2025-01-17

Motion I / Out Of/Into

 

Out Of/Into はアメリカのジャズミュージシャンであるイマニュエル・ウィルキンスAs、ジョエル・ロスVib、ジェラルド・クレイトンP、マット・ブリューワーB、ケンドリック・スコットDsからなる“ブルーノート・クインテットとして結成されたオールスター集団”。レーベル85周年としてグループ初の2024年作品です。

ブルーノート・レコードは2012年にドン・ウォズが社長に就任してからも、ロバート・グラスパーなどジャズの枠を超えて幅広いファンを獲得する音楽を提供していて、新作はいつも注目に値する作品ばかりです。今回の作品もかつてのジャズを革新する演奏が繰り広げられていて、さすがオールスターのなせるワザを聴くことができます。家にあるかつてのブルーノート作品もその時代において常に革新的であったわけですが。

正月からYouTubeでドラムの動画ばかり観ていたこともあり、ここでのケンドリック・スコットの超絶演奏に耳を奪われます。1.Ofafrii や3.Radical をしっかりした音量で聴くとマット・ブリューワーのBとともに圧倒されます。6.Synchrony もドラムスで始まり、ヴィブラフォンからサックスソロでのバンドが熱を帯びる様がなんともカッコいい曲になっています。トップミュージシャンが集まると緩急自在で複雑なリズムもなんのその、というものすごい演奏が詰まったアルバムになっています。

2025-01-14

オーディオMac高音質化計画

 

Qobuzは、オーディオ専用のMacBook Air(2013年モデル)でQobuzアプリを立ち上げて聴いています。MacBook Air→TEAC UD-505(DAC)→アンプ→スピーカーという接続です。Apple MusicもQobuzと同様です。今はもっぱらQobuzですが。

MacBookの前、つまり音源はWi-Fiルーターから無線でMacに飛ばしていました。ふと思い立ち、これ有線にしたらさらに音質向上するのではと。有線LAN(USB接続)アダプタを購入(1,500円程度)してルーターとLANケーブル(有線)で繋いでみたら、ちょっと音の重心下がったかも、と良い効果を感じました。

PC(Mac)の高音質化計画をまとめると

  • 有線LAN接続
  • Wi-Fiをオフ
  • Bluetoothをオフ(AirDropもオフ)
  • 通知も全部オフ(Siriもオフ)
  • ほかのアプリのバックグラウンド動作をなるべくさせないよう設定
  • DACへのUSBケーブルやLANケーブルはノイズ対策してあるものに
つまり古いPCやMacをオーディオ専用機にしてノイズの源を極力排除するってことですね。

ほかにも高音質化対策を探すと、電源アダプタと電源そのものの改善(クリーン電源とか)や有線LAN部分の改善(光アイソレートとか)などオーディオマニアックなツールが世の中にはありますが、手っ取り早く&安価に高音質化するなら上記でしょう。

いやいや“オーディオ”としてはシステムにPCがあること自体、納得がいかないという話もあります。ノイズをまとっている物体であると。近年は音質に特化したネットワークオーディオプレーヤーなるものが多数販売されております。10万円以下からもっとお高いのまで。曲のコントロールは離れてタブレット端末で、なんていうのがスマートです。

PCアプリも「Audirvāna」(オーディルヴァーナ)という高音質アプリがあったり、PCやオーディオネットワークプレーヤーでも統合音楽リスニング環境を高音質で構築できる「Roon」はオーディオ好きで音楽好きには話題だったりします。それぞれ使用料が必要ですが。まぁ、沼ですね...。

2025-01-10

Crossing Paths / Renee Rosnes

 

Renee Rosnes(リニー・ロスネス)はカナダのジャズピアニスト&作曲家です。ジョー・ヘンダーソンやウェイン・ショーター、JJジョンソン、ボビー・ハッチャーソンといった巨匠たちとの共演歴もあり、現在もトップミュージシャンとして活躍しています。あのジャズピアニストのビル・チャーラップと2007年に結婚しています。2024年の本作はブラジル音楽へのリスペクトを感じる作品です。

ボサノヴァをはじめMPB(Música Popular Brasileira)のブラジル音楽は僕自身も好きで、カエターノ・ヴェローゾマリーザ・モンチやいくつかの当時若手ミュージシャンをよく聴いていました。多彩なコード感やリズムはジャズとも通じるところが多く、いままでも多くのミュージシャンがブラジル音楽に傾倒してきたと思います。リニー・ロスネスも約30年前から構想してきたそうです。

爽やかなフルートで始まる1.Frevo からブラジルの風を感じることができます。これまたいい音のギターと気持ちの良いユニゾンを奏でています。伝説的ミュージシャンの2曲、エドゥ・ロボとの5.Casa Forte やジョイス・モレーノとの6.Essa Mulher がいかにもブラジル音楽の魅力を凝縮していて聴き惚れてしまいます。いままでにも多くのブラジル音楽とジャズの融合作品がありましたが、いまのサウンドで聴くことができる最高のものだと思います。

2025-01-07

ワイヤレスイヤフォンMET1を買いました

 

ワイヤレスイヤフォンMotherAudio MET1を購入しました。年末に販売元であるBEAT&VOICEのHさんに連絡して送ってもらったので正月はたっぷり楽しむことができました。先日のポタフェスで開発・製造元の北日本音響さんとの打ち合わせに同席したりして聴いてみたいと思っていました。価格は税込14,850円。

MET1 削り出したようなデザイン

見た目よりもケース、イヤフォンともに軽いです。ツヤ消しの手触りで汚れも付きにくそう。日本メーカーが手掛けていることが頷ける質感です。AirPods Proに慣れていたので耳に入れたときに大きいかなと思いましたが、耳介の内側をすっぽり覆うように装着するのでむしろ安定している感があります。

使いこなしのポイントは、イヤーチップです。ここに一番時間を使いました。サイズも5種類入っているので全部試しました。結果、左耳はM、右耳はLでした。左耳はすぐに決まったものの右耳に隙間がある。外を歩くと微妙に風の音が入ってきちゃいます。小さいサイズも試しましたが、大きめのほうが安定して密閉状態をつくってくれることがわかりました。

肝心の音質は、AirPodsとは別物です。「これがオーディオか」とつぶやきました。耳の回りに音が拡がり、高音は解像度高し。低音は膨らむことなくしっかり響きます。刺激的なところはなく、長時間しても疲れない。良質のヘッドフォンをしているかのごとくでした。

機能としては、まずノイキャン。効きはAirPodsのほうが強いと思います。試しに喫茶店で小一時間過ごしてみましたが、ちゃんと効いて音楽に集中できました。さすがに大江戸線の車内ノイズを消すことはできませんでしたが。そしてLDAC(ソニー開発のハイレゾ対応でBluetooth伝送する技術)。iPhoneはAACというBluetooth伝送を使用してこのイヤフォンと接続できますが、ハイレゾ対応ではない。なのでLDACで送信できるデバイスも購入しましたがそれは後日。

iPhoneとの接続は、イヤフォンを入れたままのケースを開けて、iPhoneのBluetooth設定でペアリング接続するだけ。1回ペアリングすれば、次回から自動接続されます。iPhoneから少し離れようがバッグに入れようが接続は安定しています。やっぱりワイヤレスって便利。

奇をてらわず、音楽リスニングに必要な機能を、しっかり作り上げた高音質ワイヤレスイヤホン、長く使えそうです。

2025-01-03

That's What's Up / Mike LeDonne, Eric Alexander & Jeremy Pelt

 

通称“Heavy Hitters”と呼ばれるニューヨークを代表するジャズミュージシャンのマイク・ルドーンP、エリック・アレキサンダーTs、ジェレミー・ペルトTp、ヴィンセント・ハーリングAs、アレキサンダー・クラフィーB、ケニー・ワシントンDsからなるグループの2024年2作目。カナダ・バンクーバーでのライヴ録音となります。

2025年の幕開けはやはり景気よく白熱のハードバップで始めたいと思います。ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのライヴ名演盤数々を原点としている僕としては、こうして今でも熱気溢れる演奏を聴かせるスタープレイヤーたちがいることがうれしくてヘビロテしてしまいます。特に3管がピタッと合わせてきて、順にスリリングなソロを披露、それを焚きつけるようにピアノベースドラムスが煽ってくる、そんな展開がたまらないわけです。

1.JB から「来たきたー」とばかりのドライヴ感。まったく出し惜しみの無いソロをぶっ放してきます。ノリノリが止まらない4.Groundation はもっともっとイケますよとばかりに濃い演奏でこりゃ観客も体が動いて大変だと思うほど。ミドルテンポの6.Blues For All は心地よいスイングでさすがツボをおさえている余裕の演奏。ジャズクラブの熱気をそのままに伝える音質で自然な音圧がスゴいアルバムです。ボリューム上げ気味でオーディオに喝を入れてやってください。
※今回からQobuzへのリンクも追加しました↓

2024-12-31

2024年音楽&オーディオ振り返り

 

AirPodsの売上が爆増しAirPodsだけでSpotifyや任天堂を上回る”(Gigazine 12月23日の記事)にもあるように、AirPodsで約2兆8000億円もの売上で、音楽配信で世界トップのSpotifyを上回っていると。あのゲーム大手のニンテンドーよりもアップルの一部門のほうが上回るとはなんたることでしょう。

街中でもあの白いAirPodsをしている人は多いという印象です。音楽配信について言えば、Spotifyは無料でも聴けるので利用者は多いですし、AirPodsということはiPhoneで、Apple Musicを有料契約している人も多いでしょう。ミュージシャンで録音物でビジネスしている人にとっては不可欠な存在です。特に新譜が聴かれないと次に続かないのでApple Musicでの配信と拡散は必須となります。サブスクは旧譜への波及効果も見込めます。

レコード&CD時代にくらべたら、サブスクの手取りの少なさに呆れるほどですが、曲の存在を知られなければ始まらないので、どこかで配信せざるを得ない。そして録音物以外のライヴやグッズなどの収入をどう増やすかに活動のほとんどを充てることになります。

オーディオもビジネス視点では、AirPodsひとり勝ちです。ん?AirPodsはオーディオではない?、なるほどいわゆるオーディオ界隈ではAirPodsが話題になることはほとんど無いという印象です。そりゃハイレゾ接続ではないし、値段高いし、なんか嫌だし...と理由はありましょう。でも音質も良くてノイキャン性能優秀、空間オーディオもある。今年からは補聴器的な耳の健康対策に注力していたり、加速度センサーやノイズコントロールでウエアラブルデバイスとして来年はさらに売上を伸ばすでしょう。ビジネス戦略の違いがこんなに格差を生んでいます。

僕のような「ニッチ」で「趣味が大事」で「あれもアリ、これもアリ」な多様性支持層は、もっと消費者ボトムアップで拡げて深堀りしていくしかないと思っています。サブスクのおかげでいろいろ聴けるようになったし、気に入ったものをCDで買ったりしました。ただものではない音楽好きの仲間もできて、レコードの音を楽しむ機会も増えました。そしてジャズ以外の音楽もよく聴きました。やっぱり純粋に音楽をもっと楽しみたいと思える一年となったのです。

2024年10月「Qobuz」音楽配信サービスがローンチしました。ストリーミングもダウンロードもハイレゾできて、ミュージシャンやレーベルのリンクもあって、オーティオ特化のプレイリストがあったり、読み物(マガジン)もあって、音楽&オーディオ好きにとって好感がもてるサービスです。もちろん音質もアップロードされた楽曲になるべく手を加えず、かつ高品位な機器で配信されているであろうと感じられるものです。今後の拡充に期待できます。

イヤフォンやヘッドフォンも、有線やワイヤレス問わず新製品は出続けていて、一人2機種以上持ちが多くなっているように思います。スピーカーを設置してというのは少数派に思われますが、耳の中だけなく体で感じることができるスピーカーの良さを音楽好きは知っているはずです。Bluetoothスピーカーやアンプ内蔵スピーカーも良いものが出ています。こうしてオーディオは選択肢の多さがあるからこそ楽しいといえます。

みんな一緒ではなく「へぇ、それ使ってるんだ」と人それぞれがいいと思います。アップルも使いますけど...。というわけでこの年末にワイヤレスイヤフォンをひとつ増やしました。Qobuzをハイレゾのままワイヤレスで聴きたいと思いまして。

2024-12-27

Samares / Colin Vallon

 

Colin Vallon(コリン・ヴァロン)はスイスのジャズピアニスト。ピアノトリオ作品として2024年本作は6作目。パトリス・モレB、ジュリアン・サルトリウスDrとの共演として3枚目にあたります。“自然(とくに植物)からのインスピレーション”を得て、彼らなりの相互作用でつくり上げたとしています。

マンフレート・アイヒャー率いるECMレコード(レーベル)といえば、チック・コリア「リターン・トゥ・フォーエヴァー」をはじめキース・ジャレット「ザ・ケルン・コンサート」、パット・メセニーの初期あたりのイメージでしょうか。“静寂の次に美しい音楽”という創設時のコンセプトは55年経ったいまでも表現されています。普段どちらかといえば熱い音楽をかけがちな僕でも、たまーにECMしたくなるときがあります。

1.Racine からして吹雪を感じさせる音とともに冬を感じさせてくれる音楽です。4.Ronce のようにヒタヒタとしたリズムにピアノとベースが次第に熱を帯びていく様もいい感じです。8.Souche の中間あたりでのピアノのちょっとエスニックな展開が好きだったりします。アルバム全般にわたって、自然の音やリズムを楽器演奏に置き換えたような音世界が繰り広げられています。掘るともっと多彩な面を持つECMですが、今回は静かな年末を過ごせるような作品を紹介してみました。