2024-08-30

And Then Again / Bill Charlap Trio

 

Bill Charlap(ビル・チャーラップ)はアメリカのジャズピアニスト。2024年本作はピーター・ワシントンB、ケニー・ワシントンDrとのトリオで、ニューヨークのヴィレッジヴァンガードでのライヴをブルーノートからリリース。1997年から続くレギュラートリオとのことでベテランの味わい深い演奏を聴くことができます。

ビル・チャーラップの作品はいずれもオーディオ的に優れていて、特にピアノの音には惚れ惚れします。本作を一聴したとき「ん、ボリュームちょっと小さい?」と思いましたが、途中のドラムスの音はしっかり出ていて、ベースも豊かな低音が鳴っています。これ、小さな音はより繊細に、大きな音はより際立って、つまりダイナミクスが大きいんですね。だから音量上げ気味で聴くといいかも。臨場感もぐっと上がります。

いかにもケニー・バロンの作品だという1.And Then Again はこのトリオらしく途中からエネルギッシュな展開。ヴィレッジヴァンガードの空気が伝わってくるようです。3.'Round Midnight のアレンジも小粋で大人な雰囲気。ガーシュインの7.The Man I Love も軽快に楽しい演奏。おだやかな秋が恋しくなるアルバムです。

2024-08-27

リスニングポイントの話

 

スピーカーで音楽を聴くときに、どの位置で聴いていますか?僕は音をしっかり聴くときは、オーディオセオリーどおりに正三角形の頂点?で聴いています。つまり左右のスピーカーの距離と等距離の真ん中で、ソファから少し乗り出した状態。するとヴォーカルは眼の前の真ん中に定位して、左右や場合によっては前後にも音場が拡がるのを楽しんでいます。

ただ、ずっとその姿勢で聴いていると疲れちゃうので、結局ソファ背もたれに寄りかかる。そうすると正三角形ではなく、二等辺三角形の頂点になります。ちょっと音楽を俯瞰して全体でゆったり聴くことができる。で、おっこれ何、となると乗り出す。そんなことを繰り返しながら聴いています。

でもちょっと思うのは、正三角形で聴くのはなんとなくヘッドフォン的。いろんな音を聴き逃すまいと聴くようなところがある気がしています。スタジオのコンソールの前みたいな。スピーカーは耳だけでなく体でも聴いているのが心地いいので、まあ違うわけですが。たまに、いろんなところに座ってスピーカーから鳴っている音を聴くのもよかったりします。

2024-08-23

Trio II: 2 / Marty Holoubek

 

Marty Holoubek(マーティ・ホロベック)はオーストラリア出身の東京在住のベーシスト&作曲家。NHK『ムジカ・ピッコリーノ』にレギュラーとして出演したりして多方面で活躍しています。そんな彼が信頼するミュージシャン、井上銘G、石若駿Drと組んだトリオ“Trio II”の2024年2作目。

僕もジャズクラブをやっていた頃に多数出演いただいた若手ジャズギタリストNo.1の井上銘さん。同じく若手ドラマーとして突出して活躍されている石若駿さん。このトリオでの演奏は数多のセッションで鍛え上げられた演奏能力と“日本の”では済まない世界に通じるオリジナリティサウンドを持った、まさに“今”の音楽が表現されています。

それにしてもスゴい演奏の7曲37分です。2.Uncle Izu を聴けば彼らがジャズにとどまらず、あらゆる音楽を吸収して演奏していることがわかるでしょう。井上銘さんのギターサウンド、刺激的でカッコいい。個人的にThe Durutti Columnを思い出した4.Maritta のギターも好き。6.Beki のリズム...こんなの石若駿さんしか叩けないでしょう。ドラムス炸裂していてスゴいです。マーティさん起点だからこそ生まれた傑作に感謝。

2024-08-20

「ストレンジャー・シングス」を観た

 

Netflixでドラマ「ストレンジャー・シングス」をシーズン4までハイペースで観ました。外はとにかく暑いのでエアコンの効いた部屋で、ネット動画配信はうってつけです。時間があるからもう1話観ちゃおうか、となるのがドラマの罠です。

アメリカのSFホラーで2016年に配信開始されたシリーズですが、1980年代の雰囲気プンプンでなかなか楽しいです。ショッピングモールやビデオレンタルショップもそうですが、なんと言ってもBGMに80年代ヒット曲やハードロックがかかって、ひとりノリノリになりました。

ラストには登場人物がギターを持ってメタリカ「Master of Puppets」を弾きますからオォーッて。映画全体を覆う雰囲気もどこかメタルチック。というかメタル愛、リスペクトを感じる作品だと思います。

完結すると言われているシーズン5も製作を開始しているそうなので、来年観られるかな。


2024-08-16

Epic Cool / Kirk Whalum

 

Kirk Whalum(カーク・ウェイラム)はアメリカのサックス奏者。今年6月にも「村上春樹 produce 村上JAM 〜フュージョンナイト」で来日されて、単独公演もされていたようです。ホイットニー・ヒューストン「オールウェイズ・ラヴ・ユー」でのサックスソロは誰もが耳にしたことのある名演奏だと思います。

2024年新作のこれぞスムースジャズまたはフュージョン。音質いいです。お気に入りのオーディオ&スピーカーでスカッと鳴らしてください。曲調も真夏にぴったりリゾート気分です。カークのサックスも歌うように奏でられて気持ちのよいこと。あーもうなにも考えなくていいやってなりますきっと。

1.Bah-De-Yah! から期待を裏切らないフュージョンぶり。リズムのツボをおさえたノリノリな曲で始まります。5.Through the Storm はその名の通りクワイエット・ストームな1曲でクールダウン。サックスが歌っています。8.MF はマーカス・フィニーのドラムスとおそらく息子のカイル・ウェイラムのリズム隊ビシバシのテクニック派大好き曲です。ハイレゾ24/96&Dolby Atmos対応音源です。

2024-08-13

夏だブルーラグーンだ

 

そろそろお盆だっていうのにこの暑さ。夕方たまーに風がちょっと涼しくなったかなと思う程度。毎年記録的暑さなんて言っているので来年はどうなることやら。こうなったら夏らしい音楽かけて脳内はサマーリゾートにしてやれって思います。体は冷房の部屋ですが...。

夏ミュージックって言っても人それぞれ。大学時代にゼミ仲間の車に乗るといつもザ・ビーチ・ボーイズがかかっていたのを思い出します。僕は1980年中学3年に聴いた高中正義「ブルー・ラグーン」が夏ミュージックの初めだったような。ウキウキラテン調で青い空青い海の開放的な気分満開です。

当時はジャズなんてものは知りませんし、ギター雑誌くらいしか情報源がなく、高中難しくて弾けない、カシオペア別格という扱い。いわゆるフュージョンというのは大人っぽいイメージの音楽でした。熱心に聴くのはハードロック、休憩に流すのはフュージョンという学生時代だったかな。

夏になるとひとりフュージョン大会します。カシオペア、スクエアから始め洋楽クロスオーバー系へ。ちょっと横道してR&Bクワイエット・ストーム系に行ったり。アイスコーヒーでも、ちょっとお酒でも用意してリゾート気分、夏満喫です。

2024-08-09

Phoenix Reimagined / Lakecia Benjamin

 

先日とあるジャズ好きの方から「ライヴ盤出ていますよ」と言われて知ったLakecia Benjamin(レイクシアorラケシア・ベンジャミン、Sax)の2024年リリース作。前作の収録曲を中心に、ブルックリンのザ・バンカーというスタジオでのライヴを録音したものです。

スゴい熱量の演奏です。圧倒的な前作をさらにパワーアップさせたようなこれぞジャズライヴ!な音を聴かせてくれます。影響を受けたというジョン・コルトレーンの魂を受け継いで、そのまま今のサウンドに昇華させてみせた貫禄の演奏。ジャズライヴの今を聴くのであれば、このアルバムとUlysses Owens Jr.の「A New Beat」は絶賛オススメです。

目玉はタイトル曲の3.Phoenix Reimagined でしょう。メンバーにランディー・ブレッカーTp、ジェフ・テイン・ワッツDr、ジョン・スコフィールドGが参加しています。勢いもあって太い。圧倒されます。コルトレーンな2.Trane もこれぞ彼女のサックスが堪能できます。もうひとつコルトレーンといえばの10.My Favorite Things を聴けば、彼女が奏法を真似ているのではなく、巨匠の意志を継いでいることが感じられると思います。

2024-08-06

瞑想のための音楽

 

ロバート・グラスパーが「Let Go」という瞑想的なアルバムを2024年今年リリース(Apple Musicとのパートナーシップ制作)していました。いつものグラスパーではないですが、気持ちが落ち着く作品です。音楽には精神安定効果があると思っていますし、TPOによって効き目のある音楽は違うと思います。

数年前から、デスクワークするときにチルアウトやLo-Fi、“集中したいとき”といったプレイリストをかけっぱなしにして作業していました。深い呼吸とからだの点検の瞑想もたまに。瞑想という建前の昼寝だったりしますが...。瞑想のための音楽も好きなほうです。

一方で、本当に集中したいときは音楽を流さず、ヘッドフォンやイヤフォンも外して生活音だけにします。受験勉強中の娘も、集中したいときは耳に何か入っている状態が嫌だと。あと、風邪などで寝込んでいるときもダメですね。音楽は元気じゃないと聴けない。

プレイリストでなく、“こういうときはこの曲”というのをいくつか持っていると、自分の気持ちをうまくコントロールできるのかもしれません。客観的になることができるという技かな。僕自身そういう曲は少なく、まだまだだなって思います。

2024-08-02

MoonDial / Pat Metheny

 

数ヶ月前から配信で小出しになっていたPat Metheny(パット・メセニー)の2024年新作が全曲揃いました。昨年の「Dream Box」同様ギター・ソロ作品。得意のバリトン・ギター(普通のギターよりもネックが長く、より低音が出る。主にカントリーやメタルで使用)に特注のナイロン弦を張ってみたら、興奮するほど素晴らしい音が出たという1枚でしょう。なるほど今までの弦とは違うタッチと音でした。

聴けばびっくりするほどの低音です。オーバーダビング無しとのことで、ベースをかぶせたわけではありません。いままでのアルバムにもバリトン・ギターは使用していたので予想はしていたのですが、上回る音域です。チューニングに工夫があるのかもしれません。いつものようにパット・メセニーの世界が美しいメロディとともに繰り広げられています。

秀逸なカヴァー作品が並んでいますが、ここではオリジナル作品からオススメを。1.MoonDial  の低音に驚いていただいて。こうして和音やベース音を弾きながらメロディーを紡いでいくジャズギターの弾き方ですが、とてもじゃぁないが難しくてできません。メセニーのそれはコードチェンジも頻繁で大変。こんなにも優しくて美しい曲なので困難さを感じさせないところがメセニーです。6.Falcon Love のようなメロディーもメセニーらしい。うるうるします。The Unity Sessionsでの9.This Belongs to You をソロで聴けるのはうれしい。ちなみに空間オーディオ(Dolby Atmos)でも堪能できますのでお試しあれ。