2023-12-29

Rainbow

 

高校時代、中古のストラトキャスター(フェルナンデス)を手に入れた僕のアイドルはリッチー・ブラックモアでした。Rainbow(レインボー)を知ったのはやはりFMラジオでヒット曲「アイ・サレンダー」を聴いたのがきっかけ。1981年のアルバム「Difficult To Cure」の1曲目でした。当時よく読んでいたミュージックライフにもリッチーに関する記事は載っていたので、元ディープ・パープルの伝説のギタリストであり、白いストラトキャスターを弾く写真にカリスマ性を感じました。

LPレコードを買うのもやっとの小遣いでレインボーの2枚組ベスト盤を手に入れ、カセットにダビングして何度も聴きました。このベスト盤にはVo.がロニー・ジェイムス・ディオ期、グラハム・ボネット期の曲が入っていて、僕がレインボーでNo.1と思っている「Kill The King」や初めてギターをコピー弾きした「All Night Long」があります。のちにお年玉すべてを握りしめて秋葉原の石丸電気にてレインボーのLPレコードをコンプリートし、リッチーのポスターを手に入れ部屋に貼っていました。

1982年のアルバム「Straight Between The Eyes」発売後に武道館にライヴを観に行き、リッチーが登場したとき鳥肌が立ちまくったのを覚えています。同じ空間にあのリッチーがギターを弾きまくっているなんて。ポップになったといわれるジョー・リン・ターナー期でありますが、曲はどれも秀逸でリッチーのポップ性も垣間見ることができ、ちゃんとパープル時代のファンも満足させ、ギターもハードに弾きまくっています。ラージヘッド、スキャロップドフィンガーボード、センターピックアップ下げ、シンクロナイズドトレモロ浮かせ、トレモロアーム長太などリッチーのギターについてはまたいつか。

2023-12-28

音楽ファンの調査結果

 

2023年ももうすぐ終わりです。「人に会わないように」なんていうコロナの異常事態から脱して、今年はリベンジ的に動き回ったなんて人も多いと思います。そしてもうコロナのせいにはできないぞという根本的な問題が表出し始めた年でもあったでしょう。音楽好きとしては著名なミュージシャンたちがこの世を去った悲しい年でもありました。

今月、国際レコード産業連盟(IFPI)というところが最新調査を発表しています。

  • 全世界の音楽ファンが音楽を聴くのに費やす時間は週平均20.7時間
  • 音楽ファンの73%が(中略)ストリーミング・サービスを通じてお気に入りのアーティストを聴いています。
  • その他の人気フォーマットとしては、ラジオで聴く(17%)、購入した音楽を聴く(9%)、ライヴコンサートへの参加(4%)が挙げられます。
  • 最も利用されているのは定額制音楽配信サービスで、音楽ファンの1週間の視聴時間の約3分の1(32%)を占めています。(中略)有料会員の割合は(中略)48%
  • 次いでYouTubeやTikTokなどのプラットフォームによる動画ストリーミングが31%を占めています。
全世界の大雑把な傾向とはいえ、たとえば僕のような音楽好きにとっての知人友人が100人だとして、73人がスマホやPCで音楽を聴いて、うち35人くらいが有料サービス利用、レコードやCDを買う人はたったの9人、コンサートに行くのは4人だけというのは、なんとなく肌感覚で離れていない気がします。

もともとポップスやロックのターゲットである若者はショート動画で音楽に接しているのに対して、有料音楽を楽しむオーディオやコンサートは価格高騰して、一部の金持ちだけの趣味になりかねない状況です。僕たちがYMOやジェフ・ベックのギターに夢中になったように、全世代の音楽ファンが“ロング”に夢中になれる状況を少しでもつくれないかと、来年も発信していこうと思います。

2023-12-27

Jazz Hands / Bob James

 

Bob James(ボブ・ジェームス)はアメリカのジャズ&フュージョンピアニスト。御年83歳。元ワーナー・ブラザースのジャズ部門取締役。同時期のポップス部門取締役がプリンスってのも驚きます。正直私この歳になるまであまり聴いてこなかったのですが、スピーカーを買い替えて高音質を求めるうち、フォープレイなんぞを聴いたりして「ああたしかにいい音だ」と身を委ねた次第です。

ボブ・ジェームスのソロとしては昨年の「Feel Like Making LIVE!」がすこぶる高音質でSACDで購入してステレオ&マルチチャンネルで楽しんでおります。音のリアリティ、空間表現、時にスリリングな演奏といったオーディオ用語になっちゃうんですが、とにかく無理なく聴くことができます。2023年年末を飾る本作も「まだまだ行くぞ」とばかりボブ・ジェームス節を高音質で届けてくれます。

1.Mambalicious から変拍子でさすがのフュージョンです。意外な3.Jazz Hands (feat. CeeLo Green)は、いきなりファットなベースに乗せてR&Bナンバーです。タイトル曲であり本アルバム中イチオシです。同じく意外な8.That Bop はハウスっぽいナンバーでこれもなかなか良いです。なにかとバタバタしがちな年末ですが、正月くらいはゆっくりゆったりと音楽に浸りたい、そんな時にピッタリなアルバムだと思います。

2023-12-26

Cheap Trick

 

多くの人は15歳〜17歳くらいに聴いた音楽を一生聴き続けると聞いたことがありますが、ほんとにそうだなぁと思います。1980年は15歳でしたから中3。FMラジオで“ダイヤトーン・ポップスベストテン”をエアチェックしていた頃です。ラジカセはAIWAのCS-80でした。僕の耳をとらえたのはCheap Trick(チープ・トリック)のロビン・ザンダー(当時はサンダーと言っていた)の声でした。

曲はアルバム「Dream Police」(1979年発売)の1曲目タイトル曲。キャッチーなメロディと自在なヴォーカルに魅了されました。FM誌を読むとなんともカッコいいヴォーカルとベース。対照的にひょうきんなギターとドラムス。当時流行りのツートーン。次いでヒット曲6.Voices の美メロにまたやられてしまった。

僕にとってのビートルズはチープ・トリックであり、のちにロイ・オービソンを聴いたりして似たものを感じてやっぱり彼らのメロディとサウンドが好きなんだなと。ギター大好きのリック・ニールセンも大好きです。1980年発売の「All Shook Up」も聴いた聴いた。1.Stop This Game は歌詞も覚えたくらい。チープ・トリックこそ僕が最初にのめりこんだ洋楽であり、ハードロックの入り口であり、のちにギター少年となる布石バンドだったのです。

2023-12-25

集めた事実をAIが分析

 

会社経営をしていると「愚直」であることの大切さが身にしみてわかります。人間としてはつい自分の都合のいいように事実を曲げて報告してしまったり、愚痴や悪口を言ったり聞いたりして他人にバイアスをかけたり、仕事以外のその日の気分で面倒になったり嫌になったりしてしまいます。しかし社長としてはなるべく事実を事実のまま把握して、次なる対策を練りたい。

「言わなくてもわかる」「空気を読む」というのが長所になっている組織も、実は社長や上司がラクなだけかもしれません。情報を受発信するのは誰にとっても労力のかかることですから。だからこそコミュニティでは発信しやすく、フィードバックしやすくする工夫が必要なのです。中でも事実を事実としてできるだけ情報を集め報告しあうような愚直なプロセスは、それほど時間をかけずにできるコミュニティ活性方法だと思います。

特に机上で立てた仮説を検証するための「現場」観察というプロセスは、リモートワークが普通になる今後のワークスタイルの中でも大切なものになってきます。現場に足を運び、人と話し、写真や動画を撮り、コミュニティで事実をシェアすることが、その後の問題発見や課題抽出に多いに役に立つでしょう。そうして集めた事実はAIに一次分析してもらうというわけです。

うまくいっているプロジェクトはやっぱり「ユーザー」「現場」オリエンテッドです。提供側がいくら良いプロダクトができたと思っても、できる限り多くの現場の声をフィードバックしたプロダクトが継続して強いんです。

2023-12-22

Phoenix / Dirty Loops

 

Dirty Loops(ダーティ・ループス)はスウェーデンの3人組バンド。近所のオーディオショップで知ってから、彼らの驚愕の演奏力をYouTubeで観漁りました。デヴィッド・フォスターやクインシー・ジョーンズが目をつけただけあって、物凄い才能だと思います。演奏力、歌唱力、作曲、編曲どれをとってもすでに一流で、多くの人を惹きつけています。2020年の本作は小出しに発表していた楽曲をアルバムにしたものです。

僕だけでなく家族でファンになって、2022年のビルボード東京のライヴも見に行きました。素晴らしい演奏に加えて、サービス精神旺盛で優しそうなお兄さんたちでした。カシオペアやパット・メセニーが大好きというのも頷ける曲があったりして親近感もあります。そして2023年の今、新しい曲が出ないかぁなと心待ちにしています。

1.Rock You から激速のスネア連打&タム回しとチョッパーバリバリで始まります。ヒットの匂いプンプンのメロディと歌で、あぁこりゃスゴいわと感服。2.Work Shit Out もグイグイ来ます。曲の展開がカッコいいいい。5.Breakdown を聴けばマイケルを連想したりして、そりゃクインシーが惚れるわけだわと納得。6.Old Armando Had A Farm 、7.Bitten By The Kitten 、8.Coffee Break Is Over と連発で、着いて来られるかとばかりのベースとドラムスとのキメが凄まじい。20年代始まりに新星が現れて音楽ファンとしても嬉しかったのです。

2023-12-21

NYのジャズクラブに想う

 

先日YouTubeで、NYのジャズクラブ事情の動画を見ました。小さめのハコで、ミュージシャンが飛び入りで参加できる時間帯(たしか13時〜くらい)なのですが、オーディエンスもぎっしり(席数は少ないかも)でジャズの名曲をミュージシャンがアレンジしながら演奏して盛り上がっていました。さすがニューヨークと思いましたが、音楽のライヴを日常的に楽しむ雰囲気があって羨ましかったです。

日本では出演するミュージシャンは予め決まっていて、お店のホームページ等で告知してチケットを買います。誰が出るかわからないライヴではそもそも人は集まりません。当然かもしれないですが、何か変わってきてもいいのではと思います。誰が演奏するかではなく、どの楽曲を演るかで人を集めることができたら。いまでもビートルズのトリビュートバンドのライヴは人気があります。そんな感じです。

まずは楽器を演奏する人や歌を歌う人に来てほしい。アマチュアでもプロでも。できるだけ多くの演奏を聴いてほしいと思います。しかし練習に忙しくて時間もないし、仕事だってある。だからこそ平日の小一時間で、出入り自由の軽い気分でライヴに来ることができたらと思います。できればチャージもワンドリンク付き2,000円〜2,500円くらい。余裕のある人は料理も頼んでお酒も追加して。であれば週1くらいは行けるかなと。聴衆をどうやって増やすことができるのかアレコレ考えています。

2023-12-20

Christmas Wish / Gregory Porter

 

2023年のクリスマスは、Gregory Porter(グレゴリー・ポーター)の本作で決まりでしょう。レコーディングはニューヨークとロンドンで、バックのオーケストラはアビー・ロード・スタジオでの録音だそうです。ブルーノート・レコード/デッカからのリリースで気合十分です。バックミュージシャンも長年のパートナーで間違いなし。いつもながらの高音質で聴くことができます。

クリスマス・アルバムはみなさんお気に入りをお持ちだと思います。若い時分はベタにスティーヴィー・ワンダーだったり山下達郎だったりしましたが、ジャズとなるとブルーノートのベスト盤「Yule Struttin'」がお気に入りだったりします。まあ25日までの数日間ですからカッコつけずに家族にウケのよい曲をかけてみんなで楽しみましょう。

グレゴリーらしい曲をオススメに。3.Everything’s Not Lost はシングルカットされたゴスペルなR&Bソウル曲です。7.What Are You Doing New Year’s Eve? は昨年のグラミー賞のサマラ・ジョイを迎えてのデュエット。優雅な雰囲気に包まれます。続くタイトル曲8.Christmas Wish もお得意の手拍子にノリノリのゴスペル曲を歌い上げます。ほかにも名曲が多いのでクリスマスに活躍の一枚となるでしょう。

2023-12-19

The Secret Between The Shadow And The Soul / Branford Marsalis Quartet

 

Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)のカルテットは2008年作「Metamorphosen」で頂点を極め誰も追いつけない領域に入りました。長年活動をともにしてきたドラムスのジェフ・テイン・ワッツが抜けて、新たに二十歳前のジャスティン・フォークナーを迎えて録音した3枚目が2019年の本作です。ジェフに負けないほどのアグレッシブなドラムスでこの最高峰のカルテットを支えています。

この頃は僕自身ジャズクラブを経営したりして公私共にジャズ漬けでありました。聴く音楽もジャズ以外はあまり受け付けない体になっていました。グラスパー以外で、骨のある“今”のジャズを聴こうと思ったらブランフォードの作品になっていました。媚びない太いサックス、アコースティック楽器としてフルに鳴らし切るピアノ、ベース、ドラムス。やっぱりこういうジャズがいいなぁと率直に思ったものです。

地鳴りのようなベースで始まる1.Dance of the Evil Toys でそれが証明されます。一筋縄ではいかない旋律、フリーな演奏。熟練した者だけが出せるサウンドです。そして2.Conversation Among the Ruins でのソプラノで得意の哀愁を聴かせてくれます。4.Cianna のラテンがまた大人の音楽といった雰囲気でちょっとダンスしたくなります。5.Nilaste ではカルテットの本領発揮とばかりに、これでもかのアグレッシブな演奏を聴くことができます。

2023-12-18

発信と「フィードバック」が大切

 

会社がコミュニティになると従来のコミュニケーションとは違ったスタイルが求められます。社長や上司が「お偉いさん」ではなく「リーダーという役割をもった人」です。忖度やイエスマン、保身や勝ち負けといった価値観は薄くなります。上司に気に入られないと昇進がどうの、なんて昔の話となるでしょう。

コミュニティでは、いかに「発信」するかです。自分がやろうとしていることの“やります”宣言、やったことのアウトプットをしないことには始まりません。ここで大切なことはほかのメンバーからの「フィードバック」です。“いいね”“ありがとうございます”“承知しました”は既に絵文字になってフィードバックしやすくなっていると思います。“ごめんなさい”も絵文字で。

率直な言葉でポジティブフィードバックすれば、さらにプロジェクトが前に進むでしょう。“こうすればもっとよくなるのでは”というギャップフィードバックは、根っこに建設的な意味合いがあれば有効になります。そしてフィードバックを受ける側の「受け方」がコミュニティにとってポイントになります。特にこの「受け方」については研修や学び合いが必要となるでしょう。

では、昇進や昇給のきっかけとなる「評価」は誰がやるのでしょう。おそらく大半は「AI」がやります。もう上司のお気に入りとかで評価できなくなります。会社のMVVBSCなどの評価項目をAIに学習させて、コミュニティでの活動履歴によって1次評価はAIがやってくれます。社長ももちろん被評価者です。MVVに沿っていない言動行動について最も厳しく評価されるでしょう。

2023-12-15

Collagically Speaking / R+R=Now

 

R+R=Nowとは、ピアノ&キーボードにロバート・グラスパー、サックス&ヴォコーダーにテラス・マーティン、トランペットにクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー、ベースにデリック・ホッジ、キーボードにテイラー・マクファーリン、ドラムスにジャスティン・タイソンという新しいジャズをリードする豪華メンバーのバンド。本作は2018年にブルーノート・レコードからリリースしたアルバムです。

ひとりひとりが単独で強力なオリジナリティを持っている彼らが、おそらくセッションのような肩に力を入れない和やかな雰囲気で作り上げた作品だと思います。ヒップホップやアンビエントのエッセンスを入れながらジャムっているうちに出来ちゃいましたという感じ。グラスパーをずっと聴いてきた僕としても、彼のエラそうにしない態度を感じながら互いのフィードバックを重んじるサウンドの集大成かつ象徴的なアルバムだと感じました。

セッションのようにして始まる1.Change Of Tone からリラックスして聴くことができます。ジャスティンの自在なドラムスがスゴいです。4.Resting Warrior ではデリックのカッコいいベースラインから新しいフュージョンサウンドを奏でていて、アルバム中のお気に入り曲です。10.Respond もジャズティンとデリックのリズム隊がカッコいい曲です。

2023-12-14

音量を計測してみた

 

音楽を聴くときの「音量」ってどうしています?思ったより人によってマチマチなんだなと思います。娘のイヤフォンで聴いたときに「小さっ」て思いました。もしかして普通の人ってこのくらいかも。ってことは僕が大きいんだなと。聴いている音楽の小さな音まで聴き逃すまいと思っているからか、それとも加齢?のせいかもしれません。

問題はスピーカーです。隣接する部屋や家に迷惑がかからないようにとなると、そんなに大きな音は出せません。家族と住んでいたら時に同じ部屋にいるわけで、ヘッドフォンで聴いてよ、となります。でも、せっかくいい音のスピーカーを導入しているのだから、気持ちよく鳴らしたい欲求は常にあります。

スマホで音量を簡易に計測できます。僕は「Mobile Tools by Audiocontrol」というアプリを使っていますが、ほかにもありますし何でもいいです。スピーカーからの距離は約2mです。計測結果をざっくりと。BGM的に聴くときは「55dB」程度、音楽聴くぞってときは「65dB」程度、昼間で音楽の迫力を味わいたいときは「75dB」程度という感じです。もちろん曲によって適度にボリュームを上げたり下げたりしています。ちなみに道路に面した我が家(昼間&窓締め切り)の無音状態は「50dB」を下回るくらいです。

ジャズクラブをやっていたのでPAや生音の音量も味わっています。昨年練習したロックバンドのスタジオなんて100dB以上出ているはず。大音量って気持ちいいんですよね。だから、オーディオ専用ルームとかぽつんと一軒家とか憧れます。飽和状態にならないギリギリの大音量で高音質を浴びてみたいなと。

2023-12-13

In December / Robert Glasper

 

Robert Glasper(ロバート・グラスパー)による2023年ホリデーシーズンのアルバム。Apple Musicの解説によればグラスパーは「ホリデーアルバムを制作する上での最大のチャレンジは、お祝いの気分を作り出すと同時に、リアルに感じられて、ベタではない方法で実現することでした」と語っている。その通り、クリスマスの日だけでなく、シーズンを通じて生活の中に溶け込むように心地よいアルバムだと感じました。

米国外資の会社に勤めていた頃、12月の中旬になってくると外国人スタッフは休暇に入ってしまい、残された日本人スタッフは年末まで忙しいのに呑気なもんだと半分羨ましい気持ちでした。12月を師走ととらえるかホリデーシーズンととらえるかの差ですね。忙しい日々のちょっとした時間にこうしたリラックスしたサウンドを聴くのもいいもんです。

暖炉の音が入った小曲1.Fireside (Intro) の浮遊感のあるピアノが好きです。2.God Rest Ye Merry Gentlemen / Carol Of The Bells の優しい歌声に癒やされます。刺激的な音はなく、すでにウトウトしてしまいそうです。5.Joy To The World はおなじみのメロディを上質なR&Bで聴くことができます。外は雪景色な生活のワンシーンには6.December が合います。グラスパーならではの“リアル”なサウンドに浸ってみては。

2023-12-12

Rebirth / Billy Childs

 

アメリカのジャズピアニスト、Billy Childs(ビリー・チャイルズ)の2017年作。翌年のグラミー賞で「最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム」を受賞した作品でもあります。ドラムスに僕の大好きなエリック・ハーランド、アルト&ソプラノサックスにスティーヴ・ウィルソンを迎えて、一聴してこれは「買い」だと思わせるアルバムでした。そしてこの年最も聴いたアルバムとなり、以降もスカッとジャズを聴きたいときはこのアルバムを手にしています。

実はビリー・チャイルズを聴いたのは本アルバムが最初でした。端正で粒立ちのよい音からクラシック音楽のテイストも感じます。そこにJ・J・ジョンソン、フレディ・ハバードといった巨匠に若かりし頃鍛え上げられたジャズ魂が合わさって彼独特のサウンドを産んでいます。最初の6曲はビリーのオリジナルとのことで作曲にもセンスが光っています。

1.Backwards Bop から勢いよくエリックのドラムスが叩きまくっています。この硬いスネアの音がたまりません。キメッキメのカッコいい曲です。2.Rebirth はパット・メセニー・グループの名曲「First Circle」を思わる鳥肌な曲です。ソプラノサックスと女性スキャットヴォーカルが気分を最高にしてくれます。4.Dance of Shiva もエリックの変拍子ドラムスが光るスリリングな曲で圧倒的な演奏力を聴かせてくれます。

2023-12-11

社長はコミュニティオーナー

 

人口減少社会では、1人が何社かの仕事を掛け持ちするようになりますが、社員を囲い込めなくなった以上、他社がもつ能力をも活かしてサービスや商品を提供せざるを得なくなります。自社完結は望めないということです。業務提携からはじめて、どうしてもスピードアップしたければM&Aのために資金調達することになるでしょう。

他社との連携で必要となるスキルは、チームを形成したり運営したりするコミュニティマネジメント能力です。いままでは社長の強いリーダーシップでなんとかなっていた事業も、社員が辞めたり、競合に顧客を奪われたりして思うようにいかないはずです。むしろ社長もチームの一員となって協力関係を築いていく姿勢が求められる時代に入っています。社員やフリーランススタッフの能力を引き出し、チーム全体の力をアップしていくことで会社を維持継続するのです。

他社スタッフとのコラボもありますから「忠誠心」とか「言わずとわかる」なんてのは通用しません。きちんとMVVを明文化して自分の言葉にして伝えていくこと、チームメンバーの役割分担を明確にすること、報酬や経費などお金に関する契約・取り決めをあやふやにしないこと、は社長がコミュニティオーナーとして率先していく必要があります。

もはや当たり前となったSlackやDiscordといったコミュニティツール、Notionのような情報共有ツールは使いこなすくらいでないと務まりません。Zoomだって使えたのだから大丈夫です。Google系やMicrosoft系のツールでもかまいません。ただし、いつでも使えるツールだからと24時間労働や心無い発言を野放しにしないようなルール作りも必要です。

2023-12-08

The Unity Sessions / Pat Metheny

 

Pat Metheny(パット・メセニー)の2016年作。パット・メセニー・グループの作品はどれも大好きで本当によく聴きましたが、盟友ライル・メイズの体調もあって残念ながらグループの再活動はなくなっていました。そしてうれしいことに新たなバンドを組んで、アコースティックな2012年「Unity Band」を発表。さらにエレクトリックなUnity Groupによる2014年「Kin (<-->)」を発表し、この作品はそのスタジオ・ライヴを収録したものです。

本作はDVD(Blu-ray)も出ているので映像でもわかりますが、自動演奏装置“オーケストリオン”の縮小版も一緒に演奏しています。グループで編成が多いのに加えて、どれだけ準備に時間がかかるのだろうとスタッフの大変さを想像してしまいます。そして繰り広げられる演奏は、想像を絶する圧倒的なものでした。ジャズを超え、ギターを中心とする音楽でこれほどの高みに達してしまったのはメセニーをおいて他にないでしょう。

1.Adagia のアコースティックギターによる美しいメロディでセッションは始まります。そしてあの「First Circle」のUnity版ともいえる2.Sign of the Season に気持ちが高まるとともにこのグループの凄さを知ることになります。メセニー・グループとの大きな違いはサックス(クリス・ポッター)ですね。彼により全く違った雰囲気になります。このあとも息を呑む演奏がアルバム全体で繰り広げられます。そしてメセニー・ファンにとっては8.Medley がなんとも嬉しいアコースティックソロですね。

2023-12-07

「オーディオショウ」に想う

 

先月ですが「2023東京インターナショナルオーディオショウ」に行ってきました。初日で祝日ということですごい人混みでした。来ているのは業界関係者と僕を含めた白髪交じりor白髪のおじさんばかり。陳列されているのはどれも高級車なみのお値段の商品ばかり。ドル高ユーロ高で輸入品は軒並み値上げで、こんな時期におじさんは高級品を買うのだろうかと疑問に思った次第です。

僕が秋葉原に通った70〜80年代の家電メーカーを中心とする、ハード&ソフトビジネスモデル隆盛時代につくられたオーディオは“なんとか”手に入るものでした。それらはいまでも中古に出品されていて一部は価格高騰していると聞きます。業界が切磋琢磨してよい製品を作っていたので、今つくったらこんな値段では不可能というものが多いそうです。

万人向けのオーディオが、いつの間にか一部の「好きな(金持ちの)人にしかわからない」ものになってしまうのは寂しい。音楽っていうものは、なにかと勉強ばかりの学生にも、お金もなくて働くのも大変で世の中をなんとか生きる若者にも、ちょっと疲れてしまった大人にも、寄り添ってくれるものです。あるときは一緒に拳を突き上げ、あるときは呼吸を深くしてくれる友なわけです。そしてそんな音楽を奏でてくれるのがオーディオなわけです。

「オーディオってなんかむずかしそう」「高いんでしょ」なんて嫌われないように、いろいろな音楽の楽しみ方を発信していきたいと思います。そんな発信をする人ももっと増えたらいいなと思っています。

2023-12-06

Continuance / Joey Alexander

 

Joey Alexander(ジョーイ・アレキサンダー)はインドネシアのジャズピアニスト。なんと2003年生まれで今年で二十歳!最初のアルバムは11歳のときに発表しています。ウイントン・マルサリスがYouTubeで観て「(ジョーイのことを)僕のヒーロー」とまで言わしめた天才ぶりです。このところ高齢者(失礼!)が多かったので本作を紹介できるのはうれしい。

彼の名前はたびたび目にしていたのにこんなに若いとは知りませんでした。演奏を聴けばその熟練ぶりにベテランなんだろうと。奥深いピアノタッチ、落ち着いたフレーズ選び、拡がるようなメロディ展開、年齢とか経験なんて関係ないんだなと思い知ります。ましてアメリカ出身ではなくバリ島出身というのもうれしいじゃないですか。世界にはまだどこかに天才がいるはずだと。

どうですか、2.Why Don’t We の繊細なタッチ。2023年本作がデビューして7作目ですもの、こんな卓越した曲を聴かせてくれます。トランペットのシオ・クローカーの演奏も素晴らしい。うれしいのはここ数ヶ月ヘヴィロテしているボニー・レイットの曲4.I Can’t Make You Love Me をカヴァーしてくれていること。ピアノのメロディを追っていくと優しい気持ちに包まれます。これからの季節にも合う6.Great Is Thy Faithfulness もオススメです。今後の活躍も注目のピアニストなので覚えておきましょう。

2023-12-05

Life Between The Notes / Bluey

 

イギリスのジャズ・ファンクユニット、インコグニートのリーダー、Bluey(ジャン・ポール・'ブルーイ'・モーニック)の2015年ソロ作。インコグニートが1979年結成ですから、40年以上も活躍しているアーティストです。ブルーノート東京など日本にもよく来日しているのでファンも多いと思います。ブリティッシュらしいジャズ&ソウル、時にフュージョンとして好んでよく聴きました。

このソロアルバムを聴いていた頃、ミュージックレストランをやっていたり、ジャズクラブも始めようとしていたりとすっかりハコ&飲食を仕事としていて、そのスペースで奏でられる音楽のイメージとしてこのアルバムのイメージを持っていました。都会の大人が集う場所にふさわしい音楽といった感じかなと。実際やってみるとそれどころではなかったりしますが...。

象徴的なテーマとなるのは2.Life Between The Notes です。ストリングス、印象的なベースライン、ミュートのギター、いかにもという曲ですが、やっぱりカッコいい。3.Hold On はアンダーグラウンドなハウスを想起させる、このアルバムで一番好きな曲。部屋でかけていて気持ちの良い6.I've Got A Weakness For Your Love 、8.Colombus Avenue もオススメです。他の曲も、あぁインコグニートだぁなサウンドですが、やっぱりいいんですよ。

2023-12-04

フルタイム雇用はしないかも

 

中小企業の社長としては、フルタイムでコミットして働いてほしいと思いますが、給料をアップできないので、働く側も1社だけでは家計を維持できないという人も出てくるでしょう。以前から副業OKという会社はありますが、月曜〜水曜はA社、木曜と金曜はB社なんて働き方もあるかもしれません。会社はアルバイトのようなシフト管理が必要というわけです。

フリーランスで働いている人の中にはすでにそうした働き方を選択している人もいるでしょう。多くのフリーランスは時間や場所にとらわれず、複数の企業と業務委託契約を交わして成果物を納品、対価の支払を受けて、確定申告しているのが普通です。先日もメルカリがスポットワーク事業に参入するというニュースが発表になっていましたが、ちょっとした空き時間を小遣い稼ぎに充てるなんていうことも当たり前になっているかもしれません。フリーランスが今よりもっと仕事を探しやすく、得やすい時代になっていくでしょう。

雇っているんだから忠誠心を、なんて考え方は通用しません。むしろ「他社の仕事」によって優先順位を下げられないよう、惹きつけるようなビジョンや仕事を用意してコミュニケーションしないと優秀なスタッフを確保できない時代になっています。報酬が少しくらい高くても仕事や人間関係が悪い会社に人は寄って来ないのです。

会社には社長とマネジャー1人または数人のみで、あとは全員フリーランスなんていう企業も成り立ちます。従来の人事評価や福利厚生、オフィスのあり方そして社会保障も見直していくことになります。

2023-12-01

Rising Son / 黒田卓也

 

2014年の本作で、日本人として初めてブルーノート・レコードと契約したジャズトランペッターの黒田卓也。ホセ・ジェイムズの「Blackmagic」に参加したことがきっかけで、ホセのプロデュースによって本作は制作されました。当時のブルーノートは、次々に新しい才能による新譜を発表していて勢いがありました。黒田さんは以降も日本のジャズのみならず音楽界で活躍しているのを目に耳にしています。

本作をダウンロードして聴いたとき「うわ!スゴいカッコいいサウンド」と思わず声をあげて、友人のジャズ好きに話をしたら彼も聴いていて盛り上がったのを覚えています。日本人ミュージシャンでこんなにカッコいいサウンドを作れる人がいるんだと興奮したものです。グラスパー全盛の時代であったものの、呼応するように日本人スピリットを感じるような乾いた音、鋭いリズムで強いオリジナリティのある作品です。

1.Rising Son はSunではなく、Sonですからホセの愛情なのかもしれません。レガートなベースラインと残響の少ない音がマッチしてクールな曲から始まります。アフロなリズムの2.Afro Blues も抑制の効いたトランペットがとにかくカッコいい。ロイ・エアーズのカヴァー5.Everybody Loves the Sunshine ではホセのヴォーカルが入ってソウルでグルーヴィな曲。8.Call のミュートトランペットとローズピアノが漂う感じも都会の風景にマッチして好きな曲です。

2023-11-30

「青盤」2023エディション

 

数年前に近所のオーディオショップで、ビートルズのレコードを爆音で聴くイベントがありました。その時のモノラル録音レコードの音が驚くべきスゴい音で忘れられません。ガツンとくる音なだけでなく、こんな音が入っていたのかとその情報量の多いこと。

僕にとってのビートルズはいわゆる「青盤」です。つまりファンというほどではない。親にカセットテープで買ってもらってそれをずっと聴いていました。曲順を変更できるわけもないので、曲が終わると次の曲のイントロを口ずさむといった具合です。CDで買い直して聴きましたが、そうだったな、くらいの感想でそれほどかけることもなく。しかしモノラル録音を聴いてから、ああせめてアンプにモノラルスイッチ(昔はついていた)があったなら、と思った次第です。

今月「青盤」「赤盤」の2023エディションが発表されました。ステレオミックスをやり直しています。CDのステレオがなんとも不自然な印象だったのが大幅に改善。改めて曲の素晴らしさに浸ることができるサウンドになっています。Apple Musicではドルビーアトモス版も味わうことができます。最後の新曲「Now and Then」も聴けます。でもあれっ、曲が多い、僕が知っているのは28曲なのに37曲も入っている、あれっ後半の曲順が、なんで?、となりました。せめて昔の曲順のうしろに追加してほしかったなぁ。

2023-11-29

Vol.1 / Chris Botti

 

Chris Botti(クリス・ボッティ)はアメリカのトランペット奏者。ブルーノート・レコードからの2023年ニューアルバムです。YouTubeでスティングやスティーヴン・タイラーとの共演を観てそのイケメンぶりは知っており、すでに60歳を超えていますがジャケットを見ると今なお健在(&貫禄)のようです。プロデュースはデヴィッド・フォスター。ドラムスにヴィニー・カリウタの名前もあります。

さらにバラード集となっているので人気作品になることは間違いないでしょう。今回は「自分とバンドのプレイ、そして自分が大好きな曲を演奏することにフォーカスした」とのことで、じっくりトランペットを聴かせています。たとえばマイルス・デイヴィスのトランペットバラードとは音色もアクセントも違うもんだなぁと思います。マイルスは孤独を深く感じますが、クリスのは優しさと包容感のような。というわけで夜に静かに楽しむアルバムとしてジャズファン以外にもオススメできると思います。

ここは敢えてマイルスが演じた曲をリコメンドしましょう。5.Blue In Green はマイルス好きなら聴かずとも思い出すことができるでしょう。音使いの違いがわかると思います。ピアノがちゃんとビル・エヴァンスしてくれて嬉しい。続く6.Someday My Prince Will Come はとても優しく響きます。8.My Funny Valentine はトランペットの音の美しさに呼応するかのようなヴァイオリンの艷やかな音色が印象的です。

2023-11-28

Liquid Spirit / Gregory Porter

 

Gregory Porter(グレゴリー・ポーター)はアメリカのシンガーソングライター。3rdアルバムである本作と次作「Take Me to the Alley」はベストジャズボーカルアルバム部門のグラミー賞を受賞しています。2013年は僕にとって豊作の年であり、その中で最も聴いたのはどれかと言えばこの作品になります。その深くて豊かなバリトンヴォイスに魅了され、YouTubeでその風貌をみて関心を持ち、1st&2ndもすぐに購入した次第です。

声質や歌い方も僕好みであったのですが、アルバム全般を通してとにかく楽曲がいい。そして音質が良い。何度も何度も聴きましたがまったく飽きることがなく、1曲1曲を味わって聴いていました。その音質の良さからスピーカーやヘッドフォンを試すときにも必ずかけていました。結局聴き入ってしまって、音質を評価できないのが難点でしたが。その後も何枚かリリースしていますが、気に入っているのはこの3rdアルバムです。

これまた全曲オススメのアルバムですが、聴かせるバラードをピックアップします。4.Water Under Bridges 、7.Wolfcry 、13.When Love Was King 、14.I Fall In Love Too Easily を聴いてみてください。バリトンヴォイスっていいなと思います。あまりに家でかけまくっていたこともありますが、幼い娘でさえ口ずさむほど印象的なメロディです。敢えて印象的な曲をひとつだけ、8.Free クセになるリズムとパンチのあるヴォーカル曲です。

2023-11-27

人口減少時代ですなぁ

 

総務省によれば12年連続で人口は減少しており総人口でも昨年55万人減っています。娘が就職するであろう5、6年後は会社はもちろん仕事をとりまく環境もさらに変化しているでしょう。人口減少によって、労働力人口不足は深刻です。ドル高ユーロ高は常態となり、賃金アップできる企業は輸出あるいは国際企業のみで、原材料費が上がり物価高騰を招き消費生活は苦しいままです。安全志向の若者は賃金アップ企業に流れ、中小企業は求人しても応募が少なく雇うのが難しい状況は変わらないと思います。

現時点でも、スーパーのセルフレジ化は急激に進みました。キャッシュレスも同様です。商品点数が多いので有人レジに進もうとしたら外国人スタッフに日本語で丁重に断られました。人手不足なわけです。日用品や食料品は単価を上げられないので省力化するのは当たり前。単価が高くて価格競争している家電やガジェットはネットで購入するものです。人間が対応してくれるのは利益率の高いブランド品など高額な富裕層向け商品だけ、となっています。

BtoCだけでなくBtoBも例外ではありません。WEBで申し込み、お試し利用、契約はクラウドサイン、質問にはAIが対応、です。営業スタッフが説明しに参りますなんてのは、よほどプレミアムな案件のみとなるわけです。セールスなんて言葉がありましたが、必要なものはこちらから言いますから、不要なものは提案しないで、となりました。営業スタッフも説き伏せて買ってもらうなんて行為を嫌がりますし、もっと効率的に仕事を進めたいと思うでしょう。

すでに会社のあらゆる部門で働き方は変わっています。会社のあり方、社長のあり方、雇用のあり方ももっと変わっていくでしょう。そのための準備を考えたいと思います。

2023-11-24

Live in Nyc / Gretchen Parlato

 

Gretchen Parlato(グレッチェン・パーラト)はアメリカのジャズヴォーカリスト。リオーネル・ルエケとの2023年作品「Lean In」でも取り上げました。彼女を知るきっかけとなったのが2013年のこのライヴCDです。DVDとセットになっていて映像でもニューヨークの小さめのハコでの演奏を楽しむことができます。ジャズクラブを経営していたときにこんな雰囲気を醸すことができたら素敵だなと思っていました。

参加メンバーとしてドラムスに旦那さんのマーク・ジュリアナケンドリック・スコットの叩く姿を観られるのがうれしい。彼らが創造的で繊細なビートを刻むのかがよくわかります。音質もとても生々しくて近距離で叩いているかのよう。そこにグレッチェン独特の歌が繰り広げられて幻想的な世界を描いていきます。2013年当時のニューヨークを象徴するサウンドがそこにあると感じることができます。

ハービー・ハンコックの1.Butterfly でのグレッチェンのスキャットと手拍子ですぐに世界に惹き込まれ、そのあとずっと続きます。ベースやドラムスが入ってきてこの音が当時グラスパーを始め新しいジャズの音なんだと知ります。2.All That I Can Say ではケンドリックの重くて引っ掛かるリズムが印象的。シンプリー・レッドの5.Holding Back the Years では新しいジャズによるカヴァーになっていてイイ雰囲気です。そして幻想的でゆったりとしたオリジナル9.Better Than で本ステージ終演となります。

2023-11-22

meets 新日本フィルハーモニー交響楽団 / 渡辺貞夫

 

ナベサダさんこと渡辺貞夫が2023年4月29日に、35年ぶりという新日本フィルハーモニー交響楽団との共演をライヴ録音したものです。御年90歳で父より年上にもかかわらずこの活躍ぶりは本当にスゴいと思います。2019年の「Sadao 2019 - Live at Blue Note Tokyo」が小気味良い演奏で、スティーヴ・ガッドのドラムスもかっこよく気に入っていました。

本作の会場は“すみだトリフォニーホール”です。2015年にKORG社のDSD録音イベントがあり、ハンディレコーダーでクラシックの交響楽団を生録するという幸運に恵まれました。本作の音を聴いていて、その奥行きがあって心地よい響きが生録した音を思い出させてくれました。拡がりのあるオーケストラの真ん中でサックスを浮かび上がらせる姿が想像できる音になっています。

1.ナイス・ショット を聴いたのは中学生の頃、資生堂ブラバスのCMだったかなと思います。今聴くとサウンドはシティポップしていて古く感じません。3.つま恋 では哀愁のサックスがオーケストラとマッチしていてドラマチックです。全般にブラジル音楽に精通されたナベサダさんの音世界が繰り広げられます。面白いと思った曲は8.サン・ダンス でちょっと日本らしいメロディが印象的です。名曲9.マイ・ディア・ライフ を聴きながら、ナベサダさんが以降の日本のフュージョンに大きな影響を与えていることをしみじみ思い知ったのでした。

2023-11-21

Conviction / Kendrick Scott Oracle

 

Kendrick Scott(ケンドリック・スコット)はアメリカのジャズドラマーであり作曲家。デビュー時は同世代のロバート・グラスパーらと共演するなど新時代ジャズ界隈のドラマーで、2013年メジャーデビューとなる本作はKendrick Scott Oracle名義でのリーダー3作目。パット・メセニーGやテレンス・ブランチャードTpなどとの共演経験もあり、山中千尋さんのアルバムにも参加していたりします。

デリック・ホッジのアルバム同様、2013年に開業したパン屋の往復に最も聴いた作品のひとつで、聴いていると当時が蘇ります。グラスパーを始め新しいジャズの潮流に魅力を感じていたことと凄いジャズドラマーが次々に現れていたことが重なって、新譜を聴くのが楽しかった時期でした。新譜とは言ってもCDではなくiTunesでのダウンロードでしたが。

1.Pendulum の語りのあとから勢いのあるジャズドラムが展開され、後半になると壮絶になります。アラン・ハンプトンの印象的なヴォーカルで始まる2.Too Much はアルバムの中でもイチオシのポップな曲。マイク・モレノのギターが印象的です。タイトル曲7.Conviction でもケンドリックの超絶ドラムスを聴くことができます。10.Be Water で独白しているのは敬愛するブルース・リーだそう。

2023-11-20

社長の「進退」

 

社長自身の進退をどうするか。社長とはまさに人生を「選択」してきた人ですから、人からどうこう言われて決める人ではありません。その社長の勝手にするというのが結論です。しかし不死身ではないのでいずれ誰かに引き継ぐか、会社を売却や廃業するなど次をどうするか「選択」する必要があります。

有名社長が次期社長を指名して、結局また自分が返り咲くといったニュースを見かけますが、私個人の意見としては、なんだかしっくりこないという感想です。当人いろいろ考えての判断でしょうから他人にはわからないことだと思いますが、幻滅してしまいます。しがみつきとか保身とかそんな印象さえあります。有名社長なら意地でも会社にはタッチしない、報酬ももらわない、そんな気概を見せてほしいと思います。

事業を起こして成し遂げた、それを後進に譲ったのだから「自分は次に行く」と宣言してほしいのです。また新たな事業を立ち上げてチャレンジしていく姿を見せてほしい。また成功するかどうかなんてわからない。すでに財を成したのだから、そこから出資してゼロから始めるということです。有名社長でなくてもそうするべきだと私は思っています。

2023-11-17

Live Today / Derrick Hodge

 

Derrick Hodge(デリック・ホッジ)は、アメリカのミュージシャンでベーシスト。活動家でもあります。ロバート・グラスパー・エクスペリメントの「Black Radio」でもベースを弾いています。2013年の本作はブルーノートから発売された初リーダー作。すでにネオソウルを始めとする名だたるミュージシャンとの経験もあり、作品は豊かなバックグラウンドを想像させるものになっています。

2013年といえば個人的にはパン屋を始めた年でもあり、往復2時間の毎日でヘッドフォンでありながら様々な音楽をどっぷり聴くことができました。このアルバムはそんな中よく聴いた作品で、聴くと当時の風景や匂いが思い起こされるほどになっています。デリックの太いベース音が少しの高揚感と癒やしをもたらして、多様な楽曲とともによい時間を過ごすことができました。

ベースのハーモニックスで始まる1.The Real からいかにもデリック唯一無二の音になっています。3.Message of Hope も印象的なメロディーをベースで奏でて、一筋縄でいかないリズムとともに新しいジャズを提示しています。4.Boro March でいきなり超絶ユニゾンから太いベースラインに移るところがカッコいい。このアルバムでも好きな曲です。コモンが参加した5.Live Today はもはやヒップホップの名曲といえるでしょう。時代を超えて色褪せない作品になっています。

2023-11-16

完全再現ライヴと即興演奏ライヴ

 

先日観に行ったシネマ・コンサートは満員の盛況ぶりでした。いわゆる「完全再現」コンサートというものです。YouTubeなどでは大物アーティストやアイドルグループのライヴを垣間見ますが、ヴォーカルこそ生で歌っているものの、バックの演奏は生演奏ではなくマシン再生したものが多いようです。求められている音は、ストリーミングやCDの「完全再現」なのです。音源にないギターソロを延々と繰り広げるなんてしちゃいけないんです。

ファンは「いつも聴いていたものと違う」ことを嫌うようで、ミュージシャン側もファンの希望に沿ったものを提供しているのだと思います。セットリストもSNSで事前に予習してきていますから。となるとライヴの魅力は、迫力のある音響に加え、舞台演出やダンスパフォーマンス、MCにあるのでしょう。大勢のファンとともに盛り上がることもその醍醐味です。

今年10月11日に山下達郎さんのライヴを観に行きました。御年70歳ではありますが、ハリのある強いヴォイスは3時間通して衰えを知らず、僕としては人生をともにした楽曲の数々を原曲キーそのままで再現してくれたことに感無量でした。バックには腕利きのミュージシャンが顔を揃え、ソロを含めて「CDにはない即興演奏」を聴かせてくれたことが何より楽しく、これだからライヴはいいんだと感じさせてくれました。

山下達郎さんのようなライヴは数少ないと感じています。ジャズ生演奏に至っては、原曲といかに違うアレンジや即興によるソロプレイで曲を聴かせるかが勝負どころなので、「完全再現」には程遠い。演奏する季節やその日の天気、来場したお客様の様子、メンバー同士の呼吸、演奏家本人の調子など毎回違う演奏を提供するシェフの「おまかせ料理」なわけです。

音楽の楽しみ方は人それぞれですが、ぜひとも「おまかせ料理」の楽しみも味わってもらいたいと思いますし、そうした演奏を提供するミュージシャンが今後も活躍できることを祈っています。

2023-11-15

Bridges / Kevin Hays, Ben Street, Billy Hart

 

メンバーを紹介しますと、Kevin Hays(ケヴィン・ヘイズ)は米国ジャズピアニスト55歳。ブルーノートから3枚のアルバムを出していて、ソニー・ロリンズ、ベニー・ゴルソン、ジョンスコフィールドなど著名ミュージシャンとの共演歴を持つ。Ben Street(ベン・ストリート)は米国ジャズベーシスト。彼もジョン・スコフィールド、カート・ローゼンウィンケルなどとの共演歴があります。Billy Hart(ビリー・ハート)は米国ジャズドラマー82歳。ジミー・スミス、ウェス・モンゴメリー、ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィスとの共演歴というレジェンド。簡単に言えば3人共ジャズ界の超ベテランということになります。

お気に入り&定番のSMOKE Sessions Recordsからのスタジオ録音リリースです。ハイレゾで期待どおりの高音質です。落ち着いた演奏で安心して聴くことができます。もしニューヨークに行くことがあったなら、一晩はこうしたベテランの熟練の演奏を小さめのジャズクラブで聴いてみたいものです。

ウェイン・ショーターの2.Capricorn をピアノソロで奏でながら始まり、シンバルがゆっくり入ってくる。やがて3人のコミュニケーションとなる。ビートルズの4.With a Little Help from My Friends なんてまさにベテランによるアレンジ。気持ちよく聴けます。5.Row Row Row のワルツでの展開にケヴィンならではのオリジナリティを感じます。どの曲もほどよい尺で秋の夜長に心地よく聴けるアルバムです。

2023-11-14

Black Radio / Robert Glasper Experiment

 

2012年はエスペランサの作品と、このロバート・グラスパーの作品が発表された象徴的な年だと思います。奇しくもどちらのタイトルにも「Radio」の文字が。25年続いたCD時代が終わり楽曲をダウンロード購入する時代に。その後10年も経たずにサブスク・ストリーミングの時代がやってきますが。Robert Glasper Experiment名義で発表された本作もジャズという枠を軽々と超えて新時代の音楽を僕たちに見せてくれた傑作であると思います。

この作品が僕の深い共感を生んだのは、いままで聴いてきたジャズ、ソウルR&B、ファンク、レゲエ、ダブ、フュージョン、ロックといったあらゆるジャンルの要素を含んでいて、先人たちへのリスペクトも感じることができること。それを難しい顔して表現するのではなく、軽々と昇華して新しいサウンドを作りあげていることに「だから音楽って面白い」と思わせてくれたことでした。ジミ・ヘンドリックスがExperience名義で冒険的な音楽を作り上げたのと同じような雰囲気を感じます。

この作品も全て必聴の濃い作品です。敢えて3曲のオススメを選ぶとすれば、あのエリカ・バドゥを迎えた2.Afro Blue 、5.Gonna Be Alright (F.T.B.) 、ニルヴァーナの12.Smells Like Teen Spirit 。ドラムスにクリス・デイヴ、ベースにデリック・ホッジを迎えた最強布陣でのスゴい演奏と強靭な楽曲。10年以上経った今でも、新しい音楽はこの作品の影響下にあるのではないかと思うくらい必聴アルバムです。

2023-11-13

会社も「退場」するもの

 

組織を構成する「社員」も新陳代謝していくのが自然であると書きましたが、経済社会を構成する「会社」も同じく新陳代謝していくものだと思います。冷たい言い方になりますが、利益を出せない(税金を払えない)会社は市場から淘汰されていくようになっているということです。やはり税金を払って地域や社会に貢献してこそ会社の存在意義があると思っています。もちろん税金を払う以外にも、様々な貢献があると思いますが。

社長にとって「倒産」は仕事を失うだけでなく、多くの負債を抱えるという最も選びたくない選択肢です。しかし現実は月に何社も市場から退場を余儀なくされています。利益を出していれば「売却」という選択肢もあったと思うので、やはり利益を出せなかったということです。マイナスイメージしかないですが、こうして新陳代謝という作用があることは必要だと思います。

やっかいなのは、経営がうまくいっていないのに会社に区切りをつけられない社長自身です。多くの場合、金融機関などから借金を繰り返してなんとかキャッシュフローをポジティブにしているので、金融機関もその会社が潰れてしまっては困る(返済されない)し、社長自身も個人保証しているので、万が一のことがあったら多額の借金のみが残るという最悪の事態になるわけです。社員は転職すれば済む話しですが、社長はそうはいきません。だから倒産できないのです。

こうなってしまっては時既に遅しです。早め早めに経営判断していくためにもよき相談相手が社長には必要です。できれば取締役がその役目を務められればいいのですが、イエスマン体質にしていれば機能しません。建設的かつ時には厳しい意見を言ってくれる人が身近にいると助かります。

2023-11-10

Radio Music Society / Esperanza Spalding

 

Esperanza Spalding(エスペランサ・スポルディング)はアメリカのヴォーカリスト兼ベーシストとしてマルチプレイヤーでもあるそう。本作が出た2012年はCDを買わずにiTunesダウンロード音源のみで楽しむようになっていた時期で、当時このアルバムを繰り返し聴いていたのを覚えています。本作を聴いたとき「とんでもない才能がいるもんだ」と驚きました。彼女の歌はもちろん楽曲もすごくて、これぞいまのジャズだなと感心したものです。

彼女が表現したい音楽はとてつもなく広くて、深くて、自由。それが自在なヴォーカルにもベースラインにも表れているし、多彩な楽曲のカラーにも反映されています。ジャンルなんてとっくに超越していて、それを最高のハーモニーとリズムで聴かせてくれる傑作だと思います。ジャズとはそもそもそういうものなんじゃないのと軽々と提示してくれました。

全曲みっちり聴いて彼女の才能を感じてほしい。でも敢えて3曲オススメを挙げるとすれば、5.Black Gold 、ウェイン・ショーターの9.Endangered Species 、11.City Of Roses あたりかな。どの楽曲もその展開に驚きますし、追従する歌唱に思わず唸ります。それでいて耳に馴染むこの浸透力。僕の中では、スティーヴィー・ワンダーやパット・メセニーに比肩する才能だと思っています。

2023-11-09

「トップ25:ドバイ」を聴く

 

高校生の娘が海外研修でUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビやドバイに行きました。一週間留守番の親としても少しでもUAE気分を味わいたいと思い、Apple Musicのプレイリストでランキングにある「トップ25:ドバイ」や「トップ100:アラブ首長国連邦」を聴いていました。ちなみに都市別トップ25にはOsaka、Nagoya、Sapporo、Fukuoka、Kyoto、Sendai、Nahaもあります。

旅行のお供ミュージックとして、そこで流行っている音楽をチェックするのも面白いかなと思います。そこに住んでいる人がどんな音楽を好んで聴いているのかは興味があります。音楽は生活とともにあるので、音楽を聴くことで地元のお店や家庭、車の雰囲気に思いを馳せることができます。UAEのチャートはUSAのものが多い印象ですが、中にアラブらしい音楽が含まれていてそれが楽しい。もっと曲を調べれば、いま現在の国政状況も反映されているかもしれません。

サブスクではこんな楽しみ方も提供してくれていて感謝なのですが、サブスクがあることでみんな同じような曲を聴くようになってしまうのではとちょっと考えさせられます。レコードやCDしか無かった時代はもっと地元のアーティストがランキングを占めていたのではないか。できれば各国各都市のたとえば80年代のチャートも聴いてみたいと思ったりします。どこかにあるかな。

2023-11-08

säje / säje

 

säje(セージュ)はアメリカのコーラスグループ。グループ名はSara、Amanda、Johnaye、Erinの頭文字で確かな実力をもった4人。2021年第63回グラミー賞では1.Desert Song が “Best Arrangement, instrument, and Vocals”にノミネートされました。2023年デビューとなる本作では、バックにドーン・クレメント(p)、ベン・ウィリアムズ(b)、クリスチャン・ユーマン(ds)といったジャズメンバーが参加しています。

ジャズでコーラスといえばマンハッタン・トランスファーを思い出しますが、女性4人のコーラスは珍しいと思います。それぞれの声が美しく、緻密に複雑に調和しているコーラスはうっとりするほど。コーラスだけでなく、リードヴォーカルとしての実力もそれぞれしっかり聴くことができます。

美しい曲1.Desert Song やジェイコブ・コリアー参加の4.In The Wee Small Hours of the Morning を聴くと癒し系かと思いますが、憂いのある3.Never You Mind (アンブローズ・アキンムシーレTp.参加)やアップテンポの7.I Can't Help It (マイケル・ジャクソン。スティーヴィー・ワンダー作)あたりはジャズ濃いめでカッコいいです。ラストの10.Solid Ground/Blackbird のソウルフルなメドレーも静かに聴かせる曲でオススメです。


2023-11-07

liminal / 砂原良徳

 

砂原良徳は元電気グルーヴのメンバーでテクノミュージシャン。1998年「TAKE OFF AND LANDING」や1999年「LOVEBEAT」もオススメですが、この2011年作もとにかくまず音がスゴい。ヘッドフォンで聴いたら耳の中を縦横無尽に音が飛び交います。スピーカーで大きな音で聴くとさらに驚くような音が入っていて、ちょっと圧倒されてしまいます。僕は1音1音にこだわるアーティストが大好きでして砂原良徳はまさにその代表格だと言えます。

ミュージシャンは皆それぞれに音にこだわっていると思いますが、YMO世代としてはテクノと呼ばれるこうしたミュージシャンの活躍が嬉しい。テイ・トウワコーネリアス中田ヤスタカ、もちろん坂本龍一も。テクノとは言われていないかもですが海外ではマッシヴ・アタックエイフェックス・ツインあたりもすぐに思い出されるところです。彼らの作品での1音1音にかける時間や労力、選択力は僕には想像できないほどなんだと思っています。

たとえば1.The First Step でのライターのような音に続く26秒くらいからの音の拡がり、ビートの超低音、ノイズのような効果音など音数が少ないにもかかわらず凄い情報量です。3.Natural のウッドベースにノイズを乗せたような音のセンス。ここに至るまでいったいどれほどの音のなかからこれをチョイスしたのかと。YMOを進化させたような曲が続いていますが6.Beat It あたりのリズムセンスを聴くと、ああやっぱりスゴいなと。たった39分のアルバムですが長編を聴いたような感覚です。

2023-11-06

組織も新陳代謝していく

 

社長にとって最も聞きたくないスタッフの言葉は「会社を辞めたいんです」でしょう。志をともにして奮闘してきたスタッフであればあるほど、社長は凹みます。業績が芳しくないときには仕方がないと諦めるしかないのですが、これから成長しそうなときにこれを言われると「どうして」と相手も自分も責めてしまいそうになるものです。

しかしながら人が「辞めない」会社はありません。人間の細胞の新陳代謝と一緒で、自然現象と捉えるしかないでしょう。辞めていく人にとっては新たな職場が待っています。辞められた会社はまた新たな人材を獲得して奮闘していくことになります。昔と違って、人材は流動していく前提で社員を雇用し、一度辞めた社員がまた戻ってくることもある、くらいのつもりで経営していく時代になっていると思います。

雇用を維持しようとするのではなく、むしろ組織を時代にあわせて変化させ、個人にも変化と成長を促していく。時代に合わせた戦略のもと、ある分野では長期雇用が合うかもしれないですし、人が入れ替わることで新たな価値を生み出せる分野もあるでしょう。個人にとっても会社という器があわなくなれば、別の器を探して転職していくほうが無理がないと思います。「選択の時代」だからこそ、会社も個人も常に準備していく必要があります。

2023-11-02

都会の囀り(さえずり)

 

ベランダからいい声が聞こえてきたので録音しました。
レコーダーを近づけても、逃げることなく羽繕いしながら、
きれいな囀りを聞かせてくれました。

録音機材レコーダーはKORG MR-2 内蔵マイクにて収録
セッティングはMic Sens HIGH それ以外は全部Off
ファイル形式はWAV 24bit 192kHz ※SoundCloudにてダウンロード可

2023-11-01

SuperBlue: The Iridescent Spree / Kurt Elling & Charlie Hunter

 

Kurt Elling(カート・エリング)はアメリカのジャズヴォーカリスト。ブランフォード・マルサリスのアルバム「Upward Spiral」での歌唱が耳に残っていました。2023年本作は同い年のジャズギタリスト、チャーリー・ハンターとの共演で2021年にも「SuperBlue」という同名のアルバムを出していてグラミー賞を受賞しました。本作はその続編。

男性ジャズヴォーカルといえば、フランク・シナトラ、ビング・クロスビー、チェット・ベイカーといった名手を思い出しますが、女性ヴォーカルに比べて最近は目立った人が多くない印象です。僕はグレゴリー・ポーターあたりが好きで、カートも同じくお腹から声を出して声量がある感じで、バリトンヴォイスが好みなんです。

このアルバム、すごくカッコいいです。ジョニー・ミッチェルの1.Black Crow から勢いのあるジャズソウルです。カートの歌うメロディが複雑でクール。チャーリーのギターがファンキーな5.Bounce It もさすがの曲でジャンル超越してカッコいい。オーネット・コールマンのドラムンベースカヴァー、6.Only The Lonely Woman も聴きどころです。ジャズの枠を超えた音楽ファンに聴いてほしい快作だと思います。

2023-10-31

Emotion & Commotion / Jeff Beck

 

今年1月に他界したギタリストJeff Beck(ジェフ・ベック)の2010年作品。2000年代はちょっとエレクトロニックに寄り道していたジェフが、満を持してギターアルバムを出してきた!と久しぶりに気持ち高ぶりました。そりゃジャケットを見たら鷲がストラトキャスターを運んで翼を拡げているではないですか。大復活の予感とともにCDプレイヤーのボタンを押しました。

フィンガーピッキング、ボリューム奏法、アーミング、ハーモニクス、ストラトの音、目の前でジェフが弾いているかのようです。なんて美しい音なんだろう。ギターをここまで美しく弾けるのは彼しかいません。いまや天国で楽しそうに弾いているであろう神様です。もしかしたらジミヘンやボンゾやレイヴォーンあたりともセッションしているかもしれません。いやぁ涙なしには聴けません。

うっとりなギター曲のみピックアップしてみます。1.Corpus Christi Carol 、4.Over the Rainbow 、8.Nessun Dorma 、10.Elegy for Dunkirk 。ため息。鷲がストラトとともにジェフを持って行ってしまいました。悲しさはなく、思い出されるのはジェフのやんちゃで楽しそうなギターを弾く姿。こんなギターアルバムを残してくれたことに感謝しましょう。

2023-10-30

失敗したくない、けど仕事しなきゃ

 

覚悟するにしても、サポートするにしても、仕事して稼いでいくのに必要なのは「勇気」なんだと思います。その勇気が出ないとしたらそれは「失敗したらどうしよう」とか「あの人のせいで失敗したと言われたくない」「大変な思いをしたくない」とかとにかく心配なんだと思います。もしくは決定的な失敗や過ち、嫌な思いがあってすでに自己嫌悪に陥っているときもあります。

いわゆる「トラウマ」です。過去の失敗や嫌な思いが強く残っていて、一歩が踏み出せない。これは多かれ少なかれ誰にでもあることです。その過去の自分はまさに自分であるので、また繰り返すと思っているわけです。人生経験を重ねていくなかでそうなるので、若くても老いてもそういう状態はあります。しかしその自分も細胞は数年ですべて入れ替わります。昔の自分は今の自分ではないのかもしれません。

なんにでも効く薬は知りませんが、「仕事」に関しては、その仕事を「知る」ことが大切だと思います。その仕事はどういう目的で、何を実現しようとしていて、関わるステークホルダーはどんな登場人物で、成果を出すにはどんなポイントがあってなど、与えられた時間内にできる限り観察することです。感情を挟まず、情報を集めて、冷静に書き出していくわけです。そのなかで自分に試行錯誤できるところがあるんじゃないか、と思ったところが勇気の出しどころです。

結局、楽な仕事はないのです。楽じゃない仕事をやるから稼げるわけです。失敗しない保証もありません。結果的に成功するか失敗するかなんてわかりません。まずは相手を知って仕事にとりかかりましょう。

2023-10-27

Blackmagic / José James

 

José James(ホセ・ジェイムズ)はアメリカのシンガー。ソウルやヒップホップ、エレクトロニックを感じさせるサウンドですが、当時はジャズシンガーとして知りました。2010年の本作は2作目で、同年にインパルスからジャズどっぷりの「For All We Know」というジェフ・ニーヴのピアノとのデュエット作品を出しており、こちらも名盤です。耳に残る独特な歌唱のファンになり1stも本作以降の作品もダウンロード購入しました。

このあたりの年からiTunesで音源をダウンロードして聴くようになりました。だからCD棚に入っていないお気に入りアルバムがあるのです。そのままiPodと同期して持ち歩いて聴くスタイルが始まったのです。フィジカル(CDやDVD、レコードなど)のディストリビューターの仕事をしていたのに皮肉なもんです。CD時代からダウンロード時代に移ると同時に、ホセ・ジェイムズのような強力な新人が出てきたことも僕にとっては嬉しいことでした。

2.Touch を聴くと曲調はジャズファンクですが、サウンドもヴォーカルもジャズだなと思います。かと思えば5.Warrior のようなアプローチはホセらしいハーモニーを聴かせてくれて、グラスパー以降の新しい潮流を感じます。ヒップホップらしいイントロで始まるBlackmagic も彼独特の歌い方と浮遊感のあるサウンドが新しい何かを感じさせます。ホセ・ジェイムズはこのあとブルーノートに移籍してさらに躍進していくことになります。

2023-10-26

ソファから離れたMacを操作する

 

家のオーディオでは、古いMacbook(Air,11インチ)を音楽再生専用機として使っています。USBでDACと接続して主にApple Musicのストリーミングでハイレゾとか。ストリーミングにはなくてお気に入りのアルバムもあるのでCDリッピング音源やダウンロード音源もこのMacbookで再生しています。BluetoothはOFFにして必要のないアプリは立ち上げずに。場所もとらないし、クラウド同期しているのでライブラリの運用もiPhoneとの連携も良好です。

リビングオーディオですから、このMacbookはオーディオのそばに設置していて、聴くのはちょっと離れたソファで、となります。立ち上がっていちいちMacbookを操作しに行くのは面倒。つまりリモコンしたいわけです。選曲時にアーティスト名を入力したり、過去のアルバムを閲覧したり、そのまま遠隔から操作したい。

先日仕事用のMacbook(M1)のmacOSをSonomaに更新したら、アプリケーションのその他に「画面共有」というアイコンが追加されていました。さっそく接続すると、古いMacbookの画面が手元のMacbookにも。(画面共有の方法

手元のMacに、向こうのMacの画面が。手元で操作できます。

実は以前からちょっと面倒な方法で実現できていたのですが、Sonomaになって簡単に画面共有できるようになったのでした。こうしてソファから選曲や曲送り、プレイリスト作成だってできちゃいます。Bluetoothで飛ばしているわけではないので、ハイレゾをハイレゾで(USB→DAC)聴けますし、仕事のメールしながら、向こうのMacを操作したりして、と自己満足。

2023-10-25

Uncle John's Band / John Scofield, Vicente Archer & Bill Stewart

 

John Scofield(ジョン・スコフィールド)はアメリカのジャズギタリスト。Uncleってくらいで御年71歳。マイルス・デイヴィスの「Decoy」(1984年)で存在を知りました。このアルバムはバックにブランフォード・マルサリスSaxやダリル・ジョーンズB.といったスティングのバンドメンバーが参加していて、その研ぎ澄まされたサウンドたるやとてもカッコいいアルバムでした。

独特のギターサウンドとウネウネしてアウトしていく音使いが彼の特徴です。同世代で並び称されるパット・メセニーとの共演アルバム「I Can See Your House From Here」を聴くとふたりの個性の違いがよーくわかります。バラード「Message To My Friend」は中でも本当によく聴きましたが、ふたりの口調の違いに笑みがこぼれます。ジョンは以降も活動的でジャムバンド方面でファンキーな演奏も聴かせてくれてこちらも楽しいです。

2023年本作はヴィセンテ・アーチャーB.とビル・スチュワートDr.といった名うてのミュージシャンとのトリオ演奏で一聴は静かでシンプルな演奏だと思います。その分ジョンの多彩なタッチのギターサウンドや他楽器をじっくり高音質で楽しめます。1.Mr. Tambourine Man からしっかりアウトしていく彼独特のフレーズ満載です。3.TV Band でのジャムもなにやら楽しい。5.Budo あたりまでくるとこれは相当なジャズだなと感じます。のんびり聴くつもりが前のめりで聴いてしまいます。

2023-10-24

Wake Up! / John Legend & The Roots

 

The Roots(ザ・ルーツ)はアメリカのヒップホップグループ。ドラムスのクエストラヴを筆頭にギター、ベース、キーボードも生音のバンドにブラック・ソートのMCが乗っかるというのが特徴です。2010年の本作は、リードヴォーカルにJohn Legend(ジョン・レジェンド、アメリカのシンガー)を迎えて、R&Bとヒップホップの濃いところを抽出した名盤となっています。

ヒップホップの中でもこのザ・ルーツが大好きで1995年の「Do You Want More?!!!??!」から本作まで10作ほど買い続けて聴きました。理由はやはり生音バンドであるということ。僕がバンドをやっていたからだと思いますが、その場で演奏するグルーヴを強く感じます。特にクエストラヴのドラムスの音が好きです。有名なジョン・レジェンドのVo.も素晴らしいソウルでシャウトするとそりゃ盛り上がります。

そんな彼らの共演を冒頭1.Hard Times から飛ばしてきます。イントロからリズムに入るあたりは毎回鳥肌でこれぞブラックミュージック!と叫びたくなります。そしてこのアタックの強いギターのサウンド、痺れます。続く2.Compared to What のクエストラヴこそヒップホップドラマーとしての魅力を見せつけてくれます。4.Our Generation もこの共演ならではのかなり濃いサウンド。このあとも彼らの古き良きR&Bソウルへのリスペクトを感じる、ヒップホップファン以外でも楽しめる作品となっています。