2024-07-05

Soul Jazz (feat.Vincent Herring) / Something Else!

 

アメリカのアルトサックス奏者、Vincent Herring(ヴィンセント・ハーリング)によるプロジェクト“Something Else!”の2024年デビュー作。僕の大好きなSMOKE Sessionsからのリリースで今回も熱い演奏を届けてくれました。メンバーにはウェイン・エスコフェリーTSをはじめジェレミー・ペルトTP、ポール・ボレンバックG、デヴィッド・キコスキーP、エシエット・エシエットB、オーティス・ブラウン三世Drという名手たちの共演となっています。

アート・ブレイキーやホレス・シルヴァーたちのハードバップ〜ファンキージャズは、さあ今日もがんばって仕事しましょ、ってときの音楽にぴったりで、元気が出るし緊張を和らげて余裕も生まれるというプレイリストに欠かせない存在です。もちろん仕事が終わったあとの“ぷはーっ”にも最適。ほぐされます。今作はいいとこ取りで、録音も選曲、選フレーズも最高の一枚となっています。

1.Filthy McNasty で気持ちをアゲていきましょう。各パートのソロも短めに小気味よく進んでいきます。なかには4.The Chicken なんてファンク定番曲やハービーの5.Driftin' も。いぇー!ってなりますね。6.Slow Drag なんて絶妙な気怠さで、さすがベテランの演奏。おなじみコルトレーンの8.Naima ではソウルフルなベースラインで気持ちよいアレンジ。ギターの音もいい。思わず体が動いてしまうそんな“ソウルジャズ”アルバムです。

2024-07-02

ジャズ・ロックその2

 

僕のようなギター少年にとってジェフ・ベックは特別な存在でした。ギター雑誌では「Blow by Blow」(1975年、邦題:ギター殺人者の凱旋)の“Scatterbrain”や“Cause We've Ended as Lovers”(邦題:哀しみの恋人達)のTAB譜が載っていて、エレキギターのあらゆるテクニックが盛り込まれているから、ぜひ弾いてみよと。しかし一聴して「無理」と思い、まずはスモーク・オン・ザ・ウォーターを練習することにしたのでした。

たぶん「Blow by Blow」にジャズっぽさを感じていたんだと思います。これはコード進行が容易ではないんだと。そしてジャズ・ロックを感じることになったのは、「Wired」(1976年)そして「There and Back」(1980年)を聴いてからでした。

特にキーボードを弾くヤン・ハマーがギターのようなフレーズをビシバシと掛けてきて、ジェフも凄いフレーズで呼応するという丁々発止のやりとり。痺れました。これがジャズかと。聞けばヤン・ハマーはマハヴィシュヌ・オーケストラ出身だと。

ジョン・マクラフリンG率いるマハヴィシュヌ・オーケストラとチック・コリアP&Key率いるリターン・トゥ・フォーエヴァーが、僕が思っていたジャズ・ロックバンドでした。マクラフリンのギターはジェフをさらに高速にした演奏。リターン〜にはアル・ディ・メオラが在籍していた。ここで原体験とつながったのでした。そしてマクラフリンもチックもジャズの帝王マイルス・デイヴィスのところにいたのだと。マイルス系譜恐るべし。

2024-06-28

Brasil / Lee Ritenour and Dave Grusin

 

ご存知かと思いますが念のため。Lee Ritenour(リー・リトナー)はアメリカのジャズギタリスト。Dave Grusin(デイヴ・グルーシン)はアメリカのジャズピアニスト。古希と卒寿というレジェンドたちは1985年に「ハーレクイン」で二人名義のアルバムを発表しています。

2024年の本作にもブラジルのシンガー・ソングライター、イヴァン・リンスが参加しています。彼の1988年作「LOVE DANCE」が大好きでよく聴きました。広く澄みわたるような歌声とブラジル音楽のコード進行、ポルトガル語のニュアンスが今でも新鮮に響きます。本作4.Vitoriosa でも健在で嬉しくなりました。

サンパウロの女性ヴォーカリスト、タチアナ・パーハが歌う1.Cravo e Canela や2.For the Palms でも聴けるハーモニカが郷愁なナンバーで気持ちよしです。6.Stone Flower では熱の入ったサンバ演奏とオーディオ好きも裏切らない高音質ぶり。これからの季節に部屋を爽やかで涼やかな音で満たしてくれます。


2024-06-25

ジャズ・ロック原体験

 

スペース・サーカスを聴いて、ジャズ・ロック熱が再燃しています。“Space Circus”という曲があるリターン・トゥ・フォーエヴァーを聴き出したらあれもこれもになってしまいました。

そもそもジャズ・ロックという言い方をするのかわかりませんが、僕にとってはインストで技量に優れたミュージシャンによる演奏と複雑な展開のハードな楽曲を指しています。プログレとかフュージョンとかとも被りますね。エレキギターを熱心に弾いていた学生時代に好んで聴きました。

高校生の頃ラジオで、ハードロック特集だったのに、アル・ディ・メオラの“Race With Devil On Spanish Highway”(邦題:スペイン高速悪魔との死闘)がかかったのが初体験の記憶。超絶ユニゾンに痺れました。



大学時代では、先輩方とのバンドでライヴ演奏した(挑戦した)のがゲイリー・ムーアG擁するコロシアムIIで“The Inquisition”。キーボードの先輩がプログレマニアで推薦してきたわけですが、難しくて途中挫折しそうになりました。ジョン・ハイズマンのドラムスもエラいこっちゃです。



これが僕のジャズ・ロック原体験です。世の中にはこんなに凄い演奏をする人が存在しているんだと驚いたわけです。わが家のCD棚にも象徴的な盤が多くあるので、次々にひっぱり出して聴いています。

2024-06-21

Aberdeen Blues / Luke Sellick & Andrew Renfroe

 

Luke Sellick(ルーク・セリック)はカナダのジャズベーシスト。Andrew Renfroe(アンドリュー・レンフロー)はアメリカのジャズギタリスト。ふたりともニューヨークはジュリアード音楽院にて学び、多くのサイドマン実績を持つ若手ミュージシャンです。ふたりはこの2024年の作品以外にもいくつかアルバムやシングルを発表していて、彼らの音楽が支持されていることを示しています。

デュエット好きの僕としては見逃せない作品でした。静かで和やかな雰囲気ながらも、選曲や音色に特徴があって彼らの世界に惹き込まれました。アンドリューのギターの音色はタイトルにBluesとあったりして、古くからのブルースギタリストやジャンゴ・ラインハルト、ジョー・パスなどを連想させるものがあります。そして心地よい歪み感。フリーズペダルという鳴らした音を伸ばしたままにして、音を重ねていく奏法が印象的です。

マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルで有名な2.Ain't No Mountain High Enough やカーペンターズのカヴァーで有名な3.We've Only Just Begun のアレンジがなんとも心地よく耳に残ります。アンドリューのギターサウンドを堪能できる5.Northwest Passage はお気に入りの1曲です。外の雨音とともに部屋でゆっくり聴きたい音楽です。

2024-06-18

「スペース・サーカス」が配信に!

 

先日、ひとり盛り上がる事件がありました。なんとApple Musicのおすすめにスペース・サーカスの2枚目「FANTASTIC ARRIVAL」(1979年作)が表示されているではないですか。見れば2023年に配信開始されていた...。一言、もの凄い演奏です。再発されていた中古CDをウイッシュリストに入れて数十ヶ月。5千円くらいの値付けに躊躇していた音源です。

スペース・サーカス。“四人囃子、プリズムと並び、70年代プログレシーンを代表する異端派プログレッシヴ・ジャズ・ロックバンド”(ディスクユニオンより)とありますが、僕にとってはあの岡野ハジメさんのバンドです。岡野さんがベースを弾くPINKを聴きまくっていた大学時代。同じ大学の大先輩にあたります。DEAD ENDやL'Arc〜en〜Cielのプロデューサーでもあられます。

大学に入って何に一番驚いたかといいますと、先輩方の演奏のスゴいことでした。機材もさることながら、演奏力というか出し音が「もうこれプロなんですよね」というレベル。岡野さんのいらした時代から伝統的な文化だったのでしょうか。あーこれは追いつけないやと心の中で思っていました。

結局1枚目の「FUNKY CARAVAN」(1978年作)は中古CDを注文しました。ボーナス・トラックに“Live(at 明治学院大学431番教室 1976.11.1)”が入っているCDです。YouTubeにも音源があったので聴きましたが衝撃的な20歳の演奏です。あの大学時代に聴いたような音でした。
※1枚目はAmazon MusicやYouTube Musicでは配信されているようですが、Apple MusicやSpotifyには無い。なぜ...?

2024-06-14

Timing Is Everything / Eric Alexander

 

Eric Alexander(エリック・アレキサンダー)はアメリカのジャズサックス奏者。これまでにもOne For AllXaver Hellmeierのアルバムで紹介しました。55歳ながら多数のディスコグラフィーをもつベテランであり、名手として常連といえます。ニューヨークではスモールズあたりに出演されていてライヴも観ることができるなんて羨ましい。

彼のカルテット「My Favorite Things」(2007年)は一時ジャズ誌でも話題になりCDを購入しました。豪快なサックスがスピーカーから飛んできて、思わずボリュームを下げるほど。いやしかし元に戻して、存分にサックスを浴びるのが彼の作品の聴き方です。一度これを聴いてしまうと“ジャズを浴びてスッキリしたい”というときの定番になることでしょう。

軽快なシンバルワークの1.After the Rain を聴いて蒸し暑い季節の鬱陶しさも軽快に。印象に残るフレーズを連発する4.Big G’s Monk も聴いていて楽しくなります。6.Misty でのバラードもエリックの得意技でうっとり聴かせます。ハイレゾで音質面も余すところなく、これぞサックス・カルテットを味わうことができます。