2025-10-17

My Life Matters / Johnathan Blake

 

Johnathan Blake(ジョナサン・ブレイク)はアメリカのジャズドラマー。前作(2023年)に続いてブルーノートからの2025年新作となります。参加メンバーは、デイナ・スティーヴンスAs、ジェイレン・ベイカーVib、ファビアン・アルマザンP、デズロン・ダグラスB。共同プロデュースにデリック・ホッジを迎えています。

1.Broken Drum Circle for the Forsaken のドラムスでも特徴的なのがスネアのパーカッシブな連打による表現。ロックのドラムスがスネアとバスドラとハイハットによるリズムキープを中心としているのに対して、ジャズのドラムスはシンバルでリズムキープして、スネアやバスドラはパーカッションのように装飾していくようなイメージがあります(全てではありません)。音階をもたない楽器でありながら、まるでメロディやコード進行を展開していくかのようなジョナサンのプレイに耳を奪われます。

緊張感のあるヴィブラフォンで始まる2.Last Breath や7.My Life Matters でも重心が下のほうにあってけして軽く流されないドラムスが聴けます。デリック・ホッジの過去のアルバムからも感じられた新時代のフュージョンなのではないかと。短いながら壮絶なドラムソロ8.Can You Hear Me? (The Talking Drums Have Not Stopped) も必聴です。



2025-10-10

ACアダプタをDC POWER BOXに


“音楽ストリーミング(サブスク)をできるだけ良い音で聴きたい”との思いで、QobuzにしたりMacを音楽特化したり光アイソレーションしたりしてきました。

そしていよいよ電源に及んでしまいました。今回は光アイソレーションのOPT ISO BOXの電源をオーディオグレードにしてみました。

左端のBOXに付属していたACアダプタ(中央)を右のDC POWER BOXに交換、デカっ!

なんでも小さなACアダプタによる「スイッチング電源」を、トランスを積んだ「リニア電源」にすることで機器本来のパフォーマンスを引き出せるとのことで、TOP WING社製「DC POWER BOX」(12V/5A、税込55,000円)を奮発してやりました。

音質はというと、一聴少しおとなしくなった(派手さがない?)と思わせましたが、実のところは、低域のボワッとした贅肉感は無くなり、より深く沈み込んでリアル感を増した感があります。高域もよりくっきりしてむやみに拡がらず出音に余裕を感じます。これが5A対応で2A分を使うという贅沢なのでしょうか。ストリーミング音源だから仕方がない、なんていうレベルの音質ではなくなりました。

オーディオ界隈では「実は電源の音を聴いている」なんて話もあるくらいでとにかく電源まわりは大事のようです。ほんとうはMacの電源アダプタをなんとかしたいのですがこれをなんとかするくらいならストリーミング専用機を買ったほうがいいかも、いやその前にルーターやハブまわりをなんとかしたほうがいいとか、あぁきりがない。

よりによって、このDC POWER BOXと機器をつなぐDCケーブルもより高品質なものが発売されるとのことで、こうなったらそこまでは付き合うか、という沼ずぶずぶ中であります。

2025-10-03

Without Further Ado, Vol 1 / Christian McBride

 

Christian McBride(クリスチャン・マクブライド)はアメリカのジャズベーシスト、作曲家。リーダー、サポート作ともに数多く、アメリカを代表するミュージシャンです。ニューポート・ジャズ・フェスティバルの芸術監督を創始者から引き継いだり、国立ジャズ博物館の共同館長に招聘されたりと文化の継承についても活躍されています。

2025年本作の目玉はゲストヴォーカリスト。なんと1.Murder by Numbers はスティングVo.&アンディ・サマーズGですよ。スチュワートはジョインしないですわね笑。ポリス時代の曲でこのアルバムの中でイチオシです(アンディのギターソロがすごくイイ)。続く2.Back In Love Again はジェフリー・オズボーンVo.でJB(ジェイムス・ブラウン)っぽいリズムのファンクがゴキゲン。なんでもクリスチャンはJBマニアでコレクター。日本にも山下達郎さんというJBコレクターがいらっしゃいますが。

そのあとも3.Old Folks サマラ・ジョイVo.、4.Moanin' ホセ・ジェイムスVo.、5.All Through The Night セシル・マクロリン・サルヴァントVo.、6.Will You Still Love Me Tomorrow ダイアン・リーヴスVo.とこれでもかと名ヴォーカリストが続きます。しかも僕が好きなミュージシャンばかり。いやはや盛り上がります。8曲で37分のアルバムであっという間に聴き終わってしまいます。また1曲目から聴きたくなりますよ。

2025-09-26

雑誌「Beat Sound」

 

高級オーディオを紹介するステレオサウンド誌の別冊として「Beat Sound」は2003年から2011年までほぼ季刊で18冊発行されました。2000年なんてつい最近のことだと思い込んでいましたがもう25年も経ってしまったのですね。あーなんと早いこと。

初期の数冊が欠けていたので集めちゃいました。断捨離後の生き残りです。

表紙には“ロックとオーディオの楽しい関係”、“リアル・タイム・ハイファイ・マガジン”、“ロック世代のサウンド・マガジン”なんて文字が並びます。あくまでオーディオは聴くための道具、ロックのパッケージソフトを中心に紹介しているところが良かったので購読していました。

名盤をLP、CD(発売年、リマスタリングそれぞれ)、SACD、DVDオーディオで聴き比べてみて筆者のおすすめ、なんて当時らしいマニアックな記事もあります。LP圧勝かと思いきや作品によってはCDのほうが音が良いこともあったり。LPは各国盤、CDはリマスタリング前と後についても言及しているのは肝心なところです。

掲載されているオーディオや広告も時代を感じるものばかり。僕自身仕事も関係して映像と音楽がともにあった時間が長いので、そこから派生していまだにサラウンドとかやっているんだなと。往年のオーディオファンというよりも、いろいろなメディアを楽しむ世代なんだなとつくづく思いました。

2020年代になって、全体的にはストリーミングに収斂してしまいました。音楽はもちろん、映像もネット映画ドラマやYouTubeで観る時代。便利さを追求したらこうなりますわな。我が家の棚にある大量のCDやDVD、果てはレーザーディスクまで、父はどうしてこんなに貯めちゃったのだろうと娘は思うでしょう。しかも同じアルバムをなんで複数枚も買ったのだろうと。
...えーい、先のことは考えるまい...。


2025-09-19

TRIUNE / Nicholas Payton

Nicholas Payton (ニコラス・ペイトン)はアメリカのトランペッター兼マルチ楽器奏者。高音質で推しのSMOKE sessions recordからの2025年新作です。エスペランサ・スポルディングVo.Bとカリーム・リギンスDsとのトリオ作品。

エスペランサの声やベースも大好きなのですが、今回はカリーム・リギンスとの共演がうれしいところ。ヒップホップ絡みでAKAIのMPCを使ってリズムトラックを作ったり、コモンのアルバムをプロデュースしたりと、今回も彼のリズムセンスが光っています。

2.Ultraviolet にカリームらしいヒップホップ的リズムを感じます。エスペランサのベースもクール。さらに3.Jazz Is a Four-Letter Word でもヒップホップにニコラスのローズピアノが漂いながら、途中からスイングリズムになったところでニコラスのトランペットソロが光る作品。6.#bamisforthechildren になるともうR&Bどっぷりでカリームのリズムもカッコよくて、自然と体が動いてしまいます。

2025-09-12

BEAT Live at 武道館

 

9月1日、BEATを観に行ってきました。武道館は久しぶりでした。高校時代に初めてロックライヴを観たのも武道館。リッチー・ブラックモアのギターに興奮したのを覚えています。文化祭でクラスの皆んなで武道館の縮尺模型を作って展示したのも良い思い出です。

2階席で前は通路という見晴らしのいい席でひとり、周りも同年代らしきオジさんに囲まれて観ました。ひとりじゃつまらないかなと思いきや、座りながらも体の中は終始ノリノリで楽しかった。行って良かったなぁと思っています。


80年代のキング・クリムゾン楽曲を当時のメンバーであるエイドリアン・ブリューVo.Gとトニー・レヴィンVo.Bに加えて、スティーヴ・ヴァイG、ダニー・ケアリーDsで演奏するというなんともピンポイントでニッチなバンド。ダニーが64歳でヴァイが65歳、ブリュー75歳であの声!とトニーは79歳ですよ。二部構成とはいえ複雑な曲を次々に、元気だなと敬服しました。

行く前に予習していたら当時買ったLDまで出てきて、この時期のクリムゾンが好きだったんだなと思い出しました。独特のリズムと変態ギター、大好きなトニーのスティックベース。バンドをやっていた者として影響も受けていました。ロバート・フリップGとビル・ブルーフォードDsの無機質かつ冷徹で狂気を帯びたリズムが魅力でもありました。

今回行こうと思ったのはやはりヴァイ先生。スティーヴ・ヴァイモデルのギターを持っているくらいですからね。そしてTOOLも好きでライヴも観たことがあり、ダニーがどう叩くか興味津々でした。印象を大ザッパに言いますと80年代のはイギリスのバンド、BEATはアメリカのバンドという感じでしょうか。主役がブリュー(アメリカ人)で&フレンズ的な展開に感じました。

スマホのみ撮影可で多くの人がSNSにアップしているようで、同年代の音楽ファンが盛り上がっているのがうれしい。好きだからこそ思う、RedをやってほしかったとかFrame by FrameのサイドGは高速フルピッキングで対抗してほしいとかElephant Talkの象の鳴き声はもっとらしく決めてほしかったとかありますけど、ヴァイ先生のギターの“舞い”を観れたので良しとします。


2025-09-05

Ride into the Sun / Brad Mehldau

 

Brad Mehldau(ブラッド・メルドー)はアメリカのジャズピアニスト&作曲家。個人名義での2025年新作となります。僕はパット・メセニーとの共作あたりから聴き始めて、M.T.B.マーク・ジュリアナの作品でも以前取り上げました。現代ジャズピアノにおいてその表現力は随一であると思います。本作は2003年に34歳の若さで亡くなったアメリカのシンガーソングライター、エリオット・スミスの楽曲をアレンジしたもの。

ブラッド自身1年以上続いた鬱から抜け出したとのことで、“エリオットの音楽は癒しの音楽であり,暗闇の中にいる人たちに「あなたは一人ではない」とそっと伝える音楽でもある。”と語っています。このアルバムを聴いていると、光をもたらすようなブラッドの演奏に体の内側で感動していることに気づきます。

穏やかな1.Better Be Quiet Now からブラッド節が聴けてうれしい。沁みわたります。ジャズ以外の分野からも数曲コラボしていて、3.Tomorrow Tomorrow なんて楽曲もブラッドならでは。妻と娘が声をそろえて「この曲好き!」となったニック・ドレイク(70年代のフォークシンガー)作の15.Sunday も印象的。クラシックの要素もあっていろいろ、まだまだ第一印象、この秋じっくり聴き込みたいアルバムです。