2023-09-28

グールド作品からAIを想う

 

画像生成やChatGPTなどAIとコンピュータの進化は止まりません。つい30年前はCG技術でプロって凄いと感じていたのに、もうパーソナルが最新技術を使う時代になりました。そして一部ではAIが作る音楽なんて話題もありまして、そこでふと思い出したことがあります。

グレン・グールドというクラシックピアノの演奏家がいます。バッハ:ゴルトベルク変奏曲の衝撃的とも言われた1955年の演奏録音があります。有名なのは1曲目のアリアですが今回は2曲めを。

そしてグールド没後25周年として発売された「Zenph Re-performance」という2007年の録音があります。生成AIに聞くと以下の説明が出てきました。

Zenph Re-Performance は、アメリカのコンピュータ・ソフト「Zenph」を使って、グールドのモノラル音源を徹底的に解析し、キータッチや音量、ペダルの踏み込み加減にいたるまで完全にデータ化したものです。このデータは、自動演奏ピアノ(ヤマハ製ディスクラヴィア/9フィート・フルコンサート・グランド)を用いて再現され、その再現音を録音しました。

1955年の録音はモノラルだったので、それをコンピュータで解析し自動演奏させてステレオ音源にしたというのです。

さらにこの自動演奏をバイノーラル録音と言って、あたかも弾いている本人の耳で聴いているかのように聴こえる特殊録音を施したものがあります。

驚くことに2007年録音でもグールドそのものが再現されていて、なおかつ高音質なんです。こんなことができちゃうんだと思いました。
さて、そこで再度最初の1955年の録音を聴きます。どう感じましたか。僕は音に力強さを感じ、まるでグールドの意思がグッと伝わってくるようで、モノラル録音であることがかえって奏功しているのではとさえ思いました。

そうかやっぱり本人による演奏録音のほうが良いんだ、音質が問題ではないんだと結論づけたいところですが、2007年録音も聴き続けていると、特にバイノーラル録音をヘッドフォンで聴いていると徐々に惹き込まれて、いつの間にかグールドの世界に浸っていました。

飛躍かもしれませんが、この自動演奏による再現を聴くことと、生成AIに感じることは似ているのかもしれません。本物ではないけど本物をコンピュータで精緻に再現。どちらが良いか悪いかというよりも、見分ける(聴き分ける)ことさえできるかどうか。僕としては少なくとも本物の良さを感じられる耳を持ちたいと願っています。

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