2023-12-12

Rebirth / Billy Childs

 

アメリカのジャズピアニスト、Billy Childs(ビリー・チャイルズ)の2017年作。翌年のグラミー賞で「最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム」を受賞した作品でもあります。ドラムスに僕の大好きなエリック・ハーランド、アルト&ソプラノサックスにスティーヴ・ウィルソンを迎えて、一聴してこれは「買い」だと思わせるアルバムでした。そしてこの年最も聴いたアルバムとなり、以降もスカッとジャズを聴きたいときはこのアルバムを手にしています。

実はビリー・チャイルズを聴いたのは本アルバムが最初でした。端正で粒立ちのよい音からクラシック音楽のテイストも感じます。そこにJ・J・ジョンソン、フレディ・ハバードといった巨匠に若かりし頃鍛え上げられたジャズ魂が合わさって彼独特のサウンドを産んでいます。最初の6曲はビリーのオリジナルとのことで作曲にもセンスが光っています。

1.Backwards Bop から勢いよくエリックのドラムスが叩きまくっています。この硬いスネアの音がたまりません。キメッキメのカッコいい曲です。2.Rebirth はパット・メセニー・グループの名曲「First Circle」を思わる鳥肌な曲です。ソプラノサックスと女性スキャットヴォーカルが気分を最高にしてくれます。4.Dance of Shiva もエリックの変拍子ドラムスが光るスリリングな曲で圧倒的な演奏力を聴かせてくれます。

2023-12-11

社長はコミュニティオーナー

 

人口減少社会では、1人が何社かの仕事を掛け持ちするようになりますが、社員を囲い込めなくなった以上、他社がもつ能力をも活かしてサービスや商品を提供せざるを得なくなります。自社完結は望めないということです。業務提携からはじめて、どうしてもスピードアップしたければM&Aのために資金調達することになるでしょう。

他社との連携で必要となるスキルは、チームを形成したり運営したりするコミュニティマネジメント能力です。いままでは社長の強いリーダーシップでなんとかなっていた事業も、社員が辞めたり、競合に顧客を奪われたりして思うようにいかないはずです。むしろ社長もチームの一員となって協力関係を築いていく姿勢が求められる時代に入っています。社員やフリーランススタッフの能力を引き出し、チーム全体の力をアップしていくことで会社を維持継続するのです。

他社スタッフとのコラボもありますから「忠誠心」とか「言わずとわかる」なんてのは通用しません。きちんとMVVを明文化して自分の言葉にして伝えていくこと、チームメンバーの役割分担を明確にすること、報酬や経費などお金に関する契約・取り決めをあやふやにしないこと、は社長がコミュニティオーナーとして率先していく必要があります。

もはや当たり前となったSlackやDiscordといったコミュニティツール、Notionのような情報共有ツールは使いこなすくらいでないと務まりません。Zoomだって使えたのだから大丈夫です。Google系やMicrosoft系のツールでもかまいません。ただし、いつでも使えるツールだからと24時間労働や心無い発言を野放しにしないようなルール作りも必要です。

2023-12-08

The Unity Sessions / Pat Metheny

 

Pat Metheny(パット・メセニー)の2016年作。パット・メセニー・グループの作品はどれも大好きで本当によく聴きましたが、盟友ライル・メイズの体調もあって残念ながらグループの再活動はなくなっていました。そしてうれしいことに新たなバンドを組んで、アコースティックな2012年「Unity Band」を発表。さらにエレクトリックなUnity Groupによる2014年「Kin (<-->)」を発表し、この作品はそのスタジオ・ライヴを収録したものです。

本作はDVD(Blu-ray)も出ているので映像でもわかりますが、自動演奏装置“オーケストリオン”の縮小版も一緒に演奏しています。グループで編成が多いのに加えて、どれだけ準備に時間がかかるのだろうとスタッフの大変さを想像してしまいます。そして繰り広げられる演奏は、想像を絶する圧倒的なものでした。ジャズを超え、ギターを中心とする音楽でこれほどの高みに達してしまったのはメセニーをおいて他にないでしょう。

1.Adagia のアコースティックギターによる美しいメロディでセッションは始まります。そしてあの「First Circle」のUnity版ともいえる2.Sign of the Season に気持ちが高まるとともにこのグループの凄さを知ることになります。メセニー・グループとの大きな違いはサックス(クリス・ポッター)ですね。彼により全く違った雰囲気になります。このあとも息を呑む演奏がアルバム全体で繰り広げられます。そしてメセニー・ファンにとっては8.Medley がなんとも嬉しいアコースティックソロですね。

2023-12-07

「オーディオショウ」に想う

 

先月ですが「2023東京インターナショナルオーディオショウ」に行ってきました。初日で祝日ということですごい人混みでした。来ているのは業界関係者と僕を含めた白髪交じりor白髪のおじさんばかり。陳列されているのはどれも高級車なみのお値段の商品ばかり。ドル高ユーロ高で輸入品は軒並み値上げで、こんな時期におじさんは高級品を買うのだろうかと疑問に思った次第です。

僕が秋葉原に通った70〜80年代の家電メーカーを中心とする、ハード&ソフトビジネスモデル隆盛時代につくられたオーディオは“なんとか”手に入るものでした。それらはいまでも中古に出品されていて一部は価格高騰していると聞きます。業界が切磋琢磨してよい製品を作っていたので、今つくったらこんな値段では不可能というものが多いそうです。

万人向けのオーディオが、いつの間にか一部の「好きな(金持ちの)人にしかわからない」ものになってしまうのは寂しい。音楽っていうものは、なにかと勉強ばかりの学生にも、お金もなくて働くのも大変で世の中をなんとか生きる若者にも、ちょっと疲れてしまった大人にも、寄り添ってくれるものです。あるときは一緒に拳を突き上げ、あるときは呼吸を深くしてくれる友なわけです。そしてそんな音楽を奏でてくれるのがオーディオなわけです。

「オーディオってなんかむずかしそう」「高いんでしょ」なんて嫌われないように、いろいろな音楽の楽しみ方を発信していきたいと思います。そんな発信をする人ももっと増えたらいいなと思っています。

2023-12-06

Continuance / Joey Alexander

 

Joey Alexander(ジョーイ・アレキサンダー)はインドネシアのジャズピアニスト。なんと2003年生まれで今年で二十歳!最初のアルバムは11歳のときに発表しています。ウイントン・マルサリスがYouTubeで観て「(ジョーイのことを)僕のヒーロー」とまで言わしめた天才ぶりです。このところ高齢者(失礼!)が多かったので本作を紹介できるのはうれしい。

彼の名前はたびたび目にしていたのにこんなに若いとは知りませんでした。演奏を聴けばその熟練ぶりにベテランなんだろうと。奥深いピアノタッチ、落ち着いたフレーズ選び、拡がるようなメロディ展開、年齢とか経験なんて関係ないんだなと思い知ります。ましてアメリカ出身ではなくバリ島出身というのもうれしいじゃないですか。世界にはまだどこかに天才がいるはずだと。

どうですか、2.Why Don’t We の繊細なタッチ。2023年本作がデビューして7作目ですもの、こんな卓越した曲を聴かせてくれます。トランペットのシオ・クローカーの演奏も素晴らしい。うれしいのはここ数ヶ月ヘヴィロテしているボニー・レイットの曲4.I Can’t Make You Love Me をカヴァーしてくれていること。ピアノのメロディを追っていくと優しい気持ちに包まれます。これからの季節にも合う6.Great Is Thy Faithfulness もオススメです。今後の活躍も注目のピアニストなので覚えておきましょう。

2023-12-05

Life Between The Notes / Bluey

 

イギリスのジャズ・ファンクユニット、インコグニートのリーダー、Bluey(ジャン・ポール・'ブルーイ'・モーニック)の2015年ソロ作。インコグニートが1979年結成ですから、40年以上も活躍しているアーティストです。ブルーノート東京など日本にもよく来日しているのでファンも多いと思います。ブリティッシュらしいジャズ&ソウル、時にフュージョンとして好んでよく聴きました。

このソロアルバムを聴いていた頃、ミュージックレストランをやっていたり、ジャズクラブも始めようとしていたりとすっかりハコ&飲食を仕事としていて、そのスペースで奏でられる音楽のイメージとしてこのアルバムのイメージを持っていました。都会の大人が集う場所にふさわしい音楽といった感じかなと。実際やってみるとそれどころではなかったりしますが...。

象徴的なテーマとなるのは2.Life Between The Notes です。ストリングス、印象的なベースライン、ミュートのギター、いかにもという曲ですが、やっぱりカッコいい。3.Hold On はアンダーグラウンドなハウスを想起させる、このアルバムで一番好きな曲。部屋でかけていて気持ちの良い6.I've Got A Weakness For Your Love 、8.Colombus Avenue もオススメです。他の曲も、あぁインコグニートだぁなサウンドですが、やっぱりいいんですよ。

2023-12-04

フルタイム雇用はしないかも

 

中小企業の社長としては、フルタイムでコミットして働いてほしいと思いますが、給料をアップできないので、働く側も1社だけでは家計を維持できないという人も出てくるでしょう。以前から副業OKという会社はありますが、月曜〜水曜はA社、木曜と金曜はB社なんて働き方もあるかもしれません。会社はアルバイトのようなシフト管理が必要というわけです。

フリーランスで働いている人の中にはすでにそうした働き方を選択している人もいるでしょう。多くのフリーランスは時間や場所にとらわれず、複数の企業と業務委託契約を交わして成果物を納品、対価の支払を受けて、確定申告しているのが普通です。先日もメルカリがスポットワーク事業に参入するというニュースが発表になっていましたが、ちょっとした空き時間を小遣い稼ぎに充てるなんていうことも当たり前になっているかもしれません。フリーランスが今よりもっと仕事を探しやすく、得やすい時代になっていくでしょう。

雇っているんだから忠誠心を、なんて考え方は通用しません。むしろ「他社の仕事」によって優先順位を下げられないよう、惹きつけるようなビジョンや仕事を用意してコミュニケーションしないと優秀なスタッフを確保できない時代になっています。報酬が少しくらい高くても仕事や人間関係が悪い会社に人は寄って来ないのです。

会社には社長とマネジャー1人または数人のみで、あとは全員フリーランスなんていう企業も成り立ちます。従来の人事評価や福利厚生、オフィスのあり方そして社会保障も見直していくことになります。