2023-12-01

Rising Son / 黒田卓也

 

2014年の本作で、日本人として初めてブルーノート・レコードと契約したジャズトランペッターの黒田卓也。ホセ・ジェイムズの「Blackmagic」に参加したことがきっかけで、ホセのプロデュースによって本作は制作されました。当時のブルーノートは、次々に新しい才能による新譜を発表していて勢いがありました。黒田さんは以降も日本のジャズのみならず音楽界で活躍しているのを目に耳にしています。

本作をダウンロードして聴いたとき「うわ!スゴいカッコいいサウンド」と思わず声をあげて、友人のジャズ好きに話をしたら彼も聴いていて盛り上がったのを覚えています。日本人ミュージシャンでこんなにカッコいいサウンドを作れる人がいるんだと興奮したものです。グラスパー全盛の時代であったものの、呼応するように日本人スピリットを感じるような乾いた音、鋭いリズムで強いオリジナリティのある作品です。

1.Rising Son はSunではなく、Sonですからホセの愛情なのかもしれません。レガートなベースラインと残響の少ない音がマッチしてクールな曲から始まります。アフロなリズムの2.Afro Blues も抑制の効いたトランペットがとにかくカッコいい。ロイ・エアーズのカヴァー5.Everybody Loves the Sunshine ではホセのヴォーカルが入ってソウルでグルーヴィな曲。8.Call のミュートトランペットとローズピアノが漂う感じも都会の風景にマッチして好きな曲です。

2023-11-30

「青盤」2023エディション

 

数年前に近所のオーディオショップで、ビートルズのレコードを爆音で聴くイベントがありました。その時のモノラル録音レコードの音が驚くべきスゴい音で忘れられません。ガツンとくる音なだけでなく、こんな音が入っていたのかとその情報量の多いこと。

僕にとってのビートルズはいわゆる「青盤」です。つまりファンというほどではない。親にカセットテープで買ってもらってそれをずっと聴いていました。曲順を変更できるわけもないので、曲が終わると次の曲のイントロを口ずさむといった具合です。CDで買い直して聴きましたが、そうだったな、くらいの感想でそれほどかけることもなく。しかしモノラル録音を聴いてから、ああせめてアンプにモノラルスイッチ(昔はついていた)があったなら、と思った次第です。

今月「青盤」「赤盤」の2023エディションが発表されました。ステレオミックスをやり直しています。CDのステレオがなんとも不自然な印象だったのが大幅に改善。改めて曲の素晴らしさに浸ることができるサウンドになっています。Apple Musicではドルビーアトモス版も味わうことができます。最後の新曲「Now and Then」も聴けます。でもあれっ、曲が多い、僕が知っているのは28曲なのに37曲も入っている、あれっ後半の曲順が、なんで?、となりました。せめて昔の曲順のうしろに追加してほしかったなぁ。

2023-11-29

Vol.1 / Chris Botti

 

Chris Botti(クリス・ボッティ)はアメリカのトランペット奏者。ブルーノート・レコードからの2023年ニューアルバムです。YouTubeでスティングやスティーヴン・タイラーとの共演を観てそのイケメンぶりは知っており、すでに60歳を超えていますがジャケットを見ると今なお健在(&貫禄)のようです。プロデュースはデヴィッド・フォスター。ドラムスにヴィニー・カリウタの名前もあります。

さらにバラード集となっているので人気作品になることは間違いないでしょう。今回は「自分とバンドのプレイ、そして自分が大好きな曲を演奏することにフォーカスした」とのことで、じっくりトランペットを聴かせています。たとえばマイルス・デイヴィスのトランペットバラードとは音色もアクセントも違うもんだなぁと思います。マイルスは孤独を深く感じますが、クリスのは優しさと包容感のような。というわけで夜に静かに楽しむアルバムとしてジャズファン以外にもオススメできると思います。

ここは敢えてマイルスが演じた曲をリコメンドしましょう。5.Blue In Green はマイルス好きなら聴かずとも思い出すことができるでしょう。音使いの違いがわかると思います。ピアノがちゃんとビル・エヴァンスしてくれて嬉しい。続く6.Someday My Prince Will Come はとても優しく響きます。8.My Funny Valentine はトランペットの音の美しさに呼応するかのようなヴァイオリンの艷やかな音色が印象的です。

2023-11-28

Liquid Spirit / Gregory Porter

 

Gregory Porter(グレゴリー・ポーター)はアメリカのシンガーソングライター。3rdアルバムである本作と次作「Take Me to the Alley」はベストジャズボーカルアルバム部門のグラミー賞を受賞しています。2013年は僕にとって豊作の年であり、その中で最も聴いたのはどれかと言えばこの作品になります。その深くて豊かなバリトンヴォイスに魅了され、YouTubeでその風貌をみて関心を持ち、1st&2ndもすぐに購入した次第です。

声質や歌い方も僕好みであったのですが、アルバム全般を通してとにかく楽曲がいい。そして音質が良い。何度も何度も聴きましたがまったく飽きることがなく、1曲1曲を味わって聴いていました。その音質の良さからスピーカーやヘッドフォンを試すときにも必ずかけていました。結局聴き入ってしまって、音質を評価できないのが難点でしたが。その後も何枚かリリースしていますが、気に入っているのはこの3rdアルバムです。

これまた全曲オススメのアルバムですが、聴かせるバラードをピックアップします。4.Water Under Bridges 、7.Wolfcry 、13.When Love Was King 、14.I Fall In Love Too Easily を聴いてみてください。バリトンヴォイスっていいなと思います。あまりに家でかけまくっていたこともありますが、幼い娘でさえ口ずさむほど印象的なメロディです。敢えて印象的な曲をひとつだけ、8.Free クセになるリズムとパンチのあるヴォーカル曲です。

2023-11-27

人口減少時代ですなぁ

 

総務省によれば12年連続で人口は減少しており総人口でも昨年55万人減っています。娘が就職するであろう5、6年後は会社はもちろん仕事をとりまく環境もさらに変化しているでしょう。人口減少によって、労働力人口不足は深刻です。ドル高ユーロ高は常態となり、賃金アップできる企業は輸出あるいは国際企業のみで、原材料費が上がり物価高騰を招き消費生活は苦しいままです。安全志向の若者は賃金アップ企業に流れ、中小企業は求人しても応募が少なく雇うのが難しい状況は変わらないと思います。

現時点でも、スーパーのセルフレジ化は急激に進みました。キャッシュレスも同様です。商品点数が多いので有人レジに進もうとしたら外国人スタッフに日本語で丁重に断られました。人手不足なわけです。日用品や食料品は単価を上げられないので省力化するのは当たり前。単価が高くて価格競争している家電やガジェットはネットで購入するものです。人間が対応してくれるのは利益率の高いブランド品など高額な富裕層向け商品だけ、となっています。

BtoCだけでなくBtoBも例外ではありません。WEBで申し込み、お試し利用、契約はクラウドサイン、質問にはAIが対応、です。営業スタッフが説明しに参りますなんてのは、よほどプレミアムな案件のみとなるわけです。セールスなんて言葉がありましたが、必要なものはこちらから言いますから、不要なものは提案しないで、となりました。営業スタッフも説き伏せて買ってもらうなんて行為を嫌がりますし、もっと効率的に仕事を進めたいと思うでしょう。

すでに会社のあらゆる部門で働き方は変わっています。会社のあり方、社長のあり方、雇用のあり方ももっと変わっていくでしょう。そのための準備を考えたいと思います。

2023-11-24

Live in Nyc / Gretchen Parlato

 

Gretchen Parlato(グレッチェン・パーラト)はアメリカのジャズヴォーカリスト。リオーネル・ルエケとの2023年作品「Lean In」でも取り上げました。彼女を知るきっかけとなったのが2013年のこのライヴCDです。DVDとセットになっていて映像でもニューヨークの小さめのハコでの演奏を楽しむことができます。ジャズクラブを経営していたときにこんな雰囲気を醸すことができたら素敵だなと思っていました。

参加メンバーとしてドラムスに旦那さんのマーク・ジュリアナケンドリック・スコットの叩く姿を観られるのがうれしい。彼らが創造的で繊細なビートを刻むのかがよくわかります。音質もとても生々しくて近距離で叩いているかのよう。そこにグレッチェン独特の歌が繰り広げられて幻想的な世界を描いていきます。2013年当時のニューヨークを象徴するサウンドがそこにあると感じることができます。

ハービー・ハンコックの1.Butterfly でのグレッチェンのスキャットと手拍子ですぐに世界に惹き込まれ、そのあとずっと続きます。ベースやドラムスが入ってきてこの音が当時グラスパーを始め新しいジャズの音なんだと知ります。2.All That I Can Say ではケンドリックの重くて引っ掛かるリズムが印象的。シンプリー・レッドの5.Holding Back the Years では新しいジャズによるカヴァーになっていてイイ雰囲気です。そして幻想的でゆったりとしたオリジナル9.Better Than で本ステージ終演となります。

2023-11-22

meets 新日本フィルハーモニー交響楽団 / 渡辺貞夫

 

ナベサダさんこと渡辺貞夫が2023年4月29日に、35年ぶりという新日本フィルハーモニー交響楽団との共演をライヴ録音したものです。御年90歳で父より年上にもかかわらずこの活躍ぶりは本当にスゴいと思います。2019年の「Sadao 2019 - Live at Blue Note Tokyo」が小気味良い演奏で、スティーヴ・ガッドのドラムスもかっこよく気に入っていました。

本作の会場は“すみだトリフォニーホール”です。2015年にKORG社のDSD録音イベントがあり、ハンディレコーダーでクラシックの交響楽団を生録するという幸運に恵まれました。本作の音を聴いていて、その奥行きがあって心地よい響きが生録した音を思い出させてくれました。拡がりのあるオーケストラの真ん中でサックスを浮かび上がらせる姿が想像できる音になっています。

1.ナイス・ショット を聴いたのは中学生の頃、資生堂ブラバスのCMだったかなと思います。今聴くとサウンドはシティポップしていて古く感じません。3.つま恋 では哀愁のサックスがオーケストラとマッチしていてドラマチックです。全般にブラジル音楽に精通されたナベサダさんの音世界が繰り広げられます。面白いと思った曲は8.サン・ダンス でちょっと日本らしいメロディが印象的です。名曲9.マイ・ディア・ライフ を聴きながら、ナベサダさんが以降の日本のフュージョンに大きな影響を与えていることをしみじみ思い知ったのでした。

2023-11-21

Conviction / Kendrick Scott Oracle

 

Kendrick Scott(ケンドリック・スコット)はアメリカのジャズドラマーであり作曲家。デビュー時は同世代のロバート・グラスパーらと共演するなど新時代ジャズ界隈のドラマーで、2013年メジャーデビューとなる本作はKendrick Scott Oracle名義でのリーダー3作目。パット・メセニーGやテレンス・ブランチャードTpなどとの共演経験もあり、山中千尋さんのアルバムにも参加していたりします。

デリック・ホッジのアルバム同様、2013年に開業したパン屋の往復に最も聴いた作品のひとつで、聴いていると当時が蘇ります。グラスパーを始め新しいジャズの潮流に魅力を感じていたことと凄いジャズドラマーが次々に現れていたことが重なって、新譜を聴くのが楽しかった時期でした。新譜とは言ってもCDではなくiTunesでのダウンロードでしたが。

1.Pendulum の語りのあとから勢いのあるジャズドラムが展開され、後半になると壮絶になります。アラン・ハンプトンの印象的なヴォーカルで始まる2.Too Much はアルバムの中でもイチオシのポップな曲。マイク・モレノのギターが印象的です。タイトル曲7.Conviction でもケンドリックの超絶ドラムスを聴くことができます。10.Be Water で独白しているのは敬愛するブルース・リーだそう。

2023-11-20

社長の「進退」

 

社長自身の進退をどうするか。社長とはまさに人生を「選択」してきた人ですから、人からどうこう言われて決める人ではありません。その社長の勝手にするというのが結論です。しかし不死身ではないのでいずれ誰かに引き継ぐか、会社を売却や廃業するなど次をどうするか「選択」する必要があります。

有名社長が次期社長を指名して、結局また自分が返り咲くといったニュースを見かけますが、私個人の意見としては、なんだかしっくりこないという感想です。当人いろいろ考えての判断でしょうから他人にはわからないことだと思いますが、幻滅してしまいます。しがみつきとか保身とかそんな印象さえあります。有名社長なら意地でも会社にはタッチしない、報酬ももらわない、そんな気概を見せてほしいと思います。

事業を起こして成し遂げた、それを後進に譲ったのだから「自分は次に行く」と宣言してほしいのです。また新たな事業を立ち上げてチャレンジしていく姿を見せてほしい。また成功するかどうかなんてわからない。すでに財を成したのだから、そこから出資してゼロから始めるということです。有名社長でなくてもそうするべきだと私は思っています。

2023-11-17

Live Today / Derrick Hodge

 

Derrick Hodge(デリック・ホッジ)は、アメリカのミュージシャンでベーシスト。活動家でもあります。ロバート・グラスパー・エクスペリメントの「Black Radio」でもベースを弾いています。2013年の本作はブルーノートから発売された初リーダー作。すでにネオソウルを始めとする名だたるミュージシャンとの経験もあり、作品は豊かなバックグラウンドを想像させるものになっています。

2013年といえば個人的にはパン屋を始めた年でもあり、往復2時間の毎日でヘッドフォンでありながら様々な音楽をどっぷり聴くことができました。このアルバムはそんな中よく聴いた作品で、聴くと当時の風景や匂いが思い起こされるほどになっています。デリックの太いベース音が少しの高揚感と癒やしをもたらして、多様な楽曲とともによい時間を過ごすことができました。

ベースのハーモニックスで始まる1.The Real からいかにもデリック唯一無二の音になっています。3.Message of Hope も印象的なメロディーをベースで奏でて、一筋縄でいかないリズムとともに新しいジャズを提示しています。4.Boro March でいきなり超絶ユニゾンから太いベースラインに移るところがカッコいい。このアルバムでも好きな曲です。コモンが参加した5.Live Today はもはやヒップホップの名曲といえるでしょう。時代を超えて色褪せない作品になっています。

2023-11-16

完全再現ライヴと即興演奏ライヴ

 

先日観に行ったシネマ・コンサートは満員の盛況ぶりでした。いわゆる「完全再現」コンサートというものです。YouTubeなどでは大物アーティストやアイドルグループのライヴを垣間見ますが、ヴォーカルこそ生で歌っているものの、バックの演奏は生演奏ではなくマシン再生したものが多いようです。求められている音は、ストリーミングやCDの「完全再現」なのです。音源にないギターソロを延々と繰り広げるなんてしちゃいけないんです。

ファンは「いつも聴いていたものと違う」ことを嫌うようで、ミュージシャン側もファンの希望に沿ったものを提供しているのだと思います。セットリストもSNSで事前に予習してきていますから。となるとライヴの魅力は、迫力のある音響に加え、舞台演出やダンスパフォーマンス、MCにあるのでしょう。大勢のファンとともに盛り上がることもその醍醐味です。

今年10月11日に山下達郎さんのライヴを観に行きました。御年70歳ではありますが、ハリのある強いヴォイスは3時間通して衰えを知らず、僕としては人生をともにした楽曲の数々を原曲キーそのままで再現してくれたことに感無量でした。バックには腕利きのミュージシャンが顔を揃え、ソロを含めて「CDにはない即興演奏」を聴かせてくれたことが何より楽しく、これだからライヴはいいんだと感じさせてくれました。

山下達郎さんのようなライヴは数少ないと感じています。ジャズ生演奏に至っては、原曲といかに違うアレンジや即興によるソロプレイで曲を聴かせるかが勝負どころなので、「完全再現」には程遠い。演奏する季節やその日の天気、来場したお客様の様子、メンバー同士の呼吸、演奏家本人の調子など毎回違う演奏を提供するシェフの「おまかせ料理」なわけです。

音楽の楽しみ方は人それぞれですが、ぜひとも「おまかせ料理」の楽しみも味わってもらいたいと思いますし、そうした演奏を提供するミュージシャンが今後も活躍できることを祈っています。

2023-11-15

Bridges / Kevin Hays, Ben Street, Billy Hart

 

メンバーを紹介しますと、Kevin Hays(ケヴィン・ヘイズ)は米国ジャズピアニスト55歳。ブルーノートから3枚のアルバムを出していて、ソニー・ロリンズ、ベニー・ゴルソン、ジョンスコフィールドなど著名ミュージシャンとの共演歴を持つ。Ben Street(ベン・ストリート)は米国ジャズベーシスト。彼もジョン・スコフィールド、カート・ローゼンウィンケルなどとの共演歴があります。Billy Hart(ビリー・ハート)は米国ジャズドラマー82歳。ジミー・スミス、ウェス・モンゴメリー、ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィスとの共演歴というレジェンド。簡単に言えば3人共ジャズ界の超ベテランということになります。

お気に入り&定番のSMOKE Sessions Recordsからのスタジオ録音リリースです。ハイレゾで期待どおりの高音質です。落ち着いた演奏で安心して聴くことができます。もしニューヨークに行くことがあったなら、一晩はこうしたベテランの熟練の演奏を小さめのジャズクラブで聴いてみたいものです。

ウェイン・ショーターの2.Capricorn をピアノソロで奏でながら始まり、シンバルがゆっくり入ってくる。やがて3人のコミュニケーションとなる。ビートルズの4.With a Little Help from My Friends なんてまさにベテランによるアレンジ。気持ちよく聴けます。5.Row Row Row のワルツでの展開にケヴィンならではのオリジナリティを感じます。どの曲もほどよい尺で秋の夜長に心地よく聴けるアルバムです。

2023-11-14

Black Radio / Robert Glasper Experiment

 

2012年はエスペランサの作品と、このロバート・グラスパーの作品が発表された象徴的な年だと思います。奇しくもどちらのタイトルにも「Radio」の文字が。25年続いたCD時代が終わり楽曲をダウンロード購入する時代に。その後10年も経たずにサブスク・ストリーミングの時代がやってきますが。Robert Glasper Experiment名義で発表された本作もジャズという枠を軽々と超えて新時代の音楽を僕たちに見せてくれた傑作であると思います。

この作品が僕の深い共感を生んだのは、いままで聴いてきたジャズ、ソウルR&B、ファンク、レゲエ、ダブ、フュージョン、ロックといったあらゆるジャンルの要素を含んでいて、先人たちへのリスペクトも感じることができること。それを難しい顔して表現するのではなく、軽々と昇華して新しいサウンドを作りあげていることに「だから音楽って面白い」と思わせてくれたことでした。ジミ・ヘンドリックスがExperience名義で冒険的な音楽を作り上げたのと同じような雰囲気を感じます。

この作品も全て必聴の濃い作品です。敢えて3曲のオススメを選ぶとすれば、あのエリカ・バドゥを迎えた2.Afro Blue 、5.Gonna Be Alright (F.T.B.) 、ニルヴァーナの12.Smells Like Teen Spirit 。ドラムスにクリス・デイヴ、ベースにデリック・ホッジを迎えた最強布陣でのスゴい演奏と強靭な楽曲。10年以上経った今でも、新しい音楽はこの作品の影響下にあるのではないかと思うくらい必聴アルバムです。

2023-11-13

会社も「退場」するもの

 

組織を構成する「社員」も新陳代謝していくのが自然であると書きましたが、経済社会を構成する「会社」も同じく新陳代謝していくものだと思います。冷たい言い方になりますが、利益を出せない(税金を払えない)会社は市場から淘汰されていくようになっているということです。やはり税金を払って地域や社会に貢献してこそ会社の存在意義があると思っています。もちろん税金を払う以外にも、様々な貢献があると思いますが。

社長にとって「倒産」は仕事を失うだけでなく、多くの負債を抱えるという最も選びたくない選択肢です。しかし現実は月に何社も市場から退場を余儀なくされています。利益を出していれば「売却」という選択肢もあったと思うので、やはり利益を出せなかったということです。マイナスイメージしかないですが、こうして新陳代謝という作用があることは必要だと思います。

やっかいなのは、経営がうまくいっていないのに会社に区切りをつけられない社長自身です。多くの場合、金融機関などから借金を繰り返してなんとかキャッシュフローをポジティブにしているので、金融機関もその会社が潰れてしまっては困る(返済されない)し、社長自身も個人保証しているので、万が一のことがあったら多額の借金のみが残るという最悪の事態になるわけです。社員は転職すれば済む話しですが、社長はそうはいきません。だから倒産できないのです。

こうなってしまっては時既に遅しです。早め早めに経営判断していくためにもよき相談相手が社長には必要です。できれば取締役がその役目を務められればいいのですが、イエスマン体質にしていれば機能しません。建設的かつ時には厳しい意見を言ってくれる人が身近にいると助かります。

2023-11-10

Radio Music Society / Esperanza Spalding

 

Esperanza Spalding(エスペランサ・スポルディング)はアメリカのヴォーカリスト兼ベーシストとしてマルチプレイヤーでもあるそう。本作が出た2012年はCDを買わずにiTunesダウンロード音源のみで楽しむようになっていた時期で、当時このアルバムを繰り返し聴いていたのを覚えています。本作を聴いたとき「とんでもない才能がいるもんだ」と驚きました。彼女の歌はもちろん楽曲もすごくて、これぞいまのジャズだなと感心したものです。

彼女が表現したい音楽はとてつもなく広くて、深くて、自由。それが自在なヴォーカルにもベースラインにも表れているし、多彩な楽曲のカラーにも反映されています。ジャンルなんてとっくに超越していて、それを最高のハーモニーとリズムで聴かせてくれる傑作だと思います。ジャズとはそもそもそういうものなんじゃないのと軽々と提示してくれました。

全曲みっちり聴いて彼女の才能を感じてほしい。でも敢えて3曲オススメを挙げるとすれば、5.Black Gold 、ウェイン・ショーターの9.Endangered Species 、11.City Of Roses あたりかな。どの楽曲もその展開に驚きますし、追従する歌唱に思わず唸ります。それでいて耳に馴染むこの浸透力。僕の中では、スティーヴィー・ワンダーやパット・メセニーに比肩する才能だと思っています。

2023-11-09

「トップ25:ドバイ」を聴く

 

高校生の娘が海外研修でUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビやドバイに行きました。一週間留守番の親としても少しでもUAE気分を味わいたいと思い、Apple Musicのプレイリストでランキングにある「トップ25:ドバイ」や「トップ100:アラブ首長国連邦」を聴いていました。ちなみに都市別トップ25にはOsaka、Nagoya、Sapporo、Fukuoka、Kyoto、Sendai、Nahaもあります。

旅行のお供ミュージックとして、そこで流行っている音楽をチェックするのも面白いかなと思います。そこに住んでいる人がどんな音楽を好んで聴いているのかは興味があります。音楽は生活とともにあるので、音楽を聴くことで地元のお店や家庭、車の雰囲気に思いを馳せることができます。UAEのチャートはUSAのものが多い印象ですが、中にアラブらしい音楽が含まれていてそれが楽しい。もっと曲を調べれば、いま現在の国政状況も反映されているかもしれません。

サブスクではこんな楽しみ方も提供してくれていて感謝なのですが、サブスクがあることでみんな同じような曲を聴くようになってしまうのではとちょっと考えさせられます。レコードやCDしか無かった時代はもっと地元のアーティストがランキングを占めていたのではないか。できれば各国各都市のたとえば80年代のチャートも聴いてみたいと思ったりします。どこかにあるかな。

2023-11-08

säje / säje

 

säje(セージュ)はアメリカのコーラスグループ。グループ名はSara、Amanda、Johnaye、Erinの頭文字で確かな実力をもった4人。2021年第63回グラミー賞では1.Desert Song が “Best Arrangement, instrument, and Vocals”にノミネートされました。2023年デビューとなる本作では、バックにドーン・クレメント(p)、ベン・ウィリアムズ(b)、クリスチャン・ユーマン(ds)といったジャズメンバーが参加しています。

ジャズでコーラスといえばマンハッタン・トランスファーを思い出しますが、女性4人のコーラスは珍しいと思います。それぞれの声が美しく、緻密に複雑に調和しているコーラスはうっとりするほど。コーラスだけでなく、リードヴォーカルとしての実力もそれぞれしっかり聴くことができます。

美しい曲1.Desert Song やジェイコブ・コリアー参加の4.In The Wee Small Hours of the Morning を聴くと癒し系かと思いますが、憂いのある3.Never You Mind (アンブローズ・アキンムシーレTp.参加)やアップテンポの7.I Can't Help It (マイケル・ジャクソン。スティーヴィー・ワンダー作)あたりはジャズ濃いめでカッコいいです。ラストの10.Solid Ground/Blackbird のソウルフルなメドレーも静かに聴かせる曲でオススメです。


2023-11-07

liminal / 砂原良徳

 

砂原良徳は元電気グルーヴのメンバーでテクノミュージシャン。1998年「TAKE OFF AND LANDING」や1999年「LOVEBEAT」もオススメですが、この2011年作もとにかくまず音がスゴい。ヘッドフォンで聴いたら耳の中を縦横無尽に音が飛び交います。スピーカーで大きな音で聴くとさらに驚くような音が入っていて、ちょっと圧倒されてしまいます。僕は1音1音にこだわるアーティストが大好きでして砂原良徳はまさにその代表格だと言えます。

ミュージシャンは皆それぞれに音にこだわっていると思いますが、YMO世代としてはテクノと呼ばれるこうしたミュージシャンの活躍が嬉しい。テイ・トウワコーネリアス中田ヤスタカ、もちろん坂本龍一も。テクノとは言われていないかもですが海外ではマッシヴ・アタックエイフェックス・ツインあたりもすぐに思い出されるところです。彼らの作品での1音1音にかける時間や労力、選択力は僕には想像できないほどなんだと思っています。

たとえば1.The First Step でのライターのような音に続く26秒くらいからの音の拡がり、ビートの超低音、ノイズのような効果音など音数が少ないにもかかわらず凄い情報量です。3.Natural のウッドベースにノイズを乗せたような音のセンス。ここに至るまでいったいどれほどの音のなかからこれをチョイスしたのかと。YMOを進化させたような曲が続いていますが6.Beat It あたりのリズムセンスを聴くと、ああやっぱりスゴいなと。たった39分のアルバムですが長編を聴いたような感覚です。

2023-11-06

組織も新陳代謝していく

 

社長にとって最も聞きたくないスタッフの言葉は「会社を辞めたいんです」でしょう。志をともにして奮闘してきたスタッフであればあるほど、社長は凹みます。業績が芳しくないときには仕方がないと諦めるしかないのですが、これから成長しそうなときにこれを言われると「どうして」と相手も自分も責めてしまいそうになるものです。

しかしながら人が「辞めない」会社はありません。人間の細胞の新陳代謝と一緒で、自然現象と捉えるしかないでしょう。辞めていく人にとっては新たな職場が待っています。辞められた会社はまた新たな人材を獲得して奮闘していくことになります。昔と違って、人材は流動していく前提で社員を雇用し、一度辞めた社員がまた戻ってくることもある、くらいのつもりで経営していく時代になっていると思います。

雇用を維持しようとするのではなく、むしろ組織を時代にあわせて変化させ、個人にも変化と成長を促していく。時代に合わせた戦略のもと、ある分野では長期雇用が合うかもしれないですし、人が入れ替わることで新たな価値を生み出せる分野もあるでしょう。個人にとっても会社という器があわなくなれば、別の器を探して転職していくほうが無理がないと思います。「選択の時代」だからこそ、会社も個人も常に準備していく必要があります。

2023-11-02

都会の囀り(さえずり)

 

ベランダからいい声が聞こえてきたので録音しました。
レコーダーを近づけても、逃げることなく羽繕いしながら、
きれいな囀りを聞かせてくれました。

録音機材レコーダーはKORG MR-2 内蔵マイクにて収録
セッティングはMic Sens HIGH それ以外は全部Off
ファイル形式はWAV 24bit 192kHz ※SoundCloudにてダウンロード可

2023-11-01

SuperBlue: The Iridescent Spree / Kurt Elling & Charlie Hunter

 

Kurt Elling(カート・エリング)はアメリカのジャズヴォーカリスト。ブランフォード・マルサリスのアルバム「Upward Spiral」での歌唱が耳に残っていました。2023年本作は同い年のジャズギタリスト、チャーリー・ハンターとの共演で2021年にも「SuperBlue」という同名のアルバムを出していてグラミー賞を受賞しました。本作はその続編。

男性ジャズヴォーカルといえば、フランク・シナトラ、ビング・クロスビー、チェット・ベイカーといった名手を思い出しますが、女性ヴォーカルに比べて最近は目立った人が多くない印象です。僕はグレゴリー・ポーターあたりが好きで、カートも同じくお腹から声を出して声量がある感じで、バリトンヴォイスが好みなんです。

このアルバム、すごくカッコいいです。ジョニー・ミッチェルの1.Black Crow から勢いのあるジャズソウルです。カートの歌うメロディが複雑でクール。チャーリーのギターがファンキーな5.Bounce It もさすがの曲でジャンル超越してカッコいい。オーネット・コールマンのドラムンベースカヴァー、6.Only The Lonely Woman も聴きどころです。ジャズの枠を超えた音楽ファンに聴いてほしい快作だと思います。

2023-10-31

Emotion & Commotion / Jeff Beck

 

今年1月に他界したギタリストJeff Beck(ジェフ・ベック)の2010年作品。2000年代はちょっとエレクトロニックに寄り道していたジェフが、満を持してギターアルバムを出してきた!と久しぶりに気持ち高ぶりました。そりゃジャケットを見たら鷲がストラトキャスターを運んで翼を拡げているではないですか。大復活の予感とともにCDプレイヤーのボタンを押しました。

フィンガーピッキング、ボリューム奏法、アーミング、ハーモニクス、ストラトの音、目の前でジェフが弾いているかのようです。なんて美しい音なんだろう。ギターをここまで美しく弾けるのは彼しかいません。いまや天国で楽しそうに弾いているであろう神様です。もしかしたらジミヘンやボンゾやレイヴォーンあたりともセッションしているかもしれません。いやぁ涙なしには聴けません。

うっとりなギター曲のみピックアップしてみます。1.Corpus Christi Carol 、4.Over the Rainbow 、8.Nessun Dorma 、10.Elegy for Dunkirk 。ため息。鷲がストラトとともにジェフを持って行ってしまいました。悲しさはなく、思い出されるのはジェフのやんちゃで楽しそうなギターを弾く姿。こんなギターアルバムを残してくれたことに感謝しましょう。

2023-10-30

失敗したくない、けど仕事しなきゃ

 

覚悟するにしても、サポートするにしても、仕事して稼いでいくのに必要なのは「勇気」なんだと思います。その勇気が出ないとしたらそれは「失敗したらどうしよう」とか「あの人のせいで失敗したと言われたくない」「大変な思いをしたくない」とかとにかく心配なんだと思います。もしくは決定的な失敗や過ち、嫌な思いがあってすでに自己嫌悪に陥っているときもあります。

いわゆる「トラウマ」です。過去の失敗や嫌な思いが強く残っていて、一歩が踏み出せない。これは多かれ少なかれ誰にでもあることです。その過去の自分はまさに自分であるので、また繰り返すと思っているわけです。人生経験を重ねていくなかでそうなるので、若くても老いてもそういう状態はあります。しかしその自分も細胞は数年ですべて入れ替わります。昔の自分は今の自分ではないのかもしれません。

なんにでも効く薬は知りませんが、「仕事」に関しては、その仕事を「知る」ことが大切だと思います。その仕事はどういう目的で、何を実現しようとしていて、関わるステークホルダーはどんな登場人物で、成果を出すにはどんなポイントがあってなど、与えられた時間内にできる限り観察することです。感情を挟まず、情報を集めて、冷静に書き出していくわけです。そのなかで自分に試行錯誤できるところがあるんじゃないか、と思ったところが勇気の出しどころです。

結局、楽な仕事はないのです。楽じゃない仕事をやるから稼げるわけです。失敗しない保証もありません。結果的に成功するか失敗するかなんてわかりません。まずは相手を知って仕事にとりかかりましょう。

2023-10-27

Blackmagic / José James

 

José James(ホセ・ジェイムズ)はアメリカのシンガー。ソウルやヒップホップ、エレクトロニックを感じさせるサウンドですが、当時はジャズシンガーとして知りました。2010年の本作は2作目で、同年にインパルスからジャズどっぷりの「For All We Know」というジェフ・ニーヴのピアノとのデュエット作品を出しており、こちらも名盤です。耳に残る独特な歌唱のファンになり1stも本作以降の作品もダウンロード購入しました。

このあたりの年からiTunesで音源をダウンロードして聴くようになりました。だからCD棚に入っていないお気に入りアルバムがあるのです。そのままiPodと同期して持ち歩いて聴くスタイルが始まったのです。フィジカル(CDやDVD、レコードなど)のディストリビューターの仕事をしていたのに皮肉なもんです。CD時代からダウンロード時代に移ると同時に、ホセ・ジェイムズのような強力な新人が出てきたことも僕にとっては嬉しいことでした。

2.Touch を聴くと曲調はジャズファンクですが、サウンドもヴォーカルもジャズだなと思います。かと思えば5.Warrior のようなアプローチはホセらしいハーモニーを聴かせてくれて、グラスパー以降の新しい潮流を感じます。ヒップホップらしいイントロで始まるBlackmagic も彼独特の歌い方と浮遊感のあるサウンドが新しい何かを感じさせます。ホセ・ジェイムズはこのあとブルーノートに移籍してさらに躍進していくことになります。

2023-10-26

ソファから離れたMacを操作する

 

家のオーディオでは、古いMacbook(Air,11インチ)を音楽再生専用機として使っています。USBでDACと接続して主にApple Musicのストリーミングでハイレゾとか。ストリーミングにはなくてお気に入りのアルバムもあるのでCDリッピング音源やダウンロード音源もこのMacbookで再生しています。BluetoothはOFFにして必要のないアプリは立ち上げずに。場所もとらないし、クラウド同期しているのでライブラリの運用もiPhoneとの連携も良好です。

リビングオーディオですから、このMacbookはオーディオのそばに設置していて、聴くのはちょっと離れたソファで、となります。立ち上がっていちいちMacbookを操作しに行くのは面倒。つまりリモコンしたいわけです。選曲時にアーティスト名を入力したり、過去のアルバムを閲覧したり、そのまま遠隔から操作したい。

先日仕事用のMacbook(M1)のmacOSをSonomaに更新したら、アプリケーションのその他に「画面共有」というアイコンが追加されていました。さっそく接続すると、古いMacbookの画面が手元のMacbookにも。(画面共有の方法

手元のMacに、向こうのMacの画面が。手元で操作できます。

実は以前からちょっと面倒な方法で実現できていたのですが、Sonomaになって簡単に画面共有できるようになったのでした。こうしてソファから選曲や曲送り、プレイリスト作成だってできちゃいます。Bluetoothで飛ばしているわけではないので、ハイレゾをハイレゾで(USB→DAC)聴けますし、仕事のメールしながら、向こうのMacを操作したりして、と自己満足。

2023-10-25

Uncle John's Band / John Scofield, Vicente Archer & Bill Stewart

 

John Scofield(ジョン・スコフィールド)はアメリカのジャズギタリスト。Uncleってくらいで御年71歳。マイルス・デイヴィスの「Decoy」(1984年)で存在を知りました。このアルバムはバックにブランフォード・マルサリスSaxやダリル・ジョーンズB.といったスティングのバンドメンバーが参加していて、その研ぎ澄まされたサウンドたるやとてもカッコいいアルバムでした。

独特のギターサウンドとウネウネしてアウトしていく音使いが彼の特徴です。同世代で並び称されるパット・メセニーとの共演アルバム「I Can See Your House From Here」を聴くとふたりの個性の違いがよーくわかります。バラード「Message To My Friend」は中でも本当によく聴きましたが、ふたりの口調の違いに笑みがこぼれます。ジョンは以降も活動的でジャムバンド方面でファンキーな演奏も聴かせてくれてこちらも楽しいです。

2023年本作はヴィセンテ・アーチャーB.とビル・スチュワートDr.といった名うてのミュージシャンとのトリオ演奏で一聴は静かでシンプルな演奏だと思います。その分ジョンの多彩なタッチのギターサウンドや他楽器をじっくり高音質で楽しめます。1.Mr. Tambourine Man からしっかりアウトしていく彼独特のフレーズ満載です。3.TV Band でのジャムもなにやら楽しい。5.Budo あたりまでくるとこれは相当なジャズだなと感じます。のんびり聴くつもりが前のめりで聴いてしまいます。

2023-10-24

Wake Up! / John Legend & The Roots

 

The Roots(ザ・ルーツ)はアメリカのヒップホップグループ。ドラムスのクエストラヴを筆頭にギター、ベース、キーボードも生音のバンドにブラック・ソートのMCが乗っかるというのが特徴です。2010年の本作は、リードヴォーカルにJohn Legend(ジョン・レジェンド、アメリカのシンガー)を迎えて、R&Bとヒップホップの濃いところを抽出した名盤となっています。

ヒップホップの中でもこのザ・ルーツが大好きで1995年の「Do You Want More?!!!??!」から本作まで10作ほど買い続けて聴きました。理由はやはり生音バンドであるということ。僕がバンドをやっていたからだと思いますが、その場で演奏するグルーヴを強く感じます。特にクエストラヴのドラムスの音が好きです。有名なジョン・レジェンドのVo.も素晴らしいソウルでシャウトするとそりゃ盛り上がります。

そんな彼らの共演を冒頭1.Hard Times から飛ばしてきます。イントロからリズムに入るあたりは毎回鳥肌でこれぞブラックミュージック!と叫びたくなります。そしてこのアタックの強いギターのサウンド、痺れます。続く2.Compared to What のクエストラヴこそヒップホップドラマーとしての魅力を見せつけてくれます。4.Our Generation もこの共演ならではのかなり濃いサウンド。このあとも彼らの古き良きR&Bソウルへのリスペクトを感じる、ヒップホップファン以外でも楽しめる作品となっています。

2023-10-23

「サポートする人」を愛でる

 

やります」と言える人が稼ぐことができると話しましたが、それが言えない人だっています。「やります」と言う人だってたまには疲れて言えないときがある。失敗したらどうしよう、迷惑かけたくないと思うのも普通のことです。「やります」と言う人を遠くから見て「大変そう」と見て見ぬふりしてしまうのも仕方がない。誰だって安全で楽な位置にいたいものです。

そんな普通の人が稼ぐ方法もあります。ここはやはり勇気を出して「やります」と言っている人に声をかけることです。困っていることがないか聞いて、何か自分にできることがないか考えることだけでも立派なサポートです。自分はリーダーにはなれないけれど、ちょっとしたサポートならできる人はやがて稼ぐことができるでしょう。パンフレットをクリアファイルに入れる単純作業の輪に入るだけだっていいんです。

社長はそういう「サポートする人」をきちんと評価することです。口で褒めるだけでなく、評価制度に組み込むことが肝心です。どんな仕事も複数メンバーをアサインできるほど人手は潤沢ではないでしょう。個人個人が仕事を抱えていますから、つい「他人事」文化が育ってしまいます。「サポートする人」を愛でる文化を育てたいですね。

2023-10-20

out of noise / 坂本龍一

 

今年3月に亡くなってしまった坂本龍一。まだ信じられない思いです。YMO世代ですし音楽はもちろん彼らの言動や行動にも影響を受けてきました。特に坂本さんは社会的活動もメディアに出ていましたから目に触れることが多かった。NHKのスコラ音楽の学校や3.11震災直後の彼の行動からは音楽への深い愛情が感じられて共感していました。震災後にiTunesで彼のピアノソロをダウンロードして心を鎮めていたのを思い出します。

2009年の本作は、自分の中にある音楽を表現したものとして私的な作品であると感じます。曲調はミニマルでありながら一音一音とても丁寧に厳選されたサウンドとなっていて、この作風は亡くなるまで続いたと思います。僕がフィールドレコーディングをするようになったのも坂本さんがiPhoneにマイクを挿して街を歩いていた映像を見てからで、音を集める行為自体に興味を覚えたのでした。

震災後によく聴いた曲となりますが、1.hibari のようにミニマルで音が少しずつずれていくような感覚が面白い。5.tama の高周波な音はちゃんとした再生装置で聴くとよりリアルに感じます。6.nostalgia では和音を置いていくシンプルな曲なのにいろいろな風景が浮かんできます。北極圏まで行ってフィールドレコーディングしてきた音を入れた10.glacier を聴いていると長く続く“時”を静かに感じることができます。

2023-10-19

iPhoneとUSB-CでDAC接続してみた

 

スマホをiPhone8からiPhone15にしました。8でも問題なかったのですが、iOS最新をサポートしなくなったこととUSB-C端子になったことが15の導入理由です。で、外付けDACをつなげてみました。iPhone15(USB-C)→USB-C/USB-A変換プラグ→USBケーブル→DAC(KORG DS-DAC-10R)→ヘッドフォンという接続です。KORGのこのDACはバスパワー対応なので電源端子無しです。

あっけなく音が出ました。Apple Musicでハイレゾ音源を再生できるように設定して聴いてみました。サンプリング周波数がたとえばロスレス44.1kHzのときはインジケーターが緑色、ハイレゾ96kHzのときは紫色、写真のようにハイレゾ192kHzのときは白色と出力を判定して受けていることがわかりました。ちなみにドルビーアトモスを自動(オン)にしていると対応音源では音が出ません。オフすれば音は出ます。

ちなみにMacとDACを接続してもこのサンプリング周波数の色は「Audio MIDI設定」で設定した値の固定となり、音源のサンプリング周波数毎に色は変わりません。変わってほしいんですけど...。なぜiPhoneとMacで違うのか。

だからどうしたという些細な話でした。いまは小さなDACがたくさん出ているのでUSB-Cが挿さるようになったiPhoneとつなぎやすくなった(変換プラグとかケーブルは配慮要)と思います。

写真の音源は高音質有名盤のスティーリー・ダン「Aja」で2023年のクレジットがあります。おそらく最近出た「EQ処理のない新リマスター」と思われます。「24ビット/192kHz ALAC」です。所有しているCDたちと聴き比べましたが、すっきりした音でこちらのほうが楽器の輪郭がはっきりつかめて、楽曲に入り込めました。

2023-10-18

Dara Starr Tucker / Dara Tucker

 

Dara Tucker(ダラ・タッカー)はアメリカのシンガー・ソングライター。2009年の1stアルバムから2023年本作は5作目。ジャズギタリストのピーター・バーンスタインやチャーリー・ハンターなどと共演していたりしてベテランと言えます。幼少期のほとんどを家族と一緒に歌いながら国中を旅したという彼女は、フリーランスのドキュメンタリー映画製作者でもあるそうです。

彼女の声に惹かれたのは、ゴスペルをベースにした深い歌唱と高くも低くもない耳に心地よい歌声だからです。幼い頃から歌いこんでいるからこその父や母、スティーヴィー・ワンダーなどから音楽的影響を受けたというのも頷けます。このアルバムではバックのミュージシャンは控えめに、彼女の歌声を引き立たせて、気持ちのよいサウンドを聴かせてくれます。

僕が好きなグレゴリー・ポーターのオープニングアクトを務めたとありますが、アルバム全般から彼のアルバムに感じたものと同様の印象があります。心地よいリムショットを刻む1.Scars から軽いテンポの気持ちよい歌声が響きます。7.September Song でピアノをバックにフリーに歌う姿はジャズシンガーとしての力量を感じます。続く8.Standing On The Moon はちょっと難しい3拍子ですが、懐の深い歌いっぷりが聴けます。


2023-10-17

Where the Light Is: Live In Los Angeles / John Mayer

 

John Mayer(ジョン・メイヤー)はアメリカのギタリスト、シンガー・ソングライター。僕がちゃんと知ったのはエリック・クラプトン主催のクロスロード・ギター・フェスティバルの映像を観たときで、ストラトキャスター1本で大観衆を魅了していて感動しました。ブルースを基調にソウルフルでロックでポップな曲が魅力ですが、僕としてはスティーヴィー・レイ・ヴォーンに影響を受けていることも好きな理由のひとつです。

2008年の本作は2枚組ライヴです。Blu-rayも入手して何度も観ています。ギターを弾く者にとって、彼がストラトキャスターやアコギの音の魅力をすべて引き出して聴かせてくれていることに喜びを感じるはずです。1枚目はG、B、Drのトリオ編成で2枚目は他のGやKeyや管楽器が入ったバンド編成で22曲のボリュームですが、長さを感じるどころか、曲がいいのでずっと浸ってしまう作品です。

デビューアルバムから1.Neon でのアコギがいきなり最高。あまりにカッコいい。ストラトになってジミヘンの7.Wait Until Tomorrow の重めのカッティングがこれまたカッコいい。8.Who Did You Think I Was でのスティーヴィーぶりといい、ストラトの好きな音を出してくれている。同じくジミヘンのバラード13.Bold As Love でのプレイも見事。圧巻は2枚目の6.Gravity です。僕にとってのバラードNo.1ソングなんじゃないかと。何回聴いたことか。やっぱりこのライヴは傑作です。

2023-10-16

理想の職場とは

 

理想の職場ってどんなところなんでしょう。きれいなオフィスで、仕事に余裕があって、社員が和気あいあいで、給料もそこそこ良くて、残業はなくて、長期休暇もとりやすくて。今どきであればオンラインでミーティングしている社員や取引先がいて、オンオフともに充実感がある、って感じでしょうか。

僕が経験してきた中で「良い職場」として印象に残っているのは、そこにいるメンバーが次々に「それじゃ私は、◯◯をやります」を連発していたシーンです。リーダーが「私は◯◯をやるんだけど、みんなもお願いできるかな」と言うと、ほかのメンバーがそれぞれ担当分野でできることを主体的に探して「やります」宣言していました。不安な点やわからないことがあるとすぐに聞けるオープンな雰囲気、困っている人を感じたら声をかける分かち合いの雰囲気もあって、リーダーのためではなく目的(お客様だったり、価値だったり)にベクトルが向いている状態でした。

まぁいつもいつもそんな状態であるわけではないですが、そんな瞬間をつくれる職場ということです。きっとこの「やります」状態があってこそ、徐々に冒頭の職場環境は実現していくものではないかと思っています。誰かが用意してくれるのではなく、メンバーがつくりあげていくものだということです。

2023-10-13

The Traveler / Kenny Barron

 

Kenny Barron(ケニー・バロン)はアメリカのジャズピアニスト。スタン・ゲッツを始め数多くのミュージシャンとの名演を残す大ベテランです。2008年本作にも参加しているベースの北川潔さんリーダー作での共演もよく聴きました。本作にはグレッチェン・パーラトやリオーネル・ルエケも参加しているほか、スティーヴ・ウィルソンのソプラノサックスが耳に心地よいです。

本作とブランフォード・マルサリスのEternalは、僕にとっての癒やしのアルバムで、仕事を終えた後の夜や、お風呂タイムのお供として本当によくかけていました。ケニー・バロンのピアノはけして弾きすぎることはなく、そしてフレーズは多彩でつい耳が追いかけてしまう。飽きることがなく、次に聴いたときにはああこんなの弾いていたのかと発見もある、そんな演奏です。

さぁてゆっくりするか、とプレイボタンを押して1.The Traveler に身を委ねます。続く2.Clouds があまりに心地よくて寝落ちしそうになりますが、3.Speed Trap での北川さんの速くてアタッキーなベースに驚きながら体をほぐしてもらいます。再び4.Um Beijo のグラディ・テイトのダンディな歌声でリラックス。といったナイト・ルーティンを何回繰り返したことでしょう。


2023-10-12

シネマ・コンサート体験

 

今年9月30日に東京国際フォーラム ホールAでの「スター・ウォーズ シネマ・コンサート」を観に行きました。1977年公開のエピソード4を“映画のセリフや効果音はそのままに、映画全編上映に合わせて音楽パートをフル・オーケストラが生演奏でお届けする”というもので、原田慶太楼さん指揮による東京フィルハーモニー交響楽団が演奏。ファンにはたまらない音楽イベントとなりました。

20世紀フォックスのファンファーレで始まったときには場内大喝采。ディズニーに買収されてから聴けなくなってしまったテーマですもの。そしてあのスター・ウォーズのテーマ。おぉ生演奏で聴くとさすがにスゴい迫力。メインキャラクターが出てくるとそこでまた拍手喝采。繰り返し観た映画なのでほとんどのシーンを覚えている人ばかりなのでしょう、セリフにもいちいち反応したりして。生演奏も映画にタイミングをぴったり合わせて違和感皆無。満席5千人くらいで楽しむ映画&生演奏鑑賞でした。

高校生のとき、フィルム・コンサートというライヴヴィデオをホールの大スクリーンで流しながら爆音で音楽を観るイベントに行きました。海外のハードロック・アーティストで来日はしない代わりにヴィデオで観ようと、大勢で観て盛り上がろうという企画でした。音楽好き仲間と観れて楽しかった記憶があります。シネコンなどの映画スクリーンで今でも実現できるのでは。探してみよっと。

2023-10-11

The Drop / Jeff Lorber Fusion

 

Jeff Lorber(ジェフ・ローバー)はアメリカのミュージシャンでキーボーディスト。バンドのJeff Lorber Fusion名義での2023年新作。元祖フュージョンなイエロージャケッツのジミー・ハスリップ(B)やベテランドラマー、ゲイリー・ノヴァクが参加して、これぞ“フュージョン”なサウンドを聴かせてくれています。

フュージョンやスムースジャズというとなんかBGM的というか、ただ心地よいだけといった印象でつまらないという人もいますが、僕自身は80年代にカシオペアやザ・スクエアを始め日本のフュージョングループをよく聴いていたこともあり、「その心地よさがいいんだよ」と思います。今作もファンキーで気持ちいいリズムとキレのある高音質サウンドで、聴いていて楽しくなる作品です。

タイトル曲1.The Drop からファンキーで楽しいサウンド全開。4.On the Bus の流れるようなリズムに後半のギターソロがむちゃカッコいい。7.Keep on Moving もファンキーなリズムで思わず体が動きます。ラストの10.Tail Light なんかまさに気持ちいいサウンドでザ・フュージョン。全曲にわたってゲイリー・ノヴァクのドラムスの気持ちよさが光っています。


2023-10-10

In My Element / Robert Glasper

 

Robert Glasper(ロバート・グラスパー)はアメリカのジャズピアニストで音楽プロデューサー。2000年以降のジャズシーンにおいて最重要人物と言っていいと思います。2007年本作をCDショップで手にしたときは、そのジャケットを見てヒップホップアーティストがジャズアルバムを出したのだと思いました。帰って聴いてみるとビックリ、本格的なジャズを何やら新しい感覚で演っているのでした。

聴くほどに新鮮なメロディーライン、ピアノタッチ。そして細かく高速ビートを刻むダミアン・リードのドラムス。言われてみればハービー・ハンコックの影響も感じる。でも新しい!と繰り返し聴いては、1stや2ndをネット注文し、彼が関わっている作品をiTunesでも購入したりしました。彼によってジャズシーンはまだまだ更新し続けているぞとワクワクさせられました。

1.G&B から本格的なジャズで只者ではないリズムと新鮮なメロディでこりゃスゴいぞと。3.F.T.B. はまるでソウルミュージックのようにピアノで歌いかけてきます。ハービーの7.Maiden Voyage / Everything In Its Right Place では見事にグラスパーの世界観にのみ込まれていきます。8.J Dillalude はビートメイカー、J・ディラに捧ぐ曲でサンプリングからインスパイアされて生演奏する彼ならではの作品だと思います。


2023-10-06

ON / BOOM BOOM SATELLITES

 

BOOM BOOM SATELLITES(ブンブンサテライツ)は中野雅之(B、プログラミング)と川島道行(Vo、G)のロックユニット。僕はフジロックで観てファンになりました。シンセサウンドはプログラミングされたものですがギター、ベース、ドラムスは生演奏。特に叩きまくりのドラムスは衝撃的でむちゃくちゃカッコよかった。2016年に川島さんが亡くなってしまったのが残念でなりません。

本作は2006年5thアルバム。彼らのサウンドは一貫していて、未来的でブリブリで大好きなアナログシンセの音とそこに乗るヴォーカルのエコーが気持ちいいこと。唯一無二で世界に通用するサウンドを有していたし、ライヴでこそ彼らの本領を発揮していたと思います。当時彼らほどカッコいいバンドが日本にあったでしょうか。

ライヴで盛り上がるというのは1.Kick It Out を聴けばわかるでしょう。ダンスミュージックにしてこれぞロックなサウンドです。テレビなどでタイアップされた曲で聴いた人も多いはず。オススメは2.9 Doors Empire 、8.Generator 、11.Nothing といった疾走感のある曲。全編にわたってドラムスが激しく叩きまくっていて最高です。

2023-10-05

本物の音楽とは

 

本物の音楽って何でしょう?これも人によって違うと思いますが、僕としてはまず「プロ」によって作られたor演奏された楽曲であること、としておきます。技術的にはアマチュアだってかなりの人はいますし、プロにだって「これ何?」と思うこともしばしば。ただ音楽を作ったり演奏したりすることで生計を立てていくというのは相当な時間と努力の結果であると思っています。

音楽を聴くうえで「これはプロの仕事だな」と感じるのはどんなときか。それは音楽という感情表現にパワーを感じるときかもしれません。強い音、微小な音、音色、声色に幅や深みがあって、そのミュージシャンがそれまで磨いてきた表現力をその一音に込めていると感じます。こればかりは数値や言葉で定義できるものではなく、僕の心や体がそう感じているとしか言いようがない。さらにそこで感じたことは時が経っても継続していて何度聴いても「やっぱりいい」となります。

僕の場合、音楽仕事や聴いてきた曲数といった経験も確かに影響していると思います。しかし10代の娘の反応をみていると一概にそうとも言えない気がします。娘はApple Musicでプレイリストを作って音楽をよく聴いていますが、結局飽きずに聴いているのはマイケル・ジャクソンの曲だそうです。おそらく当時最高峰のプロダクションで作られた彼の作品は、聴き手の経験の量に関わらず、本物の音楽として人の心に響き続けるパワーを持っているんだと思います。

2023-10-04

where are we / Joshua Redman

 

Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)はアメリカのサックス奏者で作曲家です。若くしてすでに風格のある1993年作「Wish」はパット・メセニーが参加していることもあってCDで聴きました。Dr.のエリック・ハーランドらと組んだJames Farmの「City Folk」での彼もオーソドックスでありながら味わいのある佇まいが好きでよく聴きました。

今回はブルーノートからのデビュー作とのことで、ガブリエル・カヴァッサという女性ヴォーカルを迎えて、P.アーロン・パークス、B.ジョー・サンダース、Dr.ブライアン・ブレイドという鉄壁の布陣で作り上げた作品です。このメンバーらしく叙情的でゆったり聴き入る曲が揃っていて、温かいコーヒーでも飲みながらリラックスしてアメリカ各地を巡ります。

カート・ローゼンウィンケルのギターから始まる2.Streets Of Philadelphia はブルース・スプリングスティーンのナンバーでアメリカへの愛を感じるような曲。続く3.Chicago Blues は不思議なコード進行とブルースを混ぜていかにもジョシュアらしい曲。面白いイントロの7.Manhattan ではギターとサックスの掛け合いが楽しい曲です。


2023-10-03

Doomsday Machine / Arch Enemy

 

スウェーデンのメタルバンドArch Enemy(アーチ・エネミー)の2005年6thアルバム。デスメタルはイヤーエイク・レコード関連の超スピードメタルを耳にしたときに知っていましたが、聴き続けるほどではなかったのです。しかしこのバンドのサウンドと女性デス・ヴォイスというギャップによって大いに盛り上がり、フェスでライヴを体験するに至りました。

アンジェラ・ゴソウのVo.と勇姿がとてもカッコいいわけですが、僕にとってはマイケル・アモットのギターが刺さりました。この超ハード&ヘヴィな曲に、あのマイケル・シェンカーへのリスペクトを隠さずに繰り広げるメロディアスなフレーズが“泣ける”のです。このアルバムでは弟のクリストファー・アモットの超速弾きとの対比が素晴らしく、メタルおじさんのハートをワシづかみにしたのでした。

アンセム曲の1.Enter The Machine でこの後のメタル大会を予感させます。来ました2.Taking Back My Soul の最初のマイケル・アモットのワウギターからしてシェンカーなんです。超速3.Nemesis での高速ツーバスに痺れたあとのメロディアスライン。これぞメタルですわ。重い&ヘヴィな4.My Apocalypse の筋肉質なリズムはもはや気持ちいいくらい。ここらでおじさんは息切れしますが、空間の拡がりや沈み込む重低音が効いていて音質的にもオススメですよと言い残します。


2023-10-02

選択とは「覚悟」すること

 

社長になる以前の問題として、生活していくには稼がなければならない。稼ぐためにはどうしたらいいか。答えはシンプル「私、やります」と言うことです。「◯◯さん、コレやってくれないか」と言われ仕事の受け身だろうと、「これをなんとかしなくちゃ」と自分発の仕事だろうと「やります」と言うことがやがて「稼ぎ」につながります。

僕も初めて社長になったとき、当時の株主から「社長はキミにやってもらいたい」と言われて「やります」と答えたところから始まったわけです。もちろん経験はゼロだし、スキルもないし、頼りない。周囲のメンバーからの支持もない。あったのは「覚悟」のみ。誰だって最初は初心者なんだと自分に言い聞かせて、船出をしたのでした。

引き受けた理由はもう一つ。音楽に関わる仕事だったのです。つまり「やりたい仕事」だった。やりたくないものを「やります」と言うのはツラい。とある目的のためにやらなきゃいけないときに「やります」と言うことはあるけれど、やりたくないものはやらないほうがいい。なぜなら「覚悟」をもてないから。自分が選択した道はこれからいろんな困難があるだろう。それでも前に進んでいくんだと腹を決めるのが「覚悟」です。

2023-09-29

Eternal / Branford Marsalis

 

Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)は、アメリカのサックス奏者。スティングの名曲「Englishman in New York」でのサックスプレイが最も有名でしょう。スティングがソロになってバンドを組んだ際の映画がとても好きで何度も観ました。ブランフォードの“どんな批判にも慣れているぜ”なんて言いながら見せたやんちゃな笑顔が印象的です。いまや弟のウイントン(トランペット奏者)とともにジャズ界のレジェンド的存在です。

2004年の本作は全編にわたり何回も聴いたので、彼のサックスフレーズを覚えて鼻歌してしまうほどです。バラード集ということで、ゆったりしていて一音一音に感情が深く込められた沁み入る演奏をたっぷり聴くことができます。仕事に疲れた日の夜に静かにこの音楽に浸るなんてことも多かったなぁ。何回も聴いたということはそういう日が多かったってことかなんて。そんなこのアルバムに出会えたのも幸せなことです。

ウェイン・ショーターの1.The Ruby and the Pearl でゆったりした時間は始まります。このソプラノサックスの優しい音といったら...。エンディングも素敵です。2.Reika's Loss のフレーズ後の余韻が素晴らしい。3.Gloomy Sunday では大きく波打つリズムに深い感情を乗せてきます。6.Muldoon は優しく包んでくれる美しいピアノとのデュエット曲。7.Eternal は静かに微笑んでいるような明日への曲と思って聴いていました。


2023-09-28

グールド作品からAIを想う

 

画像生成やChatGPTなどAIとコンピュータの進化は止まりません。つい30年前はCG技術でプロって凄いと感じていたのに、もうパーソナルが最新技術を使う時代になりました。そして一部ではAIが作る音楽なんて話題もありまして、そこでふと思い出したことがあります。

グレン・グールドというクラシックピアノの演奏家がいます。バッハ:ゴルトベルク変奏曲の衝撃的とも言われた1955年の演奏録音があります。有名なのは1曲目のアリアですが今回は2曲めを。

そしてグールド没後25周年として発売された「Zenph Re-performance」という2007年の録音があります。生成AIに聞くと以下の説明が出てきました。

Zenph Re-Performance は、アメリカのコンピュータ・ソフト「Zenph」を使って、グールドのモノラル音源を徹底的に解析し、キータッチや音量、ペダルの踏み込み加減にいたるまで完全にデータ化したものです。このデータは、自動演奏ピアノ(ヤマハ製ディスクラヴィア/9フィート・フルコンサート・グランド)を用いて再現され、その再現音を録音しました。

1955年の録音はモノラルだったので、それをコンピュータで解析し自動演奏させてステレオ音源にしたというのです。

さらにこの自動演奏をバイノーラル録音と言って、あたかも弾いている本人の耳で聴いているかのように聴こえる特殊録音を施したものがあります。

驚くことに2007年録音でもグールドそのものが再現されていて、なおかつ高音質なんです。こんなことができちゃうんだと思いました。
さて、そこで再度最初の1955年の録音を聴きます。どう感じましたか。僕は音に力強さを感じ、まるでグールドの意思がグッと伝わってくるようで、モノラル録音であることがかえって奏功しているのではとさえ思いました。

そうかやっぱり本人による演奏録音のほうが良いんだ、音質が問題ではないんだと結論づけたいところですが、2007年録音も聴き続けていると、特にバイノーラル録音をヘッドフォンで聴いていると徐々に惹き込まれて、いつの間にかグールドの世界に浸っていました。

飛躍かもしれませんが、この自動演奏による再現を聴くことと、生成AIに感じることは似ているのかもしれません。本物ではないけど本物をコンピュータで精緻に再現。どちらが良いか悪いかというよりも、見分ける(聴き分ける)ことさえできるかどうか。僕としては少なくとも本物の良さを感じられる耳を持ちたいと願っています。

2023-09-27

Witness to History / Eddie Henderson

 

Eddie Henderson(エディ・ヘンダーソン)はアメリカのジャズトランペット奏者。御年82歳だそうで、このブログを書いていて「ミュージシャンは長生き」と思うようになりました。同い年のハービー・ハンコックとの共演も多く「V.S.O.P.」で彼の演奏を耳にしていました。

大好きSMOKE Sessionsからの2023年リリースでやはり高音質です。気になるドラマーはこれまたレジェンドのレニー・ホワイト。マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」からリターン・トゥ・フォーエヴァーという凄い経歴です。バンド全体の演奏も百戦錬磨の風格で、これぞモダンジャズを最新録音で聴くことができます。

おっマイルスか!と思わせる曲は、レニーがあの頃のように淡々とリズムを刻む1.Scorpio Rising と極めつけの4.It Never Entered My Mind 。あぁ浸っていたいと思います。5.Freedom Jazz Dance は変わったリズムで難しい演奏なのに、ベテランの為せる技なんでしょうリラックスして聴くことができる曲でオススメです。


2023-09-26

Live at Murphy's Law / Jesse Van Ruller

 

Jesse Van Ruller(ジェシ・ヴァン・ルーラー)はオランダのジャズギタリスト。23歳でセロニアス・モンク・コンペティションのギターコンテストで優勝したり、あのパット・メセニーから最も優れた若手のひとりと言われたりしていますが、一聴すればその確かで突出した腕前はわかると思います。2004年の本作はオランダの広くないクラブ“Murphy's Law”で彼が初めて録ったライヴレコーディング。

僕が気に入ったのはまずその優れた音質。クラブの空気感まで伝わってくるような生々しさ。いい音のギターを聴きたいと思った時はこのCDに手が伸びていました。4K映像のように細部までフォーカスが合っていて、すぐそこでギターを弾いているよう。僕が小さめのハコに魅力を感じたのも、またそうしたジャズライヴの録音を好んで聴くようになったのも、このCDのおかげかもしれません。

いかにもジャズギターのお手本のような1.Isfahan のスイングで始まります。3.The End of a Love Affair のギターフレージングを聴いているとあまりに多彩でどうなっているのかわかりません。その分集中して聴きます。4.Detour Ahead はこのアルバムで好きな曲。本人も楽しんで弾いているのがわかる。ベニー・グッドマンの7.Goodbye でも彼独特の音色でじっくり聴かせる曲になっています。