2023-11-30

「青盤」2023エディション

 

数年前に近所のオーディオショップで、ビートルズのレコードを爆音で聴くイベントがありました。その時のモノラル録音レコードの音が驚くべきスゴい音で忘れられません。ガツンとくる音なだけでなく、こんな音が入っていたのかとその情報量の多いこと。

僕にとってのビートルズはいわゆる「青盤」です。つまりファンというほどではない。親にカセットテープで買ってもらってそれをずっと聴いていました。曲順を変更できるわけもないので、曲が終わると次の曲のイントロを口ずさむといった具合です。CDで買い直して聴きましたが、そうだったな、くらいの感想でそれほどかけることもなく。しかしモノラル録音を聴いてから、ああせめてアンプにモノラルスイッチ(昔はついていた)があったなら、と思った次第です。

今月「青盤」「赤盤」の2023エディションが発表されました。ステレオミックスをやり直しています。CDのステレオがなんとも不自然な印象だったのが大幅に改善。改めて曲の素晴らしさに浸ることができるサウンドになっています。Apple Musicではドルビーアトモス版も味わうことができます。最後の新曲「Now and Then」も聴けます。でもあれっ、曲が多い、僕が知っているのは28曲なのに37曲も入っている、あれっ後半の曲順が、なんで?、となりました。せめて昔の曲順のうしろに追加してほしかったなぁ。

2023-11-29

Vol.1 / Chris Botti

 

Chris Botti(クリス・ボッティ)はアメリカのトランペット奏者。ブルーノート・レコードからの2023年ニューアルバムです。YouTubeでスティングやスティーヴン・タイラーとの共演を観てそのイケメンぶりは知っており、すでに60歳を超えていますがジャケットを見ると今なお健在(&貫禄)のようです。プロデュースはデヴィッド・フォスター。ドラムスにヴィニー・カリウタの名前もあります。

さらにバラード集となっているので人気作品になることは間違いないでしょう。今回は「自分とバンドのプレイ、そして自分が大好きな曲を演奏することにフォーカスした」とのことで、じっくりトランペットを聴かせています。たとえばマイルス・デイヴィスのトランペットバラードとは音色もアクセントも違うもんだなぁと思います。マイルスは孤独を深く感じますが、クリスのは優しさと包容感のような。というわけで夜に静かに楽しむアルバムとしてジャズファン以外にもオススメできると思います。

ここは敢えてマイルスが演じた曲をリコメンドしましょう。5.Blue In Green はマイルス好きなら聴かずとも思い出すことができるでしょう。音使いの違いがわかると思います。ピアノがちゃんとビル・エヴァンスしてくれて嬉しい。続く6.Someday My Prince Will Come はとても優しく響きます。8.My Funny Valentine はトランペットの音の美しさに呼応するかのようなヴァイオリンの艷やかな音色が印象的です。

2023-11-28

Liquid Spirit / Gregory Porter

 

Gregory Porter(グレゴリー・ポーター)はアメリカのシンガーソングライター。3rdアルバムである本作と次作「Take Me to the Alley」はベストジャズボーカルアルバム部門のグラミー賞を受賞しています。2013年は僕にとって豊作の年であり、その中で最も聴いたのはどれかと言えばこの作品になります。その深くて豊かなバリトンヴォイスに魅了され、YouTubeでその風貌をみて関心を持ち、1st&2ndもすぐに購入した次第です。

声質や歌い方も僕好みであったのですが、アルバム全般を通してとにかく楽曲がいい。そして音質が良い。何度も何度も聴きましたがまったく飽きることがなく、1曲1曲を味わって聴いていました。その音質の良さからスピーカーやヘッドフォンを試すときにも必ずかけていました。結局聴き入ってしまって、音質を評価できないのが難点でしたが。その後も何枚かリリースしていますが、気に入っているのはこの3rdアルバムです。

これまた全曲オススメのアルバムですが、聴かせるバラードをピックアップします。4.Water Under Bridges 、7.Wolfcry 、13.When Love Was King 、14.I Fall In Love Too Easily を聴いてみてください。バリトンヴォイスっていいなと思います。あまりに家でかけまくっていたこともありますが、幼い娘でさえ口ずさむほど印象的なメロディです。敢えて印象的な曲をひとつだけ、8.Free クセになるリズムとパンチのあるヴォーカル曲です。

2023-11-27

人口減少時代ですなぁ

 

総務省によれば12年連続で人口は減少しており総人口でも昨年55万人減っています。娘が就職するであろう5、6年後は会社はもちろん仕事をとりまく環境もさらに変化しているでしょう。人口減少によって、労働力人口不足は深刻です。ドル高ユーロ高は常態となり、賃金アップできる企業は輸出あるいは国際企業のみで、原材料費が上がり物価高騰を招き消費生活は苦しいままです。安全志向の若者は賃金アップ企業に流れ、中小企業は求人しても応募が少なく雇うのが難しい状況は変わらないと思います。

現時点でも、スーパーのセルフレジ化は急激に進みました。キャッシュレスも同様です。商品点数が多いので有人レジに進もうとしたら外国人スタッフに日本語で丁重に断られました。人手不足なわけです。日用品や食料品は単価を上げられないので省力化するのは当たり前。単価が高くて価格競争している家電やガジェットはネットで購入するものです。人間が対応してくれるのは利益率の高いブランド品など高額な富裕層向け商品だけ、となっています。

BtoCだけでなくBtoBも例外ではありません。WEBで申し込み、お試し利用、契約はクラウドサイン、質問にはAIが対応、です。営業スタッフが説明しに参りますなんてのは、よほどプレミアムな案件のみとなるわけです。セールスなんて言葉がありましたが、必要なものはこちらから言いますから、不要なものは提案しないで、となりました。営業スタッフも説き伏せて買ってもらうなんて行為を嫌がりますし、もっと効率的に仕事を進めたいと思うでしょう。

すでに会社のあらゆる部門で働き方は変わっています。会社のあり方、社長のあり方、雇用のあり方ももっと変わっていくでしょう。そのための準備を考えたいと思います。

2023-11-24

Live in Nyc / Gretchen Parlato

 

Gretchen Parlato(グレッチェン・パーラト)はアメリカのジャズヴォーカリスト。リオーネル・ルエケとの2023年作品「Lean In」でも取り上げました。彼女を知るきっかけとなったのが2013年のこのライヴCDです。DVDとセットになっていて映像でもニューヨークの小さめのハコでの演奏を楽しむことができます。ジャズクラブを経営していたときにこんな雰囲気を醸すことができたら素敵だなと思っていました。

参加メンバーとしてドラムスに旦那さんのマーク・ジュリアナケンドリック・スコットの叩く姿を観られるのがうれしい。彼らが創造的で繊細なビートを刻むのかがよくわかります。音質もとても生々しくて近距離で叩いているかのよう。そこにグレッチェン独特の歌が繰り広げられて幻想的な世界を描いていきます。2013年当時のニューヨークを象徴するサウンドがそこにあると感じることができます。

ハービー・ハンコックの1.Butterfly でのグレッチェンのスキャットと手拍子ですぐに世界に惹き込まれ、そのあとずっと続きます。ベースやドラムスが入ってきてこの音が当時グラスパーを始め新しいジャズの音なんだと知ります。2.All That I Can Say ではケンドリックの重くて引っ掛かるリズムが印象的。シンプリー・レッドの5.Holding Back the Years では新しいジャズによるカヴァーになっていてイイ雰囲気です。そして幻想的でゆったりとしたオリジナル9.Better Than で本ステージ終演となります。

2023-11-22

meets 新日本フィルハーモニー交響楽団 / 渡辺貞夫

 

ナベサダさんこと渡辺貞夫が2023年4月29日に、35年ぶりという新日本フィルハーモニー交響楽団との共演をライヴ録音したものです。御年90歳で父より年上にもかかわらずこの活躍ぶりは本当にスゴいと思います。2019年の「Sadao 2019 - Live at Blue Note Tokyo」が小気味良い演奏で、スティーヴ・ガッドのドラムスもかっこよく気に入っていました。

本作の会場は“すみだトリフォニーホール”です。2015年にKORG社のDSD録音イベントがあり、ハンディレコーダーでクラシックの交響楽団を生録するという幸運に恵まれました。本作の音を聴いていて、その奥行きがあって心地よい響きが生録した音を思い出させてくれました。拡がりのあるオーケストラの真ん中でサックスを浮かび上がらせる姿が想像できる音になっています。

1.ナイス・ショット を聴いたのは中学生の頃、資生堂ブラバスのCMだったかなと思います。今聴くとサウンドはシティポップしていて古く感じません。3.つま恋 では哀愁のサックスがオーケストラとマッチしていてドラマチックです。全般にブラジル音楽に精通されたナベサダさんの音世界が繰り広げられます。面白いと思った曲は8.サン・ダンス でちょっと日本らしいメロディが印象的です。名曲9.マイ・ディア・ライフ を聴きながら、ナベサダさんが以降の日本のフュージョンに大きな影響を与えていることをしみじみ思い知ったのでした。

2023-11-21

Conviction / Kendrick Scott Oracle

 

Kendrick Scott(ケンドリック・スコット)はアメリカのジャズドラマーであり作曲家。デビュー時は同世代のロバート・グラスパーらと共演するなど新時代ジャズ界隈のドラマーで、2013年メジャーデビューとなる本作はKendrick Scott Oracle名義でのリーダー3作目。パット・メセニーGやテレンス・ブランチャードTpなどとの共演経験もあり、山中千尋さんのアルバムにも参加していたりします。

デリック・ホッジのアルバム同様、2013年に開業したパン屋の往復に最も聴いた作品のひとつで、聴いていると当時が蘇ります。グラスパーを始め新しいジャズの潮流に魅力を感じていたことと凄いジャズドラマーが次々に現れていたことが重なって、新譜を聴くのが楽しかった時期でした。新譜とは言ってもCDではなくiTunesでのダウンロードでしたが。

1.Pendulum の語りのあとから勢いのあるジャズドラムが展開され、後半になると壮絶になります。アラン・ハンプトンの印象的なヴォーカルで始まる2.Too Much はアルバムの中でもイチオシのポップな曲。マイク・モレノのギターが印象的です。タイトル曲7.Conviction でもケンドリックの超絶ドラムスを聴くことができます。10.Be Water で独白しているのは敬愛するブルース・リーだそう。

2023-11-20

社長の「進退」

 

社長自身の進退をどうするか。社長とはまさに人生を「選択」してきた人ですから、人からどうこう言われて決める人ではありません。その社長の勝手にするというのが結論です。しかし不死身ではないのでいずれ誰かに引き継ぐか、会社を売却や廃業するなど次をどうするか「選択」する必要があります。

有名社長が次期社長を指名して、結局また自分が返り咲くといったニュースを見かけますが、私個人の意見としては、なんだかしっくりこないという感想です。当人いろいろ考えての判断でしょうから他人にはわからないことだと思いますが、幻滅してしまいます。しがみつきとか保身とかそんな印象さえあります。有名社長なら意地でも会社にはタッチしない、報酬ももらわない、そんな気概を見せてほしいと思います。

事業を起こして成し遂げた、それを後進に譲ったのだから「自分は次に行く」と宣言してほしいのです。また新たな事業を立ち上げてチャレンジしていく姿を見せてほしい。また成功するかどうかなんてわからない。すでに財を成したのだから、そこから出資してゼロから始めるということです。有名社長でなくてもそうするべきだと私は思っています。

2023-11-17

Live Today / Derrick Hodge

 

Derrick Hodge(デリック・ホッジ)は、アメリカのミュージシャンでベーシスト。活動家でもあります。ロバート・グラスパー・エクスペリメントの「Black Radio」でもベースを弾いています。2013年の本作はブルーノートから発売された初リーダー作。すでにネオソウルを始めとする名だたるミュージシャンとの経験もあり、作品は豊かなバックグラウンドを想像させるものになっています。

2013年といえば個人的にはパン屋を始めた年でもあり、往復2時間の毎日でヘッドフォンでありながら様々な音楽をどっぷり聴くことができました。このアルバムはそんな中よく聴いた作品で、聴くと当時の風景や匂いが思い起こされるほどになっています。デリックの太いベース音が少しの高揚感と癒やしをもたらして、多様な楽曲とともによい時間を過ごすことができました。

ベースのハーモニックスで始まる1.The Real からいかにもデリック唯一無二の音になっています。3.Message of Hope も印象的なメロディーをベースで奏でて、一筋縄でいかないリズムとともに新しいジャズを提示しています。4.Boro March でいきなり超絶ユニゾンから太いベースラインに移るところがカッコいい。このアルバムでも好きな曲です。コモンが参加した5.Live Today はもはやヒップホップの名曲といえるでしょう。時代を超えて色褪せない作品になっています。

2023-11-16

完全再現ライヴと即興演奏ライヴ

 

先日観に行ったシネマ・コンサートは満員の盛況ぶりでした。いわゆる「完全再現」コンサートというものです。YouTubeなどでは大物アーティストやアイドルグループのライヴを垣間見ますが、ヴォーカルこそ生で歌っているものの、バックの演奏は生演奏ではなくマシン再生したものが多いようです。求められている音は、ストリーミングやCDの「完全再現」なのです。音源にないギターソロを延々と繰り広げるなんてしちゃいけないんです。

ファンは「いつも聴いていたものと違う」ことを嫌うようで、ミュージシャン側もファンの希望に沿ったものを提供しているのだと思います。セットリストもSNSで事前に予習してきていますから。となるとライヴの魅力は、迫力のある音響に加え、舞台演出やダンスパフォーマンス、MCにあるのでしょう。大勢のファンとともに盛り上がることもその醍醐味です。

今年10月11日に山下達郎さんのライヴを観に行きました。御年70歳ではありますが、ハリのある強いヴォイスは3時間通して衰えを知らず、僕としては人生をともにした楽曲の数々を原曲キーそのままで再現してくれたことに感無量でした。バックには腕利きのミュージシャンが顔を揃え、ソロを含めて「CDにはない即興演奏」を聴かせてくれたことが何より楽しく、これだからライヴはいいんだと感じさせてくれました。

山下達郎さんのようなライヴは数少ないと感じています。ジャズ生演奏に至っては、原曲といかに違うアレンジや即興によるソロプレイで曲を聴かせるかが勝負どころなので、「完全再現」には程遠い。演奏する季節やその日の天気、来場したお客様の様子、メンバー同士の呼吸、演奏家本人の調子など毎回違う演奏を提供するシェフの「おまかせ料理」なわけです。

音楽の楽しみ方は人それぞれですが、ぜひとも「おまかせ料理」の楽しみも味わってもらいたいと思いますし、そうした演奏を提供するミュージシャンが今後も活躍できることを祈っています。

2023-11-15

Bridges / Kevin Hays, Ben Street, Billy Hart

 

メンバーを紹介しますと、Kevin Hays(ケヴィン・ヘイズ)は米国ジャズピアニスト55歳。ブルーノートから3枚のアルバムを出していて、ソニー・ロリンズ、ベニー・ゴルソン、ジョンスコフィールドなど著名ミュージシャンとの共演歴を持つ。Ben Street(ベン・ストリート)は米国ジャズベーシスト。彼もジョン・スコフィールド、カート・ローゼンウィンケルなどとの共演歴があります。Billy Hart(ビリー・ハート)は米国ジャズドラマー82歳。ジミー・スミス、ウェス・モンゴメリー、ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィスとの共演歴というレジェンド。簡単に言えば3人共ジャズ界の超ベテランということになります。

お気に入り&定番のSMOKE Sessions Recordsからのスタジオ録音リリースです。ハイレゾで期待どおりの高音質です。落ち着いた演奏で安心して聴くことができます。もしニューヨークに行くことがあったなら、一晩はこうしたベテランの熟練の演奏を小さめのジャズクラブで聴いてみたいものです。

ウェイン・ショーターの2.Capricorn をピアノソロで奏でながら始まり、シンバルがゆっくり入ってくる。やがて3人のコミュニケーションとなる。ビートルズの4.With a Little Help from My Friends なんてまさにベテランによるアレンジ。気持ちよく聴けます。5.Row Row Row のワルツでの展開にケヴィンならではのオリジナリティを感じます。どの曲もほどよい尺で秋の夜長に心地よく聴けるアルバムです。

2023-11-14

Black Radio / Robert Glasper Experiment

 

2012年はエスペランサの作品と、このロバート・グラスパーの作品が発表された象徴的な年だと思います。奇しくもどちらのタイトルにも「Radio」の文字が。25年続いたCD時代が終わり楽曲をダウンロード購入する時代に。その後10年も経たずにサブスク・ストリーミングの時代がやってきますが。Robert Glasper Experiment名義で発表された本作もジャズという枠を軽々と超えて新時代の音楽を僕たちに見せてくれた傑作であると思います。

この作品が僕の深い共感を生んだのは、いままで聴いてきたジャズ、ソウルR&B、ファンク、レゲエ、ダブ、フュージョン、ロックといったあらゆるジャンルの要素を含んでいて、先人たちへのリスペクトも感じることができること。それを難しい顔して表現するのではなく、軽々と昇華して新しいサウンドを作りあげていることに「だから音楽って面白い」と思わせてくれたことでした。ジミ・ヘンドリックスがExperience名義で冒険的な音楽を作り上げたのと同じような雰囲気を感じます。

この作品も全て必聴の濃い作品です。敢えて3曲のオススメを選ぶとすれば、あのエリカ・バドゥを迎えた2.Afro Blue 、5.Gonna Be Alright (F.T.B.) 、ニルヴァーナの12.Smells Like Teen Spirit 。ドラムスにクリス・デイヴ、ベースにデリック・ホッジを迎えた最強布陣でのスゴい演奏と強靭な楽曲。10年以上経った今でも、新しい音楽はこの作品の影響下にあるのではないかと思うくらい必聴アルバムです。

2023-11-13

会社も「退場」するもの

 

組織を構成する「社員」も新陳代謝していくのが自然であると書きましたが、経済社会を構成する「会社」も同じく新陳代謝していくものだと思います。冷たい言い方になりますが、利益を出せない(税金を払えない)会社は市場から淘汰されていくようになっているということです。やはり税金を払って地域や社会に貢献してこそ会社の存在意義があると思っています。もちろん税金を払う以外にも、様々な貢献があると思いますが。

社長にとって「倒産」は仕事を失うだけでなく、多くの負債を抱えるという最も選びたくない選択肢です。しかし現実は月に何社も市場から退場を余儀なくされています。利益を出していれば「売却」という選択肢もあったと思うので、やはり利益を出せなかったということです。マイナスイメージしかないですが、こうして新陳代謝という作用があることは必要だと思います。

やっかいなのは、経営がうまくいっていないのに会社に区切りをつけられない社長自身です。多くの場合、金融機関などから借金を繰り返してなんとかキャッシュフローをポジティブにしているので、金融機関もその会社が潰れてしまっては困る(返済されない)し、社長自身も個人保証しているので、万が一のことがあったら多額の借金のみが残るという最悪の事態になるわけです。社員は転職すれば済む話しですが、社長はそうはいきません。だから倒産できないのです。

こうなってしまっては時既に遅しです。早め早めに経営判断していくためにもよき相談相手が社長には必要です。できれば取締役がその役目を務められればいいのですが、イエスマン体質にしていれば機能しません。建設的かつ時には厳しい意見を言ってくれる人が身近にいると助かります。

2023-11-10

Radio Music Society / Esperanza Spalding

 

Esperanza Spalding(エスペランサ・スポルディング)はアメリカのヴォーカリスト兼ベーシストとしてマルチプレイヤーでもあるそう。本作が出た2012年はCDを買わずにiTunesダウンロード音源のみで楽しむようになっていた時期で、当時このアルバムを繰り返し聴いていたのを覚えています。本作を聴いたとき「とんでもない才能がいるもんだ」と驚きました。彼女の歌はもちろん楽曲もすごくて、これぞいまのジャズだなと感心したものです。

彼女が表現したい音楽はとてつもなく広くて、深くて、自由。それが自在なヴォーカルにもベースラインにも表れているし、多彩な楽曲のカラーにも反映されています。ジャンルなんてとっくに超越していて、それを最高のハーモニーとリズムで聴かせてくれる傑作だと思います。ジャズとはそもそもそういうものなんじゃないのと軽々と提示してくれました。

全曲みっちり聴いて彼女の才能を感じてほしい。でも敢えて3曲オススメを挙げるとすれば、5.Black Gold 、ウェイン・ショーターの9.Endangered Species 、11.City Of Roses あたりかな。どの楽曲もその展開に驚きますし、追従する歌唱に思わず唸ります。それでいて耳に馴染むこの浸透力。僕の中では、スティーヴィー・ワンダーやパット・メセニーに比肩する才能だと思っています。

2023-11-09

「トップ25:ドバイ」を聴く

 

高校生の娘が海外研修でUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビやドバイに行きました。一週間留守番の親としても少しでもUAE気分を味わいたいと思い、Apple Musicのプレイリストでランキングにある「トップ25:ドバイ」や「トップ100:アラブ首長国連邦」を聴いていました。ちなみに都市別トップ25にはOsaka、Nagoya、Sapporo、Fukuoka、Kyoto、Sendai、Nahaもあります。

旅行のお供ミュージックとして、そこで流行っている音楽をチェックするのも面白いかなと思います。そこに住んでいる人がどんな音楽を好んで聴いているのかは興味があります。音楽は生活とともにあるので、音楽を聴くことで地元のお店や家庭、車の雰囲気に思いを馳せることができます。UAEのチャートはUSAのものが多い印象ですが、中にアラブらしい音楽が含まれていてそれが楽しい。もっと曲を調べれば、いま現在の国政状況も反映されているかもしれません。

サブスクではこんな楽しみ方も提供してくれていて感謝なのですが、サブスクがあることでみんな同じような曲を聴くようになってしまうのではとちょっと考えさせられます。レコードやCDしか無かった時代はもっと地元のアーティストがランキングを占めていたのではないか。できれば各国各都市のたとえば80年代のチャートも聴いてみたいと思ったりします。どこかにあるかな。

2023-11-08

säje / säje

 

säje(セージュ)はアメリカのコーラスグループ。グループ名はSara、Amanda、Johnaye、Erinの頭文字で確かな実力をもった4人。2021年第63回グラミー賞では1.Desert Song が “Best Arrangement, instrument, and Vocals”にノミネートされました。2023年デビューとなる本作では、バックにドーン・クレメント(p)、ベン・ウィリアムズ(b)、クリスチャン・ユーマン(ds)といったジャズメンバーが参加しています。

ジャズでコーラスといえばマンハッタン・トランスファーを思い出しますが、女性4人のコーラスは珍しいと思います。それぞれの声が美しく、緻密に複雑に調和しているコーラスはうっとりするほど。コーラスだけでなく、リードヴォーカルとしての実力もそれぞれしっかり聴くことができます。

美しい曲1.Desert Song やジェイコブ・コリアー参加の4.In The Wee Small Hours of the Morning を聴くと癒し系かと思いますが、憂いのある3.Never You Mind (アンブローズ・アキンムシーレTp.参加)やアップテンポの7.I Can't Help It (マイケル・ジャクソン。スティーヴィー・ワンダー作)あたりはジャズ濃いめでカッコいいです。ラストの10.Solid Ground/Blackbird のソウルフルなメドレーも静かに聴かせる曲でオススメです。


2023-11-07

liminal / 砂原良徳

 

砂原良徳は元電気グルーヴのメンバーでテクノミュージシャン。1998年「TAKE OFF AND LANDING」や1999年「LOVEBEAT」もオススメですが、この2011年作もとにかくまず音がスゴい。ヘッドフォンで聴いたら耳の中を縦横無尽に音が飛び交います。スピーカーで大きな音で聴くとさらに驚くような音が入っていて、ちょっと圧倒されてしまいます。僕は1音1音にこだわるアーティストが大好きでして砂原良徳はまさにその代表格だと言えます。

ミュージシャンは皆それぞれに音にこだわっていると思いますが、YMO世代としてはテクノと呼ばれるこうしたミュージシャンの活躍が嬉しい。テイ・トウワコーネリアス中田ヤスタカ、もちろん坂本龍一も。テクノとは言われていないかもですが海外ではマッシヴ・アタックエイフェックス・ツインあたりもすぐに思い出されるところです。彼らの作品での1音1音にかける時間や労力、選択力は僕には想像できないほどなんだと思っています。

たとえば1.The First Step でのライターのような音に続く26秒くらいからの音の拡がり、ビートの超低音、ノイズのような効果音など音数が少ないにもかかわらず凄い情報量です。3.Natural のウッドベースにノイズを乗せたような音のセンス。ここに至るまでいったいどれほどの音のなかからこれをチョイスしたのかと。YMOを進化させたような曲が続いていますが6.Beat It あたりのリズムセンスを聴くと、ああやっぱりスゴいなと。たった39分のアルバムですが長編を聴いたような感覚です。

2023-11-06

組織も新陳代謝していく

 

社長にとって最も聞きたくないスタッフの言葉は「会社を辞めたいんです」でしょう。志をともにして奮闘してきたスタッフであればあるほど、社長は凹みます。業績が芳しくないときには仕方がないと諦めるしかないのですが、これから成長しそうなときにこれを言われると「どうして」と相手も自分も責めてしまいそうになるものです。

しかしながら人が「辞めない」会社はありません。人間の細胞の新陳代謝と一緒で、自然現象と捉えるしかないでしょう。辞めていく人にとっては新たな職場が待っています。辞められた会社はまた新たな人材を獲得して奮闘していくことになります。昔と違って、人材は流動していく前提で社員を雇用し、一度辞めた社員がまた戻ってくることもある、くらいのつもりで経営していく時代になっていると思います。

雇用を維持しようとするのではなく、むしろ組織を時代にあわせて変化させ、個人にも変化と成長を促していく。時代に合わせた戦略のもと、ある分野では長期雇用が合うかもしれないですし、人が入れ替わることで新たな価値を生み出せる分野もあるでしょう。個人にとっても会社という器があわなくなれば、別の器を探して転職していくほうが無理がないと思います。「選択の時代」だからこそ、会社も個人も常に準備していく必要があります。

2023-11-02

都会の囀り(さえずり)

 

ベランダからいい声が聞こえてきたので録音しました。
レコーダーを近づけても、逃げることなく羽繕いしながら、
きれいな囀りを聞かせてくれました。

録音機材レコーダーはKORG MR-2 内蔵マイクにて収録
セッティングはMic Sens HIGH それ以外は全部Off
ファイル形式はWAV 24bit 192kHz ※SoundCloudにてダウンロード可

2023-11-01

SuperBlue: The Iridescent Spree / Kurt Elling & Charlie Hunter

 

Kurt Elling(カート・エリング)はアメリカのジャズヴォーカリスト。ブランフォード・マルサリスのアルバム「Upward Spiral」での歌唱が耳に残っていました。2023年本作は同い年のジャズギタリスト、チャーリー・ハンターとの共演で2021年にも「SuperBlue」という同名のアルバムを出していてグラミー賞を受賞しました。本作はその続編。

男性ジャズヴォーカルといえば、フランク・シナトラ、ビング・クロスビー、チェット・ベイカーといった名手を思い出しますが、女性ヴォーカルに比べて最近は目立った人が多くない印象です。僕はグレゴリー・ポーターあたりが好きで、カートも同じくお腹から声を出して声量がある感じで、バリトンヴォイスが好みなんです。

このアルバム、すごくカッコいいです。ジョニー・ミッチェルの1.Black Crow から勢いのあるジャズソウルです。カートの歌うメロディが複雑でクール。チャーリーのギターがファンキーな5.Bounce It もさすがの曲でジャンル超越してカッコいい。オーネット・コールマンのドラムンベースカヴァー、6.Only The Lonely Woman も聴きどころです。ジャズの枠を超えた音楽ファンに聴いてほしい快作だと思います。