2024-07-26

Evergreen / Julius Rodriguez

 

Julius Rodriguez(ジュリアス・ロドリゲス)はアメリカのマルチ奏者&作曲家です。ドラマーとしても活動しているそうですが、この2024年作でも鍵盤、ギター、ベース、ドラムス、プログラミングなどなんでも一人で演奏しています。ジャズのみならず、ヒップホップ、テクノなどジャンルを超越して彼の音世界を展開しています。現在25歳とのことで、若くて凄い才能です。

サウンドデザインのことを書きましたが、その視点で聴いても面白いです。モノラルのように中央に音を集めておいて一気に左右に空間を拡げたり、細かく音を移動(パン)させたり、後方で街の雑踏を混ぜたりというように、白黒から極彩色まで使い分けて、曲そのもののイメージを伝えています。もちろん演奏技術や曲の進行も秀逸なのですが、それもあくまでパーツであるというような位置づけ。

2.Funmi’s Groove を聴けばその極彩色ぶりがわかると思います。曲としても印象に残る7.Run To It (The CP Song) はミッシェル・ンデゲオチェロと共作とのことで、ポップ性が光る作品。キーヨン・ハロルドTpが参加している8.Love Everlasting も気持ちのよい曲でサウンドデザインが効いています。Apple Musicでは空間オーディオ(Dolby Atmos)で聴くことができます。スピーカーでサラウンドもお持ちであればぜひ。

2024-07-23

サウンドデザインについて

 

僕が80年代のヒット曲を聴いていたりすると、家族に「いかにも昔の音って感じ」と言われてしまいます。この頃の音楽制作では、デジタルによる機材の進歩が始まり、かなりの創意工夫で現場は苦労が多かったと思います。DTMソフトの操作性はもちろん、CPUもメモリもハードディスクも限界が低くてバグやクラッシュで大変だっただろうなと。それでもマイケル・ジャクソンやプリンスの音を聴くと時代を超えたチカラを感じる音を出していて、スゴいなと思います。

それが2010年代にもなるとデジタル技術は進化して、アメリカのアーティストを筆頭に革新的な音作りになっていきます。特にサウンドデザインといわれる音像や音場、倍音や位相、エコーの処理など細部にわたってコントロールできるようになって、キャンパスに絵を描くように音作りされています。オーディオ的にはイヤフォンやヘッドフォンで聴くリスナーが多くなって、耳の中に拡がる空間表現を楽しむようになったことも関係していると思います。

例えば、個人的な印象になりますが、ハイハットやアコギなどの高域成分は左右に思い切り振って、ベースのような中低域は真ん中よりちょっと下に厚めにノリよく。超低域から高域はシンセで広大な空間を意識させて。ヴォーカルやコーラスがひきたつように全体をバランス調整している。昔のようにライヴでの演奏位置に配置するだけではない印象です。

20年代の今はさらにDTMや音作りのソフト技術が進化して、ハイレゾでキャンパスが最大限に広くなり、空間オーディオによって音像をさらに細かく位置づけできるようになって、サウンドデザインは驚くほどクオリティの高い楽曲が増えていると思います。

リスナーのリスニング環境も多様化しているので、音楽制作の現場もいろいろやることが多くて大変だろうなと推測します。ソフトの進化やAIによる工数削減はあるものの、作詞や作曲だけでなく、サウンドデザインをどうするかについてもクリエイティビティが問われる時代になっていると思います。

2024-07-19

A Duo / Matt Holborn & Kourosh Kanani

 

Matt Holborn(マット・ホルボーン)はイギリス、ロンドンを拠点にしているヴァイオリニスト。Kourosh Kanani(コロシュ・カナニ)もロンドンで活躍するギタリスト。10年以上一緒に演奏してきたという彼らは、ジャズやロックをはじめペルシャ音楽やインド古典音楽など様々な要素をバックグラウンドにして即興演奏の活動をしているそうです。

2024年に配信開始した本アルバムは一聴してあのジャンゴ・ラインハルトGとステファン・グラッペリVnの演奏を思わせる音楽です。マヌーシュ(フランスやベルギーで生活するロマ民族、ジプシーといわれる)ジャズとしてジャンゴをはじめ独特なスタイルですが、遠く日本の僕たちにもなぜか耳馴染みのよいサウンドだと思います。

ジャズスタンダードの3.You and the Night and the Music や5.Someday My Prince Will Come 、8.I Fall In Love Too Easily の彼ららしいアレンジや即興演奏は新鮮な印象です。とりわけオリヴァー・ネルソンの6.Butch and Butch は最近ブルース耳になっている僕に響きました。アコースティックでさわやかで湿気の少ないサウンドで部屋を満たせば、異国にいるかのよう。暑い夏にオススメです。

2024-07-16

今のギターはこれだ!“キングフィッシュ”

 

久々にギターに手を伸ばしたくなった(実際にしばらく弾いた)音源&映像をYouTubeで知りました。Christone "Kingfish" Ingram(クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラム)、1999年生まれ25歳。アメリカ、ミシシッピ州出身のブルースギタリスト&シンガー。グラミー賞をはじめ数々の受賞歴ありと。

Fender Signature Sessions

まずは弾きまくるときのギター音が好み。このくらい歪ませて、伸びがあって、ネバりがあって、フレーズもいやはやカッコいい。ビデオを観ているとあまり指板は見ない。曲の変わり目くらい。次の展開のときにドラムスにチラッと顔を向けるのがいい。で、クリーントーンやちょい歪みの音もいい。もちろん歌もハートフルさが伝わってくる。

大好物なスティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョン・メイヤーはもちろん、ゲイリー・ムーア(ブルース期)やハイラム・ブロック、やっぱりB.B.キングも想い起こしました。キングフィッシュのギター音は僕が出したい音に近いかもしれない。気持ちよ〜く聴いています。今年2024年発表のライヴ音源もすごくよかったのでオススメ。

2024-07-12

Wild Is Love / Naama

 

Naama(ナーマ、Naama Gheber)はイスラエル出身、ニューヨークで活躍するジャズシンガー。2012年にはテルアビブでジャズの声楽を学び2015年に奨学金を得てニューヨークへ。ライヴ経験を積んで、2024年本作は4作目のリリースとなっています。今回は名手ピーター・バーンスタインGを迎えての作品です。

世の中キレッキレの曲が多くそれもいいんですが、たまにはこうしてリラックスムードで音楽に浸りたくなります。正統派で歌い上げ過ぎず、ときに語りかけるようで、粋なスキャットも聴かせてくれます。ギターやバックの演奏もあくまでナーマの歌唱を支える優しい演奏。ジャズクラブでその場に居合わせたら「ん〜いい」となるでしょう。

ここはピーターのギターとの共演曲をオススメします。2.Who Am I の気だるさもいい感じです。5.From This Moment On のスイングもノリよくカッコいい。ナーマの実力を知る6.I'm Glad There Is You はデュエットで落ち着いた曲。どれも2分〜4分程度の作品なので無理なく、しかもハイレゾで楽しめるアルバムです。

2024-07-09

ジャズ・ロックその3

 

前回、ジャズ・ロックへの扉をジェフ・ベックが開いてくれたことを書きましたが、もうひとりいます。エドワード・ヴァン・ヘイレン(エディ)です。「僕が両手で押さえることを、彼は片手でやってしまう」的なことを言わしめたスーパーギタリスト、アラン・ホールズワースを世界中に紹介してくれたのです。ギター雑誌でも盛んに取り上げられていたのがアルバム「Road Games」でした。

フレーズが特異すぎて何を弾いているのかわからないけれど、ものすごく速くて滑らか。のちのちエディが影響を受けていることがわかってきました。僕もすっかりはまって彼のアルバムを全部手に入れてしまいました。

エディからはもうひとつ。インタビューで「最近何か他人の曲を聴いたか」との問いに「ブランドXがすごかった」的に答えていました。調べるとフィル・コリンズがドラムスとして在籍した時期もあるバンドでした。ポップ期のジェネシスや“恋はあせらず”のイメージからはかけ離れた凄腕ドラミングぶり。レコード屋に行ってブランドXの輸入盤LPを探して集めたのが懐かしい。

ここでもジョン・グッドソールGがこれまた凄腕ですが、気に入ったのはパーシー・ジョーンズのベースでした。当時も今もフレットレスベースの音が大好きで彼のフレーズは本当にカッコいい。

ジャズ・ロックはギタリストが凄いことはもちろん、ベーシストやドラマーがこれまたとんでもない演奏力であったことがギター少年には多いに響いたのです。アラン・ホールズワース関連を集めれば、トニー・ウィリアムスDrやビル・ブルーフォードDrのアルバムにも行き着いて、ジャズやプログレにつながっていったというわけです。

2024-07-05

Soul Jazz (feat.Vincent Herring) / Something Else!

 

アメリカのアルトサックス奏者、Vincent Herring(ヴィンセント・ハーリング)によるプロジェクト“Something Else!”の2024年デビュー作。僕の大好きなSMOKE Sessionsからのリリースで今回も熱い演奏を届けてくれました。メンバーにはウェイン・エスコフェリーTSをはじめジェレミー・ペルトTP、ポール・ボレンバックG、デヴィッド・キコスキーP、エシエット・エシエットB、オーティス・ブラウン三世Drという名手たちの共演となっています。

アート・ブレイキーやホレス・シルヴァーたちのハードバップ〜ファンキージャズは、さあ今日もがんばって仕事しましょ、ってときの音楽にぴったりで、元気が出るし緊張を和らげて余裕も生まれるというプレイリストに欠かせない存在です。もちろん仕事が終わったあとの“ぷはーっ”にも最適。ほぐされます。今作はいいとこ取りで、録音も選曲、選フレーズも最高の一枚となっています。

1.Filthy McNasty で気持ちをアゲていきましょう。各パートのソロも短めに小気味よく進んでいきます。なかには4.The Chicken なんてファンク定番曲やハービーの5.Driftin' も。いぇー!ってなりますね。6.Slow Drag なんて絶妙な気怠さで、さすがベテランの演奏。おなじみコルトレーンの8.Naima ではソウルフルなベースラインで気持ちよいアレンジ。ギターの音もいい。思わず体が動いてしまうそんな“ソウルジャズ”アルバムです。

2024-07-02

ジャズ・ロックその2

 

僕のようなギター少年にとってジェフ・ベックは特別な存在でした。ギター雑誌では「Blow by Blow」(1975年、邦題:ギター殺人者の凱旋)の“Scatterbrain”や“Cause We've Ended as Lovers”(邦題:哀しみの恋人達)のTAB譜が載っていて、エレキギターのあらゆるテクニックが盛り込まれているから、ぜひ弾いてみよと。しかし一聴して「無理」と思い、まずはスモーク・オン・ザ・ウォーターを練習することにしたのでした。

たぶん「Blow by Blow」にジャズっぽさを感じていたんだと思います。これはコード進行が容易ではないんだと。そしてジャズ・ロックを感じることになったのは、「Wired」(1976年)そして「There and Back」(1980年)を聴いてからでした。

特にキーボードを弾くヤン・ハマーがギターのようなフレーズをビシバシと掛けてきて、ジェフも凄いフレーズで呼応するという丁々発止のやりとり。痺れました。これがジャズかと。聞けばヤン・ハマーはマハヴィシュヌ・オーケストラ出身だと。

ジョン・マクラフリンG率いるマハヴィシュヌ・オーケストラとチック・コリアP&Key率いるリターン・トゥ・フォーエヴァーが、僕が思っていたジャズ・ロックバンドでした。マクラフリンのギターはジェフをさらに高速にした演奏。リターン〜にはアル・ディ・メオラが在籍していた。ここで原体験とつながったのでした。そしてマクラフリンもチックもジャズの帝王マイルス・デイヴィスのところにいたのだと。マイルス系譜恐るべし。

2024-06-28

Brasil / Lee Ritenour and Dave Grusin

 

ご存知かと思いますが念のため。Lee Ritenour(リー・リトナー)はアメリカのジャズギタリスト。Dave Grusin(デイヴ・グルーシン)はアメリカのジャズピアニスト。古希と卒寿というレジェンドたちは1985年に「ハーレクイン」で二人名義のアルバムを発表しています。

2024年の本作にもブラジルのシンガー・ソングライター、イヴァン・リンスが参加しています。彼の1988年作「LOVE DANCE」が大好きでよく聴きました。広く澄みわたるような歌声とブラジル音楽のコード進行、ポルトガル語のニュアンスが今でも新鮮に響きます。本作4.Vitoriosa でも健在で嬉しくなりました。

サンパウロの女性ヴォーカリスト、タチアナ・パーハが歌う1.Cravo e Canela や2.For the Palms でも聴けるハーモニカが郷愁なナンバーで気持ちよしです。6.Stone Flower では熱の入ったサンバ演奏とオーディオ好きも裏切らない高音質ぶり。これからの季節に部屋を爽やかで涼やかな音で満たしてくれます。


2024-06-25

ジャズ・ロック原体験

 

スペース・サーカスを聴いて、ジャズ・ロック熱が再燃しています。“Space Circus”という曲があるリターン・トゥ・フォーエヴァーを聴き出したらあれもこれもになってしまいました。

そもそもジャズ・ロックという言い方をするのかわかりませんが、僕にとってはインストで技量に優れたミュージシャンによる演奏と複雑な展開のハードな楽曲を指しています。プログレとかフュージョンとかとも被りますね。エレキギターを熱心に弾いていた学生時代に好んで聴きました。

高校生の頃ラジオで、ハードロック特集だったのに、アル・ディ・メオラの“Race With Devil On Spanish Highway”(邦題:スペイン高速悪魔との死闘)がかかったのが初体験の記憶。超絶ユニゾンに痺れました。



大学時代では、先輩方とのバンドでライヴ演奏した(挑戦した)のがゲイリー・ムーアG擁するコロシアムIIで“The Inquisition”。キーボードの先輩がプログレマニアで推薦してきたわけですが、難しくて途中挫折しそうになりました。ジョン・ハイズマンのドラムスもエラいこっちゃです。



これが僕のジャズ・ロック原体験です。世の中にはこんなに凄い演奏をする人が存在しているんだと驚いたわけです。わが家のCD棚にも象徴的な盤が多くあるので、次々にひっぱり出して聴いています。

2024-06-21

Aberdeen Blues / Luke Sellick & Andrew Renfroe

 

Luke Sellick(ルーク・セリック)はカナダのジャズベーシスト。Andrew Renfroe(アンドリュー・レンフロー)はアメリカのジャズギタリスト。ふたりともニューヨークはジュリアード音楽院にて学び、多くのサイドマン実績を持つ若手ミュージシャンです。ふたりはこの2024年の作品以外にもいくつかアルバムやシングルを発表していて、彼らの音楽が支持されていることを示しています。

デュエット好きの僕としては見逃せない作品でした。静かで和やかな雰囲気ながらも、選曲や音色に特徴があって彼らの世界に惹き込まれました。アンドリューのギターの音色はタイトルにBluesとあったりして、古くからのブルースギタリストやジャンゴ・ラインハルト、ジョー・パスなどを連想させるものがあります。そして心地よい歪み感。フリーズペダルという鳴らした音を伸ばしたままにして、音を重ねていく奏法が印象的です。

マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルで有名な2.Ain't No Mountain High Enough やカーペンターズのカヴァーで有名な3.We've Only Just Begun のアレンジがなんとも心地よく耳に残ります。アンドリューのギターサウンドを堪能できる5.Northwest Passage はお気に入りの1曲です。外の雨音とともに部屋でゆっくり聴きたい音楽です。

2024-06-18

「スペース・サーカス」が配信に!

 

先日、ひとり盛り上がる事件がありました。なんとApple Musicのおすすめにスペース・サーカスの2枚目「FANTASTIC ARRIVAL」(1979年作)が表示されているではないですか。見れば2023年に配信開始されていた...。一言、もの凄い演奏です。再発されていた中古CDをウイッシュリストに入れて数十ヶ月。5千円くらいの値付けに躊躇していた音源です。

スペース・サーカス。“四人囃子、プリズムと並び、70年代プログレシーンを代表する異端派プログレッシヴ・ジャズ・ロックバンド”(ディスクユニオンより)とありますが、僕にとってはあの岡野ハジメさんのバンドです。岡野さんがベースを弾くPINKを聴きまくっていた大学時代。同じ大学の大先輩にあたります。DEAD ENDやL'Arc〜en〜Cielのプロデューサーでもあられます。

大学に入って何に一番驚いたかといいますと、先輩方の演奏のスゴいことでした。機材もさることながら、演奏力というか出し音が「もうこれプロなんですよね」というレベル。岡野さんのいらした時代から伝統的な文化だったのでしょうか。あーこれは追いつけないやと心の中で思っていました。

結局1枚目の「FUNKY CARAVAN」(1978年作)は中古CDを注文しました。ボーナス・トラックに“Live(at 明治学院大学431番教室 1976.11.1)”が入っているCDです。YouTubeにも音源があったので聴きましたが衝撃的な20歳の演奏です。あの大学時代に聴いたような音でした。
※1枚目はAmazon MusicやYouTube Musicでは配信されているようですが、Apple MusicやSpotifyには無い。なぜ...?

2024-06-14

Timing Is Everything / Eric Alexander

 

Eric Alexander(エリック・アレキサンダー)はアメリカのジャズサックス奏者。これまでにもOne For AllXaver Hellmeierのアルバムで紹介しました。55歳ながら多数のディスコグラフィーをもつベテランであり、名手として常連といえます。ニューヨークではスモールズあたりに出演されていてライヴも観ることができるなんて羨ましい。

彼のカルテット「My Favorite Things」(2007年)は一時ジャズ誌でも話題になりCDを購入しました。豪快なサックスがスピーカーから飛んできて、思わずボリュームを下げるほど。いやしかし元に戻して、存分にサックスを浴びるのが彼の作品の聴き方です。一度これを聴いてしまうと“ジャズを浴びてスッキリしたい”というときの定番になることでしょう。

軽快なシンバルワークの1.After the Rain を聴いて蒸し暑い季節の鬱陶しさも軽快に。印象に残るフレーズを連発する4.Big G’s Monk も聴いていて楽しくなります。6.Misty でのバラードもエリックの得意技でうっとり聴かせます。ハイレゾで音質面も余すところなく、これぞサックス・カルテットを味わうことができます。

2024-06-11

「ボン・ジョヴィ」観ました

 

ドキュメンタリー「ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight」を観ました。1時間以上の番組を4本立て。ジョン・ボン・ジョヴィは現在62歳。デビュー前から現在に至るまでの彼とバンドの歴史をたっぷりと観ることができました。

大学1年で“SUPER ROCK '84 IN JAPAN”に行ってデビューした頃のボン・ジョヴィを観たことはいまだに記憶に残っています。「夜明けのランナウェイ」ですね。MTVと同時に育ったロックバンドというイメージで、僕は就職してまもなく日本での衛星放送MTVの立ち上げに関わったので同世代感があります。このドキュメンタリーの前半でも多くのシーンが。

2022年にバンド仲間とのライヴでラストに「It's My Life」を演奏しました。実はあまり彼らの曲を熱心に聴いてこなかった僕ですが、演奏していて一番良かったのはこの曲でした。良いときも悪いときもいろいろあってこれからもどうなるかわからないけれど、今があるという思いを感じさせてくれました。

還暦なジョンは喉を手術して、声が思うように出なくて落ち込んだり。僕も目歯耳足と故障が相次いで、急速に老いを実感したこの数年。でも音楽が好きな気持ちは変わらないかなと。6月7日に彼らのニューアルバム「フォーエヴァー」がリリースされたばかり。同世代からエールを送られました。

2024-06-07

Seems / Kelly Green

 

Kelly Green(ケリー・グリーン)はニューヨーク在住のピアニスト&ヴォーカリスト。プロのベーシストである父親とともにジャズを学び、数々の演奏歴、受賞歴がある秀でたミュージシャンであるようです。分断された世の中への問題意識から音楽表現によって特に女性としての意思を伝えていこうというビジョンをもった方でもあります。

このアルバムでもヴォーカル曲、インストゥルメンタル曲、あるときは伝統的、そして現代的、テーマと即興というように様々なスタイルを際立たせて聴かせてくれます。そこにあるのは確かな演奏力と自由で前向きさが感じられる全体感。聴いていて楽しくなるはずです。

フルートと印象的なテーマで始まる1.Down That Road でオリジナリティ性の高いジャズグループかと思いきや、2.World of My Own でなんとも魅力的な女性ヴォーカルを聴かせ、3.Lonely One では日本の尺八を思わせる現代音楽アプローチからの自由なヴォーカル。そして4.Street Cleaning は一筋縄ではいかないバンドアンサンブル。多様ではありますが、彼女の思いを感じることができる演奏がこのあとも続きます。こういう作品があるからジャズは面白いと思うんです。

2024-06-04

「ボブ・マーリー」観ました

 

映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」を観て来ました。ボブ・マーリー関連の映像ソフトだけでもLD5枚、DVD2枚を持っているほど彼についてはある程度知っているので、へぇ〜という部分は少なかったのですが、俳優さんたちの演技が良かったのと映画館の音も迫力があって没頭して楽しめました。ただもうちょっと曲を聴きたかったかなぁ。

僕よりもかなり若い人でも「ボブ・マーリーは好きで聴きます」という知人はけっこういて、世代を超えた存在であることは確かだと思います。リズムやメロディーに優しさが溢れていて、人懐こいところが人気なのではないかと。(オススメ音源はこちら

僕はエリック・クラプトンの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」のギターをコピーしたのがボブ・マーリーの音楽との出会いかな。その後彼の音楽やレゲエを聴き込むようになったのは80年代も後半になってからだと記憶しています。生き様やライヴ映像での鬼気迫る姿という意味では僕にとってジミ・ヘンドリックスと同様な存在。語り継がれてほしいミュージシャンのひとりです。

2024-05-31

Reverence / Charles McPherson

 

Charles McPherson(チャールズ・マクファーソン)はアメリカのジャズサックス奏者。1939年生まれで我が亡き母と同じ。現在84歳。あのチャールズ・ミンガスとも60〜70年代に共演しているそうです。この2024年新作は師匠のバリー・ハリスP(2021年逝去)への追悼と尊敬の意を込めたライヴアルバムです。

数多の巨匠たちと共演してきたチャールズはもちろんクインテットの演奏はジャズへの敬意や情熱をヒシヒシと感じることができ、ああなんて素晴らしい演奏なんだと思います。それを僕の好きなSMOKEのライヴ録音(客席の反応最高!)で聴かせてくれるのですからありがたやです。往年の熱いジャズを最新録音で聴くならこのアルバムです。どうやったらこんなに良い音で録音できるのだろう。

1.Surge からうれしい演奏を聴くことができます。テレル・スタッフォードのトランペットが気持ちよく飛んできます。続くチャールズのプレイものっけから年齢を感じさせないフレーズで応酬してくれます。ジェブ・パットンの素敵なピアノで始まるスタンダードの3.Come Rain or Come Shine ではチャールズが気持ちたっぷりにあの印象的なメロディを吹いています。バリーに捧げるラストの6.Ode to Barry は軽快でユニークなナンバー。師匠の印象を曲にしたのかもしれません。全編にわたってドラムスとベースの音も最高です。

2024-05-28

いい音紹介〜スティーヴ・スミス

 

Steve Smith(スティーヴ・スミス)と聞いてジャーニーのドラマーであることは知っている人も多いでしょう。「セパレイト・ウェイズ」「オープン・アームズ」といったヒット曲で誰もが耳にしているあのサウンドです。スタジアム級のハードロックバンドで曲に合ったドラミングを聴かせてくれるこれぞプロのプレイはミュージシャンにも人気です。

もともとジャズドラマーであることも知られていて、このヴァイタル・インフォメーションというプロジェクトに専念したくてジャーニーを辞めたそうです。で、このバンドのドラムスを聴いてびっくり。ジャーニーとは全然違う。インド?タブラ?的でとても個性的(たとえば3.Interwoven Rhythms-Synchronous )。ところがこれが癖になるサウンドなのです。これがやりたかったのかぁ。

そしてなんと言っても音が素晴らしい。ライヴ録音ということもあり、現場感がビシビシ伝わってきます。小さめのハコで演奏されるドラムスの音ってこうなんだよなーと思わせてくれます。様々なリズムでシンバルからタムまでくっきりはっきりです。そして強力なバスドラ!

僕は家のスピーカーをセッテングしているときにこのCDをずっと掛けっぱなしにして位置調整しています。ギターやベース、キーボードとのアンサンブルも生々しい音で、目の前に各楽器が気持ちよく再現できているかチェックしています。小さめの音でもしっかりスピーカーを鳴らしてくれるオススメ音源です。

2024-05-24

PEACE / 渡辺貞夫

 

渡辺貞夫さんは1933年2月生まれとのことで、今年で91歳。僕の父が34年1月生まれで1歳年下の90歳。独居老人の父には毎週会ってその年齢の実情を見ていますが、とてもじゃないですが、立ってサックスを吹き続けるなんて異次元に思います。昨年に続いて今年2024年もこうして新作を発表されているなんて本当に驚きです。オフィシャルサイトを拝見すると全国ライヴツアー中だなんて。

日本のジャズ&フュージョン界に多大なる影響を与えているナベサダさん。多くの後進を育ててなお一線で活躍されていることに尊敬します。メンバーにイエロージャケッツのラッセル・フェランテP、パット・メセニー等と共演したベン・ウィリアムスB、レギュラーの竹村一哲さんDrのカルテットで、味わい深いバラードを聴かせてくれます。

戦争やその予兆が多発している世の中に、願いを込めて吹いている1.PEACE のアルトサックスがなんとも慈愛を感じる音色なんです。2.I FALL IN LOVE TOO EASILY や9.I'M A FOOL TO WANT YOU も大好きなスタンダードで、シンプルに思いを込めて吹く姿が目に浮かぶようです。控えめに生きる父の姿を重ねたりしてしまいますが、同時に老いに向かっている自分にとってもあるべき姿のようなものを聴かせてくれるような作品でした。

2024-05-21

Apple Musicをテレビでサラウンドで

 

私的小ネタですが、Apple Musicをテレビでサラウンドできるようになりました。先週“テレビ製品初!「Apple Music」のDolby Atmos® に対応”の記事を見つけて、わが家のテレビはLGなので早速やってみました。空間オーディオのプレイリストから再生するとテレビにDolby Atmosの文字が。テレビ→AVアンプ→5.1chサラウンドスピーカーから拡がりのあるサウンドが出ました。

以前“空間オーディオをスピーカーで聴いてみる”で、Macからサラウンドを再生して喜んでいたのですが、常時接続されているテレビ→HDMI(ARC)でできるようになったので、面倒なケーブル差し替えとか設定チェックとか必要無くなりました。Apple Musicをテレビのリモコンで遠隔操作できる便利さもグッドです。クラシックの空間オーディオが気持ちよくてお気に入りです。

残念ながらハイレゾは再生されません。ハイレゾしたいときはMac→DACで聴くことになります。まぁいいんです、正直サラウンドにはそんなに音質は求めていないんです。サブウーファー含めて気持ちよく鳴ってくれればいいと。

サラウンドといえば、こんなニュースも。“Disney+、DTS:Xに5/15から対応。映像と音声両面でIMAX Enhanced対応に”。目玉のクイーンの81年ライヴ「QUEEN ROCK MONTREAL」(大好きなライヴ映像。画質最高!)で試したのですが、IMAXヴァージョンを選択しているのに、音声(サラウンド)はDTS:Xになりません。AVアンプはDTS:X対応しているので、テレビ側の問題?わからん。しばらくドルビーサラウンドでガマンします。

2024-05-17

Beyond This Place / Kenny Barron

アメリカのジャズピアニスト、Kenny Barron(ケニー・バロン)も今年2024年80歳を迎えてなお、新作をリリースしているスゴいレジェンド。バークリー音楽大学から名誉博士号を授与されているんですね。現在もジュリアード音楽院で教壇に立っているとのことで、若手育成にも影響を与えている現役バリバリです。

昔、よく聴いていました”にも書いたとおり、僕はケニーの演奏が好きなんです。緩急自在で、出るところは出て、バックにまわるときはエレガントに振る舞う。独特のアウトフレーズにもニンマリしてしまいます。今回はおなじみの北川潔さんBに加え、若手敏腕のイマニュエル・ウィルキンスSax、ジョナサン・ブレイクDr、スティーブ・ネルソンVibを迎えた編成で仕上げています。

好きな曲1.The Nearness of You で始まるあたりが僕の新定番アルバムになる予感。繊細なイマニュエルのサックスがとてもいい雰囲気です。2.Scratch ではVib.を加えまさに緩急自在なバンドアンサンブルが聴けます。5.Tragic Magic 後半のジョナサンの嵐を呼ぶドラムプレイは聴きものです。モンクの9.We See でのサックスとのデュオでも余裕のあるケニーらしいプレイが聴けて楽しい曲です。

2024-05-14

音楽は脳の報酬である

 

NHKBSの番組で「ヒトはなぜ歌うのか」を観ました。研究している人がいるんですね。アフリカの熱帯雨林に暮らす狩猟採集民のバカ族は“10〜20万年前の遺伝的特徴を色濃く残している”ということで起源を探る対象としたようです。(参照:特集記事

打楽器のリズムや拍手とともに、狩りの成功を祈る歌が自然発生的に始まります。特徴は、

(1)全員が違うメロディーを歌っている
(2)それぞれのメロディーを重ねてみると「完全4度」の音の重なりが完成する

複雑なリズムとポリフォニー。ある人が違うメロディーに移るとすかさず他の人がそのメロディーを補う、といったジャズにも似た即興性を持っているのです。登場する博士いわく、

ビートが繰り返されると脳の「予測機能」が働き出し、次にどんなビートが来るか「予測」し始めます。予測することの快感に加え、裏切られることの快感もあります。予測の複雑さを脳が喜んで大きな報酬を感じると言います。

これ、音楽を聴くときの要素として、そうかもしれない!と思わせるものでした。そうか、僕は音楽を聴くことで脳の報酬を得ていたのかと。

『ヒトはなぜ歌うのか?』の答えは『集団の絆』のため、私たちは人とつながるために音楽を手にしたといっていいのではないでしょうか

音楽を聴くことで、人とつながっていることを感じるというのもライヴに行ったりすると頷けるところです。集団で生存していくために必要不可欠なものだったのかもしれません。

番組ではほかにも「女性たちが水浴びや洗濯の時に川面を叩いて複雑なリズムを生み出す『ウォータードラム』」も面白い音で印象的。認知症患者の脳の機能活性化にも効果の可能性があることも。再放送があったらぜひ観てみることをオススメします。 

2024-05-10

Three of a Kind: Made Up Melodies / Michael Valeanu, Jon Boutellier & Clovis Nicolas

Michael Valeanu(マイケル・ヴァレアヌ)はフランス人ジャズギタリスト、Jon Boutellier(ジョン・ブテリエ)もフランス人サックス奏者、Clovis Nicolas(クロヴィス・ニコラス)もフランス人ベーシスト。ニューヨークで活躍する3人による今年2024年トリオ作品です。

前回のデュオに続いてドラムスのいない、今回はギター&サックス&ベースのトリオです。ギターが伴奏としてもピアノのような役割で、低音はベースが担っています。リズミカルなオルガンのようにも聴こえます。ここでも3人が楽しく会話をしているような密な演奏を心地よく聴かせてくれて、幸せな気分になります。

優しくおしゃれな雰囲気で始まる1.Theodore Walter からなんていいハーモニーなんだろうって思います。お気に入りは6.Bohemian Dreams のメロディです。耳から離れずいつのまにか鼻歌してしまいます。静かなドラマとかで使われそうな音楽。8.Made Up Melody も独特のハーモニーで耳で追いながら聴いています。ジャズの気持ち良いところを抽出したような、素敵な曲ばかりですっかり和んでしまうアルバムです。ジャケットの3人の表情もいいです。

2024-05-07

いい音紹介〜ボブ・マーリー

 

グッとくる「いい音」の音源は、聴いていて気持ち良いだけでなく、スピーカーなどオーディオが自分にとっていい音で鳴ってくれているかどうかを確認する、いわゆるオーディオチェックにもなります。そしてもっといい音で鳴らしたいとも思ったりします。

今回紹介するのは、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの1973年メジャー1stの「Catch A Fire」の“ORIGINAL JAMAICAN VERSIONS”です。このJamaican Versionであることが大事です。ずっと聴いてきたいろいろ楽器やエフェクトが加えられた英国ヴァージョンではなく、まさにオリジナルレコーディングの音源が随分前に発表されたのです。僕はCDで聴いていますが、サブスクにもあったので↓に。いつもより大きめの音で再生してみてください。

あまりにも生々しい録音に驚いたものです。もともといい音なので、どんなスピーカーでもそれなりに力強く鳴ってくれると思いますが、問題は気持ちよく鳴ってくれるかどうかです。

特にこのぶっ太いベース。直球でお腹に響きます。膨らみすぎてほかの楽器や声がちゃんと浮かび上がってこないのも困ります。ボブの声はいい具合にエコーが効いています。分離のいいサウンドやバンド全体のグルーヴが目の前に存在していれば、からだが自然と動くと思います。

ディスク2では英国ヴァージョンも聴けるので比べても面白い音源となっています。残念ながらこのアルバムのベーシスト、アストン・バレットは今年2024年2月に亡くなってしまいました。そして5月17日にはボブ・マーリーの映画も公開されるそうです。

2024-05-03

Every Now And Then / Cory Weeds meets Champian Fulton

 

Cory Weeds(コリー・ウィーズ)はカナダのジャズサックス奏者。ジャズクラブのオーナーであったり、レーベルも所有してリリースしていたというベテランです。Champian Fulton(チャンピアン・フルトン)はアメリカのジャズシンガー&ピアニスト。ニューヨークで活躍しています。2024年本作は昨年のスタジオライヴ録音とのこと。

サックスとピアノのデュオということで、ドラムスやベースはいません。サックスは和音演奏しないのでピアノソロのときはほとんど独奏になります。デュオといえばビル・エヴァンスとジム・ホールの「Undercurrent」が有名で僕も好きな作品です。静かな中にも楽器そのものの音色をじっくり味わうことができて、二人が会話しているようで、密度が濃い演奏に惹き込まれます。

このアルバムではさらにチャンピアンのヴォーカルも楽しむことができて、これがとてもいい感じで、3.Too Marvelous For Words や4.Linger In My Arms a Little Longer Baby ではニューヨークのジャズクラブで一杯やりながら、なんて雰囲気を味わってみてはと。7.That's Not Your Donut はサックスのスイング感も味わえる素敵な曲です。リズム楽器がなくてもデュオでこれだけスイングできるってやっぱりジャズミュージシャンはすごいです。

2024-04-30

スピーカースタンドにスパイク付けた

 

ずぅーっとサボっておりました。スピーカースタンドのスパイクを付けるのを。買ったときから付属品であったのに、いつかやればいいやとナント2年も放っておきました。

スパイク付けなくても充分いい音だし、内向き角度とか動かしやすいし、もしかして付けないほうが低音の量感があって迫力あるんじゃないかと、自分を納得させておりました。

付属のスパイク付けたところ

さて聴いてみたら、やっぱり低域の量感減っちゃったよと思いました。ところが数分聴いているうちに、井上陽介さんのベースがはっきり見えるようではないか。低域がすっきりしただけでなく、ほかの楽器の音も前に出てきた気がする。よく聴くと低域の沈み込みも感じるようになりました。

スパイクの分、スピーカーの高さが増して、視聴位置での耳の高さに合うようになったのもよかったのかもしれません。面倒がらずになんでもやってみるもんですね。

2024-04-26

ONE STEP BEYOND / 井上陽介Trio

 

井上陽介さんは日本のジャズベーシスト。六本木のジャズクラブでは渡辺香津美さんG(復活祈願!)、則竹裕之さんDrとのトリオで数回ご出演いただきました。100席満員の観客は、飲食を忘れて没頭せざるを得ないほどの凄まじい演奏で毎度痺れさせていただきました。僕はリハからずっと拝聴することができて幸せな時間の思い出となっています。

2024年本作はオーディオ誌STEREO(202402号)に掲載されていて知りました。井上陽介さんのインタビューもあります。南青山から渋谷に移転されたジャズクラブ“BODY&SOUL”での昨年のライヴ録音とのことで、国立音大の生徒であった武本和大さんP、濱田省吾さんDrの若手とのトリオ3作目。24bit/48Hzでの録音も素晴らしく、会場の熱気とともに高音質で聴くことができます。陽介さんのベース音をしっかり鳴らすことができるかお試しください。

STEREO(202402号)P.28〜

香津美さんとのトリオ同様凄まじい演奏を聴けるのがタイトル曲4.ONE STEP BEYOND 。眼の前で陽介さんのベースをあっけにとられて聴いていた自分を思い出しました。3.COLORFUL WIND の武本さんの美しいピアノも聴きどころです。ビートルズナンバー2.DAY TRIPPER 、5.BLACKBIRD のように幅広い音楽好きもウェルカムで楽しめるのが日本のジャズクラブスタイルだと思っています。

2024-04-23

ラジオ生活

 

ラジオをタイムフリー/聴き逃しで聴くのはすっかり習慣になりました。座ってパソコンしているときはスマホからAirPlayで飛ばしてスピーカーから、動いているときはAirPodsを耳にして“適応型ノイズコントロール”にして家族の会話も耳に入るようにしています。外出時もラジオがしっかり聴けるのはバッファのせいでしょうか。地下鉄でもノイキャンにしてシームレスに聴けます。

大友良英さんの「ジャズ・トゥナイト」やピーター・バラカンさんの「Barakan Beat」「ウィークエンドサンシャイン」は1時間40分〜2時間ある番組なので、途中までしか聴かないかなと思っていたのですが、テキトーにずっと聴いていられます。どころか「へぇーそうなんだ」がけっこうあって、曲リストから拡がるサブスク探検は楽しい。

毎週番組制作するのはほんとに大変だし根気のいる仕事だと思いますが、リスナーとしてはラジオのこのリラックス感がいいんです。耳だけ拝借しているのがいいんでしょう。番組に時間制限もあるので、この番組が終わったら次のことしよう、とか切り替えできます。ラジオ、がんばってほしいメディアです。

もうひとつ好きなのはNHK-FMの「音の風景」という5分番組。フィールドレコーディングなんですがイマジネーション拡がります。目を閉じてぼーっと5分休憩。

2024-04-19

Big George / One For All

 

大好きなSMOKE SESSIONS RECORDSからの紹介です。2024年本作はNYのジャズクラブSmallsで結成されたというスーパーグループのアルバムです。メンバーは、エリック・アレキサンダーTS、ジム・ロトンディTP、スティーヴ・デイヴィスTB、デイヴィッド・ヘイゼルタインP、ジョン・ウェバーB、ジョー・ファンスワースDrに伝説のジョージ・コールマンTSをスペシャルゲストとするいずれも大変な経歴をお持ちのオジサマ方。

まさに百戦錬磨の余裕の演奏が繰り広げられます。スタジオライヴとはいえ、ワイワイ会話を楽しんでいるかのような演奏光景が目に浮かびます。3管〜4管ですからハーモニーも厚くてゴージャス。ソロまわしも一筋縄ではいかないフレージングでおおーっと声をあげること多し。そしてSMOKEはやっぱり音がいい!今回も24bit/96kHzで生々しく聴かせてくれます。

オススメはやはり大御所ジョージ・コールマン参加の3曲。4.Oscar Winner 、5.My Foolish Heart 、6.This I Dig of You をお聴きいただきたく。ジョージを中心とした衛星たちとの共演とでも言いましょうか。89歳ですけど、サックス音にはあのマイルスとの共演が蘇ります。ちょっと世の中暗くて、流行り歌にも鬱っとした曲が多いように思いますが、そんなときはこうしたベテランのポジティブで包容力のある演奏を聴くのもいいのではないでしょうか。

2024-04-16

サウンドデザイナーの清川さん

 

サウンドデザイナーの“清川進也”さんという方がいます。一瞬「私?」と思ってしまう一字違い、どころか0.5文字違い!?。3月末に放送されたNHKの「音恵〜オンケイ〜」という番組で知りました。マイクとレコーダーを持って町中華とボクシングジムに潜入。音をハンティングし、映像とともに編集するという僕にとってはとても興味深い内容。

町中華の厨房での「美味しそうな音」の捕獲では、食材を切る音、叩く音、中華鍋で調理する音をゲット。リズミカルで特徴的な音。プロボクサーのパンチ音、息のリズム、フットワーク音などどれも生々しい緊張感のある音。それらを嬉しそうにマイクに収める清川さんの表情がなんとも楽しそうで、フィールドレコーディング好きとしては大いにニコニコしてしまいました。名前が似ているだけでなく趣味も似ているかもなんて。

ふだん意識することのない、どうってことのない音でも、ちょっと意識して捉えると「ああ、いい音だな」って感じることがあります。風がそよぐようなほぼ無音という背景に、鳥のきれいなさえずりがひとつの線を描くといった対比があったり、遠くに聞こえる雑踏や地鳴りに躍動感を感じたり。僕がたまにやっている「ちょっとフィールドレコーディング」では、サンプリングのような単品の音ではなくて、周囲の音を含めてひとつの風景を成しているような映像のような感覚を楽しんでいます。

2024-04-12

Back Burner / Martin Budde

 

Martin Budde(マーティン・ブッデ)はアメリカのジャズギタリスト。シアトルを拠点に10年間くらいプロとして活動しています。レッスンでギターを教えたり、メリディアン・オデッセイというジャズグループの一員としてサイドマンとしても活躍するなど、実は多くのこうしたミュージシャンがジャズシーンを支えているんだなと思いました。

ジャケ写を見るとギブソンES-335をかかえているようで、その他の写真をみてもたぶんセミアコを使うことが多いようです。335といえばB.B.キングやラリー・カールトンの音が有名ですが、いい具合に歪ませてやるとギタリストにはたまらん音がします。2024年本作でもそんなギターのいい音がたっぷりと聴けるアルバムになっています。

ジャズしている曲もカッコいいのですが、今回はより聴きやすいポップスやロックを感じさせる曲をオススメしたいと思います。4.Eye to the Sky はメロディアスで口ずさめるような歌です。続く5.My Old Man もゆったりとした優しい曲。7.Consensus はノリのよいロックでちょっと楽しくなる。ギターのいい音をむずかしいこと抜きに、しかも高音質で楽しめるアルバムです。

2024-04-09

古都奈良

 

古都奈良を夫婦ふたりで旅行しました。

訪日外国人が多かった「春日大社」
修二会で有名な「二月堂」の手水
静かな「薬師寺」の塔のてっぺんの飾りの鳴る音

もうすぐ春、を感じる散歩になりました。

録音機材レコーダーはKORG MR-2 内蔵マイクにて収録
セッティングはMic Sens HIGH それ以外は全部Off
ファイル形式はWAV 24bit 192kHz ※SoundCloudにてダウンロード可

2024-04-05

Messengers in Jazz with Peter Bernstein at Termansens

 

Peter Bernstein(ピーター・バーンスタイン)はアメリカのジャズギタリスト。ジム・ホールに学び、数多くの有名ミュージシャンとの共演歴があります。2024年本作はデンマークのJazz&Bluesクラブ“Termansens”で行われたもののようで、アットホームで広くない会場の雰囲気を伝えてくれる僕の好きなライヴ録音です。

ピーターが使っているのは“ザイドラーのアーチトップ・ギター”というフルアコでとても味わいのある良い音がします。一聴オーソドックスなプレイスタイルながら音選びにハッとするフレーズがあり聴いていて楽しい。よくホーンライクなギターとかいいますが、弾いてみると隣り合う一音一音を違う弦で、しかもフルピッキングで弾いているわけで、そりゃもう難しいんです。

1.Simple as That からその“良い音”を存分に楽しめます。しかも軽々と弾いているように聴こえます。きっと実際に観たらのけぞってしまうと思います。3.Blood Moon Wolf Blues のブルースなんてこの音にぴったりの曲です。あぁ浸っていたい。5.This I Dig of You でのバンドメンバーの軽快なスイングからは聴衆のウキウキした気分が伝わってくるようです。「これぞジャズギターが聴きたい」と思ったらこのアルバムがオススメです。

2024-04-02

むぅ、CD機のトレイが閉まらない

 

先週耳の病気のことを話しましたが、今回は機器の病気=故障です。といっても軽度なもので、CDプレーヤーのトレイが閉まらない、というものでした。開くときは問題ないのですが、閉まらない(ことがある)んです。CDを聴くことには支障がなかったので放っておきました。さすがに閉まらない頻度が高くなってきて、なんか気持ち悪い。ちょっとかわいそう。

ソニー SCD-XA5400ES 15年以上の付き合い

WEBで修理を申し込み、自宅まで来てもらう出張修理扱いになりました。現象を確認して、目の前で手際よくフタを開けて部品のネジを外す。やっぱりCD開閉のためのゴムベルトの輪がひと回り大きくなっていました。さらに劣化するとトレイが開かなくなるそうです。そうなったら大変だ。交換して元に戻して完了。出張代技術料込みで2万円ちょっとでした。

ソニーはこうした単品のCDプレーヤー(しかもSACDが聴けるもの)をこの製品以降作っていません。代替品を探すとしても他社製品ですし、今のこうしたモデルはどれも高価。そこで愛着のある本機を今後も使い続けたいと思い立ち、修理に至りました。

気のせいだと思いますが、音がしっかりした気がします。気のせいです。でも気持ちがいいもんです。いまだにCDをかけることが多い僕としては仲良くしていきたいと思っています。


2024-03-29

The Sky Will Still Be There Tomorrow / Charles Lloyd Quartet

 

Charles Lloyd(チャールス・ロイド)は御年86歳になるアメリカのサックス&フルート奏者。数多くのジャズレジェンドたちとの共演歴もあり、自身も「Forest Flower」(1968)など名盤を残しています。僕は2021年のアルバム「Tone Poem - Charles Lloyd & The Marvels」が好きで同年よく聴いていました。2024年の本作も聴いてみたら期待に違わぬアルバムなのでピックアップしました。

メンバーのジェイソン・モランP、ラリー・グレナディアB、ブライアン・ブレイドDrという名うてのミュージシャンたちを相手に、LPにして2枚組という作品を発表するというパワフルなレジェンド。最近サックス作品のレビューが続いていますが、これまた全く違うテイストで同じ楽器とは思えない印象に驚いています。

ロイド本人作曲の4.The Water Is Rising のような優しくて哀しみを感じさせるトーンが特徴です。続く5.Late Bloom ではフルートのハーモニーが幽玄さを表して旋律もちょっと日本的なところに親近感があります。バックメンバーとの演奏対比も楽しいところです。タイトル曲8.The Sky Will Still Be There Tomorrow でも吟遊詩人ロイドの味わい深いサックス音を堪能できます。熟練したかなり大人なアルバムですが、これを聴きながら花見なんぞゆったりしていいと思います。

2024-03-26

うぅ、右耳が聴こえづらい

 

からだの故障が頻度を増す年頃です。ある朝、右耳が詰まった感じがして「ああ始まっちゃったかな」としばらく放っておきました。音楽を聴くのが好きな身としてはこれが続くと辛いということで2週間くらい前に近所の耳鼻科に行きました。

例の無音室に入ってヘッドセットしてスイッチを押すテストをずいぶんと念入りにやってもらいました。診断は突発的な軽度の難聴です。診断当日かなりめまいがしたのでちょっとマズいなと思っていましたが、急な高血圧が影響したとのこと。有名なメニエール病は、これらの症状を反復するということで「可能性がある」程度の診断となりました。

実は40代くらいから数年おきにこの難聴症状は繰り返していて、もう4回目くらいです。なにが辛いって好きな音楽リスニングが気持ちよく味わえないこと。僕の場合は、主に低域が聴こえづらくなり詰まってしまうのです。もうひとつ辛いのは、イソソルビドというなんとも不味い薬を一日3回2週間飲み続けなければならないこと。初めて飲んだときにはあまりの不味さに毎回咳き込んでいました。

薬を飲み続けていれば自然と治る病気ですが、原因は不明です。喫煙せず暴飲暴食もせずストレスもない、となると老化かと勝手に思っています。音楽は健康でないと聴く気がしないということも実感しました。音楽リスニングのためにも健康維持は大切ですね。

2024-03-22

Eagle's Point / Chris Potter

 

Chris Potter(クリス・ポッター)はアメリカのサックス奏者。パット・メセニーとの「The Unity Sessions」などで共演し映像も観ていたので、こうして音を聴くと彼が演奏している姿が目に浮かびます。メセニーとの共演で言えばマイケル・ブレッカーが筆頭ですが、その巨匠に全く劣ることのない大変な存在感を2024年本作でも聴かせてくれます。

まずは日本版ボーナストラックである9.All the Things You Are を聴いてください。無伴奏サックスソロです。サックスという楽器の音はこんなにも表情豊かです。低音のブォって音から高音の繊細な音まで余すことなく体の中心に向かってきます。そして彼のフレーズ。コード感をなんとか追いかけながら聴いていてもそのオリジナリティに圧倒されます。よそ見できません。BGMになんかなりません。他曲でこんな凄い演奏と一緒にプレイするなんてエラいことです。

だから伴奏も物凄いメンバーです。ブラッド・メルドーP、ジョン・パティトゥッチB、ブライアン・ブレイドDrです。これだけのメンバーで演奏しているのにクリスの音の存在感たるや全曲凄いです。リーダー作なんで当たり前かもですが。バスクラリネットを聴くことができる3.Indigo Ildikó やソプラノサックスのバラード5.Aria for Anna も聴きものです。全体としてはかなり大人なサウンドですが、聴き込まざるをえないアルバムになっています。

2024-03-19

「おげんさんのサブスク堂」を観て

 

先日NHK「おげんさんのサブスク堂」(星野源さんと音楽マニアでも有名な松重豊さんがレギュラー)の再放送を観ました。サブスクやレコード、CDで音楽を紹介するという、僕にとっては好企画な番組でした。ゲストに羽生結弦さんやYOASOBIのおふたりが出演する回があってどんな選曲をするのかちょっと興味深い内容でした。

へぇと思った点その1は、星野源さんと松重豊さんの私物のスマホから選曲して再生していたこと。(もちろん放送波には音源をしかるべきシステムで流していたと思います)つまり自分のスマホのライブラリからBluetoothで飛ばして再生するシーンを想定しているということです。仲間内で集まって「ねぇちょっとコレ聴いてみて」とやるときには、イマドキ老若男女こんな感じなんだと思います。

へぇと思った点その2は、YOASOBIのAyaseさんがめったにCDをかけない的なことを言っていたこと。つまりデジタル音源をハンドリングする日常なのでCDなどパッケージメディアに触れていないのです。CDをケースから出す動作でさえぎこちない。羽生結弦さんはレコードに針を落とすところを初めて見たと。音楽に携わる者&そうでない者にとって、おそらくそれが大多数なんだなぁと思った次第です。

前提としては、好きなように聴けばいいということです。正直多くのミュージシャンにとって儲からないサブスクも、ファンが増えてライヴ来場やグッズ購入につながるのであればそれでいいんだと思います。僕が日々楽しんでいるCDも娘にとっては無用になってしまうんだろうなと思っています。作り手と聴き手の間にいて仕事をしてきた僕としても、音楽をどう伝えていったらいいのかなんて考える番組でした。

2024-03-15

For All We Know / Jim Snidero

 

Jim Snidero(ジム・スナイデロ)はアメリカのサックス奏者。穐吉敏子さんのジャズオーケストラにも在籍していたベテランであり名手です。サックス教育者としても活躍していて教則本を出したりしているのでその界隈では有名な方だと思います。2024年の本作はピーター・ワシントンB、ジョー・ファーンズワースDrというこれまたベテランとのトリオ作品です。

サックストリオといえば、ソニー・ロリンズの「Night At The Village Vanguard」が有名でしょう。メロディもソロもサックス。ピアノもギターもいないのでベースやドラムスがソロを演っているときにはバッキングもない。音も個室でじっくり聴いているかのようで、トリオが一体となってジャズそのものにどっぷりと浸かることができるサウナ?みたいな感じかもしれません。無性に聴きたくなることがあるアルバムです。

ジム・スナイデロの本作もそんな作品になっています。静かなベースソロで始まるコルトレーンの2.Naima を聴けば、あぁサックスってこんなにいい音なんだなと思います。着色のないサックスそのものの音色です。コール・ポーターのスタンダード3.Love for Sale も軽快なスイングにサックスの音が響いて、曲の展開を楽しむことができます。同じく数多くの名作を生んだジャズスタンダードの7.My Funny Valentine も彼ならではのアレンジでまた新しい味わいを聴くことができます。こうして誰もが知るスタンダードを演奏することで、オーディエンスに新鮮さを感じさせるなんてかなりのハイテクだと思います。

2024-03-12

新しい曲とどうやって出会うか

 

初めて聴く曲や新譜をみなさんどんな方法で探して、出会っているんでしょうか。僕は昔はラジオ、雑誌、レコードCDショップといったところでした。雑誌は毎月何か買っていましたし、出かけるときには必ずといっていいほどCDショップに立ち寄っていました。それが気づけば雑誌買わない、ショップ行かない日々になって、新曲との出会いも減ってしまいました。

今はまずサブスク音楽配信です。知っているミュージシャンやバンドの名前から探して新譜や旧譜を聴くことが多いです。レーベルつながり、プロデューサーつながり、バックミュージシャンつながりとなるとGoogle検索してからたどり着くこともあります。サブスクに無ければYouTubeで探すことになります。そして結局CD棚の前に立っていたりしますが。

知らなかったミュージシャンとの出会いがサブスクの醍醐味だと思います。“プレイリスト”を順に再生して、気になる曲をチェック。あるいは“ニューリリース”のコーナーで、アルバムを再生してみて良かったらライブラリに登録。気に入ったアルバムは繰り返し聴いて「最近、聴いている音楽」でブログにしています。

最近復活したのはラジオ。聴き逃し/タイムフリーのラジオ配信です。パーソナリティの解説付きで「へぇそうなんだ」と興味をそそられるのが楽しい。ながら聞きしているので逃していることもありますが、放送した曲のリストが載っているのであとでサブスクで探したりすることもあります。でもまぁそんなに積極的にならず、ゆるいラジオに耳を委ねている時間っていいなと思うようになったということです。

2024-03-08

Attentive Listening / Willie Morris

 

Willie Morris(ウィリー・モリス)はニューヨークで活躍するアメリカのジャズサックス(テナー)奏者。2024年本作はリーダーとしてのセカンドアルバム。ジュリアード音楽院でインストラクターも務めているそう。メンバーは、パトリック・コーネリアスA.Sax、ジョン・デイヴィスP、ボリス・コズロフB、ルディ・ロイストンDrというクインテットで今のNYジャズ最前線の演奏が聴けます。

タイトルのAttentive Listening(注意深く聴く)どおりよく聴いてみると、曲中に実にいろいろなことをやっていてこれぞジャズミュージックだなと思います。エコーなどエフェクトはなくひとつひとつの楽器の音がくっきりと聴こえ、目の前で演奏しているかのよう。メンバー間のアイコンタクトや白熱したとき、リラックスして演奏しているときの表情まで思い浮かべることができそうです。

ウィリーのオリジナル曲がまた素晴らしい。才能が溢れ出ている1.Water Fountain of Youth からおぉーっと言いたくなるエキサイティングな演奏とスイングに圧倒されます。そしてやっぱりドラムスのシャープなプレイに耳奪われます。3.The Imitation Game 、5.Delusion of Understanding でもオリジナリティのあるフレーズやサックスのハーモニーで、これぞNYジャズを見せつけてくれます。

2024-03-05

いまさらDVD-Audio

 

このところサラウンドサウンドがマイブームでして、ついにDVDオーディオ(DVD-Audio)が聴けるプレイヤー(ソニーUBP-X800M2)を手に入れてしまいました。きっかけは、パット・メセニーの音源を掘っていたら「イマジナリー・デイ」のDVD-Audioヴァージョンがあったので中古で入手し、仕方なくDVD-Video(通常のDVDプレイヤー)で聴いてみたわけです。それでも「ん、なんか音が良いぞ」と気づいてしまい、なんとしても本来のDVD-Audioで聴いてみたいとずっと思っていました。

DVD-Audioは1999年〜2000年くらいの規格で、ハイレゾ&サラウンドのハシリですが、すでにその時代は終わってしまいました。もう新しいソフトは出ていません。それをいまさらプレイヤーを入手してまで聴くのは「音がすこぶる良い」からです。まず音が図太い。まるでアナログLPを聴いているかのよう。DVD-Audioで再生したら、音の緻密さ、拡がり、低音のズドンという沈み込みなど既知のCDでは聴けなかった音が、ぐっと迫力を増して存在しているのです。

キング・クリムゾンの「レッド」、レッド・ツェッペリンの伝説のライヴ「How The West Was Won」を聴いてみましたが、まあ素晴らしい。CDやサブスクと比較しても、ちょっとDVD-Audio以外では聴けなくなってしまうくらいです。中古を探すとクリムゾンやジェネシスといったプログレ系に多いようです。ロックやジャズもちらほら。たまに買って楽しむつもりです。

2024-03-01

To the Surface / Lawrence Fields

 

Lawrence Fields(ローレンス・フィールズ)はアメリカのジャズピアニスト。2024年本作は自身のピアノトリオで初リーダー作。ベースは中村恭士、ドラムスはコーリー・フォンヴィルと演奏を聴けばわかる腕利きのメンバーです。8.I Fall in Love Too Easily を除いてすべてオリジナルとのことで意気込みが感じられます。

ピアノの音がいいんです。輝くような音でピアノ全体を鳴らしています。もちろん緩急自在で懐も深い。そして音がポジティブ。聴いていて元気になるような楽曲とサウンドなんです。上から下まで粒立ちよく出ていてオーディオを大きめの音で鳴らすと気持ちいいと思います。

勢いの良い1.Parachute でスタート。若手がやるとつい高速で耳が追いつかない曲になってしまいがちですが、彼らの演奏はそうは感じない深みのある音です。5.To the Surface を聴くと難しい曲を情感込めて演奏していて、やっぱりベテランなんだと思います。ベースやドラムスの音がカッコいい。9.Sketches ではヒップホップな面もちらっと。音的にもうすぐ“春”を期待させてくれるアルバムです。

2024-02-27

BS4K音楽番組を録る

 

数年前に買った薄型テレビに録画機能がついているのは知っていましたが、すでにDVDレコーダーがあったので放っておきました。NHKのBSチャンネル編成が変更されたことをきっかけにBS4Kの番組表をチェックすると「洋楽倶楽部」という超大物続出番組があるではありませんか。これは録画して観てみたいと。

1万円程度で4TBの外付けHDDを買える時代なんですね。接続したら即、録画できるようになっていました。スティングの2022年のライヴやザ・ローリング・ストーンズの2012年のライヴは画質も精細で、音もサラウンドで素晴らしい。年取った彼らのライヴでつまらないかななんて思って観始めましたが、さすがの見せる聴かせる映像にすっかり感動してしまいました。ほかにも80年代90年代のライヴ映像があって、それはそれで楽しいものです。超大物ばかりですが。

ちなみにこのシステム、テレビとHDDが一対になっていて、HDDをほかのテレビにつないでも見ることができません。てことはテレビが壊れたらこのHDDも見られないのか、なんて不安もあります。そして録った映像は編集できません。間違って削除しないようにロックをかけておくことはできます。4K番組でも250時間分くらい(4TB)は録画できるようなので、気にせず録りためていけばいいってことです。容量が気になるなら、再度観たいもの以外は順次消していくというオペレーションが必要です。

2024-02-21

Trinfinity / 小曽根真

 

小曽根真さんは言わずと知れたジャズピアニスト。私がやっていたジャズクラブも小曽根さんと同じく神戸生まれということで、あのコロナ禍でも応援してくださっていました。天才的なプレイやそのお人柄も含めて日本ジャズ界を牽引する存在として無くてはならない人です。ラジオのジャズ番組はよく聴いていましたし、今回もラジオで2024年本作リリースを知りました。

名だたるピアノトリオ作品を発表してきた小曽根さんですが、今回は“次世代を担う若手音楽家のプロジェクト「From OZONE till Dawn」”に所属するB.小川晋平とDr.きたいくにとのトリオ。若手を引き上げるだけでなく、常に新しい境地に踏み込む姿を見せてくれています。こうして新たな才能が世に出ていくことは嬉しいことです。

小曽根さんの堂々とした演奏で始まる1.The Path からOZONEワールドに入ります。音使いやリズムに引き込まれます。3.The Park Hopper にはダニー・マッキャスリンSaxが参加して軽快なプレイを聴かせてくれます。ここにはなんと19歳のアルトサックス佐々木梨子さんも参加しています。6.Momentary Moment はなんとも小曽根さんらしい曲。ドキドキするような展開です。今回は想像以上にTheジャズなアルバムで、随所にドラムの素晴らしいソロプレイも聴けたりして、何度聴いても楽しい作品になっています。