2024-03-08

Attentive Listening / Willie Morris

 

Willie Morris(ウィリー・モリス)はニューヨークで活躍するアメリカのジャズサックス(テナー)奏者。2024年本作はリーダーとしてのセカンドアルバム。ジュリアード音楽院でインストラクターも務めているそう。メンバーは、パトリック・コーネリアスA.Sax、ジョン・デイヴィスP、ボリス・コズロフB、ルディ・ロイストンDrというクインテットで今のNYジャズ最前線の演奏が聴けます。

タイトルのAttentive Listening(注意深く聴く)どおりよく聴いてみると、曲中に実にいろいろなことをやっていてこれぞジャズミュージックだなと思います。エコーなどエフェクトはなくひとつひとつの楽器の音がくっきりと聴こえ、目の前で演奏しているかのよう。メンバー間のアイコンタクトや白熱したとき、リラックスして演奏しているときの表情まで思い浮かべることができそうです。

ウィリーのオリジナル曲がまた素晴らしい。才能が溢れ出ている1.Water Fountain of Youth からおぉーっと言いたくなるエキサイティングな演奏とスイングに圧倒されます。そしてやっぱりドラムスのシャープなプレイに耳奪われます。3.The Imitation Game 、5.Delusion of Understanding でもオリジナリティのあるフレーズやサックスのハーモニーで、これぞNYジャズを見せつけてくれます。

2024-03-05

いまさらDVD-Audio

 

このところサラウンドサウンドがマイブームでして、ついにDVDオーディオ(DVD-Audio)が聴けるプレイヤー(ソニーUBP-X800M2)を手に入れてしまいました。きっかけは、パット・メセニーの音源を掘っていたら「イマジナリー・デイ」のDVD-Audioヴァージョンがあったので中古で入手し、仕方なくDVD-Video(通常のDVDプレイヤー)で聴いてみたわけです。それでも「ん、なんか音が良いぞ」と気づいてしまい、なんとしても本来のDVD-Audioで聴いてみたいとずっと思っていました。

DVD-Audioは1999年〜2000年くらいの規格で、ハイレゾ&サラウンドのハシリですが、すでにその時代は終わってしまいました。もう新しいソフトは出ていません。それをいまさらプレイヤーを入手してまで聴くのは「音がすこぶる良い」からです。まず音が図太い。まるでアナログLPを聴いているかのよう。DVD-Audioで再生したら、音の緻密さ、拡がり、低音のズドンという沈み込みなど既知のCDでは聴けなかった音が、ぐっと迫力を増して存在しているのです。

キング・クリムゾンの「レッド」、レッド・ツェッペリンの伝説のライヴ「How The West Was Won」を聴いてみましたが、まあ素晴らしい。CDやサブスクと比較しても、ちょっとDVD-Audio以外では聴けなくなってしまうくらいです。中古を探すとクリムゾンやジェネシスといったプログレ系に多いようです。ロックやジャズもちらほら。たまに買って楽しむつもりです。

2024-03-01

To the Surface / Lawrence Fields

 

Lawrence Fields(ローレンス・フィールズ)はアメリカのジャズピアニスト。2024年本作は自身のピアノトリオで初リーダー作。ベースは中村恭士、ドラムスはコーリー・フォンヴィルと演奏を聴けばわかる腕利きのメンバーです。8.I Fall in Love Too Easily を除いてすべてオリジナルとのことで意気込みが感じられます。

ピアノの音がいいんです。輝くような音でピアノ全体を鳴らしています。もちろん緩急自在で懐も深い。そして音がポジティブ。聴いていて元気になるような楽曲とサウンドなんです。上から下まで粒立ちよく出ていてオーディオを大きめの音で鳴らすと気持ちいいと思います。

勢いの良い1.Parachute でスタート。若手がやるとつい高速で耳が追いつかない曲になってしまいがちですが、彼らの演奏はそうは感じない深みのある音です。5.To the Surface を聴くと難しい曲を情感込めて演奏していて、やっぱりベテランなんだと思います。ベースやドラムスの音がカッコいい。9.Sketches ではヒップホップな面もちらっと。音的にもうすぐ“春”を期待させてくれるアルバムです。

2024-02-27

BS4K音楽番組を録る

 

数年前に買った薄型テレビに録画機能がついているのは知っていましたが、すでにDVDレコーダーがあったので放っておきました。NHKのBSチャンネル編成が変更されたことをきっかけにBS4Kの番組表をチェックすると「洋楽倶楽部」という超大物続出番組があるではありませんか。これは録画して観てみたいと。

1万円程度で4TBの外付けHDDを買える時代なんですね。接続したら即、録画できるようになっていました。スティングの2022年のライヴやザ・ローリング・ストーンズの2012年のライヴは画質も精細で、音もサラウンドで素晴らしい。年取った彼らのライヴでつまらないかななんて思って観始めましたが、さすがの見せる聴かせる映像にすっかり感動してしまいました。ほかにも80年代90年代のライヴ映像があって、それはそれで楽しいものです。超大物ばかりですが。

ちなみにこのシステム、テレビとHDDが一対になっていて、HDDをほかのテレビにつないでも見ることができません。てことはテレビが壊れたらこのHDDも見られないのか、なんて不安もあります。そして録った映像は編集できません。間違って削除しないようにロックをかけておくことはできます。4K番組でも250時間分くらい(4TB)は録画できるようなので、気にせず録りためていけばいいってことです。容量が気になるなら、再度観たいもの以外は順次消していくというオペレーションが必要です。

2024-02-21

Trinfinity / 小曽根真

 

小曽根真さんは言わずと知れたジャズピアニスト。私がやっていたジャズクラブも小曽根さんと同じく神戸生まれということで、あのコロナ禍でも応援してくださっていました。天才的なプレイやそのお人柄も含めて日本ジャズ界を牽引する存在として無くてはならない人です。ラジオのジャズ番組はよく聴いていましたし、今回もラジオで2024年本作リリースを知りました。

名だたるピアノトリオ作品を発表してきた小曽根さんですが、今回は“次世代を担う若手音楽家のプロジェクト「From OZONE till Dawn」”に所属するB.小川晋平とDr.きたいくにとのトリオ。若手を引き上げるだけでなく、常に新しい境地に踏み込む姿を見せてくれています。こうして新たな才能が世に出ていくことは嬉しいことです。

小曽根さんの堂々とした演奏で始まる1.The Path からOZONEワールドに入ります。音使いやリズムに引き込まれます。3.The Park Hopper にはダニー・マッキャスリンSaxが参加して軽快なプレイを聴かせてくれます。ここにはなんと19歳のアルトサックス佐々木梨子さんも参加しています。6.Momentary Moment はなんとも小曽根さんらしい曲。ドキドキするような展開です。今回は想像以上にTheジャズなアルバムで、随所にドラムの素晴らしいソロプレイも聴けたりして、何度聴いても楽しい作品になっています。

2024-02-20

空間オーディオをスピーカーで聴いてみる

 

とてもニッチな話ですが、Apple Musicの「空間オーディオ」をスピーカーで疑似体感できるようになりました。昨今、このドルビーアトモス対応の楽曲が増えていて、新作だけでなくビートルズなどの旧作にもあのマークが付いた音源が出ています。本来AirPods ProやMaxなど一部のイヤフォン・ヘッドフォンで再生可能としているものですが、これをスピーカーで聴くことができないものかと思っていました。

古いMacBook Airを音楽専用機として使っていますが、外部ディスプレイ用にとMini DisplayPort - HDMI変換ケーブルをすでに持っていたのです。これは!と思い、AVアンプにHDMI接続してみると、サラウンド設定が可能になっているではありませんか。

Audio MIDI設定で5.1サラウンド設定できた!

ドルビーアトモスは天井スピーカーが必要で、縦方向(上下)の音の拡がりを表現できるものなので、我が家の5.1サラウンドでは横方向のみの疑似空間オーディオとなってしまいます。それでも5本のスピーカーから包み込むような拡がりのあるサウンドやサブウーファーからの重低音が部屋を満たしてくれたときには、ひとり大喜びしてしまいました。

空間オーディオのプレイリストを片っ端からかけてみています。特に「Pop in Spatial Audio」「Dance in Spatial Audio」「Electronic in Spatial Audio」あたりは効果ビシバシの音源が多くてちょっとスゴいことになっています。

いまの音楽制作スタッフはミュージシャンも含めてこうした再生を意識して作っているんだなと実感した次第です。考えてみれば娘なんかは最近の曲をイヤフォン&空間オーディオで聴くのがあたり前なわけで、2chでは物足りないと思ってしまうかもしれません。

2024-02-16

A New Beat / Ulysses Owens Jr.

 

Ulysses Owens Jr.(ユリシーズ・オーエンス・ジュニア)はアメリカのドラマー。僕はクリスチャン・マクブライド・トリオ「Live at the Village Vanguard」やグレゴリー・ポーター「Nat "King" Cole & Me」でそのドラムスを耳にしていました。この2024年のアルバムは“and Generation Y”としているとおり、若いジャズミュージシャンで構成されたクインテットとなっており、今現在のニューヨークを生で感じさせるサウンドになっています。

録音場所は伝説のルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオでもあるそうで、スタジオライヴを間近で聴いているよう。熱気そのものが伝わってくる演奏で、体温まで上がってきます。おそらくユリシーズはこの若き精鋭たちの兄貴分で、演奏をグイグイ引っ張る姿はアート・ブレイキーを想起させます。ジャズの伝統へのリスペクトを保ちつつ新しい音楽を作っていこうという気迫が伝わってきます。

1曲目Sticks からジャズクラブに入り込んだような熱気に包まれます。ここでユリシーズのドラムプレイに耳を傾けてください。物凄いことが繰り広げられています。かと思えば4.Until I See You Again では美しいピアノ、趣のあるベースソロ、気持ちのよいホーンで聴かせてくれます。ラスト9.Chicken An' Dumplins ではドラムロールからリム連打までまさにアート・ブレイキーの曲を決めてくれています。こういう曲をこういうサウンドで聴きたかったんだというアルバムです。