2023-10-04

where are we / Joshua Redman

 

Joshua Redman(ジョシュア・レッドマン)はアメリカのサックス奏者で作曲家です。若くしてすでに風格のある1993年作「Wish」はパット・メセニーが参加していることもあってCDで聴きました。Dr.のエリック・ハーランドらと組んだJames Farmの「City Folk」での彼もオーソドックスでありながら味わいのある佇まいが好きでよく聴きました。

今回はブルーノートからのデビュー作とのことで、ガブリエル・カヴァッサという女性ヴォーカルを迎えて、P.アーロン・パークス、B.ジョー・サンダース、Dr.ブライアン・ブレイドという鉄壁の布陣で作り上げた作品です。このメンバーらしく叙情的でゆったり聴き入る曲が揃っていて、温かいコーヒーでも飲みながらリラックスしてアメリカ各地を巡ります。

カート・ローゼンウィンケルのギターから始まる2.Streets Of Philadelphia はブルース・スプリングスティーンのナンバーでアメリカへの愛を感じるような曲。続く3.Chicago Blues は不思議なコード進行とブルースを混ぜていかにもジョシュアらしい曲。面白いイントロの7.Manhattan ではギターとサックスの掛け合いが楽しい曲です。


2023-10-03

Doomsday Machine / Arch Enemy

 

スウェーデンのメタルバンドArch Enemy(アーチ・エネミー)の2005年6thアルバム。デスメタルはイヤーエイク・レコード関連の超スピードメタルを耳にしたときに知っていましたが、聴き続けるほどではなかったのです。しかしこのバンドのサウンドと女性デス・ヴォイスというギャップによって大いに盛り上がり、フェスでライヴを体験するに至りました。

アンジェラ・ゴソウのVo.と勇姿がとてもカッコいいわけですが、僕にとってはマイケル・アモットのギターが刺さりました。この超ハード&ヘヴィな曲に、あのマイケル・シェンカーへのリスペクトを隠さずに繰り広げるメロディアスなフレーズが“泣ける”のです。このアルバムでは弟のクリストファー・アモットの超速弾きとの対比が素晴らしく、メタルおじさんのハートをワシづかみにしたのでした。

アンセム曲の1.Enter The Machine でこの後のメタル大会を予感させます。来ました2.Taking Back My Soul の最初のマイケル・アモットのワウギターからしてシェンカーなんです。超速3.Nemesis での高速ツーバスに痺れたあとのメロディアスライン。これぞメタルですわ。重い&ヘヴィな4.My Apocalypse の筋肉質なリズムはもはや気持ちいいくらい。ここらでおじさんは息切れしますが、空間の拡がりや沈み込む重低音が効いていて音質的にもオススメですよと言い残します。


2023-10-02

選択とは「覚悟」すること

 

社長になる以前の問題として、生活していくには稼がなければならない。稼ぐためにはどうしたらいいか。答えはシンプル「私、やります」と言うことです。「◯◯さん、コレやってくれないか」と言われ仕事の受け身だろうと、「これをなんとかしなくちゃ」と自分発の仕事だろうと「やります」と言うことがやがて「稼ぎ」につながります。

僕も初めて社長になったとき、当時の株主から「社長はキミにやってもらいたい」と言われて「やります」と答えたところから始まったわけです。もちろん経験はゼロだし、スキルもないし、頼りない。周囲のメンバーからの支持もない。あったのは「覚悟」のみ。誰だって最初は初心者なんだと自分に言い聞かせて、船出をしたのでした。

引き受けた理由はもう一つ。音楽に関わる仕事だったのです。つまり「やりたい仕事」だった。やりたくないものを「やります」と言うのはツラい。とある目的のためにやらなきゃいけないときに「やります」と言うことはあるけれど、やりたくないものはやらないほうがいい。なぜなら「覚悟」をもてないから。自分が選択した道はこれからいろんな困難があるだろう。それでも前に進んでいくんだと腹を決めるのが「覚悟」です。

2023-09-29

Eternal / Branford Marsalis

 

Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)は、アメリカのサックス奏者。スティングの名曲「Englishman in New York」でのサックスプレイが最も有名でしょう。スティングがソロになってバンドを組んだ際の映画がとても好きで何度も観ました。ブランフォードの“どんな批判にも慣れているぜ”なんて言いながら見せたやんちゃな笑顔が印象的です。いまや弟のウイントン(トランペット奏者)とともにジャズ界のレジェンド的存在です。

2004年の本作は全編にわたり何回も聴いたので、彼のサックスフレーズを覚えて鼻歌してしまうほどです。バラード集ということで、ゆったりしていて一音一音に感情が深く込められた沁み入る演奏をたっぷり聴くことができます。仕事に疲れた日の夜に静かにこの音楽に浸るなんてことも多かったなぁ。何回も聴いたということはそういう日が多かったってことかなんて。そんなこのアルバムに出会えたのも幸せなことです。

ウェイン・ショーターの1.The Ruby and the Pearl でゆったりした時間は始まります。このソプラノサックスの優しい音といったら...。エンディングも素敵です。2.Reika's Loss のフレーズ後の余韻が素晴らしい。3.Gloomy Sunday では大きく波打つリズムに深い感情を乗せてきます。6.Muldoon は優しく包んでくれる美しいピアノとのデュエット曲。7.Eternal は静かに微笑んでいるような明日への曲と思って聴いていました。


2023-09-28

グールド作品からAIを想う

 

画像生成やChatGPTなどAIとコンピュータの進化は止まりません。つい30年前はCG技術でプロって凄いと感じていたのに、もうパーソナルが最新技術を使う時代になりました。そして一部ではAIが作る音楽なんて話題もありまして、そこでふと思い出したことがあります。

グレン・グールドというクラシックピアノの演奏家がいます。バッハ:ゴルトベルク変奏曲の衝撃的とも言われた1955年の演奏録音があります。有名なのは1曲目のアリアですが今回は2曲めを。

そしてグールド没後25周年として発売された「Zenph Re-performance」という2007年の録音があります。生成AIに聞くと以下の説明が出てきました。

Zenph Re-Performance は、アメリカのコンピュータ・ソフト「Zenph」を使って、グールドのモノラル音源を徹底的に解析し、キータッチや音量、ペダルの踏み込み加減にいたるまで完全にデータ化したものです。このデータは、自動演奏ピアノ(ヤマハ製ディスクラヴィア/9フィート・フルコンサート・グランド)を用いて再現され、その再現音を録音しました。

1955年の録音はモノラルだったので、それをコンピュータで解析し自動演奏させてステレオ音源にしたというのです。

さらにこの自動演奏をバイノーラル録音と言って、あたかも弾いている本人の耳で聴いているかのように聴こえる特殊録音を施したものがあります。

驚くことに2007年録音でもグールドそのものが再現されていて、なおかつ高音質なんです。こんなことができちゃうんだと思いました。
さて、そこで再度最初の1955年の録音を聴きます。どう感じましたか。僕は音に力強さを感じ、まるでグールドの意思がグッと伝わってくるようで、モノラル録音であることがかえって奏功しているのではとさえ思いました。

そうかやっぱり本人による演奏録音のほうが良いんだ、音質が問題ではないんだと結論づけたいところですが、2007年録音も聴き続けていると、特にバイノーラル録音をヘッドフォンで聴いていると徐々に惹き込まれて、いつの間にかグールドの世界に浸っていました。

飛躍かもしれませんが、この自動演奏による再現を聴くことと、生成AIに感じることは似ているのかもしれません。本物ではないけど本物をコンピュータで精緻に再現。どちらが良いか悪いかというよりも、見分ける(聴き分ける)ことさえできるかどうか。僕としては少なくとも本物の良さを感じられる耳を持ちたいと願っています。

2023-09-27

Witness to History / Eddie Henderson

 

Eddie Henderson(エディ・ヘンダーソン)はアメリカのジャズトランペット奏者。御年82歳だそうで、このブログを書いていて「ミュージシャンは長生き」と思うようになりました。同い年のハービー・ハンコックとの共演も多く「V.S.O.P.」で彼の演奏を耳にしていました。

大好きSMOKE Sessionsからの2023年リリースでやはり高音質です。気になるドラマーはこれまたレジェンドのレニー・ホワイト。マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」からリターン・トゥ・フォーエヴァーという凄い経歴です。バンド全体の演奏も百戦錬磨の風格で、これぞモダンジャズを最新録音で聴くことができます。

おっマイルスか!と思わせる曲は、レニーがあの頃のように淡々とリズムを刻む1.Scorpio Rising と極めつけの4.It Never Entered My Mind 。あぁ浸っていたいと思います。5.Freedom Jazz Dance は変わったリズムで難しい演奏なのに、ベテランの為せる技なんでしょうリラックスして聴くことができる曲でオススメです。


2023-09-26

Live at Murphy's Law / Jesse Van Ruller

 

Jesse Van Ruller(ジェシ・ヴァン・ルーラー)はオランダのジャズギタリスト。23歳でセロニアス・モンク・コンペティションのギターコンテストで優勝したり、あのパット・メセニーから最も優れた若手のひとりと言われたりしていますが、一聴すればその確かで突出した腕前はわかると思います。2004年の本作はオランダの広くないクラブ“Murphy's Law”で彼が初めて録ったライヴレコーディング。

僕が気に入ったのはまずその優れた音質。クラブの空気感まで伝わってくるような生々しさ。いい音のギターを聴きたいと思った時はこのCDに手が伸びていました。4K映像のように細部までフォーカスが合っていて、すぐそこでギターを弾いているよう。僕が小さめのハコに魅力を感じたのも、またそうしたジャズライヴの録音を好んで聴くようになったのも、このCDのおかげかもしれません。

いかにもジャズギターのお手本のような1.Isfahan のスイングで始まります。3.The End of a Love Affair のギターフレージングを聴いているとあまりに多彩でどうなっているのかわかりません。その分集中して聴きます。4.Detour Ahead はこのアルバムで好きな曲。本人も楽しんで弾いているのがわかる。ベニー・グッドマンの7.Goodbye でも彼独特の音色でじっくり聴かせる曲になっています。