2023-08-22

Point / Cornelius

 

小山田圭吾のソロプロジェクト、Cornelius(コーネリアス)の2001年作品。フリッパーズ・ギターの活動は聴いていなかったので、この作品で衝撃を受けてコーネリアスを集めました。ここ数年ではYMO関連人脈でギターを弾く姿を観ていてそのユニークなギターサウンドにさすがだなーと思っていました。

彼の作品はまずオーディオ的に耳に刺激的。無音の使い方が圧倒的に上手いと思います。唯一無二なサウンドは世界的にも高く評価されるのが一聴してわかります。さらに驚いたのはライヴです。フジロックなどで観ましたが、完全再現の演奏。どんなプログレバンドより難しいんじゃないのと思う変拍子を普通にこなしさらに迫力をもって観客を盛り上げていました。2006年の次作『Sensuous』も感動の作品となっています。

2.Point Of View Point のアコギとドラムスの音の生々しさ。この1曲だけでも彼らが世界に類を見ない存在であることがわかります。水の音でリズムを作っている4.Drop もなんてユニーク。エレキギター音の使い方も彼にかかると5.Another View Point のとおりです。スタンダード曲を自然音と合わせてアレンジした9.Brazil も気持ちよくてオススメです。


2023-08-21

【実例】新生ハンズ=「C案」

「C案」の見つけ方について2022年春、東急ハンズを買収完了したカインズの例で見てみたいと思います。カインズはあのワークマンを中核にもつベイシアグループの企業で234店舗、5,158億円の売上高でホームセンターのトップです。ハンズは国内78店舗、514億円の売上高です。郊外型のカインズに対しハンズは都心を中心に店舗展開しており、事業環境は大きく違っていました。

「ハンズに行けばあるんじゃない」と私が学生の頃から渋谷店には行っていましたし、娘の代になっても同様の印象でした。しかし近隣にロフトや無印良品などができて以前ほどの頻度はなくなっていました。たとえば気に入ったものの探しやすさ、買い物のしやすさの点でハンズは劣っていたように思います。買いたいものが決まっている目的買いで使うことのほうが多かった。であればインターネットで買っても同じかと。

新生ハンズのドキュメンタリー番組(ガイアの夜明け)を観ました。そこにはハンズの社員が「強み」について議論する姿がありました。両社の社員が互いの店舗を研究して理解し合う姿もありました。そして命題は「新生ハンズ」を作り上げること。そこでカインズの社長が示した方針は“来客者の体験”でした。たとえば壁一面埋め尽くされた圧倒的な品揃え、ハッシュタグのように気づきを与える商品紹介、ペンの書き心地をさまざまな紙質で行えるコーナーなど。

従来のハンズのやり方でもなく、カインズのやり方でもない、“来客者の体験”に焦点を絞って「C案」をイチから作り上げていったのです。よってカインズ初の都心型店(新宿)のほうも郊外型にはないアイデアで店舗を作っています。チャレンジは始まったばかりでクリエイティブはまだまだこれからだと思いますが、ここには「C案」をつくるヒントがあると思います。

2023-08-18

CAR SONGS OF THE YEARS / 奥田民生

 

奥田民生は僕と同じ昭和40年生まれ。当然10代の頃に聴いていた音楽に共通項多いです。歌謡曲もハードロックも。ユニコーン時代のポップセンスは「この人天才」と少し距離感があったのですが、ソロになってからストレートなロックが多くなり同い年の親近感が増しました。ラジオにライヴにひとり股旅にまあよく観ました聴きました。

この“車専用ベスト”が出たのは2001年。僕は起業したばかりでひとり車に乗ってコレをかけては宛てのないドライビングにレッツゴーしていました。20年ばかり乗った車も2020年を迎える前に手放してしまいましたが、その間ずっと聴いていたのはこのアルバムでした。愛車との思い出たっぷりCDです。

レスポールのハムバッキング・ギターから始まる1.ガソリンガタリン でいつもスタート。渋滞にはまると2.車カー を歌っちゃいます。このアルバムのメインは愛車に捧げる4.And I Love Car でしょう。名曲5.イージュー★ライダー はみんなで一緒に人生讃歌。ソウルクラシックを民生風に歌った8.SUNNY も好きでした。ああまたドライヴ行きたくなっちゃったなー行き先決めずに。


2023-08-17

レコードが「良い音」なのは

 

レコードの話のつづきになりますが、レコードの音が良いというのは、レコード時代の音源だからだと思います。つまりレコードで発売されることを前提にミュージシャンやスタッフが音を作っているわけです。当時のステレオで聴いて「良い音」と感じてもらえるように。そしてモノラルスピーカーで聴くようにできている音源は、そういう装置でも迫力が出るように音が収録してある。

僕が録音された音楽を聴くようになったのは中学の頃ですから70年代後半。そこから80年代にかけての音楽はやはりレコードで聴くとしっくり来ます。まして性能がよくなった今のオーディオで聴くと「こんな迫力のある音だったのか」と驚きます。さらにその音源を収録した直後にその国の工場でプレスされた「オリジナル盤」は制作者の意図をダイレクトに伝えるような音だとして貴重なモノになっています。

ということはレコード時代に録音されたものはレコードで、CD時代のものはCDで、サブスク時代のものはストリーミングで聴くように最適化されていると思ったほうがいいでしょう。最近はサブスクで発表していてもレコードでも発売する作品もありますが、それは最終段階でレコード用にきちんと音を最適化することを意識して作られているはずです。逆に昔の音源はCDやサブスクにすることを意識して作っているわけではないので、なんというかCD化やサブスク化の当事者が恣意的にこんな感じがいいかなと音決めしているように思います。と、取り留めなく家でCDやサブスクを聴いていて感じたことでした。

2023-08-16

Green on the Scene / Nick Green

 

Nick Green(ニック・グリーン)はニューヨーク・ブルックリン生まれ育ちのアルトサックス奏者。2023年の本作がファーストアルバムとのことで期待の若手なのですが、演奏は伝統的なバップを快調に聴かせてくれます。新録でこれほどド直球なバップを聴くことはないのでそこが新鮮ですし、NYっ子らしいなあと思いました。

アルトサックスというとやはりチャーリー・パーカーでしょう。ウネウネ上下する音のつながりは楽しいですが途中でちょっと酔ってくる。僕としてはアート・ペッパーやキャノンボール・アダレイあたりの時折見せる優しい音色と饒舌に吹きまくるのを混ぜたような演奏が好きです。その点ニック・グリーンの演奏はとてもいいサウンドで正統派ハードバップであることもなぜか安心させてくれます。

本当に新作だよねと確かめたくなる1.Red Cross から勢いよくハードバップしています。ミュートトランペットも出てきてニンマリ。3.Horizons なんてアート・ブレイキーを思わせる良きスイング。腕利きのリズム隊がニックのアルトを引き立てます。4.A Handful Of Starsのバラードではアルトのとろけるようなフレージングを甘い音で奏でてくれます。


2023-08-15

Like Water For Chocolate / Common

 

Common(コモン)はアメリカ・シカゴのヒップホップミュージシャン。本作はネオ・ソウル、ヒップホップ集団ソウルクエリアンズの活動の一環として2000年に発表した彼の4枚目のアルバムです。彼はその後もカニエ・ウェストやファレル・ウィリアムスのプロデュースでヒップホップを代表するアルバムを発表し、グラミー賞やアカデミー賞を受賞したりしています。

このアルバムを初めて聴いたとき、ほかのヒップホップとは明らかに違うサウンドで、いかしたジャズアルバムかと思いました。しかも1日じゅう部屋でループしていても飽きない。数年後にロバート・グラスパーを聴いたとき「これコモンorザ・ルーツじゃないの?」と思ったくらいでした。

ロイ・ハーグローヴ(トランペット)参加の1.Time Travelin' (A Tribute To Fela)  や3.Cold Blooded なんかグラスパー以降のいけてるジャズです。最も聴いたのは5.The Light です。故J・ディラのセンスが光るサウンドでお気に入り。DJプレミアのプロデュースによる9.The 6th Sense もカッコいい。ヒップホップ界隈の豪華メンバー満載のアルバムです。


2023-08-14

A案でもB案でもない「C案」

 

新規事業をやるとなったら「パートナー探しが重要」と書きましたが、そのパートナーがやりたかったことをやる場合においては、当初の課題はシンプルです。つまりそのパートナーが持っていなくてこちらが持っているもの、例えばスタッフ、人脈、資金、設備をどう用意してバックアップするかです。やりたいことが一致していることが大前提ですが。

問題は、こちらの会社(A社とします)もパートナーの会社(B社とします)もやったことのない、新たな事業を始める場合です。A社は自分たちのやりたいことはコレだというのがあり、B社もそれよりもこっちをやりたいというのがあったりします。A社のやり方とB社のやり方は成り立ちも事業環境も違うので、必ずといっていいほど対立が発生します。そのうちどちらが折れるか譲るかなんて話になってしまいます。

ここでも社長の出番です。そもそも新たな事業を始めようとなったのは両社の社長どうしですからここはきちんと話をしなければなりません。肝心なのは、A社のA案でもなく、B社のB案でもない、C案をつくることです。互いの強み弱みをよく知ったうえで、新たな商品や新たな市場をつくり出すのです。

これはとてもChallengingなことであり、Creativeなことです。互いが互いを尊重しかつ忌憚のない意見を出し合う必要があります。何度も「ほんとうにそうか」と問いただすことになるでしょう。7つの習慣でいうところの「Win-Win」「理解してから理解される」という土台をしっかり築きます。その過程を経て「C案」をつくりあげ、実行できたときにはじめて「相乗効果」となります。これぞ新しい事業の醍醐味だと思います。