2025-06-27

Words Fall Short / Joshua Redman

 

Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)のブルーノートからの2作目で2025年新作です。ジョシュアSaxのほか、ポール・コーニッシュP、フィリップ・ノリスB、ナジル・エボDsからなるカルテットで、一回り若いメンバーながら実に成熟した演奏を聴かせてくれています。

Joshua Redman - Words Fall Short

ひとつの曲をじっくりと聴いていくと、繊細に物語が進行していくように展開して、なんてよくできた曲なんだと思うことになります。一見派手さはないですし、その演奏技術をひけらかすようなこともないのですが、あぁ全員ただものではないんだなとわかります。ここにはこれぞジャズ、“言葉には言い表せない”表現が詰まっています。

静かに始まる1.A Message To Unsend から聴かせてくれます。徐々に熱を帯びていくさまに惹き込まれていきます。タイトル曲3.Words Fall Short のベース音がいいですなぁ。ジョシュアのソプラノサックスがクールに響きます。4.Borrowed Eyes のバラードではフィリップのベースによるブルースが光ります。ジョシュア曰く「クリスチャン・マクブライド以来、すべてを備えたアコースティックジャズベーシスト」とのことで今後も要注目です。7.She Knows ではフリーに行きますが、苦手な人でもこのカルテットの音色であればとオススメします。

2025-06-20

STAXのイヤーパッド交換

 

(娘)「顔の横に“ひじき”が付いているよ」、(僕)ひじきは食べていない...。

STAX SR-L700 MK2(イヤースピーカーと呼ぶ)のイヤーパッドが劣化して剥がれたものが付着していたのでした。剥がれてきているのは知っていたけれど、まぁいいかと使い続けていました。でもたしかにちょっとヘタれてきているかな、とSTAXの公式通販サイトに発注したのでした。

放っておいた僕が悪かった。

新しいイヤーパッドが届いた。

交換完了!自分で簡単に交換できます。

さっそく装着したら、フィット感良好。不思議なもんで音まで良くなった気がします。実際ヘッドフォンのイヤーパッド交換による効果は経験しています。ちなみにこの機種のイヤーパッドは、肌に当たる部分が本革でそこは見た目には劣化がなく、周辺の取付部分が人工皮革で、この部分が経年劣化して剥がれていたのでした。まぁずっと使っているとクッションもヘタれてくることは間違いなく、弾力も復活してよかったです。

YouTubeを見たりしていると、ついつい新製品や音質が良くなるかもしれないグッズやアクセサリーに目移りしてしまいます。が、まずは手持ちの機材をちゃんとメンテして、その性能を発揮させてあげないともったいないですね。


2025-06-13

Out Late / Eric Scott Reed

 

Eric Scott Reed(エリック・スコット・リード、またはエリック・リード)の2025年Smoke Sessions新作アルバムです。メンバーはエリックPのほか、ニコラス・ペイトンTp、エリック・アレクサンダーTs、ピーター・ワシントンB、ジョー・ファーンズワースDsというオールスターメンバー。ニューヨークに行ったならぜひともこのメンバーのセッションを聴いてみたいと夢見ています。今回もまるでSmokeにいるような素晴らしい録音で聴くことができます。

題名にもあるとおり、深夜の雰囲気を伝えるもので、“ミュージシャンの生活、つまりナイトライフやアクティビティ、ニューヨークのヴァイブレーションの感覚やエネルギーを指しています。”とのこと。演奏を聴いているとなんとも落ち着きます。仕事帰りにこんなジャズクラブでグラスを傾けて、緊張をほどいていくことができたらと思っていたものです。

1.Glow なんて曲で始められたら、ああ大人っていいなと思います。勢いでもなくバラードでもなくスローなスイング。名うてのミュージシャンが醸す余裕の演奏。3.Shadoboxing も心地よくマッサージしてくれます。身を委ねるだけでよいんです。4.They では軽快なスイング。明日への元気につながります。“すべてファーストテイク、ヘッドフォンもオーヴァーダビングもなし”とのことで昔ながらのレコーディング方法だからこそのライヴ感を味わえる作品です。

2025-06-06

フルレンジでサブシステム

 

長いことオーディオ好きをやっている人であれば、メインで聴く以外のサブシステム(または自宅とそれ以外とか)を楽しんでいる方もいらっしゃると思います。同じ音源を違うスピーカーで聴くことで、また曲の印象が違ったりします。

僕はメインはJBL4309という2ウェイスピーカーですが、もう25年以上前に買ったミニコンポ(ビクターFS-10)にセットになっていたフルレンジスピーカーSP-FS10もお気に入りで持っていました。最近これを棚の上に乗せてサブシステムとして鳴らすマイブームの最中です。

ビクターSP-FS10(8.5cmフルレンジ)

ちょっと定評があるスピーカーのようで、のちにウッドコーンに変化していく型です。コンポのほうはとっくにCDプレーヤー部分が壊れ、ボタンも2回押さないと反応しなかったりと覚束ないご様子。アンプ部分はまだ行けるようなので、外部入力にRCA-3.5mmジャックの有線をつけて、iPhoneやCDウォークマンを音源にして鳴らしてみました。

これがやはりというかなかなかに味のある音を奏でてくれます。いつもハイレゾハイレゾ言っているくせに、高いほうも低いほうも鳴らないフルレンジでも楽しいもんだというわけです...。特にヴォーカルの静かな曲なんて、真ん中に“声”がポッと浮かび上がって聴き惚れてしまうほど。ジャズのモノラル音源もこれまた良いんです。音も曖昧ではなく、しっかりクッキリ描いてくれます。※コンポに「Super Pro Sound」なる低域増強ボタンが付いていて、時代を感じますが気に入っています。

音の出口であるスピーカーやヘッドフォン(イヤフォン)を、違うキャラで複数持っていると、よく聴いた曲でもまた違った味わいがあるというのがオーディオの楽しいところです。

2025-05-30

Downhill From Here / Gilad Hekselman

 

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)はイスラエル出身のジャズギタリスト。ニューヨークを中心に活躍しています。ジョン・スコフィールドGやアントニオ・サンチェスDsとの共演やエスペランサ・スポルディングのアルバムに参加するなど、カート・ローゼンウィンケル以降の最注目ギタリストだそうです。2025年新作アルバムはリーダー作品として9作目にあたります。

今回は、ロイ・ヘインズの孫であり超絶ドラマーのマーカス・ギルモアと、ブラッド・メルドーやパット・メセニーと共演でも印象深いラリー・グレナディアBとの鉄壁といえるトリオ作品。3人が会話するさまは、あのメセニーのトリオを想起させます。ギラッドの音はより浮遊感があって彼らの音空間に浸ると気持ちよくて時間を忘れます。

数多くの名演が存在するバート・バカラックの4.Alfie はなんとも染み入る演奏。メセニーの「Alfie」と聴き比べても面白いかも。5.Wise Man でのマーカスのドラムスの雄弁なこと。好きなのは7.Scoville 。ちょっと歪んだギターはもしかしてジョンスコ風?、でも好きな音です。跳ねたリズムが独特なファンキーサウンド。最新鋭ギタートリオであり、今後の定番にもなり得る作品だと思います。

2025-05-23

ヘッドフォンライヴに行きました

 

5月10日赤坂にあるMZES TOKYO(エムゼス)の「BANDiSH HEADPHONE LiVE」に行きました。観客全員がヘッドフォンをつけてライヴ鑑賞するという僕にとって初体験のライヴでした。YouTubeでスナーキー・パピーが演っているのを観たことがあって、店長から企画を聞いたとき「あれか!楽しそう」と思って乗り気でした。

Snarky Puppy - Trinity (GroundUP Music NYC)


MZESでもミュージシャンと観客が、ステージと客席に分かれているのではなく、機材を囲んで同一円上に車座になります。だから隣にミュージシャンが立っていて楽器もすぐそば、なんて人もいます。ミュージシャン同士も少し遠くでアイサインを送りながら演奏して、観客もその中にいるような感じです。

観客入り前。中央に機材を囲んで着席。となりにミュージシャンが立つ。

そして全員がヘッドフォン。持ち込んでいる人もいれば、店から借りる人も。自席のミキサーでボリューム調整して聴くことができます。ライン(マイクで音を拾うのではなく、ケーブルで直接つなぐ楽器)の音が(もちろん)とてもクリアー。まるでレコーディング現場に一緒に入って音を聴いているかのように各楽器の演奏を聴くことができます。

ちなみに演奏途中でヘッドフォンを外すと、ドラムスとサックスの音しか聴こえない。そりゃそうだ。再度ヘッドフォンをつけると彼らのミラクルな演奏が繰り広げられています。ふだんイヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く人は、このほうが違和感ないんじゃないかな。実際観客のみなさんも首や肩をゆすって聴き入っていました。(手拍子しても聴こえない、んだ)

BANDiSHは若手の敏腕ミュージシャンによるインストゥルメンタルグループ。メンバーは中林俊也Sax、ほんまひかるSax、宮本憲G、金沢法皇Key、杉浦睦B、大場俊Ds。ジャズやフュージョン、ポップスを新しい切り口で聴かせてくれる、観て聴いて楽しいライヴでした。

当日は映像制作チームも入って、各楽器にカメラが向けられ、ソロまわしをリモートで回転するカメラがとらえるという仕掛けもあり、後日映像コンテンツとしてリリースするとのこと。音源もサブスクに掲載されるそうなので楽しみにしています。

六本木ジャズクラブ時代の仕事仲間であるB店長、そして音響エンジニアのKくんにも久々に会えてうれしかった。Sシェフとチームワークで新しいことにチャレンジしている姿がかっこよかったです。

2025-05-16

EVERYDAY / 黒田卓也

 

黒田卓也さんは日本のトランペッター。ニューヨーク・ブルックリン在住。僕も2014年「Rising Son」を聴いて以来気に入って、日本のミュージックシーンをリードする存在として注目してきました。彼のラジオを聴いたりすると、その気さくでお茶目なトークも魅力的で、きっと若手ミュージシャンたちにとっていい兄貴的存在なんだろうと思っています。

この2025年新作は“トラック・メイキングとスタジオ・セッションの究極の融合を目指した”とのことで、ただならぬ緻密さとフィジカル的に高い演奏力を聴かせてくれています。サブスクのおかげで様々なジャズの新作を聴くことができるわけですが、黒田さんの作品は本当に世界水準で高いオリジナリティを感じます。日本発ではあるもののニューヨークの今の空気を伝えてくるようです。

タイトル曲2.EVERYDAY を聴けばあぁコレだとなります。鋭くキレのよいリズムと緻密なアレンジ。でもライヴで演奏している姿も想像できる、そんなサウンド。6.Off To Space のドラムスがまたカッコいい!リズムが凝っているのになぜか余裕を感じさせるのが兄貴のなせる技でしょうか。黒田さんらしさは8.Hung Up On My Baby にも出てきます。どこか日本の民謡のようなお祭りのような親しみを感じる曲です。ニューヨーク&日本の今のジャズを詰め込んだとびきりカッコいいアルバムになっています。