2023-12-15

Collagically Speaking / R+R=Now

 

R+R=Nowとは、ピアノ&キーボードにロバート・グラスパー、サックス&ヴォコーダーにテラス・マーティン、トランペットにクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー、ベースにデリック・ホッジ、キーボードにテイラー・マクファーリン、ドラムスにジャスティン・タイソンという新しいジャズをリードする豪華メンバーのバンド。本作は2018年にブルーノート・レコードからリリースしたアルバムです。

ひとりひとりが単独で強力なオリジナリティを持っている彼らが、おそらくセッションのような肩に力を入れない和やかな雰囲気で作り上げた作品だと思います。ヒップホップやアンビエントのエッセンスを入れながらジャムっているうちに出来ちゃいましたという感じ。グラスパーをずっと聴いてきた僕としても、彼のエラそうにしない態度を感じながら互いのフィードバックを重んじるサウンドの集大成かつ象徴的なアルバムだと感じました。

セッションのようにして始まる1.Change Of Tone からリラックスして聴くことができます。ジャスティンの自在なドラムスがスゴいです。4.Resting Warrior ではデリックのカッコいいベースラインから新しいフュージョンサウンドを奏でていて、アルバム中のお気に入り曲です。10.Respond もジャズティンとデリックのリズム隊がカッコいい曲です。

2023-12-14

音量を計測してみた

 

音楽を聴くときの「音量」ってどうしています?思ったより人によってマチマチなんだなと思います。娘のイヤフォンで聴いたときに「小さっ」て思いました。もしかして普通の人ってこのくらいかも。ってことは僕が大きいんだなと。聴いている音楽の小さな音まで聴き逃すまいと思っているからか、それとも加齢?のせいかもしれません。

問題はスピーカーです。隣接する部屋や家に迷惑がかからないようにとなると、そんなに大きな音は出せません。家族と住んでいたら時に同じ部屋にいるわけで、ヘッドフォンで聴いてよ、となります。でも、せっかくいい音のスピーカーを導入しているのだから、気持ちよく鳴らしたい欲求は常にあります。

スマホで音量を簡易に計測できます。僕は「Mobile Tools by Audiocontrol」というアプリを使っていますが、ほかにもありますし何でもいいです。スピーカーからの距離は約2mです。計測結果をざっくりと。BGM的に聴くときは「55dB」程度、音楽聴くぞってときは「65dB」程度、昼間で音楽の迫力を味わいたいときは「75dB」程度という感じです。もちろん曲によって適度にボリュームを上げたり下げたりしています。ちなみに道路に面した我が家(昼間&窓締め切り)の無音状態は「50dB」を下回るくらいです。

ジャズクラブをやっていたのでPAや生音の音量も味わっています。昨年練習したロックバンドのスタジオなんて100dB以上出ているはず。大音量って気持ちいいんですよね。だから、オーディオ専用ルームとかぽつんと一軒家とか憧れます。飽和状態にならないギリギリの大音量で高音質を浴びてみたいなと。

2023-12-13

In December / Robert Glasper

 

Robert Glasper(ロバート・グラスパー)による2023年ホリデーシーズンのアルバム。Apple Musicの解説によればグラスパーは「ホリデーアルバムを制作する上での最大のチャレンジは、お祝いの気分を作り出すと同時に、リアルに感じられて、ベタではない方法で実現することでした」と語っている。その通り、クリスマスの日だけでなく、シーズンを通じて生活の中に溶け込むように心地よいアルバムだと感じました。

米国外資の会社に勤めていた頃、12月の中旬になってくると外国人スタッフは休暇に入ってしまい、残された日本人スタッフは年末まで忙しいのに呑気なもんだと半分羨ましい気持ちでした。12月を師走ととらえるかホリデーシーズンととらえるかの差ですね。忙しい日々のちょっとした時間にこうしたリラックスしたサウンドを聴くのもいいもんです。

暖炉の音が入った小曲1.Fireside (Intro) の浮遊感のあるピアノが好きです。2.God Rest Ye Merry Gentlemen / Carol Of The Bells の優しい歌声に癒やされます。刺激的な音はなく、すでにウトウトしてしまいそうです。5.Joy To The World はおなじみのメロディを上質なR&Bで聴くことができます。外は雪景色な生活のワンシーンには6.December が合います。グラスパーならではの“リアル”なサウンドに浸ってみては。

2023-12-12

Rebirth / Billy Childs

 

アメリカのジャズピアニスト、Billy Childs(ビリー・チャイルズ)の2017年作。翌年のグラミー賞で「最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム」を受賞した作品でもあります。ドラムスに僕の大好きなエリック・ハーランド、アルト&ソプラノサックスにスティーヴ・ウィルソンを迎えて、一聴してこれは「買い」だと思わせるアルバムでした。そしてこの年最も聴いたアルバムとなり、以降もスカッとジャズを聴きたいときはこのアルバムを手にしています。

実はビリー・チャイルズを聴いたのは本アルバムが最初でした。端正で粒立ちのよい音からクラシック音楽のテイストも感じます。そこにJ・J・ジョンソン、フレディ・ハバードといった巨匠に若かりし頃鍛え上げられたジャズ魂が合わさって彼独特のサウンドを産んでいます。最初の6曲はビリーのオリジナルとのことで作曲にもセンスが光っています。

1.Backwards Bop から勢いよくエリックのドラムスが叩きまくっています。この硬いスネアの音がたまりません。キメッキメのカッコいい曲です。2.Rebirth はパット・メセニー・グループの名曲「First Circle」を思わる鳥肌な曲です。ソプラノサックスと女性スキャットヴォーカルが気分を最高にしてくれます。4.Dance of Shiva もエリックの変拍子ドラムスが光るスリリングな曲で圧倒的な演奏力を聴かせてくれます。

2023-12-11

社長はコミュニティオーナー

 

人口減少社会では、1人が何社かの仕事を掛け持ちするようになりますが、社員を囲い込めなくなった以上、他社がもつ能力をも活かしてサービスや商品を提供せざるを得なくなります。自社完結は望めないということです。業務提携からはじめて、どうしてもスピードアップしたければM&Aのために資金調達することになるでしょう。

他社との連携で必要となるスキルは、チームを形成したり運営したりするコミュニティマネジメント能力です。いままでは社長の強いリーダーシップでなんとかなっていた事業も、社員が辞めたり、競合に顧客を奪われたりして思うようにいかないはずです。むしろ社長もチームの一員となって協力関係を築いていく姿勢が求められる時代に入っています。社員やフリーランススタッフの能力を引き出し、チーム全体の力をアップしていくことで会社を維持継続するのです。

他社スタッフとのコラボもありますから「忠誠心」とか「言わずとわかる」なんてのは通用しません。きちんとMVVを明文化して自分の言葉にして伝えていくこと、チームメンバーの役割分担を明確にすること、報酬や経費などお金に関する契約・取り決めをあやふやにしないこと、は社長がコミュニティオーナーとして率先していく必要があります。

もはや当たり前となったSlackやDiscordといったコミュニティツール、Notionのような情報共有ツールは使いこなすくらいでないと務まりません。Zoomだって使えたのだから大丈夫です。Google系やMicrosoft系のツールでもかまいません。ただし、いつでも使えるツールだからと24時間労働や心無い発言を野放しにしないようなルール作りも必要です。

2023-12-08

The Unity Sessions / Pat Metheny

 

Pat Metheny(パット・メセニー)の2016年作。パット・メセニー・グループの作品はどれも大好きで本当によく聴きましたが、盟友ライル・メイズの体調もあって残念ながらグループの再活動はなくなっていました。そしてうれしいことに新たなバンドを組んで、アコースティックな2012年「Unity Band」を発表。さらにエレクトリックなUnity Groupによる2014年「Kin (<-->)」を発表し、この作品はそのスタジオ・ライヴを収録したものです。

本作はDVD(Blu-ray)も出ているので映像でもわかりますが、自動演奏装置“オーケストリオン”の縮小版も一緒に演奏しています。グループで編成が多いのに加えて、どれだけ準備に時間がかかるのだろうとスタッフの大変さを想像してしまいます。そして繰り広げられる演奏は、想像を絶する圧倒的なものでした。ジャズを超え、ギターを中心とする音楽でこれほどの高みに達してしまったのはメセニーをおいて他にないでしょう。

1.Adagia のアコースティックギターによる美しいメロディでセッションは始まります。そしてあの「First Circle」のUnity版ともいえる2.Sign of the Season に気持ちが高まるとともにこのグループの凄さを知ることになります。メセニー・グループとの大きな違いはサックス(クリス・ポッター)ですね。彼により全く違った雰囲気になります。このあとも息を呑む演奏がアルバム全体で繰り広げられます。そしてメセニー・ファンにとっては8.Medley がなんとも嬉しいアコースティックソロですね。

2023-12-07

「オーディオショウ」に想う

 

先月ですが「2023東京インターナショナルオーディオショウ」に行ってきました。初日で祝日ということですごい人混みでした。来ているのは業界関係者と僕を含めた白髪交じりor白髪のおじさんばかり。陳列されているのはどれも高級車なみのお値段の商品ばかり。ドル高ユーロ高で輸入品は軒並み値上げで、こんな時期におじさんは高級品を買うのだろうかと疑問に思った次第です。

僕が秋葉原に通った70〜80年代の家電メーカーを中心とする、ハード&ソフトビジネスモデル隆盛時代につくられたオーディオは“なんとか”手に入るものでした。それらはいまでも中古に出品されていて一部は価格高騰していると聞きます。業界が切磋琢磨してよい製品を作っていたので、今つくったらこんな値段では不可能というものが多いそうです。

万人向けのオーディオが、いつの間にか一部の「好きな(金持ちの)人にしかわからない」ものになってしまうのは寂しい。音楽っていうものは、なにかと勉強ばかりの学生にも、お金もなくて働くのも大変で世の中をなんとか生きる若者にも、ちょっと疲れてしまった大人にも、寄り添ってくれるものです。あるときは一緒に拳を突き上げ、あるときは呼吸を深くしてくれる友なわけです。そしてそんな音楽を奏でてくれるのがオーディオなわけです。

「オーディオってなんかむずかしそう」「高いんでしょ」なんて嫌われないように、いろいろな音楽の楽しみ方を発信していきたいと思います。そんな発信をする人ももっと増えたらいいなと思っています。