2024-12-31

2024年音楽&オーディオ振り返り

 

AirPodsの売上が爆増しAirPodsだけでSpotifyや任天堂を上回る”(Gigazine 12月23日の記事)にもあるように、AirPodsで約2兆8000億円もの売上で、音楽配信で世界トップのSpotifyを上回っていると。あのゲーム大手のニンテンドーよりもアップルの一部門のほうが上回るとはなんたることでしょう。

街中でもあの白いAirPodsをしている人は多いという印象です。音楽配信について言えば、Spotifyは無料でも聴けるので利用者は多いですし、AirPodsということはiPhoneで、Apple Musicを有料契約している人も多いでしょう。ミュージシャンで録音物でビジネスしている人にとっては不可欠な存在です。特に新譜が聴かれないと次に続かないのでApple Musicでの配信と拡散は必須となります。サブスクは旧譜への波及効果も見込めます。

レコード&CD時代にくらべたら、サブスクの手取りの少なさに呆れるほどですが、曲の存在を知られなければ始まらないので、どこかで配信せざるを得ない。そして録音物以外のライヴやグッズなどの収入をどう増やすかに活動のほとんどを充てることになります。

オーディオもビジネス視点では、AirPodsひとり勝ちです。ん?AirPodsはオーディオではない?、なるほどいわゆるオーディオ界隈ではAirPodsが話題になることはほとんど無いという印象です。そりゃハイレゾ接続ではないし、値段高いし、なんか嫌だし...と理由はありましょう。でも音質も良くてノイキャン性能優秀、空間オーディオもある。今年からは補聴器的な耳の健康対策に注力していたり、加速度センサーやノイズコントロールでウエアラブルデバイスとして来年はさらに売上を伸ばすでしょう。ビジネス戦略の違いがこんなに格差を生んでいます。

僕のような「ニッチ」で「趣味が大事」で「あれもアリ、これもアリ」な多様性支持層は、もっと消費者ボトムアップで拡げて深堀りしていくしかないと思っています。サブスクのおかげでいろいろ聴けるようになったし、気に入ったものをCDで買ったりしました。ただものではない音楽好きの仲間もできて、レコードの音を楽しむ機会も増えました。そしてジャズ以外の音楽もよく聴きました。やっぱり純粋に音楽をもっと楽しみたいと思える一年となったのです。

2024年10月「Qobuz」音楽配信サービスがローンチしました。ストリーミングもダウンロードもハイレゾできて、ミュージシャンやレーベルのリンクもあって、オーティオ特化のプレイリストがあったり、読み物(マガジン)もあって、音楽&オーディオ好きにとって好感がもてるサービスです。もちろん音質もアップロードされた楽曲になるべく手を加えず、かつ高品位な機器で配信されているであろうと感じられるものです。今後の拡充に期待できます。

イヤフォンやヘッドフォンも、有線やワイヤレス問わず新製品は出続けていて、一人2機種以上持ちが多くなっているように思います。スピーカーを設置してというのは少数派に思われますが、耳の中だけなく体で感じることができるスピーカーの良さを音楽好きは知っているはずです。Bluetoothスピーカーやアンプ内蔵スピーカーも良いものが出ています。こうしてオーディオは選択肢の多さがあるからこそ楽しいといえます。

みんな一緒ではなく「へぇ、それ使ってるんだ」と人それぞれがいいと思います。アップルも使いますけど...。というわけでこの年末にワイヤレスイヤフォンをひとつ増やしました。Qobuzをハイレゾのままワイヤレスで聴きたいと思いまして。

2024-12-27

Samares / Colin Vallon

 

Colin Vallon(コリン・ヴァロン)はスイスのジャズピアニスト。ピアノトリオ作品として2024年本作は6作目。パトリス・モレB、ジュリアン・サルトリウスDrとの共演として3枚目にあたります。“自然(とくに植物)からのインスピレーション”を得て、彼らなりの相互作用でつくり上げたとしています。

マンフレート・アイヒャー率いるECMレコード(レーベル)といえば、チック・コリア「リターン・トゥ・フォーエヴァー」をはじめキース・ジャレット「ザ・ケルン・コンサート」、パット・メセニーの初期あたりのイメージでしょうか。“静寂の次に美しい音楽”という創設時のコンセプトは55年経ったいまでも表現されています。普段どちらかといえば熱い音楽をかけがちな僕でも、たまーにECMしたくなるときがあります。

1.Racine からして吹雪を感じさせる音とともに冬を感じさせてくれる音楽です。4.Ronce のようにヒタヒタとしたリズムにピアノとベースが次第に熱を帯びていく様もいい感じです。8.Souche の中間あたりでのピアノのちょっとエスニックな展開が好きだったりします。アルバム全般にわたって、自然の音やリズムを楽器演奏に置き換えたような音世界が繰り広げられています。掘るともっと多彩な面を持つECMですが、今回は静かな年末を過ごせるような作品を紹介してみました。

2024-12-24

エムゼス東京(赤坂)を紹介します

 

六本木のジャズクラブで一緒に仕事していた仲間が、今年から店長を務めることになったという「ライブレストラン MZES TOKYO(エムゼス東京)」にやっと行くことができました。千代田線赤坂駅から徒歩2分、丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩5分という立地、バーカウンター8席&テーブル46席というキャパシティです。

入り口。地下1階にあります。

ピアノが美しい。

ホームページの写真のほうがよいのですが、ステージには見目麗しいピアノ(KAWAI "M")があり、小規模ながらとても映える設えになっています。モダンでありながら居心地のよい空間だなと感じました。

店長とちょっとした昔話をしていたら、シェフも加わって話題は店の“これから”について。「やりたいことがたくさんある」と力強い意志を聞くことができました。飲食業や経営について積み重ねてきたことがあって、だからこそ来月来年できることがある、“ライブレストラン”という価値をもっと伝えていきたい、と前向きな二人がとても頼もしく思えました。

僕も昔を思い出して「それで?次はどうする?」と前のめりにアレコレ聞いてしまいました。応援できるところがあれば微力ながらぜひと思っているところです。音楽ライヴはもちろん、レストランやバーとしてきちんとお客様を迎えることができる“ライブレストラン”です。この立地とキャパを活用して小規模イベントにも利用できると思います。DMやお声がけお待ちしています。

2024-12-20

Steam Engine / STEAM ENGINE

 

STEAM ENGINEは、木村紘Dr.、馬場智章Sax、佐瀬悠輔Tp、渡辺翔太P、古木佳祐Bからなるユニット。丸の内コットンクラブでの初ライヴから全公演Sold Outとのことで、2024年本作は待望のファーストアルバムとなります。「ジャズを聴いたことがない人にも魅力が伝わるようなメンバー、楽曲」のコンセプトどおり、誰が聴いても“熱い”演奏が充満している作品です。

J-POPやアニメ音楽をたまに聴いてみると、「うわっそこからそんな展開...」「複雑なリズムだわ」と感じることもままあって、おそらく作者や演奏家はジャズも聴いたりしているのではと思ったりします。もしかしたら日常的にJ-POPを聴いている人にとって、STEAM ENGINEの楽曲は「歌はないけれど、カッコいい」くらいで抵抗なく入り込めるのかもしれません。そしてジャズ聴きの僕にとっては“本格的にジャズしている”と感じるアルバムなのです。

タイトル曲1.Steam Engine からガツンとジャズをスチームしてきます。こりゃライヴで聴きたくなるわけだと思わせる演奏です。次の2.Intersection で、なんとなく寄り添ってくる感じです。5.Blue Lights になるとクラブでかかっていそうな雰囲気。理屈っぽさを排除して、ジャズの美味しいところを抽出したアルバムです。老若男女問わず、多くの人に聴いてほしいな。

2024-12-17

ポタフェスに行ってきました

 

ポタフェス(ポータブルオーディオフェスティバル)にお誘いをうけて行って来ました。オーディオ関連のイベントには興味があって時々見に行っていたのですが、こうしたヘッドフォン/イヤフォン中心のイベントは初めての参加でした。

    人混みすごい。

ハイレゾストリーミングサービスQobuz(コバズ)の中心人物の方々とお会いできたこと、発売したばかりのワイヤレスイヤフォンの製造元の方とのランチに同席できたこと、興味アリのヘッドフォンの試聴ができたことなど、「行ってよかった」でお誘いに感謝するばかりです。

それにしても開場前から長蛇の列で、イベント会場は大盛況でした。オーディオイベントといえば、僕も含めて白髪まじりのオジサマが多いイメージでしたが、今回は若年層も多く幅広い客層で、試聴で漏れて聞こえる音楽も実にさまざま。そうかイマドキのオーディオ好きはこちらに来ている人たちだったんだと、改めて思い知らされました。

そして試聴する曲は、自分のスマホやデジタルオーディオプレイヤー(DAP、デジタルウォークマンとか)で持参するのが「当たり前」なのでした。てっきり展示社側が用意した音源を聴くのかと思っていたのが間違い。できればDAC(デジタル→アナログ変換、iPhoneは内蔵していないのでポータブルなDACが必要)も持参して、ヘッドフォン端子を挿せるようにしておくのがよい、というマナー?も学びました。

初代ウォークマンをつけて秋葉原を歩いていた中学時代から45年。秋葉原の街並みも変わって、外国人観光客で歩道は混雑。ポータブルオーディオもデジタルを経て随分と多様化しました。全体からみれば少数派であろう“いい音”を求める人々もまだこれだけ多くいるのはうれしいことでした。

2024-12-13

Solid Jackson / M.T.B.

 

M.T.B.とは、ブラッド・メルドーP、マーク・ターナーSax、ピーター・バーンスタインGの頭文字。1994年のアルバム以来30年ぶりの2024年新作となります。ラリー・グレナディアBとビル・スチュワートDr.をバックに名手の彼らにしかできないスリリングな演奏を繰り広げています。

ブラッド・メルドーはメセニーの「Metheny Mehldau」で初めてじっくり聴いて以来、その特異な存在感に影響され、数々のリーダー作を追っかけ聴きしました。そしてマーク・ジュリアナDr.との挑戦的なアルバム「Mehliana」ではそのぶっ飛び具合に驚かされたり。一見普通のジャズ?と聴き始めるのですが、だんだん「ナニこれ」なコード進行やメロディに不思議な感覚となり、やがてそれが癖になっていきます。セッションしているバンドメンバーもつられてオリジナリティが開いていくようです。

メルドー作のタイトル曲1.Solid Jackson から普通かと思ったら全然普通じゃない進行が聴けます。こんなんでアドリブするわけですからジャズミュージシャンってスゴい、というか超絶なメンバーなんですけど。さらにこのメンバーでウェイン・ショーターの3.Angola を演奏するという達人たちが達人(宇宙人?)の曲をという印象です。大好きなピーターが作った7.Ditty for Dewey でちょっと落ち着いてと思いきや、いつもと一味違う感じ。年末に来てこれぞジャズなアルバムの発表となりました。

2024-12-10

洋楽のリズムはカッコいい?

 

その昔、「洋楽のほうがカッコいい」理由のひとつに“リズム”についてよく語られました。よくある話は「日本人は1拍目と3拍目」あるいは拍均等、「洋楽は2拍目と4拍目」にアクセントがあるというもの。表拍に対して裏拍、バックビートとか言われて今でもYouTubeなんかでもよく出てきます。たとえば西城秀樹の「YOUNG MAN」とヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」のリズムの違いでしょうか。

僕は幼少期は歌謡曲で育っていますし、実は表拍もいいよねと思っているほうです。でも大学時代にバンドを演るようになってから、ちょっとわかってくるようになりました。腹にくるというか腰を揺らすというか、一言でいえば“グルーヴ”を感じるのは2拍4拍に重心が乗っかって、円を描くようにリズムが回転していくような感覚を感じたときに「これだ」と思いました。

それは裏拍なファンクだけでなく、ハードロックを演奏しているときもそう感じたわけです。その感覚でもって洋楽を聴くと「たしかにカッコいい!」と思えるようになりました。結果的に圧倒的に洋楽を聴くことが多いわけですが、その一因として“リズム”があることはたしかです。

一方で、ここ数年のJ-POPヒット曲を聴くとテンポが速いというか、ちょっと性急(つんのめり?)なリズム、が多いように感じます。いや、海外の曲にも多いかもしれない。そしてそれはそれでカッコいい曲だったりするので、ひと昔前の「洋楽のリズムは...」なんて捉え方をミュージシャンはしていないのかもしれません。自然と使い分けができるようになったということだと思います。

なんて言いながら、ニュー・オリンズ勢のネヴィル・ブラザーズやザ・ダーティー・ダズン・ブラス・バンドのライヴを聴いて、グッと重心の効いたリズムにノリノリになっていますけど。

2024-12-06

Odyssey / Nubya Garcia

 

Nubya Garcia(ヌバイア・ガルシア)はイギリス・ロンドンのサックス奏者&作曲家。2024年の本作は4年ぶりのセカンドアルバム。10歳からサックスを習い始めジャズを演奏するようになり、作曲活動をとおして様々な経験を積んで活躍しています。ジャズの巨匠たちやレゲエからの影響が感じられます。

ウィズ・ストリングスとは違うシンフォニックなアルバムで、ジャズの枠を大きく拡げている作品だと感じます。緻密に構築されたサウンドはまるでプログレとかダブを聴いているかのよう。目の前に大きく広がる音宇宙に放り出されたような気分になります。

1.Dawn はエスペランサ・スポルディングをVo.に迎えた壮大な曲。次のアルバムタイトル曲につながって全体の雰囲気を印象づけます。サム・ジョーンズの高速ドラムに乗せた3.Solstice はドラムンベースとも思えるカッコいい曲です。90年代風のイントロで始まる9.Clarity はリズムにレゲエを感じながら彼女のゆったりとしたサックスを聴くことができます。全体的にはちょっと緊張感が高くてとっつきにくいかもしれないので、まずはオーディオ的に横に奥にひろがるサウンドを感じながら聴いていくといつの間にか浸っている、そんなアルバムだと思います。

2024-12-03

ボニー・レイットを聴く日々

 

せっせと、あれよあれよと、ボニー・レイットのアルバムを集めてしまいました。ドン・ウォズとの仕事を終え、マイケル・フルームとチャド・ブレイクをプロデューサーに迎えた「ファンダメンタル」から最新作まで。

ボニー・レイットのCD

なにがいいってまず、音。クリアで高域から低域までバランス良く出ていて、どの楽器もグッと前に出てくる。ベースやバスドラの迫力良し。やっぱり特にスライドギターの音がたまらないです。サブスクでもいい音は感じていたのだけど、CDで聴きたくなってしまったのです。アナログで聴いたらもっとスゴいかも。

そして、曲。ノリノリもバラードも僕のツボでした。似たような曲で飽きるかなと思っていたのですが、全然そんなことない。聴けば「うん、この曲もいい」ってなってまた聴いている。彼女の声と曲がこのうえなく合っているんでしょうね。バラードはほんとに沁みます。

ボニー・レイットを昔から聴いている方は、もっと前の時代のものが好きなんだと思います。それらもサブスクで聴きましたが、僕には近作のほうが好みのようです。というわけで、何か聴こうかとまずボニー・レイット、ほかのをいろいろ聴いたらまたボニー・レイットに戻るみたいな聴き方をかれこれ1年以上続けています。