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2025-06-13

Out Late / Eric Scott Reed

 

Eric Scott Reed(エリック・スコット・リード、またはエリック・リード)の2025年Smoke Sessions新作アルバムです。メンバーはエリックPのほか、ニコラス・ペイトンTp、エリック・アレクサンダーTs、ピーター・ワシントンB、ジョー・ファーンズワースDsというオールスターメンバー。ニューヨークに行ったならぜひともこのメンバーのセッションを聴いてみたいと夢見ています。今回もまるでSmokeにいるような素晴らしい録音で聴くことができます。

題名にもあるとおり、深夜の雰囲気を伝えるもので、“ミュージシャンの生活、つまりナイトライフやアクティビティ、ニューヨークのヴァイブレーションの感覚やエネルギーを指しています。”とのこと。演奏を聴いているとなんとも落ち着きます。仕事帰りにこんなジャズクラブでグラスを傾けて、緊張をほどいていくことができたらと思っていたものです。

1.Glow なんて曲で始められたら、ああ大人っていいなと思います。勢いでもなくバラードでもなくスローなスイング。名うてのミュージシャンが醸す余裕の演奏。3.Shadoboxing も心地よくマッサージしてくれます。身を委ねるだけでよいんです。4.They では軽快なスイング。明日への元気につながります。“すべてファーストテイク、ヘッドフォンもオーヴァーダビングもなし”とのことで昔ながらのレコーディング方法だからこそのライヴ感を味わえる作品です。

2025-05-30

Downhill From Here / Gilad Hekselman

 

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)はイスラエル出身のジャズギタリスト。ニューヨークを中心に活躍しています。ジョン・スコフィールドGやアントニオ・サンチェスDsとの共演やエスペランサ・スポルディングのアルバムに参加するなど、カート・ローゼンウィンケル以降の最注目ギタリストだそうです。2025年新作アルバムはリーダー作品として9作目にあたります。

今回は、ロイ・ヘインズの孫であり超絶ドラマーのマーカス・ギルモアと、ブラッド・メルドーやパット・メセニーと共演でも印象深いラリー・グレナディアBとの鉄壁といえるトリオ作品。3人が会話するさまは、あのメセニーのトリオを想起させます。ギラッドの音はより浮遊感があって彼らの音空間に浸ると気持ちよくて時間を忘れます。

数多くの名演が存在するバート・バカラックの4.Alfie はなんとも染み入る演奏。メセニーの「Alfie」と聴き比べても面白いかも。5.Wise Man でのマーカスのドラムスの雄弁なこと。好きなのは7.Scoville 。ちょっと歪んだギターはもしかしてジョンスコ風?、でも好きな音です。跳ねたリズムが独特なファンキーサウンド。最新鋭ギタートリオであり、今後の定番にもなり得る作品だと思います。

2025-05-16

EVERYDAY / 黒田卓也

 

黒田卓也さんは日本のトランペッター。ニューヨーク・ブルックリン在住。僕も2014年「Rising Son」を聴いて以来気に入って、日本のミュージックシーンをリードする存在として注目してきました。彼のラジオを聴いたりすると、その気さくでお茶目なトークも魅力的で、きっと若手ミュージシャンたちにとっていい兄貴的存在なんだろうと思っています。

この2025年新作は“トラック・メイキングとスタジオ・セッションの究極の融合を目指した”とのことで、ただならぬ緻密さとフィジカル的に高い演奏力を聴かせてくれています。サブスクのおかげで様々なジャズの新作を聴くことができるわけですが、黒田さんの作品は本当に世界水準で高いオリジナリティを感じます。日本発ではあるもののニューヨークの今の空気を伝えてくるようです。

タイトル曲2.EVERYDAY を聴けばあぁコレだとなります。鋭くキレのよいリズムと緻密なアレンジ。でもライヴで演奏している姿も想像できる、そんなサウンド。6.Off To Space のドラムスがまたカッコいい!リズムが凝っているのになぜか余裕を感じさせるのが兄貴のなせる技でしょうか。黒田さんらしさは8.Hung Up On My Baby にも出てきます。どこか日本の民謡のようなお祭りのような親しみを感じる曲です。ニューヨーク&日本の今のジャズを詰め込んだとびきりカッコいいアルバムになっています。

2025-05-02

Tomorrow We'll Figure Out the Rest / Silje Nergaard

 

Silje Nergaard(セリア・ネルゴール)はノルウェーのジャズシンガー&ソングライター。1990年のデビューアルバムをパット・メセニーがプロデュースしたことで有名になったと思います。2025年の本作は20作目(DVD含む)。“両親への深い思い、遠い日の記憶、家族やさまざまな人生の物語にインスパイア”とのことで、1966年生まれ(僕のひとつ下)であることや近年の自分の境遇と重ねて、思いを馳せながら聴いております。

女性ヴォーカルの楽曲はジャズでも人気で、ひとりひとりの個性が感情を豊かに表現していて味わい深いのが魅力。アルバムの中の楽曲によっても微妙に表情を変えていて、繰り返し楽しめます。セリアの歌声からはノルウェー(北欧)の香りが感じられて、行ったことはないけれど、大自然や空気の冷たさや夜の長さを想像することができます。

まずは1.You Are the Very Moon が僕の知るセリアのイメージ。ストリングスがあまーく入ってきてなんとも夢心地です。好きなのは5.Vekket i tide 。母国語でしょうか、ノルウェーを感じます。ストリングスの美しさが際立つバラード8.Dance me Love ではセリアの魅力がじんわり伝わってきて沁みます。好きなヘルゲ・リエンのピアノが全編にわたりこれまた美しい。心は温まるアルバムです。

2025-04-18

Ones & Twos / Gerald Clayton

 

Gerald Clayton(ジェラルド・クレイトン)はアメリカのジャズピアニスト&作曲家です。このところブルーノートばかりですが、彼も最近では「Out Of/Into」のオールスターズで本作参加のジョエル・ロスVib、ケンドリック・スコットDsと共演していました。ほかにエレナ・ピンダーヒューズFl、マーキス・ヒルTp、ポストプロダクションにカッサ・オーバーオールを迎えた2025年新作です。

アルバムジャケットではレコードプレイヤーのトーンアームが2本伸びて、DJターンテーブル2台を想起させています。彼が聴いてきたヒップホップやソウルもじわっと感じますが、アルバム全体的には実験的でジャンルを超えたサウンドをじっくり聴かせる作品です。“2つの別々のメロディが調和して共存することは本当に可能なのか”という「共存」をテーマにした作品とのことで、ジャズが持つ時代性やミクスチャーを巧みに表現しているように思います。

フルートとヴィブラフォンが併走する1.Angels Speak を辿っていくうちに彼の世界に惹き込まれていきます。3.Sacrifice Culture を聴けば上記のニュアンスを感じることができるかと思います。たとえば10.More Always ではマーチングなドラムにやがて合唱が重なっていき不思議な高揚感を得たり。一本筋の通ったサウンドコンセプトがありながら、実に多彩な印象を感じるプログレッシブな作品であると感じました。

2025-04-04

Belonging / Branford Marsalis Quartet

 

Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)こそ僕が40年間聴いてきたアメリカのサックス奏者。ジョーイ・カルデラッツォP、エリック・レヴィスB、ジャスティン・フォークナーDsとのカルテット編成も歴史が長くなりました。2019年以来の2025年本作は、キース・ジャレットの作品にまるまる取り組んでいます。レーベルはECMではなく、ブルーノートから。

よく聴いたのは88年作「Random Abstract」やバラード集04年作「Eternal」です。スティングのビデオでの歯に衣着せぬ物言いややんちゃな少年の笑顔が印象的で、それは今でも変わっていないように思います。マルサリス兄弟では、ウイントンのほうがスマートで、ブランフォードが弟かと思っていましたが、長男でした。やんちゃな彼もバラードでは感情表現豊かに、ドラマチックに歌い上げて“お兄ちゃんスゴイ”ってなります。

そんな大人なバラードは、タイトル曲4.Belonging です。キースのリリシズムをカルテット全体から受け取ることができます。亡き友ケニー・カークランドから知ったというキースの演奏を、50年の時を経ていまこの曲に込めているかのようです。戻って3.‘Long As You Know You’re Living Yours のちょっとレイドバックした明るい曲調がまたブランフォードの得意技で、親しみのもてる演奏です。5.The Windup ではジャスティンのドラムスが光るちょっとラテンなリズムの曲でこのカルテットの力量を表現しています。もうカルテットは演らないのかなと思ったりしただけにうれしい新作でした。

2025-03-21

Fasten Up / Yellowjackets

 

Yellowjackets(イエロージャケッツ)はアメリカのジャズフュージョンバンド。1981年結成で2025年の本作は27作目のスタジオアルバムです。オリジナルメンバーのラッセル・フェランテKeyに加え、ボブ・ミンツァーSax、ウィリアム・ケネディDs、デーン・アルダーソンBが現在の布陣です。かつてはジャコ・パストリアスの息子フェリックス・パストリアスBやピーター・アースキンDs、ロベン・フォードGも参加していたことがありました。

大学時代(80年代)にフュージョンが流行していた頃、日本フュージョンは聴いたのですが海外モノはあまり聴かずに通り過ぎてしまいました。インストよりも歌モノのほうが語られることが多く、バックバンドとしての楽器演奏の上手さにスポットを当てていました。ここ数年はエレクトリック以降のジャズのかたちの一つとして、そして高音質楽曲が多いこともあって、海外フュージョンを遡って聴くようになりました。

スティーリー・ダンでもかけたかと思わせる1.Comin' Home Baby のグルーヴの気持ちいいこと。やっぱりリズム隊が気持ちいいんですね。2.Fasten Up ではこれぞフュージョンバンドというキレの良い演奏を聴かせてくれます。ラウル・ミドンVo&Gが参加する6.The Lion はブラジルテイストで気持ちよい曲に仕上がっています。ご自宅のオーディオやヘッドフォン、イヤフォンを快適かつ開放的に鳴らしてくれるハイレゾ音源をご堪能あれ。

2025-03-07

Woven / Jeremy Pelt

 

Jeremy Pelt(ジェレミー・ペルト)はアメリカのジャズトランペット奏者。2025年本作は25作目になり、共演も豊富でラヴィ・コルトレーン、ロイ・ハーグローブのほか、以前紹介したHeavy Hittersの作品やヴィンセント・ハーリングのプロジェクトにも参加しています。今回はシンセサイザーサウンドを背景に取り入れた新しいテクスチャーながらも伝統的なジャズも感じさせる作品になっています。

ロバート・グラスパー以降、全く違和感を感じなくなったエレクトリックですが、マイルス・デイヴィスを語るときはアコースティック期とエレクトリック期できっちり分けられるくらい“別物”感がありました。僕はずっとエレクトリックが苦手で、聴くのはアコースティックばかりだったのですが、うまく調理してくれたハービー・ハンコックのヘッドハンターズあたりが再燃してから、再度エレクトリックを聴くと“嫌いじゃない”ことに気づいたりしました。

3.Afrofuturism はギターサウンドがいい音で乗っかってきて、後半からヴィブラフォンが酩酊するという僕好みの曲。4.13/14 では途中からアップテンポなスイングに浮遊感のあるジェレミーのトランペットが気持ちよく響きます。5.Dreamcatcher ではドラムスがビシバシソロを決めてこれまた気持ちいいサウンドを聴かせてくれます。全体的に優しいサウンドに身を委ねることができますが、よく聴くと緻密で先進的な音作りがなされていることがわかる作品になっています。

2025-02-21

Apple Cores / James Brandon Lewis

 

James Brandon Lewis(ジェームス・ブランドン・ルイス)はアメリカの作曲家、サックス奏者です。1983年生まれ、2014年に初作を出してから2025年の本作は12作目にあたります。チャド・テイラーDs、ジョシュ・ワーナーB&Gとのトリオで“ヒップホップやファンクのリズムやテクスチャーを取り入れた”ジャズ作品になっています。

前回のスティングの投稿にも書きましたが、ジャンルを超えたミクスチャー感の中に一本筋が通っているのがジャズの真骨頂だと思っていまして、スティングの場合はそれがロック。今回のジェームスはソニー・ロリンズに代表されるモダンジャズへのリスペクトを感じます。ほかの二人が醸す音空間の中で、実に骨のあるサックスがガツンと響いて気持ちいいです。

ファンクドラムとぶっといベースから始まる1.Apple Cores #1 のセッションのなんとカッコイイこと。サックスがラッパーしています。3.Five Spots to Caravan はオーネットやドン・チェリーへのオマージュとなっていて、部屋全体にサウンドが拡がります。7.Broken Shadows はエレクトロダンスミュージックを生楽器でジャズしたような面白い楽曲だなと思います。それぞれが短い曲ながら、“これぞ今のジャズサックス”を聴くことができるオススメ作品です。

2025-02-07

Dark Moon / Holly Cole

 

Holly Cole(ホリー・コール)はカナダのシンガー。スタジオアルバム2作目であの「コーリング・ユー」を1992年にヒットさせました。2025年13作目にあたる本作を携えて、3月にブルーノート東京に来日するそうです。ジャズのみならず、ポップスやカントリーのスタンダード曲をバックミュージシャンとともに彼女の声に合ったアレンジで聴かせてくれています。

あの「バグダッド・カフェ」の楽曲を歌う歌声のイメージがあったので、「こんな声だったっけ」と思いながら聴き始め、なんともスモーキーというか味わい深い歌唱にハマってしまいました。Qobuzの1月下旬のストリーミングランキングで再生数1位とのことで、2位幾田りら、3位米津玄師を上回る成績を記録していました。なんかちょっとうれしい。

「ティファニーで朝食を」の劇中歌3.Moon River を聴くとあの「コーリング・ユー」の歌声が蘇ります。彼女の声はなぜ映画楽曲に合うのでしょうか。ディオンヌ・ワーウィックの5.Message To Michael もしっとりいい曲です。バックもベテランらしい抑制が効いて効果的な演奏で素晴らしく、ギターの音がなんとも哀愁たっぷりです。ギターといえば、ラストを飾るペギー・リーの11.Johnny Guitar がなんとも印象的で沁みます。 曲が終わってからもしばらく浸ってしまいます。部屋じゅうに響かせるような音量で聴くとどっぷりです。

2025-01-24

You Don't Know Jack! / Brian Charette

 

Brian Charette(ブライアン・シャレット)はアメリカのジャズオルガン&ピアノ奏者。リーダー作としても23作目にあたる2024年の本作は、共演のコーリー・ウィーズTsが率いるCeller Liveレーベルの作品として、オルガンの名手ジャック・マクダフへのトリビュートとして発表されました。

ふだんあまりジャズを聴かない人から「何から聴くといいですか?」と聞かれたとき、オルガンジャズをオススメしたりします。ロック好きにもソウルR&B好きにもウケるノリのよさやサウンドの押しの強さがあって、メロディも馴染みやすい曲が多いという印象です。僕自身ロックの入り口でディープ・パープルのジョン・ロードのハモンドオルガンを聴いて育った(もちろんメインはギターのリッチー)ので、今回のブライアンのようなハモンドの音が好きなんです。

2.Jolly Black Giant ではのっけからハモンドが決まっています。このブルーノートを思わせるアルバムジャケットの下方にスライドバーの絵がありますが、オルガンにこうしたバーがたくさん付いていて音色をアナログチックに変えることができるのも魅力なのかも。ボサノヴァのあの曲をアレンジしたかのような4.6:30 In The Morning では絶妙にオルガンの音がマッチしていていい感じです。7.Why'd You Have To Go and Lie To Me Boy はドラムとキャッチーなイントロからのオルガンソロとソウルフルな展開に体が揺れます。気軽に部屋をジャズで満たすことができるオルガンジャズのオススメ作品です。

2025-01-17

Motion I / Out Of/Into

 

Out Of/Into はアメリカのジャズミュージシャンであるイマニュエル・ウィルキンスAs、ジョエル・ロスVib、ジェラルド・クレイトンP、マット・ブリューワーB、ケンドリック・スコットDsからなる“ブルーノート・クインテットとして結成されたオールスター集団”。レーベル85周年としてグループ初の2024年作品です。

ブルーノート・レコードは2012年にドン・ウォズが社長に就任してからも、ロバート・グラスパーなどジャズの枠を超えて幅広いファンを獲得する音楽を提供していて、新作はいつも注目に値する作品ばかりです。今回の作品もかつてのジャズを革新する演奏が繰り広げられていて、さすがオールスターのなせるワザを聴くことができます。家にあるかつてのブルーノート作品もその時代において常に革新的であったわけですが。

正月からYouTubeでドラムの動画ばかり観ていたこともあり、ここでのケンドリック・スコットの超絶演奏に耳を奪われます。1.Ofafrii や3.Radical をしっかりした音量で聴くとマット・ブリューワーのBとともに圧倒されます。6.Synchrony もドラムスで始まり、ヴィブラフォンからサックスソロでのバンドが熱を帯びる様がなんともカッコいい曲になっています。トップミュージシャンが集まると緩急自在で複雑なリズムもなんのその、というものすごい演奏が詰まったアルバムになっています。

2025-01-10

Crossing Paths / Renee Rosnes

 

Renee Rosnes(リニー・ロスネス)はカナダのジャズピアニスト&作曲家です。ジョー・ヘンダーソンやウェイン・ショーター、JJジョンソン、ボビー・ハッチャーソンといった巨匠たちとの共演歴もあり、現在もトップミュージシャンとして活躍しています。あのジャズピアニストのビル・チャーラップと2007年に結婚しています。2024年の本作はブラジル音楽へのリスペクトを感じる作品です。

ボサノヴァをはじめMPB(Música Popular Brasileira)のブラジル音楽は僕自身も好きで、カエターノ・ヴェローゾマリーザ・モンチやいくつかの当時若手ミュージシャンをよく聴いていました。多彩なコード感やリズムはジャズとも通じるところが多く、いままでも多くのミュージシャンがブラジル音楽に傾倒してきたと思います。リニー・ロスネスも約30年前から構想してきたそうです。

爽やかなフルートで始まる1.Frevo からブラジルの風を感じることができます。これまたいい音のギターと気持ちの良いユニゾンを奏でています。伝説的ミュージシャンの2曲、エドゥ・ロボとの5.Casa Forte やジョイス・モレーノとの6.Essa Mulher がいかにもブラジル音楽の魅力を凝縮していて聴き惚れてしまいます。いままでにも多くのブラジル音楽とジャズの融合作品がありましたが、いまのサウンドで聴くことができる最高のものだと思います。

2025-01-03

That's What's Up / Mike LeDonne, Eric Alexander & Jeremy Pelt

 

通称“Heavy Hitters”と呼ばれるニューヨークを代表するジャズミュージシャンのマイク・ルドーンP、エリック・アレキサンダーTs、ジェレミー・ペルトTp、ヴィンセント・ハーリングAs、アレキサンダー・クラフィーB、ケニー・ワシントンDsからなるグループの2024年2作目。カナダ・バンクーバーでのライヴ録音となります。

2025年の幕開けはやはり景気よく白熱のハードバップで始めたいと思います。ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのライヴ名演盤数々を原点としている僕としては、こうして今でも熱気溢れる演奏を聴かせるスタープレイヤーたちがいることがうれしくてヘビロテしてしまいます。特に3管がピタッと合わせてきて、順にスリリングなソロを披露、それを焚きつけるようにピアノベースドラムスが煽ってくる、そんな展開がたまらないわけです。

1.JB から「来たきたー」とばかりのドライヴ感。まったく出し惜しみの無いソロをぶっ放してきます。ノリノリが止まらない4.Groundation はもっともっとイケますよとばかりに濃い演奏でこりゃ観客も体が動いて大変だと思うほど。ミドルテンポの6.Blues For All は心地よいスイングでさすがツボをおさえている余裕の演奏。ジャズクラブの熱気をそのままに伝える音質で自然な音圧がスゴいアルバムです。ボリューム上げ気味でオーディオに喝を入れてやってください。
※今回からQobuzへのリンクも追加しました↓

2024-12-27

Samares / Colin Vallon

 

Colin Vallon(コリン・ヴァロン)はスイスのジャズピアニスト。ピアノトリオ作品として2024年本作は6作目。パトリス・モレB、ジュリアン・サルトリウスDrとの共演として3枚目にあたります。“自然(とくに植物)からのインスピレーション”を得て、彼らなりの相互作用でつくり上げたとしています。

マンフレート・アイヒャー率いるECMレコード(レーベル)といえば、チック・コリア「リターン・トゥ・フォーエヴァー」をはじめキース・ジャレット「ザ・ケルン・コンサート」、パット・メセニーの初期あたりのイメージでしょうか。“静寂の次に美しい音楽”という創設時のコンセプトは55年経ったいまでも表現されています。普段どちらかといえば熱い音楽をかけがちな僕でも、たまーにECMしたくなるときがあります。

1.Racine からして吹雪を感じさせる音とともに冬を感じさせてくれる音楽です。4.Ronce のようにヒタヒタとしたリズムにピアノとベースが次第に熱を帯びていく様もいい感じです。8.Souche の中間あたりでのピアノのちょっとエスニックな展開が好きだったりします。アルバム全般にわたって、自然の音やリズムを楽器演奏に置き換えたような音世界が繰り広げられています。掘るともっと多彩な面を持つECMですが、今回は静かな年末を過ごせるような作品を紹介してみました。

2024-12-20

Steam Engine / STEAM ENGINE

 

STEAM ENGINEは、木村紘Dr.、馬場智章Sax、佐瀬悠輔Tp、渡辺翔太P、古木佳祐Bからなるユニット。丸の内コットンクラブでの初ライヴから全公演Sold Outとのことで、2024年本作は待望のファーストアルバムとなります。「ジャズを聴いたことがない人にも魅力が伝わるようなメンバー、楽曲」のコンセプトどおり、誰が聴いても“熱い”演奏が充満している作品です。

J-POPやアニメ音楽をたまに聴いてみると、「うわっそこからそんな展開...」「複雑なリズムだわ」と感じることもままあって、おそらく作者や演奏家はジャズも聴いたりしているのではと思ったりします。もしかしたら日常的にJ-POPを聴いている人にとって、STEAM ENGINEの楽曲は「歌はないけれど、カッコいい」くらいで抵抗なく入り込めるのかもしれません。そしてジャズ聴きの僕にとっては“本格的にジャズしている”と感じるアルバムなのです。

タイトル曲1.Steam Engine からガツンとジャズをスチームしてきます。こりゃライヴで聴きたくなるわけだと思わせる演奏です。次の2.Intersection で、なんとなく寄り添ってくる感じです。5.Blue Lights になるとクラブでかかっていそうな雰囲気。理屈っぽさを排除して、ジャズの美味しいところを抽出したアルバムです。老若男女問わず、多くの人に聴いてほしいな。

2024-12-13

Solid Jackson / M.T.B.

 

M.T.B.とは、ブラッド・メルドーP、マーク・ターナーSax、ピーター・バーンスタインGの頭文字。1994年のアルバム以来30年ぶりの2024年新作となります。ラリー・グレナディアBとビル・スチュワートDr.をバックに名手の彼らにしかできないスリリングな演奏を繰り広げています。

ブラッド・メルドーはメセニーの「Metheny Mehldau」で初めてじっくり聴いて以来、その特異な存在感に影響され、数々のリーダー作を追っかけ聴きしました。そしてマーク・ジュリアナDr.との挑戦的なアルバム「Mehliana」ではそのぶっ飛び具合に驚かされたり。一見普通のジャズ?と聴き始めるのですが、だんだん「ナニこれ」なコード進行やメロディに不思議な感覚となり、やがてそれが癖になっていきます。セッションしているバンドメンバーもつられてオリジナリティが開いていくようです。

メルドー作のタイトル曲1.Solid Jackson から普通かと思ったら全然普通じゃない進行が聴けます。こんなんでアドリブするわけですからジャズミュージシャンってスゴい、というか超絶なメンバーなんですけど。さらにこのメンバーでウェイン・ショーターの3.Angola を演奏するという達人たちが達人(宇宙人?)の曲をという印象です。大好きなピーターが作った7.Ditty for Dewey でちょっと落ち着いてと思いきや、いつもと一味違う感じ。年末に来てこれぞジャズなアルバムの発表となりました。

2024-12-06

Odyssey / Nubya Garcia

 

Nubya Garcia(ヌバイア・ガルシア)はイギリス・ロンドンのサックス奏者&作曲家。2024年の本作は4年ぶりのセカンドアルバム。10歳からサックスを習い始めジャズを演奏するようになり、作曲活動をとおして様々な経験を積んで活躍しています。ジャズの巨匠たちやレゲエからの影響が感じられます。

ウィズ・ストリングスとは違うシンフォニックなアルバムで、ジャズの枠を大きく拡げている作品だと感じます。緻密に構築されたサウンドはまるでプログレとかダブを聴いているかのよう。目の前に大きく広がる音宇宙に放り出されたような気分になります。

1.Dawn はエスペランサ・スポルディングをVo.に迎えた壮大な曲。次のアルバムタイトル曲につながって全体の雰囲気を印象づけます。サム・ジョーンズの高速ドラムに乗せた3.Solstice はドラムンベースとも思えるカッコいい曲です。90年代風のイントロで始まる9.Clarity はリズムにレゲエを感じながら彼女のゆったりとしたサックスを聴くことができます。全体的にはちょっと緊張感が高くてとっつきにくいかもしれないので、まずはオーディオ的に横に奥にひろがるサウンドを感じながら聴いていくといつの間にか浸っている、そんなアルバムだと思います。

2024-11-29

Brightlight / Avishai Cohen

 

Avishai Cohen(アヴィシャイ・コーエン)はイスラエル出身のジャズベーシスト。14歳のときに米国セントルイスに引っ越し、その後ニューヨークへ。チック・コリアとのトリオで頭角を現し、1998年にアルバムデビュー。イスラエルに戻って活動を続けています。2024年新作は昨年からツアーを回っている若い才能、ロニ・カスピDr.とガイ・モスコビッチPを中心とした意欲作です。

ジンジャーのオーナーさんも今週noteに書かれていましたが、注目は若き女性ドラマー、ロニ・カスピです。記事のYouTubeで初めて観ましたが、おっしゃるとおり“叩きかた”がいいんです。もちろんジャズドラムは押さえているのですが、きっとヒップホップもロックも聴いているはず。特に左手のスネア(の中央)とリム(枠の部分)を同時に叩くオープンリムショットはとてもいい音を出していてこだわりを感じます。ベテランのアヴィシャイが惚れ込んだだけあるミュージシャンだなと思います。

全般にアヴィシャイのベースがいい音していて気持ちがよいです。たとえば4.The Ever And Ever Evolving Etude での彼のベースを始め3人のプレイは息を呑む演奏で素晴らしい。そしてロニのドラムスが際立つ7.Roni's Swing を。キレの良いスイングが堪能できます。スタンダードの10.Summertime だってシングルヒットしそうなカッコいいアレンジ。バランス感覚に優れたピアノのうしろでロニさんビシバシ決めています。ちゃんとベースが響く音量で鳴らしてください。もう1回頭から聴こうってなりますきっと。

2024-11-22

I Hear Echoes / George Cables

 

George Cables(ジョージ・ケーブルス)はアメリカのジャズピアノ奏者。ソニー・ロリンズ、デクスター・ゴードン、アート・ペッパーといったジャズサックス巨匠たちとも共演しているレジェンドです。2024年の本作はピアノトリオで、御年80歳とは思えない演奏をニューヨークにてライヴ録音したものです。

しばらく聴いていなかったピアノトリオでしたが、note仲間の投稿を読んで、ハンク・ジョーンズはThe Great Jazz Trioの数作(トニー・ウィリアムスやエルヴィン・ジョーンズがDrのもの)を聴きなおしては「やっぱりいいなぁ」となっていました。そんなところにこの新作アルバムを見つけて、演奏や音質のよさにリピートすることになりました。

1.Echo of a Scream が勢いよく始まり、一瞬どこの若手の演奏かと思うくらいでした。マイルスの3.So Near, So Far も若々しい演奏。でもドヤ感はなく落ち着いた雰囲気。リラックスして演奏を聴くことができます。彼のもうひとつの持ち味はまるで歌うように弾くこと。7.Like a Lover や9.Blue Nights といったポップな曲では、ライヴで楽しそうに弾く姿が目に浮かびます。