2023-12-01

Rising Son / 黒田卓也

 

2014年の本作で、日本人として初めてブルーノート・レコードと契約したジャズトランペッターの黒田卓也。ホセ・ジェイムズの「Blackmagic」に参加したことがきっかけで、ホセのプロデュースによって本作は制作されました。当時のブルーノートは、次々に新しい才能による新譜を発表していて勢いがありました。黒田さんは以降も日本のジャズのみならず音楽界で活躍しているのを目に耳にしています。

本作をダウンロードして聴いたとき「うわ!スゴいカッコいいサウンド」と思わず声をあげて、友人のジャズ好きに話をしたら彼も聴いていて盛り上がったのを覚えています。日本人ミュージシャンでこんなにカッコいいサウンドを作れる人がいるんだと興奮したものです。グラスパー全盛の時代であったものの、呼応するように日本人スピリットを感じるような乾いた音、鋭いリズムで強いオリジナリティのある作品です。

1.Rising Son はSunではなく、Sonですからホセの愛情なのかもしれません。レガートなベースラインと残響の少ない音がマッチしてクールな曲から始まります。アフロなリズムの2.Afro Blues も抑制の効いたトランペットがとにかくカッコいい。ロイ・エアーズのカヴァー5.Everybody Loves the Sunshine ではホセのヴォーカルが入ってソウルでグルーヴィな曲。8.Call のミュートトランペットとローズピアノが漂う感じも都会の風景にマッチして好きな曲です。

2023-11-30

「青盤」2023エディション

 

数年前に近所のオーディオショップで、ビートルズのレコードを爆音で聴くイベントがありました。その時のモノラル録音レコードの音が驚くべきスゴい音で忘れられません。ガツンとくる音なだけでなく、こんな音が入っていたのかとその情報量の多いこと。

僕にとってのビートルズはいわゆる「青盤」です。つまりファンというほどではない。親にカセットテープで買ってもらってそれをずっと聴いていました。曲順を変更できるわけもないので、曲が終わると次の曲のイントロを口ずさむといった具合です。CDで買い直して聴きましたが、そうだったな、くらいの感想でそれほどかけることもなく。しかしモノラル録音を聴いてから、ああせめてアンプにモノラルスイッチ(昔はついていた)があったなら、と思った次第です。

今月「青盤」「赤盤」の2023エディションが発表されました。ステレオミックスをやり直しています。CDのステレオがなんとも不自然な印象だったのが大幅に改善。改めて曲の素晴らしさに浸ることができるサウンドになっています。Apple Musicではドルビーアトモス版も味わうことができます。最後の新曲「Now and Then」も聴けます。でもあれっ、曲が多い、僕が知っているのは28曲なのに37曲も入っている、あれっ後半の曲順が、なんで?、となりました。せめて昔の曲順のうしろに追加してほしかったなぁ。

2023-11-29

Vol.1 / Chris Botti

 

Chris Botti(クリス・ボッティ)はアメリカのトランペット奏者。ブルーノート・レコードからの2023年ニューアルバムです。YouTubeでスティングやスティーヴン・タイラーとの共演を観てそのイケメンぶりは知っており、すでに60歳を超えていますがジャケットを見ると今なお健在(&貫禄)のようです。プロデュースはデヴィッド・フォスター。ドラムスにヴィニー・カリウタの名前もあります。

さらにバラード集となっているので人気作品になることは間違いないでしょう。今回は「自分とバンドのプレイ、そして自分が大好きな曲を演奏することにフォーカスした」とのことで、じっくりトランペットを聴かせています。たとえばマイルス・デイヴィスのトランペットバラードとは音色もアクセントも違うもんだなぁと思います。マイルスは孤独を深く感じますが、クリスのは優しさと包容感のような。というわけで夜に静かに楽しむアルバムとしてジャズファン以外にもオススメできると思います。

ここは敢えてマイルスが演じた曲をリコメンドしましょう。5.Blue In Green はマイルス好きなら聴かずとも思い出すことができるでしょう。音使いの違いがわかると思います。ピアノがちゃんとビル・エヴァンスしてくれて嬉しい。続く6.Someday My Prince Will Come はとても優しく響きます。8.My Funny Valentine はトランペットの音の美しさに呼応するかのようなヴァイオリンの艷やかな音色が印象的です。

2023-11-28

Liquid Spirit / Gregory Porter

 

Gregory Porter(グレゴリー・ポーター)はアメリカのシンガーソングライター。3rdアルバムである本作と次作「Take Me to the Alley」はベストジャズボーカルアルバム部門のグラミー賞を受賞しています。2013年は僕にとって豊作の年であり、その中で最も聴いたのはどれかと言えばこの作品になります。その深くて豊かなバリトンヴォイスに魅了され、YouTubeでその風貌をみて関心を持ち、1st&2ndもすぐに購入した次第です。

声質や歌い方も僕好みであったのですが、アルバム全般を通してとにかく楽曲がいい。そして音質が良い。何度も何度も聴きましたがまったく飽きることがなく、1曲1曲を味わって聴いていました。その音質の良さからスピーカーやヘッドフォンを試すときにも必ずかけていました。結局聴き入ってしまって、音質を評価できないのが難点でしたが。その後も何枚かリリースしていますが、気に入っているのはこの3rdアルバムです。

これまた全曲オススメのアルバムですが、聴かせるバラードをピックアップします。4.Water Under Bridges 、7.Wolfcry 、13.When Love Was King 、14.I Fall In Love Too Easily を聴いてみてください。バリトンヴォイスっていいなと思います。あまりに家でかけまくっていたこともありますが、幼い娘でさえ口ずさむほど印象的なメロディです。敢えて印象的な曲をひとつだけ、8.Free クセになるリズムとパンチのあるヴォーカル曲です。

2023-11-27

人口減少時代ですなぁ

 

総務省によれば12年連続で人口は減少しており総人口でも昨年55万人減っています。娘が就職するであろう5、6年後は会社はもちろん仕事をとりまく環境もさらに変化しているでしょう。人口減少によって、労働力人口不足は深刻です。ドル高ユーロ高は常態となり、賃金アップできる企業は輸出あるいは国際企業のみで、原材料費が上がり物価高騰を招き消費生活は苦しいままです。安全志向の若者は賃金アップ企業に流れ、中小企業は求人しても応募が少なく雇うのが難しい状況は変わらないと思います。

現時点でも、スーパーのセルフレジ化は急激に進みました。キャッシュレスも同様です。商品点数が多いので有人レジに進もうとしたら外国人スタッフに日本語で丁重に断られました。人手不足なわけです。日用品や食料品は単価を上げられないので省力化するのは当たり前。単価が高くて価格競争している家電やガジェットはネットで購入するものです。人間が対応してくれるのは利益率の高いブランド品など高額な富裕層向け商品だけ、となっています。

BtoCだけでなくBtoBも例外ではありません。WEBで申し込み、お試し利用、契約はクラウドサイン、質問にはAIが対応、です。営業スタッフが説明しに参りますなんてのは、よほどプレミアムな案件のみとなるわけです。セールスなんて言葉がありましたが、必要なものはこちらから言いますから、不要なものは提案しないで、となりました。営業スタッフも説き伏せて買ってもらうなんて行為を嫌がりますし、もっと効率的に仕事を進めたいと思うでしょう。

すでに会社のあらゆる部門で働き方は変わっています。会社のあり方、社長のあり方、雇用のあり方ももっと変わっていくでしょう。そのための準備を考えたいと思います。

2023-11-24

Live in Nyc / Gretchen Parlato

 

Gretchen Parlato(グレッチェン・パーラト)はアメリカのジャズヴォーカリスト。リオーネル・ルエケとの2023年作品「Lean In」でも取り上げました。彼女を知るきっかけとなったのが2013年のこのライヴCDです。DVDとセットになっていて映像でもニューヨークの小さめのハコでの演奏を楽しむことができます。ジャズクラブを経営していたときにこんな雰囲気を醸すことができたら素敵だなと思っていました。

参加メンバーとしてドラムスに旦那さんのマーク・ジュリアナケンドリック・スコットの叩く姿を観られるのがうれしい。彼らが創造的で繊細なビートを刻むのかがよくわかります。音質もとても生々しくて近距離で叩いているかのよう。そこにグレッチェン独特の歌が繰り広げられて幻想的な世界を描いていきます。2013年当時のニューヨークを象徴するサウンドがそこにあると感じることができます。

ハービー・ハンコックの1.Butterfly でのグレッチェンのスキャットと手拍子ですぐに世界に惹き込まれ、そのあとずっと続きます。ベースやドラムスが入ってきてこの音が当時グラスパーを始め新しいジャズの音なんだと知ります。2.All That I Can Say ではケンドリックの重くて引っ掛かるリズムが印象的。シンプリー・レッドの5.Holding Back the Years では新しいジャズによるカヴァーになっていてイイ雰囲気です。そして幻想的でゆったりとしたオリジナル9.Better Than で本ステージ終演となります。

2023-11-22

meets 新日本フィルハーモニー交響楽団 / 渡辺貞夫

 

ナベサダさんこと渡辺貞夫が2023年4月29日に、35年ぶりという新日本フィルハーモニー交響楽団との共演をライヴ録音したものです。御年90歳で父より年上にもかかわらずこの活躍ぶりは本当にスゴいと思います。2019年の「Sadao 2019 - Live at Blue Note Tokyo」が小気味良い演奏で、スティーヴ・ガッドのドラムスもかっこよく気に入っていました。

本作の会場は“すみだトリフォニーホール”です。2015年にKORG社のDSD録音イベントがあり、ハンディレコーダーでクラシックの交響楽団を生録するという幸運に恵まれました。本作の音を聴いていて、その奥行きがあって心地よい響きが生録した音を思い出させてくれました。拡がりのあるオーケストラの真ん中でサックスを浮かび上がらせる姿が想像できる音になっています。

1.ナイス・ショット を聴いたのは中学生の頃、資生堂ブラバスのCMだったかなと思います。今聴くとサウンドはシティポップしていて古く感じません。3.つま恋 では哀愁のサックスがオーケストラとマッチしていてドラマチックです。全般にブラジル音楽に精通されたナベサダさんの音世界が繰り広げられます。面白いと思った曲は8.サン・ダンス でちょっと日本らしいメロディが印象的です。名曲9.マイ・ディア・ライフ を聴きながら、ナベサダさんが以降の日本のフュージョンに大きな影響を与えていることをしみじみ思い知ったのでした。