2024-05-31

Reverence / Charles McPherson

 

Charles McPherson(チャールズ・マクファーソン)はアメリカのジャズサックス奏者。1939年生まれで我が亡き母と同じ。現在84歳。あのチャールズ・ミンガスとも60〜70年代に共演しているそうです。この2024年新作は師匠のバリー・ハリスP(2021年逝去)への追悼と尊敬の意を込めたライヴアルバムです。

数多の巨匠たちと共演してきたチャールズはもちろんクインテットの演奏はジャズへの敬意や情熱をヒシヒシと感じることができ、ああなんて素晴らしい演奏なんだと思います。それを僕の好きなSMOKEのライヴ録音(客席の反応最高!)で聴かせてくれるのですからありがたやです。往年の熱いジャズを最新録音で聴くならこのアルバムです。どうやったらこんなに良い音で録音できるのだろう。

1.Surge からうれしい演奏を聴くことができます。テレル・スタッフォードのトランペットが気持ちよく飛んできます。続くチャールズのプレイものっけから年齢を感じさせないフレーズで応酬してくれます。ジェブ・パットンの素敵なピアノで始まるスタンダードの3.Come Rain or Come Shine ではチャールズが気持ちたっぷりにあの印象的なメロディを吹いています。バリーに捧げるラストの6.Ode to Barry は軽快でユニークなナンバー。師匠の印象を曲にしたのかもしれません。全編にわたってドラムスとベースの音も最高です。

2024-05-28

いい音紹介〜スティーヴ・スミス

 

Steve Smith(スティーヴ・スミス)と聞いてジャーニーのドラマーであることは知っている人も多いでしょう。「セパレイト・ウェイズ」「オープン・アームズ」といったヒット曲で誰もが耳にしているあのサウンドです。スタジアム級のハードロックバンドで曲に合ったドラミングを聴かせてくれるこれぞプロのプレイはミュージシャンにも人気です。

もともとジャズドラマーであることも知られていて、このヴァイタル・インフォメーションというプロジェクトに専念したくてジャーニーを辞めたそうです。で、このバンドのドラムスを聴いてびっくり。ジャーニーとは全然違う。インド?タブラ?的でとても個性的(たとえば3.Interwoven Rhythms-Synchronous )。ところがこれが癖になるサウンドなのです。これがやりたかったのかぁ。

そしてなんと言っても音が素晴らしい。ライヴ録音ということもあり、現場感がビシビシ伝わってきます。小さめのハコで演奏されるドラムスの音ってこうなんだよなーと思わせてくれます。様々なリズムでシンバルからタムまでくっきりはっきりです。そして強力なバスドラ!

僕は家のスピーカーをセッテングしているときにこのCDをずっと掛けっぱなしにして位置調整しています。ギターやベース、キーボードとのアンサンブルも生々しい音で、目の前に各楽器が気持ちよく再現できているかチェックしています。小さめの音でもしっかりスピーカーを鳴らしてくれるオススメ音源です。

2024-05-24

PEACE / 渡辺貞夫

 

渡辺貞夫さんは1933年2月生まれとのことで、今年で91歳。僕の父が34年1月生まれで1歳年下の90歳。独居老人の父には毎週会ってその年齢の実情を見ていますが、とてもじゃないですが、立ってサックスを吹き続けるなんて異次元に思います。昨年に続いて今年2024年もこうして新作を発表されているなんて本当に驚きです。オフィシャルサイトを拝見すると全国ライヴツアー中だなんて。

日本のジャズ&フュージョン界に多大なる影響を与えているナベサダさん。多くの後進を育ててなお一線で活躍されていることに尊敬します。メンバーにイエロージャケッツのラッセル・フェランテP、パット・メセニー等と共演したベン・ウィリアムスB、レギュラーの竹村一哲さんDrのカルテットで、味わい深いバラードを聴かせてくれます。

戦争やその予兆が多発している世の中に、願いを込めて吹いている1.PEACE のアルトサックスがなんとも慈愛を感じる音色なんです。2.I FALL IN LOVE TOO EASILY や9.I'M A FOOL TO WANT YOU も大好きなスタンダードで、シンプルに思いを込めて吹く姿が目に浮かぶようです。控えめに生きる父の姿を重ねたりしてしまいますが、同時に老いに向かっている自分にとってもあるべき姿のようなものを聴かせてくれるような作品でした。

2024-05-21

Apple Musicをテレビでサラウンドで

 

私的小ネタですが、Apple Musicをテレビでサラウンドできるようになりました。先週“テレビ製品初!「Apple Music」のDolby Atmos® に対応”の記事を見つけて、わが家のテレビはLGなので早速やってみました。空間オーディオのプレイリストから再生するとテレビにDolby Atmosの文字が。テレビ→AVアンプ→5.1chサラウンドスピーカーから拡がりのあるサウンドが出ました。

以前“空間オーディオをスピーカーで聴いてみる”で、Macからサラウンドを再生して喜んでいたのですが、常時接続されているテレビ→HDMI(ARC)でできるようになったので、面倒なケーブル差し替えとか設定チェックとか必要無くなりました。Apple Musicをテレビのリモコンで遠隔操作できる便利さもグッドです。クラシックの空間オーディオが気持ちよくてお気に入りです。

残念ながらハイレゾは再生されません。ハイレゾしたいときはMac→DACで聴くことになります。まぁいいんです、正直サラウンドにはそんなに音質は求めていないんです。サブウーファー含めて気持ちよく鳴ってくれればいいと。

サラウンドといえば、こんなニュースも。“Disney+、DTS:Xに5/15から対応。映像と音声両面でIMAX Enhanced対応に”。目玉のクイーンの81年ライヴ「QUEEN ROCK MONTREAL」(大好きなライヴ映像。画質最高!)で試したのですが、IMAXヴァージョンを選択しているのに、音声(サラウンド)はDTS:Xになりません。AVアンプはDTS:X対応しているので、テレビ側の問題?わからん。しばらくドルビーサラウンドでガマンします。

2024-05-17

Beyond This Place / Kenny Barron

アメリカのジャズピアニスト、Kenny Barron(ケニー・バロン)も今年2024年80歳を迎えてなお、新作をリリースしているスゴいレジェンド。バークリー音楽大学から名誉博士号を授与されているんですね。現在もジュリアード音楽院で教壇に立っているとのことで、若手育成にも影響を与えている現役バリバリです。

昔、よく聴いていました”にも書いたとおり、僕はケニーの演奏が好きなんです。緩急自在で、出るところは出て、バックにまわるときはエレガントに振る舞う。独特のアウトフレーズにもニンマリしてしまいます。今回はおなじみの北川潔さんBに加え、若手敏腕のイマニュエル・ウィルキンスSax、ジョナサン・ブレイクDr、スティーブ・ネルソンVibを迎えた編成で仕上げています。

好きな曲1.The Nearness of You で始まるあたりが僕の新定番アルバムになる予感。繊細なイマニュエルのサックスがとてもいい雰囲気です。2.Scratch ではVib.を加えまさに緩急自在なバンドアンサンブルが聴けます。5.Tragic Magic 後半のジョナサンの嵐を呼ぶドラムプレイは聴きものです。モンクの9.We See でのサックスとのデュオでも余裕のあるケニーらしいプレイが聴けて楽しい曲です。

2024-05-14

音楽は脳の報酬である

 

NHKBSの番組で「ヒトはなぜ歌うのか」を観ました。研究している人がいるんですね。アフリカの熱帯雨林に暮らす狩猟採集民のバカ族は“10〜20万年前の遺伝的特徴を色濃く残している”ということで起源を探る対象としたようです。(参照:特集記事

打楽器のリズムや拍手とともに、狩りの成功を祈る歌が自然発生的に始まります。特徴は、

(1)全員が違うメロディーを歌っている
(2)それぞれのメロディーを重ねてみると「完全4度」の音の重なりが完成する

複雑なリズムとポリフォニー。ある人が違うメロディーに移るとすかさず他の人がそのメロディーを補う、といったジャズにも似た即興性を持っているのです。登場する博士いわく、

ビートが繰り返されると脳の「予測機能」が働き出し、次にどんなビートが来るか「予測」し始めます。予測することの快感に加え、裏切られることの快感もあります。予測の複雑さを脳が喜んで大きな報酬を感じると言います。

これ、音楽を聴くときの要素として、そうかもしれない!と思わせるものでした。そうか、僕は音楽を聴くことで脳の報酬を得ていたのかと。

『ヒトはなぜ歌うのか?』の答えは『集団の絆』のため、私たちは人とつながるために音楽を手にしたといっていいのではないでしょうか

音楽を聴くことで、人とつながっていることを感じるというのもライヴに行ったりすると頷けるところです。集団で生存していくために必要不可欠なものだったのかもしれません。

番組ではほかにも「女性たちが水浴びや洗濯の時に川面を叩いて複雑なリズムを生み出す『ウォータードラム』」も面白い音で印象的。認知症患者の脳の機能活性化にも効果の可能性があることも。再放送があったらぜひ観てみることをオススメします。 

2024-05-10

Three of a Kind: Made Up Melodies / Michael Valeanu, Jon Boutellier & Clovis Nicolas

Michael Valeanu(マイケル・ヴァレアヌ)はフランス人ジャズギタリスト、Jon Boutellier(ジョン・ブテリエ)もフランス人サックス奏者、Clovis Nicolas(クロヴィス・ニコラス)もフランス人ベーシスト。ニューヨークで活躍する3人による今年2024年トリオ作品です。

前回のデュオに続いてドラムスのいない、今回はギター&サックス&ベースのトリオです。ギターが伴奏としてもピアノのような役割で、低音はベースが担っています。リズミカルなオルガンのようにも聴こえます。ここでも3人が楽しく会話をしているような密な演奏を心地よく聴かせてくれて、幸せな気分になります。

優しくおしゃれな雰囲気で始まる1.Theodore Walter からなんていいハーモニーなんだろうって思います。お気に入りは6.Bohemian Dreams のメロディです。耳から離れずいつのまにか鼻歌してしまいます。静かなドラマとかで使われそうな音楽。8.Made Up Melody も独特のハーモニーで耳で追いながら聴いています。ジャズの気持ち良いところを抽出したような、素敵な曲ばかりですっかり和んでしまうアルバムです。ジャケットの3人の表情もいいです。

2024-05-07

いい音紹介〜ボブ・マーリー

 

グッとくる「いい音」の音源は、聴いていて気持ち良いだけでなく、スピーカーなどオーディオが自分にとっていい音で鳴ってくれているかどうかを確認する、いわゆるオーディオチェックにもなります。そしてもっといい音で鳴らしたいとも思ったりします。

今回紹介するのは、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの1973年メジャー1stの「Catch A Fire」の“ORIGINAL JAMAICAN VERSIONS”です。このJamaican Versionであることが大事です。ずっと聴いてきたいろいろ楽器やエフェクトが加えられた英国ヴァージョンではなく、まさにオリジナルレコーディングの音源が随分前に発表されたのです。僕はCDで聴いていますが、サブスクにもあったので↓に。いつもより大きめの音で再生してみてください。

あまりにも生々しい録音に驚いたものです。もともといい音なので、どんなスピーカーでもそれなりに力強く鳴ってくれると思いますが、問題は気持ちよく鳴ってくれるかどうかです。

特にこのぶっ太いベース。直球でお腹に響きます。膨らみすぎてほかの楽器や声がちゃんと浮かび上がってこないのも困ります。ボブの声はいい具合にエコーが効いています。分離のいいサウンドやバンド全体のグルーヴが目の前に存在していれば、からだが自然と動くと思います。

ディスク2では英国ヴァージョンも聴けるので比べても面白い音源となっています。残念ながらこのアルバムのベーシスト、アストン・バレットは今年2024年2月に亡くなってしまいました。そして5月17日にはボブ・マーリーの映画も公開されるそうです。

2024-05-03

Every Now And Then / Cory Weeds meets Champian Fulton

 

Cory Weeds(コリー・ウィーズ)はカナダのジャズサックス奏者。ジャズクラブのオーナーであったり、レーベルも所有してリリースしていたというベテランです。Champian Fulton(チャンピアン・フルトン)はアメリカのジャズシンガー&ピアニスト。ニューヨークで活躍しています。2024年本作は昨年のスタジオライヴ録音とのこと。

サックスとピアノのデュオということで、ドラムスやベースはいません。サックスは和音演奏しないのでピアノソロのときはほとんど独奏になります。デュオといえばビル・エヴァンスとジム・ホールの「Undercurrent」が有名で僕も好きな作品です。静かな中にも楽器そのものの音色をじっくり味わうことができて、二人が会話しているようで、密度が濃い演奏に惹き込まれます。

このアルバムではさらにチャンピアンのヴォーカルも楽しむことができて、これがとてもいい感じで、3.Too Marvelous For Words や4.Linger In My Arms a Little Longer Baby ではニューヨークのジャズクラブで一杯やりながら、なんて雰囲気を味わってみてはと。7.That's Not Your Donut はサックスのスイング感も味わえる素敵な曲です。リズム楽器がなくてもデュオでこれだけスイングできるってやっぱりジャズミュージシャンはすごいです。