼ季刊で18冊発行されました。2000年なんてつい最近のことだと思い込んでいましたがもう25年も経ってしまったのですね。あーなんと早いこと。

初期の数冊が欠けていたので集めちゃいました。断捨離後の生き残りです。

表紙には“ロックとオーディオの楽しい関係”、“リアル・タイム・ハイファイ・マガジン”、“ロック世代のサウンド・マガジン”なんて文字が並びます。あくまでオーディオは聴くための道具、ロックのパッケージソフトを中心に紹介しているところが良かったので購読していました。

名盤をLP、CD(発売年、リマスタリングそれぞれ)、SACD、DVDオーディオで聴き比べてみて筆者のおすすめ、なんて当時らしいマニアックな記事もあります。LP圧勝かと思いきや作品によってはCDのほうが音が良いこともあったり。LPは各国盤、CDはリマスタリング前と後についても言及しているのは肝心なところです。

掲載されているオーディオや広告も時代を感じるものばかり。僕自身仕事も関係して映像と音楽がともにあった時間が長いので、そこから派生していまだにサラウンドとかやっているんだなと。往年のオーディオファンというよりも、いろいろなメディアを楽しむ世代なんだなとつくづく思いました。

2020年代になって、全体的にはストリーミングに収斂してしまいました。音楽はもちろん、映像もネット映画ドラマやYouTubeで観る時代。便利さを追求したらこうなりますわな。我が家の棚にある大量のCDやDVD、果てはレーザーディスクまで、父はどうしてこんなに貯めちゃったのだろうと娘は思うでしょう。しかも同じアルバムをなんで複数枚も買ったのだろうと。
...えーい、先のことは考えるまい...。


2025-09-19

TRIUNE / Nicholas Payton

Nicholas Payton (ニコラス・ペイトン)はアメリカのトランペッター兼マルチ楽器奏者。高音質で推しのSMOKE sessions recordからの2025年新作です。エスペランサ・スポルディングVo.Bとカリーム・リギンスDsとのトリオ作品。

エスペランサの声やベースも大好きなのですが、今回はカリーム・リギンスとの共演がうれしいところ。ヒップホップ絡みでAKAIのMPCを使ってリズムトラックを作ったり、コモンのアルバムをプロデュースしたりと、今回も彼のリズムセンスが光っています。

2.Ultraviolet にカリームらしいヒップホップ的リズムを感じます。エスペランサのベースもクール。さらに3.Jazz Is a Four-Letter Word でもヒップホップにニコラスのローズピアノが漂いながら、途中からスイングリズムになったところでニコラスのトランペットソロが光る作品。6.#bamisforthechildren になるともうR&Bどっぷりでカリームのリズムもカッコよくて、自然と体が動いてしまいます。

2025-09-12

BEAT Live at 武道館

 

9月1日、BEATを観に行ってきました。武道館は久しぶりでした。高校時代に初めてロックライヴを観たのも武道館。リッチー・ブラックモアのギターに興奮したのを覚えています。文化祭でクラスの皆んなで武道館の縮尺模型を作って展示したのも良い思い出です。

2階席で前は通路という見晴らしのいい席でひとり、周りも同年代らしきオジさんに囲まれて観ました。ひとりじゃつまらないかなと思いきや、座りながらも体の中は終始ノリノリで楽しかった。行って良かったなぁと思っています。


80年代のキング・クリムゾン楽曲を当時のメンバーであるエイドリアン・ブリューVo.Gとトニー・レヴィンVo.Bに加えて、スティーヴ・ヴァイG、ダニー・ケアリーDsで演奏するというなんともピンポイントでニッチなバンド。ダニーが64歳でヴァイが65歳、ブリュー75歳であの声!とトニーは79歳ですよ。二部構成とはいえ複雑な曲を次々に、元気だなと敬服しました。

行く前に予習していたら当時買ったLDまで出てきて、この時期のクリムゾンが好きだったんだなと思い出しました。独特のリズムと変態ギター、大好きなトニーのスティックベース。バンドをやっていた者として影響も受けていました。ロバート・フリップGとビル・ブルーフォードDsの無機質かつ冷徹で狂気を帯びたリズムが魅力でもありました。

今回行こうと思ったのはやはりヴァイ先生。スティーヴ・ヴァイモデルのギターを持っているくらいですからね。そしてTOOLも好きでライヴも観たことがあり、ダニーがどう叩くか興味津々でした。印象を大ザッパに言いますと80年代のはイギリスのバンド、BEATはアメリカのバンドという感じでしょうか。主役がブリュー(アメリカ人)で&フレンズ的な展開に感じました。

スマホのみ撮影可で多くの人がSNSにアップしているようで、同年代の音楽ファンが盛り上がっているのがうれしい。好きだからこそ思う、RedをやってほしかったとかFrame by FrameのサイドGは高速フルピッキングで対抗してほしいとかElephant Talkの象の鳴き声はもっとらしく決めてほしかったとかありますけど、ヴァイ先生のギターの“舞い”を観れたので良しとします。


2025-09-05

Ride into the Sun / Brad Mehldau

 

Brad Mehldau(ブラッド・メルドー)はアメリカのジャズピアニスト&作曲家。個人名義での2025年新作となります。僕はパット・メセニーとの共作あたりから聴き始めて、M.T.B.マーク・ジュリアナの作品でも以前取り上げました。現代ジャズピアノにおいてその表現力は随一であると思います。本作は2003年に34歳の若さで亡くなったアメリカのシンガーソングライター、エリオット・スミスの楽曲をアレンジしたもの。

ブラッド自身1年以上続いた鬱から抜け出したとのことで、“エリオットの音楽は癒しの音楽であり,暗闇の中にいる人たちに「あなたは一人ではない」とそっと伝える音楽でもある。”と語っています。このアルバムを聴いていると、光をもたらすようなブラッドの演奏に体の内側で感動していることに気づきます。

穏やかな1.Better Be Quiet Now からブラッド節が聴けてうれしい。沁みわたります。ジャズ以外の分野からも数曲コラボしていて、3.Tomorrow Tomorrow なんて楽曲もブラッドならでは。妻と娘が声をそろえて「この曲好き!」となったニック・ドレイク(70年代のフォークシンガー)作の15.Sunday も印象的。クラシックの要素もあっていろいろ、まだまだ第一印象、この秋じっくり聴き込みたいアルバムです。

2025-08-29

クラプトンの「オーガスト」

 

8月生まれの僕は今月還暦を迎えます。ちょうど20歳上のエリック・クラプトンは80歳。見た目は年老いた感がありますが昨年も新作を発表するなど元気に活動しているようです。音楽以外の活動はあまりよく知りませんが、僕にとっては3大ギタリストのひとりということで注目し続けています。

AUGUSTというわりに厚着な内ジャケ

1986年作の「オーガスト」は同年の8月に息子が誕生したことでつけたタイトル。数年後その息子さんは事故で亡くなってしまい、その悲しみから「ティアーズ・イン・ヘヴン」を作曲した話は有名です。

前作「ビハインド・ザ・サン」とともによく聴きました。サウンドはフィル・コリンズのあの音。80年代を代表する音です。キーボードはグレッグ・フィリンゲインズですから、クインシー・ジョーンズ一派でありマイケル・ジャクソンの音を担っていた人です。ベースはネイザン・イーストで鉄壁の布陣。プロデュースにはトム・ダウドの名前もあります。

ティナ・ターナーと共演した3.Tearing Us Apart のノリの良さが好きです。ザ・バンドのリチャード・マニュエルに捧げた10.Holy Mother も心に沁みるバラード。教授の11.Behind the Mask も話題になりましたが、原曲がしみついた僕にとってはまぁね。

ギタリストとしてはどうでしょう。クリーム時代の弾きまくりは後追いだったり、クラプトンに影響を受けたとのたまうエドワード・ヴァン・ヘイレンのギタープレイに打ちのめされたギター少年としてはちと物足りないかな、特に学生時代の僕には。

ところがシニアな歳になってみるとクラプトンのアルバムがいいんです。70年代、80年代、90年代以降も。なんかしっくりくる。曲も歌もギターソロもすべてがいいバランスでよく出来ていて気持ちがいい。クラプトン様を見習ってあと20年がんばるかな。

2025-08-22

The Big Room / Joe Farnsworth

 

Joe Farnsworth(ジョー・ファンスワース)DsのSMOKE Sessionsからの2025年新作。今回もニューヨーク布陣で、ジェレミー・ペルトTp、ジョエル・ロスVib、サラ・ハナハンAs(ユリシーズ・オーエンス・ジュニアDsの作品に参加)を迎えてのレコーディングとなっています。

僕のお気に入りであるSMOKE Sessionsの作品は、一聴オーソドックスで昔ながらのジャズを演っているようですが、聴き進むと「今」の音を感じることができます。もちろん50年代〜70年代往年のジャズ作品も力があって好きなのですが、ここで演奏する名うてのミュージシャンたちもそうした作品を聴いてきて積み重ねた経験があって、そんでもって「今」の空気を呼吸しながらライヴで表現していく新鮮さもその音から感じられます。

1.Continuance の勢いのある演奏からワクワクします。眼の前で聴いたら思わず歓声をあげてしまうでしょう。3.All Said and Done のブルースもゆったり身を任せて体を揺らして聴くと気持ち良しです。ジョーのドラムソロがめちゃカッコいい5.Radical はあのマイルス・クインテットを思わせる曲調。そして各メンバーのフレージングにキラッと光るものを感じるのが楽しいアルバムです。

2025-08-15

秋葉原と御茶ノ水

 

御徒町生まれ、湯島育ちの僕は、となり街に秋葉原と御茶ノ水があって、オーディオや楽器、レコード&CDに直接触れるのも自転車の距離でした。職住近接ならぬ“趣”住近接だったのです。70年代後半から80年代、ティーンエイジャーの頃の話です。

オーディオ製品がひしめいていた頃、FM誌やカタログで見た機種をさわって聴いてみたり、積み上げられた小型スピーカーの番号を押して鳴らし替えてみたり、高級オーディオコーナーには気後れして入れなかったり、店員さんの暇な時間を見計らって買いもしないのにセットを見積もってもらったり。石丸電気レコード館で小遣い内に厳選したレコードを買って特典ポスターの番号を伝えたり、生カセットテープの安売りセットを探したり、ラジ館の電気部品をわかりもしないのに覗いたり、というのが秋葉原の思い出。

バイトで貯めたお金で初めて買った中古のエレキギター。フェルナンデスのストラトモデルでイエローサンバーストを石橋楽器で。トレモロユニットを当時話題のフロイド・ローズに替えたくてコピーモデルを買って楽器屋さんに取り付けてもらったり、高校の同級生と御茶ノ水に集合しては楽器屋巡りして、試奏ばかりして買わなかったり。自分でギターを削って改造してどうにも調整できなくなってESPの店員さんに怒られたり。レンタルレコード「ジャニス」に通って手書きのユーザーレビューに教えてもらったり、というのが御茶ノ水の思い出。

僕の学生時代の音楽ライフはこのふたつの街に集約されています。御茶ノ水は半減した感がありますがいまでもギターショップが並んているし、ディスクユニオンが数店舗あったりして、今でも行くとちょっとワクワクします。秋葉原はもう僕が知っている街ではなくなってしまいました。父の初盆を迎え、母もいない湯島に行く用事がなくなり、行き帰りに立ち寄ることもなくなってしまったのがちょっと寂しい思いです。

2025-08-08

Eigengrau / Vincent Meissner Trio

 

Vincent Meissner(ヴィンセント・マイスナー)はドイツのジャズピアニスト&作曲家。なんと2000年生まれ。ライプツィヒの音楽大学で学びながら数々のタイトルを受賞。3枚目のリーダー作である2025年新作は、エスビョルン・スヴェンソン(E.S.T.)も属していたACT Musicからリリースしました。ヨーゼフ・ツァイメッツB、アンリ・ライヒマンDsとのトリオ作品です。

それにしてもこう暑くちゃ冷たいもんしか口に入りません。音楽を聴こうってなってもつい涼やかな曲を求めてしまいます。で、美音で軽やかなピアノトリオに手が伸びるってわけです。同じくドイツのECMレコードの音源をかけて涼んでおられる方も多いでしょう。タイトル「アイゲングラウ」は目を閉じたときの背景の濃いグレー、本来の光を意味するそうです。

煌めきのピアノで始まる1.Supernumb でその美音に浸ってください。涼やかな余韻が空間に拡がります。プリンス作曲シネイド・オコナーのカヴァーで有名な3.Nothing Compares 2 U のアレンジと演奏に彼の才能を感じます。ずっと聴いていたくなる楽曲です。ドラムスが小気味よい8.Anthem のリフレインも印象的。アルバム全体をとおして歌心を感じます。ハイレゾ高音質でそちら方面にも受けそうなこのアルバムはCDやLPでも発売されているそうです。

2025-08-01

OPT ISO BOXでLAN高音質化

 

オーディオ用のMacbookを有線LAN接続して高音質化する話を以前書きました。今回はその有線LAN部分をオーディオ的にグレードアップしてみました。界隈で話題のTOP WING社製OPT ISO BOX(オプト・アイソ・ボックス)を購入したのです。

OPT ISO BOX。タバコ箱よりちょっと大きい。4万円弱。

Wi-Fiルーターの有線LAN端子→LANケーブル→OPT ISO BOX→LANケーブル→Macbook(有線LANアダプタ)と、LANの途中にかますものです。BOX内で光ケーブル接続を介する「光アイソレーション」と呼ばれるもので、LANに乗るノイズを除去する効果があります。

音質は、以前と比べてもっと漆黒の背景からポッと音像が浮かびあがるような、音そのものが力強さを持って輪郭はっきりと、前後上下方向も表現してくれるようになったと感じられます。生々しさが増して音楽を聴くのがさらに楽しくなった気分です。

思い返せば、サブスクの音って拡がりもあってキレイなんだけど聴き流してしまうところがあると感じていたんです。特にレコードの音を知ってしまうとね。ところがこの光アイソレーションで耳が音楽を聴くことに集中せざるをえない状況になります。

しかも通信速度を10M/100M/1Gbpsの3段階で切り替えることができます。不思議なことに音が変わります。10Mは低域をギュッと前に出してきてロックやモダンジャズがいい感じ。1Gは少し腰高になりますが拡がりがあってハイレゾらしい精細な音。100Mbpsはその中間いいとこ取りな印象で気持ちよく聴けるので僕はここに合わせています。

ちなみにLANケーブルもTOP WING社のUltra Slim Link(8,800円/1m)✕2に変えています(これの効果も影響あり)。同社はDATA ISO BOXというオーディオ専用のネットワーク環境を構築する製品も発売していて併用するといいらしいのですが、まぁ段階的に。

せっかくのQobuz、ロスレスはもちろんハイレゾの大きな皿に乗った食材(楽曲)をしっかり味わいたいという一環です。あぁ...沼の入口に入ってしまいました。でもしばらくこれでいいかな。音に満足しているし。

2025-07-25

Flying? / 桑原あい

 

桑原あい(Ai Kuwabara)は日本のジャズピアニスト。スティーブ・ガッド&ウィル・リーとのトリオやディズニーのカヴァーで既に11枚のアルバムをリリースしています。数々のライヴやテーマ曲での演奏経験もありながら、昨年ロサンゼルスに拠点を移しチャレンジしていこうと。本作はそんな意気込みの感じられる2025年新作です。


穐吉敏子さんや渡辺貞夫さんが渡米した頃とは環境もずいぶんと変わったのかもしれませんが、それでも外国に渡って腕ひとつで勝負していくというのは、いくら経験があるからと言っても大変な心意気だと思います。ジャズミュージシャンたちは僕からすれば想像を超える腕利きばかりですから怯んではいられないでしょう。桑原さんが一番好きな音楽家はクインシー・ジョーンズとのことで、楽曲からビジョンの高さや大きさを感じて、これなら世界と渡り合えるなと思った次第です。

1.Flying? の演奏でスケールの大きさを感じます。サム・ウィルクスBとジーン・コイDsがまたシャープでいい音しています。2.This Love はあのマルーン5の曲ですよ。ジャズアレンジだとこうなるのかーと。ロサンゼルスの山火事に関する短いエピソードがグッときたオリジナル曲6.What hummingbirds teach us about flying も彼女らしいストーリーのある演奏に聴き入ります。ほかにもレッチリやマイケル・ジャクソンのカヴァーもあったりで、まるごと1枚楽しめる気持ちの良いアルバムになっています。

2025-07-18

note仲間オフ会からのボサノヴァ

 

先日、清澄白河のginger2(ジンジャードス)にてnote仲間のオフ会が開かれました。このお店に集まってくる只者ではない音楽好きの方々は、聞けば聞くほど濃くて深くてほんとうに驚きです。僕自身音楽に関わる仕事もずいぶんやってきて知識はあるはずですが、正直なところ甘かった。

今回はnote仲間の一人、パリから一時帰国されるムーンサイクルさんにDJしていただくという魅力的な特典付きオフ会となったのでした。いい具合にお腹もお酒もこなれてきたところで、ボサノヴァを楽しく聴きましょう〜と始まったのでした。

そこはnote仲間のnoterさんですからボサノヴァ名曲を流しておしまい、というわけはありません。アントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・ヂ・モライスらのボサノヴァ生まれし頃の映像からはじまって、知らない映像が次から次へと。

その後もボサノヴァにつながるブラジル音楽やジャズへの展開、日本でのボサノヴァなどなどムーンサイクルさんならではの選曲と選映像で、深〜く楽しむことができました。そしてジンジャーに捧げるオリジナルソングもご披露(さすがです)。というわけでオフ会以降、家にあるボサノヴァCDをあれこれ。

家にあるCDをひっぱり出してきた。
AUDI-BOOK左から「ボサ・ノーヴァ物語・青春篇」「同・源流篇」「同・放浪篇」



2025-07-11

Shikiori / Sinne Eeg & Jacob Christoffersen

 

Sinne Eeg(シーネ・エイ)はデンマークのジャズヴォーカリスト&作曲家です。女性ジャズヴォーカルを聴く人であれば知っている人多しです。Jacob Christoffersen(ヤコブ・クリストファーセン)もデンマークのジャズピアニストで自身のトリオや経験豊富な伴奏で活躍しています。

2025年の新作は、福岡県の古民家「想帰庵(しきおり)」でのライヴパフォーマンスをおさめたデュオ作品となっています。僕自身、10年以上前にパン屋を開業した時期と重ねて農家さんや古民家をいろいろ訪ねて、その静かな佇まいに魅了されていました。そこに人の温もりがあってなんとも癒やされたものです。そんな空気感を思い起こすことができる素敵な作品に出会いました。

日本語で歌われる3.Soba Flower を聴くと、優しくて透明感のある歌とともに自然を愛する日本人との共通点を感じているのではと思います。アニー・レノックスのソロ作7.Cold ではハスキーでエモーショナルな歌いっぷり。ヤコブのピアノがロマンティックに響いてうっとりします。僕の大好きなジャズスタンダード9.But Not for Me ではスキャットもはさんでスイング&リラックス。場の親密さを感じました。今日は暑さひと息ですが、また暑い夏がやってくるでしょう。このアルバムを部屋に流して涼んでみてはいかがですか。

2025-07-04

プログレ・サラウンド三昧

 

まったく話題にすらならないSACDサラウンドDVD- Audioですが、個人的に盛り上がっています。わけは何と言っても“図太い音”です。CDはもちろんアナログレコードで体験した音と比較しても明らかに違う音がします。

そりゃサラウンドですから、各スピーカーから出ている音が違うので当然ちゃ当然。サブウーファーもあるし、拡がりも別物です。つまり2chステレオを楽しむのとは別の話ですね。

それにしてもこの違い...。おそらくサラウンド用にミックスしなおす過程で生まれた音だと思います、とにかく生々しく「ズドン!」と来ます。

サラウンドで聴けるプログレの名盤たち

写真上段左から

  • PINK FLOYD「The Dark Side Of The Moon(狂気)」(1973年作品)
    SACD5.1ch/SACDstereo/CDstereo(2019年)
  • YES「Fragile(こわれもの)」(1971年作品)
    SACDマルチch/SACDstereo/CDstereo(2011年)
  • GENESIS「A Trick Of The Tail」(1976年作品)
    SACDマルチch/SACDstereo/CDstereo、DVD Dolby Surround/DTS Surround/Extras(2007年)

写真下段左から

  • YES「Close To The Edge(危機)」(1972年作品)
    Blu-ray5.1ch/Blu-rayStereo/Additional Material、CDstereo(2013年)
  • EL&P「Tarkus」(1971年作品)
    DVD-Audio5.1ch/DVD-AudioStereo、CDoriginal album、CD2012stereo mix(2012年)
  • KING CRIMSON「Red」(1974年作品)
    DVD-Audio5.1ch/DVD-AudioStereo/DVD DTS5.1ch/DVD PCMstereo/Video Content、CDstereo(2009年)
  • KING CRIMSON「Discipline」(1981年作品)
    DVD-Audio5.1ch/DVD-AudioStereo/DVD DTS5.1ch/DVD PCMstereo/Additional&Video、CDstereo(2011年)

    ※5.1chやマルチchはサラウンドってことです。

70年代プログレの鮮烈な音を浴びることができます。圧倒されるばかりです。いろいろありながらもよくこんな作品を作ったなぁと畏怖の念を抱きます。

ちなみにクリムゾンのディシプリンは80年代ものですが、9月の再現バンド“BEAT”の武道館ライヴも期待して加えました。ほかにもRUSH「Moving Pictures」(1981年作)もあってこのDVD-Audioサラウンド(2011年)もスゴいんです。

2025-06-27

Words Fall Short / Joshua Redman

 

Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)のブルーノートからの2作目で2025年新作です。ジョシュアSaxのほか、ポール・コーニッシュP、フィリップ・ノリスB、ナジル・エボDsからなるカルテットで、一回り若いメンバーながら実に成熟した演奏を聴かせてくれています。

Joshua Redman - Words Fall Short

ひとつの曲をじっくりと聴いていくと、繊細に物語が進行していくように展開して、なんてよくできた曲なんだと思うことになります。一見派手さはないですし、その演奏技術をひけらかすようなこともないのですが、あぁ全員ただものではないんだなとわかります。ここにはこれぞジャズ、“言葉には言い表せない”表現が詰まっています。

静かに始まる1.A Message To Unsend から聴かせてくれます。徐々に熱を帯びていくさまに惹き込まれていきます。タイトル曲3.Words Fall Short のベース音がいいですなぁ。ジョシュアのソプラノサックスがクールに響きます。4.Borrowed Eyes のバラードではフィリップのベースによるブルースが光ります。ジョシュア曰く「クリスチャン・マクブライド以来、すべてを備えたアコースティックジャズベーシスト」とのことで今後も要注目です。7.She Knows ではフリーに行きますが、苦手な人でもこのカルテットの音色であればとオススメします。

2025-06-20

STAXのイヤーパッド交換

 

(娘)「顔の横に“ひじき”が付いているよ」、(僕)ひじきは食べていない...。

STAX SR-L700 MK2(イヤースピーカーと呼ぶ)のイヤーパッドが劣化して剥がれたものが付着していたのでした。剥がれてきているのは知っていたけれど、まぁいいかと使い続けていました。でもたしかにちょっとヘタれてきているかな、とSTAXの公式通販サイトに発注したのでした。

放っておいた僕が悪かった。

新しいイヤーパッドが届いた。

交換完了!自分で簡単に交換できます。

さっそく装着したら、フィット感良好。不思議なもんで音まで良くなった気がします。実際ヘッドフォンのイヤーパッド交換による効果は経験しています。ちなみにこの機種のイヤーパッドは、肌に当たる部分が本革でそこは見た目には劣化がなく、周辺の取付部分が人工皮革で、この部分が経年劣化して剥がれていたのでした。まぁずっと使っているとクッションもヘタれてくることは間違いなく、弾力も復活してよかったです。

YouTubeを見たりしていると、ついつい新製品や音質が良くなるかもしれないグッズやアクセサリーに目移りしてしまいます。が、まずは手持ちの機材をちゃんとメンテして、その性能を発揮させてあげないともったいないですね。


2025-06-13

Out Late / Eric Scott Reed

 

Eric Scott Reed(エリック・スコット・リード、またはエリック・リード)の2025年Smoke Sessions新作アルバムです。メンバーはエリックPのほか、ニコラス・ペイトンTp、エリック・アレクサンダーTs、ピーター・ワシントンB、ジョー・ファーンズワースDsというオールスターメンバー。ニューヨークに行ったならぜひともこのメンバーのセッションを聴いてみたいと夢見ています。今回もまるでSmokeにいるような素晴らしい録音で聴くことができます。

題名にもあるとおり、深夜の雰囲気を伝えるもので、“ミュージシャンの生活、つまりナイトライフやアクティビティ、ニューヨークのヴァイブレーションの感覚やエネルギーを指しています。”とのこと。演奏を聴いているとなんとも落ち着きます。仕事帰りにこんなジャズクラブでグラスを傾けて、緊張をほどいていくことができたらと思っていたものです。

1.Glow なんて曲で始められたら、ああ大人っていいなと思います。勢いでもなくバラードでもなくスローなスイング。名うてのミュージシャンが醸す余裕の演奏。3.Shadoboxing も心地よくマッサージしてくれます。身を委ねるだけでよいんです。4.They では軽快なスイング。明日への元気につながります。“すべてファーストテイク、ヘッドフォンもオーヴァーダビングもなし”とのことで昔ながらのレコーディング方法だからこそのライヴ感を味わえる作品です。

2025-06-06

フルレンジでサブシステム

 

長いことオーディオ好きをやっている人であれば、メインで聴く以外のサブシステム(または自宅とそれ以外とか)を楽しんでいる方もいらっしゃると思います。同じ音源を違うスピーカーで聴くことで、また曲の印象が違ったりします。

僕はメインはJBL4309という2ウェイスピーカーですが、もう25年以上前に買ったミニコンポ(ビクターFS-10)にセットになっていたフルレンジスピーカーSP-FS10もお気に入りで持っていました。最近これを棚の上に乗せてサブシステムとして鳴らすマイブームの最中です。

ビクターSP-FS10(8.5cmフルレンジ)

ちょっと定評があるスピーカーのようで、のちにウッドコーンに変化していく型です。コンポのほうはとっくにCDプレーヤー部分が壊れ、ボタンも2回押さないと反応しなかったりと覚束ないご様子。アンプ部分はまだ行けるようなので、外部入力にRCA-3.5mmジャックの有線をつけて、iPhoneやCDウォークマンを音源にして鳴らしてみました。

これがやはりというかなかなかに味のある音を奏でてくれます。いつもハイレゾハイレゾ言っているくせに、高いほうも低いほうも鳴らないフルレンジでも楽しいもんだというわけです...。特にヴォーカルの静かな曲なんて、真ん中に“声”がポッと浮かび上がって聴き惚れてしまうほど。ジャズのモノラル音源もこれまた良いんです。音も曖昧ではなく、しっかりクッキリ描いてくれます。※コンポに「Super Pro Sound」なる低域増強ボタンが付いていて、時代を感じますが気に入っています。

音の出口であるスピーカーやヘッドフォン(イヤフォン)を、違うキャラで複数持っていると、よく聴いた曲でもまた違った味わいがあるというのがオーディオの楽しいところです。

2025-05-30

Downhill From Here / Gilad Hekselman

 

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)はイスラエル出身のジャズギタリスト。ニューヨークを中心に活躍しています。ジョン・スコフィールドGやアントニオ・サンチェスDsとの共演やエスペランサ・スポルディングのアルバムに参加するなど、カート・ローゼンウィンケル以降の最注目ギタリストだそうです。2025年新作アルバムはリーダー作品として9作目にあたります。

今回は、ロイ・ヘインズの孫であり超絶ドラマーのマーカス・ギルモアと、ブラッド・メルドーやパット・メセニーと共演でも印象深いラリー・グレナディアBとの鉄壁といえるトリオ作品。3人が会話するさまは、あのメセニーのトリオを想起させます。ギラッドの音はより浮遊感があって彼らの音空間に浸ると気持ちよくて時間を忘れます。

数多くの名演が存在するバート・バカラックの4.Alfie はなんとも染み入る演奏。メセニーの「Alfie」と聴き比べても面白いかも。5.Wise Man でのマーカスのドラムスの雄弁なこと。好きなのは7.Scoville 。ちょっと歪んだギターはもしかしてジョンスコ風?、でも好きな音です。跳ねたリズムが独特なファンキーサウンド。最新鋭ギタートリオであり、今後の定番にもなり得る作品だと思います。

2025-05-23

ヘッドフォンライヴに行きました

 

5月10日赤坂にあるMZES TOKYO(エムゼス)の「BANDiSH HEADPHONE LiVE」に行きました。観客全員がヘッドフォンをつけてライヴ鑑賞するという僕にとって初体験のライヴでした。YouTubeでスナーキー・パピーが演っているのを観たことがあって、店長から企画を聞いたとき「あれか!楽しそう」と思って乗り気でした。

Snarky Puppy - Trinity (GroundUP Music NYC)


MZESでもミュージシャンと観客が、ステージと客席に分かれているのではなく、機材を囲んで同一円上に車座になります。だから隣にミュージシャンが立っていて楽器もすぐそば、なんて人もいます。ミュージシャン同士も少し遠くでアイサインを送りながら演奏して、観客もその中にいるような感じです。

観客入り前。中央に機材を囲んで着席。となりにミュージシャンが立つ。

そして全員がヘッドフォン。持ち込んでいる人もいれば、店から借りる人も。自席のミキサーでボリューム調整して聴くことができます。ライン(マイクで音を拾うのではなく、ケーブルで直接つなぐ楽器)の音が(もちろん)とてもクリアー。まるでレコーディング現場に一緒に入って音を聴いているかのように各楽器の演奏を聴くことができます。

ちなみに演奏途中でヘッドフォンを外すと、ドラムスとサックスの音しか聴こえない。そりゃそうだ。再度ヘッドフォンをつけると彼らのミラクルな演奏が繰り広げられています。ふだんイヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く人は、このほうが違和感ないんじゃないかな。実際観客のみなさんも首や肩をゆすって聴き入っていました。(手拍子しても聴こえない、んだ)

BANDiSHは若手の敏腕ミュージシャンによるインストゥルメンタルグループ。メンバーは中林俊也Sax、ほんまひかるSax、宮本憲G、金沢法皇Key、杉浦睦B、大場俊Ds。ジャズやフュージョン、ポップスを新しい切り口で聴かせてくれる、観て聴いて楽しいライヴでした。

当日は映像制作チームも入って、各楽器にカメラが向けられ、ソロまわしをリモートで回転するカメラがとらえるという仕掛けもあり、後日映像コンテンツとしてリリースするとのこと。音源もサブスクに掲載されるそうなので楽しみにしています。

六本木ジャズクラブ時代の仕事仲間であるB店長、そして音響エンジニアのKくんにも久々に会えてうれしかった。Sシェフとチームワークで新しいことにチャレンジしている姿がかっこよかったです。

2025-05-16

EVERYDAY / 黒田卓也

 

黒田卓也さんは日本のトランペッター。ニューヨーク・ブルックリン在住。僕も2014年「Rising Son」を聴いて以来気に入って、日本のミュージックシーンをリードする存在として注目してきました。彼のラジオを聴いたりすると、その気さくでお茶目なトークも魅力的で、きっと若手ミュージシャンたちにとっていい兄貴的存在なんだろうと思っています。

この2025年新作は“トラック・メイキングとスタジオ・セッションの究極の融合を目指した”とのことで、ただならぬ緻密さとフィジカル的に高い演奏力を聴かせてくれています。サブスクのおかげで様々なジャズの新作を聴くことができるわけですが、黒田さんの作品は本当に世界水準で高いオリジナリティを感じます。日本発ではあるもののニューヨークの今の空気を伝えてくるようです。

タイトル曲2.EVERYDAY を聴けばあぁコレだとなります。鋭くキレのよいリズムと緻密なアレンジ。でもライヴで演奏している姿も想像できる、そんなサウンド。6.Off To Space のドラムスがまたカッコいい!リズムが凝っているのになぜか余裕を感じさせるのが兄貴のなせる技でしょうか。黒田さんらしさは8.Hung Up On My Baby にも出てきます。どこか日本の民謡のようなお祭りのような親しみを感じる曲です。ニューヨーク&日本の今のジャズを詰め込んだとびきりカッコいいアルバムになっています。

2025-05-09

Qobuz Connect きた!

 

今週Qobuzのデスクトップアプリをアップデート更新したら、「Qobuz Connect」ができるようになっていました。先行アクセスとのことで、しばらくしたらみんなできるようになるでしょう。個人的に待望の機能のリリースです。

Spotifyでは昔から「Spotify Connect」ができてコレ便利だったのですが、言葉を借りると“特定のデバイスから他のデバイスの再生を遠隔操作”できるというもの。僕の場合は家ではMacBook AirをオーディオにUSB接続してQobuzを聴いているのですが、iPhoneでQobuzアプリを立ち上げれば、同じネットワーク(LAN)上のMacを再生出力先として指定できるようになった、ということです。※WindowsもAndroid端末もOKです。

左下(赤丸)の表示が出ていれば、音はそちらから出力

つまりiPhoneで曲やプレイリストを選んで再生すると、離れた場所にあるMac経由でスピーカーから音が出る(もちろんハイレゾ対応のまま)。はい、それだけのことです。でも手元にあるiPhoneで遠隔操作できるのはモノグサ太郎にとってはありがた山なんです。

おととし紹介した「離れたMacを操作する」のやり方(Macの画面共有機能)を続けてきましたが、仕事中ならともかく手元のMacを開く必要がなくなりました。

Apple Musicにはこの機能ないんです。AirPlay推しなんでしょうか。アプリで「Remote」という、ライブラリ(に入れてあれば)をiPhoneで選曲再生できる、もしくはいまかかっているプレイリストの再生停止次曲戻曲できるものがあるので、まあいいとします。

そんなのBluetoothでiPhoneから飛ばせばいいんじゃ、それこそAirPlayがあるでしょ、との意見もございましょう。無線も最近は充分に音がイイので老耳には差異がわかるまいとのお説ごもっともです。まぁでもQobuzハイレゾを可能なかぎりそのまま拝聴することにこだわってみようと思っています。

2025-05-02

Tomorrow We'll Figure Out the Rest / Silje Nergaard

 

Silje Nergaard(セリア・ネルゴール)はノルウェーのジャズシンガー&ソングライター。1990年のデビューアルバムをパット・メセニーがプロデュースしたことで有名になったと思います。2025年の本作は20作目(DVD含む)。“両親への深い思い、遠い日の記憶、家族やさまざまな人生の物語にインスパイア”とのことで、1966年生まれ(僕のひとつ下)であることや近年の自分の境遇と重ねて、思いを馳せながら聴いております。

女性ヴォーカルの楽曲はジャズでも人気で、ひとりひとりの個性が感情を豊かに表現していて味わい深いのが魅力。アルバムの中の楽曲によっても微妙に表情を変えていて、繰り返し楽しめます。セリアの歌声からはノルウェー(北欧)の香りが感じられて、行ったことはないけれど、大自然や空気の冷たさや夜の長さを想像することができます。

まずは1.You Are the Very Moon が僕の知るセリアのイメージ。ストリングスがあまーく入ってきてなんとも夢心地です。好きなのは5.Vekket i tide 。母国語でしょうか、ノルウェーを感じます。ストリングスの美しさが際立つバラード8.Dance me Love ではセリアの魅力がじんわり伝わってきて沁みます。好きなヘルゲ・リエンのピアノが全編にわたりこれまた美しい。心は温まるアルバムです。

2025-04-25

ピンク・フロイドをIMAXしてきました

 

ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』をTOHOシネマズ日比谷で観てきました。1971年10月イタリアのポンペイ遺跡での無観客ライヴ・パフォーマンスを収録したもので、1972年に映画公開。今回この映像を4Kデジタルリマスターし、さらにレーザー投影&12chサウンドのIMAXシアターで堪能してきました。


向かって左側の席だったので、眼の前にデヴィッド・ギルモアのギターが定位してなんとも嬉しい感じ。そしてギルモアさん若い!途中「狂気」のレコーディング舞台裏シーンも織り込まれたたりして、ちょっと和みました。

それにしても高精細な画質と音質に驚きました。50年以上前の素材が良かったのか、デジタル技術のすごさでしょうか。ギルモアのストラトやスライド・ギター、ロジャー・ウォーターズのブリッジ付近でのピッキングベース、タム多用&ツーバスのニック・メイスン、リチャード・ライトのオルガン、どれもがくっきりはっきり観れて、これぞ映画ライヴ鑑賞の醍醐味でした。

僕よりもさらに年上のファンが大勢観に来ていました。場内がピンク・フロイドのサウンドに没入した空気で満たされていました。帰宅したら「The Dark Side of the Moon(狂気)」をアルバム通しで浸ることに決めて映画館を出ましたとさ。

2025-04-18

Ones & Twos / Gerald Clayton

 

Gerald Clayton(ジェラルド・クレイトン)はアメリカのジャズピアニスト&作曲家です。このところブルーノートばかりですが、彼も最近では「Out Of/Into」のオールスターズで本作参加のジョエル・ロスVib、ケンドリック・スコットDsと共演していました。ほかにエレナ・ピンダーヒューズFl、マーキス・ヒルTp、ポストプロダクションにカッサ・オーバーオールを迎えた2025年新作です。

アルバムジャケットではレコードプレイヤーのトーンアームが2本伸びて、DJターンテーブル2台を想起させています。彼が聴いてきたヒップホップやソウルもじわっと感じますが、アルバム全体的には実験的でジャンルを超えたサウンドをじっくり聴かせる作品です。“2つの別々のメロディが調和して共存することは本当に可能なのか”という「共存」をテーマにした作品とのことで、ジャズが持つ時代性やミクスチャーを巧みに表現しているように思います。

フルートとヴィブラフォンが併走する1.Angels Speak を辿っていくうちに彼の世界に惹き込まれていきます。3.Sacrifice Culture を聴けば上記のニュアンスを感じることができるかと思います。たとえば10.More Always ではマーチングなドラムにやがて合唱が重なっていき不思議な高揚感を得たり。一本筋の通ったサウンドコンセプトがありながら、実に多彩な印象を感じるプログレッシブな作品であると感じました。

2025-04-11

iPhoneをLDAC対応にする“BT11”

 

ワイヤレスイヤフォンのMotherAudio MET1は家でのコードレスなリスニングに活躍しています。このイヤフォンはLDACという高音質化に対応しているので、実は同時期にLDAC方式で送信可能なBluetoothトランスミッターFIIO BT11を購入していました。iPhone単体ではLDAC非対応なので、このドングル(小型デバイス)をUSB-C端子にカチャッと付けることで対応できるようになります。

iPhoneの下に付いているのがFIIO BT11(白色で光っている)

ちなみにLDAC(エルダック)とは、Bluetoothワイヤレス接続でなるべく大量(いままでの最大3倍)の信号伝送を可能にした音声圧縮技術です。通常ハイレゾ音源などを聴くにはイヤフォンやヘッドフォンを“有線”接続して聴くしかないわけですが、それをなんとかワイヤレスで可能な限り高音質にしようとした技術(ソニーが開発)です。

音の精細さは24bit/96kHzまで対応していて、ビットレート(伝送容量)は、音質優先の990kbpsモードや接続安定性を重視した330kbpsモード、その中間くらいの660bpsモード(僕はコレ)を使い分けるようになっています。

実はLDACは電波干渉に弱くて、再生中にプチッて切れたりします。特に音質優先にしているとその影響を受けやすい。さらに動画と一緒に聴いたりすると音声が遅延してこりゃ使えない。というデメリットもあります。

で、音質ですが、音がくっきりはっきりします。MET1はただでさえ音が明瞭で、贅肉がなく、なのにメリハリがあって好きな音なのですが、BT11を介して聴くとさらに高域が拡がってより精細になり、全体的に引き締まり、まさに情報量が増えたように感じます。

というわけで、電波干渉の少ない家の中ではiPhone+BT11+MET1でワイヤレス高音質を楽しんでいます。もちろんじっくり聴くときはスピーカーや有線ヘッドフォンですが。ちなみにBT11はMacのUSB-C端子に接続しても使えます。

細かなことですが、今年に入ってからこのBT11のファームウェア更新が遅れたりしていました。やっと先日正式にアップデートされて、本来の機能が使えるようになり、動作も以前より安定しました。接続アプリやペアリングがうまくいかなかったりして手こずりましたが、今はなんとかなっています。

2025-04-04

Belonging / Branford Marsalis Quartet

 

Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)こそ僕が40年間聴いてきたアメリカのサックス奏者。ジョーイ・カルデラッツォP、エリック・レヴィスB、ジャスティン・フォークナーDsとのカルテット編成も歴史が長くなりました。2019年以来の2025年本作は、キース・ジャレットの作品にまるまる取り組んでいます。レーベルはECMではなく、ブルーノートから。

よく聴いたのは88年作「Random Abstract」やバラード集04年作「Eternal」です。スティングのビデオでの歯に衣着せぬ物言いややんちゃな少年の笑顔が印象的で、それは今でも変わっていないように思います。マルサリス兄弟では、ウイントンのほうがスマートで、ブランフォードが弟かと思っていましたが、長男でした。やんちゃな彼もバラードでは感情表現豊かに、ドラマチックに歌い上げて“お兄ちゃんスゴイ”ってなります。

そんな大人なバラードは、タイトル曲4.Belonging です。キースのリリシズムをカルテット全体から受け取ることができます。亡き友ケニー・カークランドから知ったというキースの演奏を、50年の時を経ていまこの曲に込めているかのようです。戻って3.‘Long As You Know You’re Living Yours のちょっとレイドバックした明るい曲調がまたブランフォードの得意技で、親しみのもてる演奏です。5.The Windup ではジャスティンのドラムスが光るちょっとラテンなリズムの曲でこのカルテットの力量を表現しています。もうカルテットは演らないのかなと思ったりしただけにうれしい新作でした。

2025-03-28

「この曲のドラムを聴け!」より(2)

 

前回の「この曲のドラムを聴け!」よりに続いて、今回はジャズ/フュージョン界を代表する名ドラマーをピックアップしました。

まずはハーヴィー・メイソン。これぞフュージョンなドラムサウンドです。ヘッドハンターズを経て様々なセッションに参加。日本ではカシオペアをプロデュースするなど、その影響は大きく、僕が当時聴いていたフュージョンドラムの音運びはまさに彼の影響下にあったのかもしれません。リー・リトナーの1977年初期作より。

続いてはデイヴ・ウェックル、といえばこのチック・コリア・エレクトリック・バンド。とても複雑で緻密なサウンドなのですが、大きなリズムを感じるドラマーです。YouTubeでいくつもの映像を観ることができますが、どうなっているのってくらいに難しいフレーズを叩きます。そしてロックの超絶ドラマーたちにも通じるものを感じます。

僕のイチオシは、デニス・チェンバース。ヒップホップ畑やPファンクのメンバー出身の彼はファンクドラマーと言えるかもしれません。音と音の間があまりにもカッコいい。その押し出しの強い音も大好きです。このジョン・スコフィールド・バンドのライヴは全般で“デニチェン”のドラムスを堪能できてオススメの一枚です。

2025-03-21

Fasten Up / Yellowjackets

 

Yellowjackets(イエロージャケッツ)はアメリカのジャズフュージョンバンド。1981年結成で2025年の本作は27作目のスタジオアルバムです。オリジナルメンバーのラッセル・フェランテKeyに加え、ボブ・ミンツァーSax、ウィリアム・ケネディDs、デーン・アルダーソンBが現在の布陣です。かつてはジャコ・パストリアスの息子フェリックス・パストリアスBやピーター・アースキンDs、ロベン・フォードGも参加していたことがありました。

大学時代(80年代)にフュージョンが流行していた頃、日本フュージョンは聴いたのですが海外モノはあまり聴かずに通り過ぎてしまいました。インストよりも歌モノのほうが語られることが多く、バックバンドとしての楽器演奏の上手さにスポットを当てていました。ここ数年はエレクトリック以降のジャズのかたちの一つとして、そして高音質楽曲が多いこともあって、海外フュージョンを遡って聴くようになりました。

スティーリー・ダンでもかけたかと思わせる1.Comin' Home Baby のグルーヴの気持ちいいこと。やっぱりリズム隊が気持ちいいんですね。2.Fasten Up ではこれぞフュージョンバンドというキレの良い演奏を聴かせてくれます。ラウル・ミドンVo&Gが参加する6.The Lion はブラジルテイストで気持ちよい曲に仕上がっています。ご自宅のオーディオやヘッドフォン、イヤフォンを快適かつ開放的に鳴らしてくれるハイレゾ音源をご堪能あれ。