2026-09-26

AORを聴く日々

 

この2ヶ月くらいAORを聴く日々でした。クリエイターの高城剛氏によるディスクガイド「AOR 77Albums Selected 1970s-1980s」からピックアップして聴いていました。昔はディスクガイドを買って読んでは、買い物リストをメモしてCDショップに行ったものですが、今はサブスクのおかげでほとんどの音源を聴くことができて有難いかぎりです。(サブスクに無いものもあります)

「AOR 77Albums 」高城剛著 NEXTRAVELER BOOKS


著者の高城氏もひとつ年上の同年代。90年代の“デジタル&インターネット”時代もシンクロしています。そしてこの本の70年代後半から80年代前半といえば、僕は中高大学生。最も音楽を吸収していた時期でもあります。

エアープレイ「Airplay」にはじまり、マイケル・ジャクソン「Thriller」におわるディスクガイド。イーグルス、シカゴ、TOTO、アース,ウインド&ファイアー、スティーリー・ダン、スティーヴィー・ワンダー、ホール&オーツ、ドゥービー・ブラザース、マーヴィン・ゲイ...。

インターネットのない時代。ロサンゼルスのある地域に住む若者たちによって醸成された“高度な演奏技術、複雑なコード進行、最先端の高音質機材を用いたプロダクション、そして幅広い音楽的要素の融合”を特徴とする音楽が、FMラジオ(当時高音質)に乗って多くの人を魅了した。やがてサウンドの頂点を極めた「Thriller」によって、MTVへと転生しAORの時代を終えます。まさに“ラジオスターの悲劇”です。


登場するバンドやミュージシャンにも歴史があって、この時期のアルバムの好き嫌いは人によって違います。僕はこの時期FMラジオでエアチェックまたはレンタルレコード(御茶ノ水ジャニス)、カセットテープに録音する生活だったので、必然的にこの時期の音がからだに浸透しています。70年代前半以前の音源は“後追い”で聴いたものになります。

自宅のオーディオで鳴らしたい音もこの時期の作品が筆頭です。たとえばスティーリー・ダン。(先日Y氏邸でのレコードvsSACD対決の模様はこちら。さすがY氏の面白い記事です。ちなみに僕は千疋屋の常連ではありません。)たとえばジェフ・ポーカロのドラムスにジェイ・グレイドンのギター。好物なんです。自分史上最高の自宅システムで鳴らすAORは自己満足そのものです。今回発見のあった格別の良音質盤を3枚挙げておきます。

①デニース・ウイリアムスのこのアルバムは贅肉のないディスコサウンドが鮮烈。
②ジョージ・デュークのこのアルバムはブラジルファンクがグイグイきます。
③スティーヴ・キップナーのこのアルバムはグレイドンとポーカロが大活躍の傑作。


2026-09-12

Mabui / 石若駿

 

石若駿(いしわか しゅん)は日本のジャズドラマー。ジャズに限らず多方面で活躍する日本を代表するミュージシャンです。僕のブログでもアニメ「BLUE GIANT」(2023年)や「Trio II: 2」(2024年)で紹介しました。2026年本作ではマーティ・ホロベックBと高橋佑成P&Synのトリオに馬場智章Saxを加えての作品となっています。

僕自身、10年前から5年間くらい原宿と六本木でミュージック(ライヴ)レストランを経営してきて、ベテランから若手まで多くのプロミュージシャンの音を聴く機会に恵まれました。言うまでもないことですが、想像を絶する練習量と才能をもって「これぞ」という音を奏でるわけで、毎度尊敬の眼差しで拝見させていただきました。現在34歳という石若さんの音を聴いているとその頃のことを思い出して、新鮮な気持ちが蘇ってきます。

1.Ballade“集” の一音目からそれを感じます。目の前で演奏を始めたかのようです。淡々とコード進行していくなかでジャズのフリーな演奏が繰り広げられます。馬場さんの印象的なサックスで始まる2.Sepiageshiki の寄せては返す波のようなドラムスが好きなんです。途中からグイグイグルーヴするのもカッコいい。6.Tamatebako なんて複雑なリズムの曲をわずかな時間でレコーディングに仕上げる才能たるや。どーなっているのと思います。けしてわかりやすい音楽ではないと思いますが、まるでライヴで演奏しているようなただならぬエネルギーを感じるアルバムだと思います。

2026-09-05

BJ ELECTRICの音とは

 

先日、BJ ELECTRIC SM-P1 MK2(パワーアンプ)を購入いただいた友人宅に、設置・接続に行ってきました。そこであらためて感じたこと、「BJ ELECTRICの音だなぁ」でした。

スピーカーは我が家も同じJBLなのですが、ウーファー(低音部)のサイズも友人宅30cm、我が家16.5cmと違いますし、友人宅は3ウェイ、我が家は2ウェイと数が違います。なのに同じBJ ELECTRICの音を感じます。スピーカー全体のサイズと音量からすれば迫力は違いましたが。


私がBJ ELECTRICの音に出会う前までは、オーディオ製品のスペック(数値性能)や機能の多さ、他人の評判をネットや雑誌で比較して選択肢を考えていました。オーディオショップで総額数百万円のシステムを聴いては、高音質とはなんたるかも思い知りました。

そのショップで聴いた、買えそうな価格のBJ ELECTRICのパワーアンプを自宅に入れてみて驚きました。いままでのアンプとは違う音。静かな中から立ち上がる音の実在感、拡がる空間、よく聴いた音楽が生き生きして目の前に迫ってくるようでした。そうか、これが音楽を聴くための“道具”かと。音楽に没頭するために音楽を聴いている。オーディオに惚れ込むために聴いているのではないなと。


BJ ELECTRICの石河社長は、業界で名の知れたアンプ製作職人と聞きます。音楽の現場のプロが使用するアンプやケーブルを作るなかで得た多くの知見をもとに、家庭で聴くのに最も大事かつ最低限のシステムを考えられて、できたのがあのサイズのアンプだったというわけです。いまのところパワーアンプ(SM-P1 MK2)の上位機種はありません。音質をアップグレードするのであればそれは、プリアンプSM-PRE MK2を足すということがBJ ELECTRICの回答なのです。

左がSM-P1 MK2、右がSM-PRE MK2。iPhoneと並べて。

オーディオ製品らしいゴツい見た目も大切でしょう。操作ツマミがいっぱいついていたりメーターがついているのも魅力的です。でも、その見た目や機能のための材料費や工数をなるべく“よい音”のための部品や線材にまわすことができたら。配線を短くしてノイズの影響を少なくできたら、その結果がこのサイズなんだと知ることになりました。

そんな考え方はアンプだけでなく、ケーブルにも表れています。あれこれ足すのではなく材料のもつ良さを活かす。そのかわり材料や部品にはこだわっています。そうやって、プレーヤーが送り出す音楽情報をストレートにスピーカーに伝えることになります。

“BJ ELECTRICの音”と感じていたのは、ある音色や音の特徴ではなく、音源そしてプレーヤーやスピーカーの音を“ストレート”に伝えているその“さま”なのかもしれません。